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ビジネスインテリジェンス(BI)ツールは、企業が蓄積するデータを分析して可視化し、さまざまな判断や意思決定に役立てられるツールとして活用されています。
この記事では、BIツールを使うとどのようなことができるのか、何を分析してどんな知見を得られるのか、そして導入時にチェックしておきたい注意点などについて解説します。
BIツールとは
BIとはビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)の略で、「ビジネスの意思決定に関わる情報」という意味です。また、BIツールとは、企業が日々収集し蓄積する膨大なデータを管理して分析し、有用な情報を引き出すためのツールです。
BIツールは、社内の各種システムやデータベースから得たデータを分析して、グラフや表などで視覚化し、分かりやすく示すことができます。データの種類は売り上げデータやマーケティングデータ、Web解析データなどさまざまです。
BIツールの利用は、スピーディーなビジネス状況の把握を促し、仮説に基づく検証、課題やインサイト(洞察)の発見、数値予測などを可能にします。BIツールを使いこなせば、「データドリブン」と呼ばれるような、勘や経験だけではない「データに基づいた判断や意思決定」を日常的に行えるようになるでしょう。
BIツールの基本機能
BIツールの基本的な4つの機能を紹介します。BIツールを使えばどんなことができるのか、導入前に知っておきましょう。
ダッシュボード・レポーティング
ダッシュボードは、データの分析結果をグラフや表などで視覚化(ビジュアライゼーション)することにより、分かりやすく表示する機能です。多くの場合、可視化された情報が一画面にまとめて示されるので、データの理解が容易になります。また、データの変化がリアルタイムで更新されるため、常に最新のビジネス状況を把握できるようになります。
レポーティングもデータの分析結果をアウトプットする機能です。こちらは分析結果を定型化されたレポートとして出力するもので、より詳しい資料として活用することができます。日々のレポーティング作業を自動化する機能も便利です。
多次元OLAP
多次元OLAPは、大量のデータをさまざまな視点から多次元的に分析する機能です。OLAPは「On Line Analytical Processing」の略で、日本語では「オンライン分析処理」と訳されます。データをさまざまな角度から分析し、その結果をリアルタイムで出力することができます。
BIツールに搭載されているOLAP機能は、例えば、収集したデータから製品、価格帯、地域といった複数の軸を持つキューブ構造のデータベース(多次元データベース)を生成します。このデータベースを使って、集計項目ごとのレベルを変更することで階層を変えて深掘りするドリルダウン(またはドリルアップ)、特定の集計軸を抽出して2次元の表を作成するスライシング、スライシングで作成した表の集計軸を入れ替えた表を作成するダイシングといった操作を行い、分析結果を得ることができます。
データマイニング
データマイニングは、大量のデータから統計的手法を使って有意な関係性やパターンを見つけ出す機能です。データマイニングでは、バスケット分析やクラスター分析、回帰分析などの分析手法を使ってデータ分析を行います。本来、専門的な知識が必要な分析手法であっても、BIツールを使えば誰でも容易に高度な分析を行うことができます。
これにより、データから通常の見方だけでは気づかないような傾向や規則性を発見し、新たなビジネスチャンスを探求することが可能となるでしょう。一般的に、OLAPは仮説検証や確認のために用いられることが多く、データマイニングは仮説を設定せず、データそのものから見つけ出すときに活用されることが多いという違いがあります。
シミュレーション・プランニング
シミュレーション・プランニングは、過去の実績データをもとに、この先の数値の変化を予測する機能です。What-if分析などの手法を使って、将来の売り上げ予測や予算計画、経営計画などを立案するための情報を提供します。
BIツールで何を分析するのか?
BIツールを使用すると具体的にどのような分析ができるようになるのでしょうか。ここでは、経営・財務、マーケティング、営業の各領域でのBIツールの活用法について見ていきます。
経営・財務関連の分析
BIツールを使えば、経営や財務における重要な指標を定点観測し、そのトレンドや変動をリアルタイムに分析・把握することが可能です。さらに、売り上げ予測のシミュレーションなどを通じて、将来のビジネススキームや投資計画の策定に役立てることもできます。
マーケティング関連の分析
BIツールによって顧客の購買行動を分析し、その結果に基づいたマーケティング戦略を立案することができるようになるでしょう。また、OLAPやデータマイニングによる高度な分析手法を用いて売り上げの動向や傾向も把握可能です。
分かりやすいところでは、どのような商品を組み合わせて購入されているか、天候によってどのような商品の売り上げの変化があるのか、特定の顧客がどのような種類や価格帯の商品、販売チャネルを好み、どんなサイクルで購入しているのか、といったことが分かります。
顧客関係管理(CRM)ツールやマーケティング・オートメーション(MA)ツールのデータを取得し、BIツールで分析するというのも有効な活用法です。BIツールを用いると、CRMツールやMAツールが生成するデータをより深く分析することができます。顧客行動のパターンを理解して、将来の行動を予測するための知見を得ることもできるでしょう。これにより、顧客ごとに最適な情報を提供するといった施策を実施できます。ほかにもBIツールによるリアルタイムまたは定期的なレポートに基づいて、施策の効果や進捗を監視するといった活用の仕方も考えられます。
営業関連の分析
営業関連では、BIツールを用いて、売り上げ実績や売り上げ見込みなどの営業データを分析し、それに基づいて営業戦略の改善や調整を行うことができます。例えば「4月、5月に特定の顧客がある商品をよく購入している」ことが分かれば、営業チームがその時期、その顧客に対してしっかりとした営業活動を仕掛けていくことが求められます。
営業支援(SFA)ツールのデータとBIツールの連携でも、顧客ごとのデータを分析して営業活動の最適化を進める、パーソナライズされた営業戦略を立てて顧客満足度やロイヤルティの向上を図るといったことが可能になります。また、営業チームメンバーの活動を追跡し、各メンバーのパフォーマンスを定量的に評価するのにも役立ちます。将来の売り上げ傾向や市場動向を予測し、営業戦略に生かすことも可能です。
近年では、顧客からの問い合わせなどの情報をテキスト分析し、顧客満足度向上や製品改善のためのインサイトを得るといった使い方もされています。
BIツールを導入するメリット
BIツールは、さまざまなメリットをもたらします。次に、BIツールを導入することで得られるメリットをポイント別に紹介します。
膨大なデータを扱える
BIツールを導入するメリットは、ビッグデータのような膨大なデータを処理する能力を備えており、異なる形式や種類のデータソースを一元的に扱うことが可能だということです。それにより、データの統一性と一貫性を保ちつつ、情報の抽出や分析を行うことができます。
分析の時間を短縮できる
Excelを使ったデータ分析などの従来の手法と比較すると、BIツールを導入することで時間と手間を大幅に短縮できることもメリットです。BIツールには、高度な分析機能と自動化のための機能が搭載されています。そのため、売り上げ、顧客数、市場シェアなどの指標を一定期間ごとに確認する定点観測や、リアルタイム監視も行えます。これらにより、迅速な意思決定を行うことができるでしょう。
可視化により現状を分かりやすく把握できる
分析結果を視覚的に表示するBIツールを使えば、データをもとにしたロジカルシンキングだけでなく、その傾向や変化を感覚的・直感的に読み取れるようになることもメリットです。数値やテキストのデータだけでは理解しにくい複雑な情報も、グラフやチャートを通じて容易に理解することが可能です。データからのインサイトの発見、現状の把握や将来の戦略立案にも、可視化機能は大いに役立つでしょう。
BIツールを導入する際の注意点
BIツールは多くのメリットがある一方で、注意しなければならない点もあります。最後に、BIツール導入時の注意点について紹介します。
データ準備・初期設定の手間
BIツールを導入する際には、大量の既存データをBIツールで抽出して扱えるようにするための準備が必要です。データ形式の変換やデータクレンジング、データ加工といった作業がそれで、これらはデータの形式や量、質により複雑さを増すことがあります。
また、BIツール自体の初期設定にも時間と手間がかかることがあります。ダッシュボードのカスタマイズや、アラートを利用するための正常値・異常値の設定、レポートのためのデータ抽出と定型化のための設定、OLAPやデータマイニングのためのデータベースの準備などを行わなければなりません。これらの作業をスムーズに進めるには、IT部門やベンダーの担当者に各種作業を依頼する必要があるでしょう。
目的に合ったデータの収得
BIツールの最大の利点は、膨大なデータから価値ある情報を引き出す能力です。しかし、これは目的に適したデータが十分に収集されていることが前提となります。そもそも必要なデータが欠けていたのでは、BIツールの能力を十分に発揮することはできません。
自社にどんなデータが蓄積されているのか、BIツールで分析するとどのようなことが分かり、どんな効果が得られるのかといった点について、事前に十分調査を行うことが重要です。
ツールの操作スキル
BIツールの中には、多機能ではあるものの、その全ての機能を活用するためには一定の操作スキルや知識が求められるものもあります。ツールの選定時には、社内でどの程度使いこなせるのかを十分に確認しておく必要があります。あらかじめ必要な機能が絞れていれば、機能が少なくても使いやすいツールを選ぶことができます。
既存ITツールとの連携
例えばマーケティングや営業活動にBIツールを利用したい場合には、BIツールをCRMやMA、SFAなどの既存のITツールと連携してデータを一元管理し、分析するのが効果的です。そのためツール選定時には、導入するBIツールと既存システムとのスムーズな連携ができるかどうかも大きなポイントになるでしょう。
CRMなどのITツール群の中には、BIツールも含めて最初から連携して使用することが前提となっている製品もあります。そうしたものを選べば、前述のデータおよびデータベースの準備などの問題は容易に解消され、互いにシームレスに使いこなすことができます。
Zoho Analyticsを含む統合パッケージ「Zoho CRM Plus」
データを分析して、その結果を視覚化などにより分かりやすく示すことができるBIツールは、データに裏づけられた判断や意思決定が重要視されている近年において重要な役割を担うようになっています。ただし、その機能を十分に活用するには、もとになるデータをBIツールでいつでも自在に扱えるようにするための環境構築が不可欠です。
CRM、MA、SFAの統合パッケージである「Zoho CRM Plus」には、「Zoho Analytics(ゾーホー・アナリティクス)」というBIツールが最初から含まれています。CRMなどのITツールと統合されているため、それらで収集し蓄積したデータを即座に分析し、可視化してダッシュボードやレポートに変換して確認することができます。また堅牢なAPIセットにより、他社の一般的なビジネスアプリやクラウドまたはオンプレミスのデータベースともローコード・ノーコードによる連携が可能です。さまざまなビジネスニーズに柔軟に対応できるBIツールをお探しなら、「Zoho CRM Plus」の導入をご検討ください。