CRM2.0とは、企業と顧客がよりオープンに、協力的につながり、相互に有益な関係の構築を促進する顧客を中心とした顧客戦略のこと。
CRM2.0の目的は、企業と顧客がよりオープンに、協力的につながり、相互に有益な関係の構築を促進することです。つまり、顧客を中心とした顧客戦略こそがCRM2.0であると定義することができます。CRM2.0というコンセプトはDX(デジタルトランスフォーメーションまたはデジタル変革)が注目される昨今において重要な役割を果たします。
これは抽象的な定義となり、具体的にCRM2.0とは何かという要件は明確に定められてはいません。顧客との関係構築の方法とそのプロセス、そこにテクノロジーを融合させることにより企業と顧客の双方が有効な関係基盤を構築するものと定義することもあります。それをより限定的に定義して顧客とのコミュニケーション(交流)を強化するものと定義する場合もあり、コミュニケーション手段(チャネル)を豊富に用意しそれを自在にコントロールしながら顧客との関係基盤を形成することに必要なツールを指す場合もあります。一方で、CRM業界の専門家には情報の流れ自体にまで範囲を広げて顧客と企業が密接に連携して商品を新たに生み出したり既存商品を改善する機会をも提供することも可能であるものと定義する場合もあります。
CRM2.0というコンセプトに基づく戦略とその実装を実現するために必要なCRMツールには複数のデータソースから取得した顧客データベースを完全に一元化させる必要があります。たとえば、顧客の情報とWebサイトへの訪問記録(ページ、滞在時間、アクションなど)を完全に一体化させることもその一つです。さらに、すべての人がそれらの情報にリアルタイムにアクセスできることも重要なCRM2.0への対応要件の一つとされます。
CRM1.0 と CRM2.0の違い
CRM1.0は90年代に誕生しています。当時、バックオフィスの自動化(セールスオートメーション)に焦点を当てたものとして誕生したCRM1.0は今日においてもあらゆる企業の業務効率化と最適化を支えています。実際、日本においてもそのシェアは年々増加しており2020年時点でその市場規模は約1,870億円を示しており、年平均で5.5%成長が見込まれ、2025年には2,400億円を上回ると予想されています。
IDC Japan「国内顧客エクスペリエンス(CX)関連ソフトウェア/CRMアプリケーション市場予測を発表」
CRM2.0はそうした一般的なCRMの領域をフロントオフィスのビジネス戦略にまで展開したCRMの運用が進化した姿であるとされます。
CRM1.0は技術が主導となり、データをいかに自動で蓄積するか。どのように処理を実行させるかといった技術が中心となります。一方、CRM2.0は戦略を中心に顧客戦略として定義されます。利用層についてもCRM1.0はバックオフィス業務への対応が主となり、営業やコールセンター主導で構築されていましたが、CRM2.0の場合は営業・マーケティング主導で利用するフロントオフィス業務が中心となります。
CRM2.0の普及状況
アメリカをはじめとしたデジタル先進国においてCRM2.0への注目度は高く、またその勢いは益々高まっています。一方で、CRM2.0とは何かを明確に定義することが困難であるがゆえにほとんどの企業はCRM2.0を採用できていないとされています。
実際、Customer Collective (営業、マーケティング向けフォーラム)が実施した調査では、回答者の83%がSNS、Web2.0がビジネスに影響を与えると認識しているい一方で、SNSやブログ、Wikiなどのツールを実際にビジネスで活用していると回答した人は50%以下という結果が出ています。
CRM の専門家として知られるポール・グリーンバーグは、CRM2.0に対して以下のように述べています。
This means that the company recognizes the validity of the control that customers have over their own business decisions (and thus, to some extent, the company’s business decisions.
——これは、顧客が自らのビジネス上の意思決定をコントロールすることの有効性を企業が認識することを意味する(したがって、企業のビジネス上の意思決定もある程度はコントロールできる)」
これはつまり、企業の課題や戦略、ミッションにおいても顧客を巻き込み、顧客と密接に連携しながらビジネスの展開を導いていくこと意味します。顧客とつながり売り上げに繋げていくより先進的なCRM2.0。顧客戦略に精力的に取り組む企業では、5年前に行っていた活動とそのビジネスモデルは根本的に変容しています。デジタル化とデータのフラグメンテーション(断片化)によって競争優位を生み出す昨今においてCRM2.0をもちいた顧客戦略は益々重要度を増しています。
CRMとは
CRMとは(Customer Relationship Management:顧客管理/顧客関係管理)のことであり、顧客との関係基盤を構築するビジネスモデル(戦略)のことです。CRMは江戸時代、顧客情報を管理するための「台帳」としてはじまりました。顧客との関係基盤を管理する台帳として歴史をはじめたCRMは現代、IT技術を活用したデータベースとして変容。その管理範囲も顧客の氏名や住所、電話番号をはじめとした基本情報から、コミュニケーション履歴、商談、見積り・請求書、購入履歴にいたるまで、あらゆる情報をデジタル化し、CRMツール(顧客管理ツール/顧客関係管理ツール)に蓄積し、今日のビジネス活動の基盤となっています。