サブスクリプション型ビジネスでは、ほぼ毎月、顧客の継続利用によって一定の収入を得ることができますが、変動も生じやすいもの。MRR(Monthly Recurring Revenue)とは、このような変動を把握し、収益がどの程度変動しているのかを把握するのに役立ちます。
MRRとは?
MRRとは「Monthly Recurring Revenue」の略で、日本語では月次経常収益と訳されます。毎月繰り返し発生する定期収益の総額を指し、クラウドサービスなどのサブスクリプション型ビジネスで頻繁に使用される用語です。MRRは、ビジネスの財務状況を監視し、将来の収益の伸びを予測するために使用することができます。
MRRの種類
MRRの種類を分析することで、MRRの変動の具体的な理由を理解することができます。ここでは、MRRの種類とその計算式について見ていきます。
1. New MRR(新規MRR)
New MRR(新規MRR)とは?
New MRR(新規MRR)とは、1ヶ月の間に契約した新規顧客から企業が生み出す追加収益のことです。
New MRRの計算式
新規MRR = ユーザー数 × ユーザーあたりの平均売上高
New MRRの例
例えば、1ヶ月に10人の新規顧客がいて、それぞれの顧客が10,000円かかるプランを契約した場合、新規MRRは10人*10,000円=100,000円になります。
2. エクスパンションMRR(拡張月間経常利益)
エクスパンションMRRとは?
エクスパンションMRRとは、ある月に既存顧客から発生した、前月に対する追加収入のことです。この追加収入は、主にクロスセルとアップセルによって生み出されます。エクスパンションMRRがプラスであれば、顧客満足度と顧客ロイヤルティによって顧客を維持できたことを示します。このような顧客は、企業にとって余分なコストをかけずに獲得できるため、企業にとっても有益です。
エクスパンションMRRの計算式
1ヶ月のエクスパンションMRRの成長率は、以下の式で計算できます:
(1ヶ月のエクスパンションMRR/月初めの総MRR)× 100
エクスパンションMRRの例
例えば、あるビジネスのMRRが月初に100,000円で、一か月の間でさらに15,000円増えた場合、エクスパンションMRRは(15,000/100,000)×100=15%になります。
3. Downgrade MRR(ダウングレードMRR)
Downgrade MRRとは?
既存のお客様が、特定の月に、既存のプランをより低いプランに下げた際のMRR(月次経常収益)のことです。
Downgrade MRRの計算式
ダウングレードMRR=前月の売上高-当月の売上高
Downgrade MRRの例
例えば、既存のお客様が購入金額を2,500円から2,000円にダウングレードした場合、ダウングレードのMRRは2,500円-2,000円=500円となります。
4. チャーンMRR(Churned MRR)
チャーンMRRとは?
チャーンMRRとは、顧客がプランを解約したときに失われる月次経常収益の額です。チャーンMRRは、ビジネスの成長や収益性を評価する上で重要な指標であり、顧客の維持やリテンションにどの程度成功しているかを示す一つの尺度となります。
チャーンMRRの計算式
チャーンMRRは、特定期間の解約者数を加算することで算出することができます。チャーンMRR率は、解約MRRを特定の月の総MRRで割ることによって計算することができます。
チャーンMRRの例
ある企業において、チャーンMRRの合計が20万円(特定の月、例えば1月)、月初に計測したMRRの合計が500万円だった場合、その企業のチャーンMRR率は4%となります。
2,000円(1月中の解約)÷50,000円(1月1日時点のMRR)×100=4%。
5. アップグレードMRR(Upgrade MRR)
アップグレードMRRとは?
アップグレードMRR(Upgrade MRR)とは、顧客が既存のプランやサービスを上位のプランやサービスに変更した際の月額継続収益のことをです。
アップグレードMRRの計算式
アップグレードMRR = アップグレード後の販売価格 - 現在の販売価格
アップグレードMRRの例
たとえば、既存の顧客が月額2,000円のプランを契約していて、それを月額2,500円のプランにアップグレードする場合、アップグレードMRRは2,500円-2,000円=500円になります。
6. Reactivation MRR
Reactivation MRRとは?
Reactivation MRRとは、解約後、有料プランを再契約した顧客から毎月得られる収益です。
Reactivation MRRの計算式
Reactivation MRR = 再契約した顧客の合計
Reactivation MRRの例
たとえば、月額3,000円のプランを5人が再契約した場合、リアクティベーションMRRは15,000円になります。
7. Contraction MRR
Contraction MRRとは?
Contraction MRRとは、特定の月にキャンセルやダウングレードが発生したことによって生じた損益です。
Contraction MRRの計算式
Contraction MRR = ダウングレードMRR + チャーンMRR
Contraction MRRの例
5人の顧客が月額3,000円のプランをダウングレードし、3人の顧客が月額5,000円のプランを解約した場合、Contraction MRRは30,000円になります。
8. Net New MRR
Net New MRRとは?
Net New MRRとは、今月と前月を比較して、企業の収益がどれだけ成長(または縮小)したかを示す指標です。
計算式
Net New MRR = (New MRR + エクスパンションMRR)- チャーンMRR
結果がマイナスの場合は、収益の損失を示します。プラスの結果であれば、収益が増加したことを示します。
例
たとえば、ある月に、5人の新規顧客がサービスに登録し、それぞれが月額10,000円を支払ったとします。一方、10人の既存顧客が10,000円からより高い月額20,000円のプランにアップグレードしましたが、月額20,000円を支払っていた3人の顧客が解約しました。
この場合、当月のNet New MRRは50,000円 + 100,000円 - 60,000円 = 90,000円になります。
ARRとは?MRRとの違い
ARRとは?
ARR(年間経常収益)は、企業が1年間に予想される収益の合計であり、長期的な収益状況を把握するために使用。特に年単位で契約を行うビジネスモデルで採用され、新規顧客の契約や既存顧客のアップグレード、ダウングレード、チャーンを考慮して計算されます。ARRは、ビジネスの将来の収益予測や戦略立案に重要な役割を果たし、ビジネスの長期的な成功を評価するための指標です。
MRRとARRの違い
MRRは短期的な収益状況を把握するための指標であり、ARRは長期的な収益状況を把握するための指標です。MRRは月単位の収益を計算し、変動に敏感です。一方、ARRは年単位の収益を計算し、ビジネスの将来の成長と収益性を評価するための重要な情報を提供します。
MRRのメリット
MRRは、サブスクリプション型ビジネスの財務見通しを正確に把握するための指標です。この指標は、ビジネスが得意とする分野と不得意とする分野を特定するのに役立ち、総収入を増やすためにどの側面に重点を置く必要があるかを把握することができます。
パフォーマンストラッキング
多くのサブスクリプション型ビジネスでは、1ヶ月のスパンで収益の伸びを計算することが一般的です。これは、収益の不足を素早く把握するためです。1ヶ月ごとの収益の変動や成長率を追跡することで、企業は目標と実績を比較し、時には戦略やアクションを軌道修正をすることできます。短期的なパフォーマンストラッキングにより、企業はより効果的に収益目標を達成し、事業の成長を促進することができます。
収益予想
MRRは、短期的・長期的な事業成長のために、収益予測を正確に算出するための指標です。この分析を行うことで、次の数カ月で収益を上げるために、企業がより注意を払うべき領域を知ることができます。
より良い洞察力で賢い財務判断を
MRRは、企業が今後の財務計画について十分な情報を得た上で意思決定するのに役立ちます。
顧客からのフィードバック
MRRは、主に月額課金のサブスクリプション型ビジネスで利用されています。MRRを使用することで、サブスクリプションの価格設定に影響を与えることができます。。顧客はより手軽にサービスを試すことができるため、多くのユーザーが参加し安くなります。その結果、。サブスクリプション事業者は、より多くのフィードバックを得ることができ、収益を生み出すことができます。MRRは、サブスクリプション型ビジネスにおいて顧客の関与度や収益性を把握するための重要な指標です。
MRR算出時の注意点
- MRRを計算する際には、有効な顧客数だけでなく、プランのアップグレードやダウングレード、キャンセル、オファーや割引など、すべての要素を考慮する必要があります。
- 割引した場合は、割引後の金額で計算してください。例えば、10,000円の製品が5,000円で販売された場合、MRRは5,000円で計算する必要があります。