パーソナライズドCRMとは、企業にあわせてパーソナライズド(最適化)できるCRMのことを指します。
企業の活動基盤となるCRMは、顧客情報の蓄積にとどまらず顧客とのコミュニケーションや業務プロセスの実装など自社のビジネスにあわせられるかが求められます。CRMは本来、企業と顧客をはじめとした関わる人々の接点を管理して最適なサービスを提供する経営戦略であり、自社のビジネスに合わせた対応が求められ、かつ時代や企業がおかれた状況に伴い柔軟に変更を加えられる必要性があります。パーソナライズドCRMとはまさに、それを実現する要件を満たしたツールを指します。
パーソナライズドCRMに求められる要件
自社のビジネスに合わせたパーソナライズドCRMに求められる要件は以下の通りです。
- CRMのデータベースに蓄積できる顧客情報を自由にカスタマイズできること
- 自社のビジネスフローや業務処理に合わせた挙動を実装できること
- 柔軟かつ誰でも簡単にCRMをカスタマイズできること
- 多様化するコミュニケーションチャネルに対応でき、顧客に合わせて切り替えられること
- CRMに載せる情報や挙動に限定せず、デザイン性も自在に変容させることができること
マーケティング5.0時代、デジタル時代のパーソナライズドCRM
コトラーの唱えるマーケティング戦略は、昨今のビジネスの根幹となる経営戦略のひとつであり、その歴史がマーケティング1.0から5.0へと変革していくに伴った進化をCRMは遂げています。
マーケティング1.0時代のCRM
マーケティング1.0は、1900年代からの「安ければ売れる」という時代の中で商品を中心としたマーケティング戦略でした。この時代においてのCRMには、より多くの顧客情報を如何に蓄積させるかが求められていました。フレームワーク"4P"が誕生したのもこの時代であり、商品(Product:何を売る)、価格(Price:いくらで売る)、流通(Place:どのように届ける)、広告(Promotion:どのように知ってもらう)か商品を中心として考えCRMにはそれらに対応する情報を蓄積することが求められました。
マーケティング2.0時代のCRM
1970年代、顧客が本当に必要なものとは何かに焦点を当て、顧客を中心としたマーケティングの時代がマーケティング2.0という経営戦略です。この時代、顧客のニーズをいかに知るかが重視され、CRMにも顧客が本当に求めているものを読み取る情報を蓄積することが必要になりました。この時代に誕生したフレームワーク"STP分析"は、「セグメンテーション(ニーズに応じた市場の分類)」「ターゲティング(狙うべき顧客の絞り込み)」「ポジショニング(自社の立ち位置、強み)」を行い顧客をより深く理解できることが求められるようになりました。
マーケティング3.0時代のCRM
1990年代からインターネットの普及によって市場に商品が溢れ、企業同士の争いが激化する時代の中で改変させた経営戦略こそマーケティング3.0でした。インターネットを利用したマーケティング、現代の「デジタルマーケティング」がはじまったのもこの時代であり、CRMにもインターネットを介して行われた顧客の行動を蓄積することが求められるようになりました。
マーケティング4.0時代のCRM
2010年以降、社会的価値に加えて「自己実現」が求められるようになったのがマーケティング4.0です。顧客の精神的欲求(求めている自分像の実現欲求)を満たす商品・サービスの提供が求められるようになった時代です。顧客は精神的欲求が満たされることを口コミとして発信していくことがトレンドとなったソーシャルメディアの爆発的な普及がその背後に存在します。これまで顧客とのコミュニケーションはオンライン・オフラインでの訪問や電話やメールに限定されていましたが、このチャネルが大きく拡大することによってCRMに求められる関係構築チャネルが増えました。さらにこれらを一体的に利用できるCRMプラットフォームが求められるようになりました。
デジタル時代のマーケティング5.0に求められるパーソナライズドCRM
フィリップ・コトラーが2022年4月20日緊急提言と題して発表されたのが「マーケティング5.0」です。テクノロジーの飛躍的な進歩に伴い、デジタル時代におけるマーケティングの在り方やマーケティング・テクノロジーを活用した新たな戦術を求めた経営戦略がマーケティング5.0であり、AIをはじめとしたテクノロジーと人間とを掛け合わせたデジタル時代を走るビジネスが接するさまざまなメガトレンドに対応していくことが求められています。マーケティング4.0と基本は同じくしていながら、当時できないとされていたことがテクノロジーの進展によって可能になったことを受けて提唱されたと言われています。マーケティング5.0を実現するためには、自社のビジネスにあわせ、かつ時代や企業がおかれた状況の変化へ柔軟に対応するデジタルテクノロジーを備えたパーソナライズドCRMが欠かせないものとなりました。
パッケージ型CRM、プラットフォーム型CRMとの違い
パーソナライズドCRM以前のCRMの歴史では、まずパッケージ型CRMが誕生しました。パッケージ型CRMとは、パッケージ(既製品)としてCRMという箱が提供され、その箱に合わせた情報の管理が求められるものでした。情報をデジタルに変換するいわゆるデジタライゼーションの走りとなる存在です。パッケージでありながらその守備範囲を顧客分析、セグメンテーション、マーケティング施策の実施などに至るまで多くに対応できるようになったのがプラットフォーム型CRMでした。CRMが対応する範囲が広がったことで、より企業が必要とするCRMの理想に近い形での利用が可能になりました。パーソナライズドCRMとプラットフォーム型CRMの違いに混同するケースも多くありますが、プラットフォーム型CRMはあくまでパッケージ型のプラットフォームであり、パーソナライズドCRMは完全にパッケージ観念を撤廃した理想的なCRM像を追求するものとして大きく異なります。