コホート分析とは?
コホート分析とは、マーケティング、顧客分析、ユーザー行動分析など、さまざまな分野で利用されている分析手法です。この手法では、共通の特徴や時間に基づいて個人やグループを異なる「コホート(集団)」にわけ、その行動やパフォーマンスを比較する分析手法です 。一般に、コホート分析は、マーケティングや顧客分析において有用です。顧客のロイヤルティの向上や製品改善のための改善点の特定、効果的なマーケティングキャンペーンの評価などに活用されます。
コホート分析から分かること
コホート分析により、顧客の行動パターンやトレンドや顧客のニーズを把握でき、企業は、顧客の行動を適切に理解することで、顧客が求めている適切な商品やサービスの価値を提供や顧客満足度の向上、売上向上に繋げる戦略を立てることできます。コホート分析で分かることは以下の4つです。
1.リテンションとチャーン(解約)の把握
リテンション率が高いグループや低いグループを特定し比較することで、特定の期間や特定の特徴をもつ顧客のリテンション率・解約率を把握に繋がります。これにより、企業はリテンション率を改善するために施策を立てることができます。
2.購買行動や行動パターンの理解
顧客の行動パターンや購買傾向、特定の機能の利用状況なども把握することができます。顧客のニーズや購買傾向を適切に理解することで、企業は個人の嗜好に合わせた施策の展開ができ、ユーザー体験の最適化ができます。
3.商品・サービスの向上
顧客の行動パターンや購買行動の理解により、企業は顧客に合わせたサービスや商品の提供を可能にし、顧客の満足度を向上させることができます。
4.マーケティングキャンペーンの評価
実施したキャンペーン施策の検証も行えます。どのキャンペーンが顧客の購買に影響を与えたか、顧客とのエンゲージメント向上に繋がったかを適切に把握でき、今後のマーケティング戦略を改善することができます。
セグメンテーション分析との違い
コホート分析とセグメンテーション分析は、顧客データやユーザーデータを分析して、特定のパターンや傾向を抽出するための手法ですが、それぞれ異なるアプローチや目的を持っています。
項目 | コホート分析 | セグメンテーション分析 |
---|---|---|
グループ分け | 特定の期間やイベントに基づいてユーザーをグループ分け | 特定の属性や行動パターンに基づいてユーザーをグループ分け |
比較対象 | グループごとにユーザーの行動やパフォーマンスを比較 | グループごとにユーザーの特性や需要の違いを分析 |
評価ポイント | 特定の施策やイベントがユーザー行動に与える影響を評価できる | ターゲット市場や顧客ニーズの理解を深めることができる |
時間の経過 | ユーザーのライフサイクルや継続率を把握でき、改善の機会を見つけることができる | セグメント内での購買傾向や顧客満足度を把握し、顧客の維持や成長に向けた施策を立案できる |
コホート分析が求められてる背景
サブスクリプション型モデルの普及が進む今日のビジネスシーンでは、顧客行動を理解することやユーザーリテンションを最大化することが極めて重要になってきています。
サブスクリプション・サービスの普及
ストリーミングサービス、SaaS、会員制ビジネスなど、さまざまな業界でサブスクリプション・サービスが台頭し、企業が顧客を獲得し維持する方法は以前と比べて劇的に変化しています。
そのため企業は、顧客満足度、エンゲージメント、ロイヤリティを維持・向上させるために、コホート分析を活用して継続的に戦略を評価・見直し、最適化することが不可欠です。
グロースハックとの関係(継続利用・継続保持)
コホート分析は、グロースハックのための重要な分析の手法の一つでもあります。
グロースハックとは、ユーザーデータを分析し、継続的な改善を続けながら効果的なマーケティング戦略と施策を通じて、急速かつ持続的にサービスのの成長を達成することを目指すアプローチです。
グロースハックにおいて、コホート分析を活用することで、ユーザーがどの段階で離脱しているのか、サービスの成長を妨げている要因を把握することができます。また、要因を理解することは、ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンの実施、ユーザー体験の向上、製品やサービスの最適化や顧客満足度を最大化に繋がります。改善を続けながら急速な成長を促すグロースハックにおいてコホート分析は必要不可欠です。
コホート分析を実施するメリット
コホート分析はユーザーのトレンドの把握、ニーズの理解、将来の需要の予測の観点からさまざまなメリットをもたします。それにより、効果的なマーケティング戦略やビジネス戦略の立案に役立ちます。
トレンドの把握
コホート分析により、ユーザーグループごとの行動やパターンを追跡し、トレンドを把握することができます。それにより、特定の期間や条件下でのユーザーの傾向や変化を把握し、将来の需要や優先事項を予測することができます。
ニーズの理解
コホート分析は、異なるコホート間でのニーズの違いを明らかにするのに役立ちます。異なる特徴や属性を持つグループの行動を比較することで、顧客の好みやニーズの変化を把握することができます。これにより、ターゲット市場やセグメントに対してより適切なマーケティング戦略を立てることができます。
将来の需要の予測
コホート分析は、時間軸に基づいて推移を把握できるため、月次、年次ごとに調査を行うことで顧客データを蓄積できます。これにより、特定のコホートの行動やパターンを分析し、将来の需要の可能性を洞察することができます。これにより、需要予測に基づいた商品開発やマーケティング戦略の調整が可能になります。
コホート分析の具体例
コホート分析は、Webサイトの分析、ECサイトの最適化、ビジネス戦略の開発など、さまざまな面で活用することができます。
WEBサイトのコホート分析活用例
Webサイトのユーザー数やページビュー数が減少している場合、特定のコホート(登録期間や地域など)を分析することで、それらが減少した原因を特定できます。それらのコホートのユーザー行動を詳しく調査し、悪影響を与えているコンテテンツや、ユーザーエクスペリエンスの問題、技術的な問題などを特定することができます。これら情報をもとに、改善策を行うことでユーザーのエンゲージメントを回復し、ページビューを増加させることができます。
Eコマースサイトにおけるコホート分析
コホート分析はECサイトのリピーター作りに非常に役立ちます。ECサイトでは、キャンペーンを通じて売上を増やす試みがよく行われますが、キャンペーンによる売上は一時的なものであり、キャンペーンで購入したユーザーをリピーターに転換することが重要です。
コホート分析を使用すると、リピート購入を行ったユーザーの特徴や行動パターンを特定します。例えば、そのコホートが特定の商品カテゴリに偏っている場合、そのカテゴリに関連するコンテンツを重点的に提供することが効果的です。また、コホート分析に基づいて再訪傾向を把握し、リピーターになりやすい日や期間に合わせてキャンペーンを実施します。特別な割引や限定商品、ポイント倍増などの特典を提供することで、ユーザーの再訪を促し、リピーター化を促進します。
コホート分析を行う際の注意点
コホート分析を行う際に、正確なインサイトを得るためには、しっかりとした計画と準備が必要です。コホートこれらを行うことで、企業はコホート分析から重要なインサイトを導き出すことができます。
ステップ | 説明 |
---|---|
1.コホート基準を明確に設定する | ユーザーをコホートに分けるための基準を明確に定義する。主に、取得日、ユーザー属性、特定の行動などの要因が含まれます。 |
2.分析期間の適切に設定する | コホート分析の適切な分析期間を決めます。ビジネスの性質、顧客のライフサイクル、分析の目標などを考慮します。 |
3.十分なサンプルサイズを確保する | 各コホートは、統計的に有意な結果を得るために十分なサンプルサイズを確保が重要です。不十分なサンプルサイズでは、信頼性に欠ける、あるいは誤解を招くような結果が出る可能性があります。 |
4.時系列データを考慮する | 時間の経過によって行動や属性が変化することがあります。この変化を見落とすと、結果が歪んでしまう可能性があります。特に長期間の分析を行う場合は、時間の経過に伴う変化に注目し、考慮する必要があります。 |
5.コホートの定義と目的を一致させる | コホートの定義は、特定の目的や調査内容と一致するようにする必要があります。例えば、特定の製品の利用パターンを分析したい場合は、その製品を購入したユーザーのコホートを作成します。 |
6.コホートの行動を一貫して追跡する | 各コホート内のユーザーの行動を一貫して追跡することが重要です。つまり、同じメトリクス、イベント、またはアクションが、コホート内の全てのユーザーについて一貫して記録されるようにします。これにより、異なるコホート間の比較が可能になります。 |
7.外部要因の監視 | コホートの行動に影響を与える可能性のある外部要因を考慮することが重要です。例えば、季節性や市場の変動などがコホートの結果に影響を与える可能性があります。これらの要因を監視し、結果を正しく解釈するために適切な調整を行う必要があります。 |
8.調査結果を可視化し、伝える | コホート分析の結果をグラフやチャートなどの視覚的な表現で可視化することが重要です。これにより、パターンやトレンド、コホート間の差異を視覚的に理解しやすくなります。また、結果を他の関係者に伝える際にも、視覚的な表現を使用することで効果的なコミュニケーションが可能となります。 |
コホート分析のための効果的なツール
コホート分析によく使われるいくつかの効果的なツールについてご紹介します。
ツール | 特徴と機能 |
---|---|
エクセル | データの整理や計算に適したツールであり、特定の基準に基づいてコホートを作成し、関数を使用して指標を計算することができます。また、チャート機能を使用して結果を視覚化し、解釈や伝達を容易にすることもできます。 |
Google Analytics | ウェブサイトやアプリのユーザー行動を追跡・分析するための強力なツールです。コホート分析レポートを使用して、異なるコホート間の指標や行動を比較し、傾向を可視化することができます。これにより、定着率、エンゲージメント、コンバージョン率などの重要な洞察を得ることができます。 |
Zoho CRM | 顧客関係管理ソフトウェアであり、顧客の行動やエンゲージメントを分析するためのコホート分析機能を提供しています。Zoho CRM のレポート機能や分析機能を活用することで、顧客属性や取引履歴、特定のイベントなどに基づいてコホートを作成することができます。 |
コホート分析の効率化を実現するZoho CRM
Zoho CRMは、レポート機能やダッシュボード機能を活用することで、顧客属性や取引履歴、特定のイベントなどに基づいてコホートを作成することができます。
特徴 | 説明 | 例 |
---|---|---|
コホートの作成 | 特定の条件や顧客属性に基づいてコホートを作成可能です。 | 1月に新規獲得した顧客をコホートとして作成し、1月、2月、3月の各月の購買行動を比較します。 |
行動や活動を追跡・分析 | 購入、インタラクション、マーケティングキャンペーンへの参加など、顧客の行動やアクティビティを追跡・記録することができます。 | メールキャンペーンAに参加したコホートの顧客が、キャンペーン後に特定の商品を購入したかどうかを追跡・分析します。 |
コホート比較 | 異なるコホートのパフォーマンスを並べて比較・分析することが可能です。 | 若年層向け広告キャンペーンのコホートと中年層向け広告キャンペーンのコホートを比較し、各コホートの購買率を分析し、特定のプロモーションがどの顧客セグメントに対してより効果的であるかを評価することが可能です。 |
顧客維持率の分析 | レポート機能を活用することで、特定のコホート内の顧客維持率を長期的に評価することができます。 | 顧客獲得ソースに基づいて作成されたコホートの継続率を分析し、どのチャネルがより顧客の獲得に貢献しているかを把握できます。 |
キャンペーン効果 | コホート分析機能により、特定のコホートにおけるマーケティングキャンペーンの効果を評価することができます。 | キャンペーンXとキャンペーンYを実施したコホートのコンバージョン率を比較し、効果的なキャンペーンを特定します。 |
コホート分析により、年間の顧客維持率・四半期の成約傾向・特定の月の 成約期間などを可視化することができます。戦略の最適化、リテンションの向上、企業の持続的な成長をサポートします。