なぜ、顧客情報をセグメント化するのでしょうか?
自社の優良顧客について、どのくらい把握していますか?漠然と、自社製品に何百万円も支払ってくれる顧客、と考えていませんか?確かに、そのような顧客は貴社のVIPかもしれません。しかし、長期的に見てみるとどうでしょうか。定期的に製品を購入し、あなたのビジネスに安定した収入をもたらしてくれる顧客こそが、最高の顧客となり得るのです。このような顧客は、恒常的な満足度を高めることで、より大きな購入に結びつく可能性があります。
統計学における「80/20の法則」(パレートの法則)とは、「ある事象の約80%は、わずか20%の原因によってもたらされる」というもの。ビジネスで言えば、20%の顧客が80%の利益を生み出す傾向があることを意味します。たいていの方は、20%の優良顧客を将来的な成長のため、ターゲットにしたいと思うことでしょう。ここで課題となるのは、いかに優良顧客を特定し、その顧客を維持することができるかです。顧客セグメンテーションとは、顧客を共通した特徴に基づいてグループ分けすることで、この課題の解決策となり得ます。
顧客は、地域、人口統計、行動、ロイヤリティ、顧客のライフタイムバリューを推定できるその他の要素など、さまざまな方法でグループ化することができます。には、次のようなものがあります。
# 顧客の嗜好のより深い理解
# 顧客満足度の向上と継続
# 課題・対策優先度に基づくマーケティングの集中
# 成長分野に対する包括的な知識
# セグメントマーケティング - ロイヤリティの高い顧客への集中
# マーケティングリソースの適切な配分
# アップセル・クロスセルの機会創出
セグメンテーションのRFMモデル
RFMとは何か、そしてなぜ、3つの指標を連動させる必要があるのでしょうか? RFMとは、顧客の生涯価値を測定するためのセグメンテーション・モデルのこと。「Recency(最終購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary value(購入金額)」の3つの指標を用いて、顧客の行動パターンを定義し、行動可能なグループにセグメント化するために使用されます。
- Recency(最終購入日):最後に購入したのはいつか?
- Frequency(購入頻度):何回購入したか?
- Monetary value(購入金額):購入金額はいくらか?
これらの指標は比較的わかりやすく見えるかもしれませんが、より詳しく見ていきましょう。
Recency(最終購入日)
Recencyは、3つの指標のうち、おそらく最も重要な指標と考えられます。潜在的な顧客を惹きつけ、初めて購入してもらうことは難しいことですが、再び購入してもらうことも同様に難しいことです。顧客は、最近購入した場合、アクティブな顧客とみなされます。しかし、「最近」の定義は、業界や製品カテゴリーなどによって異なります。衣料品店であれば3〜4ヶ月、家具店であれば12〜18ヶ月といったところでしょうか。
理想つぃては、将来的な取引を検討している「潜在顧客」、最近購入した「既存顧客」、そして過去に購入したことがあり、その後購入していない「非活動顧客」の3種類の顧客を常に抱えていることが望ましいとされています。Recencyを理解することで、それぞれの顧客がどのような状態にあるのかを把握することができます。新しくアクティブな顧客を作り、アクティブな状態に保つことが肝要です。最近購入した顧客は、非活動で取引が遠のいている顧客よりも、コミュニケーションをとればあなたのビジネスに関心を示してくれる可能性が高いのです。一方で、十分なリソースがあれば、非活動の顧客を復活させる努力も行いましょう。
Frequency(購入頻度)
ある顧客が頻繁に購入している一方、別の顧客がそうでないとき、その理由はマーケティング担当者にとって多くの謎に包まれていて、対策は非常に困難です。顧客が自社から購入する頻度は、さまざまな変数によって決まります。例えば、製品の典型的な使用方法、価格、市場動向、買い替えの必要性などです。お客様の満足度や、頻繁に購入される理由を測定し、特定することは必ずしも容易ではありません。
例えば、企業や学校に文房具を供給するビジネスを営んでいるとします。競合他社が大幅な値引きをした場合、顧客は次の購入を競合他社からするようになるでしょう。このときの満足度の基準は価格にあります。そして、数ヶ月後、同じ顧客が文房具を至急購入する必要が出てきました。ここで、競合他社が納品まで1週間かかる注文を、貴社がより早く納品できるとなれば、その顧客は再び、貴社から購入するようになるでしょう。この場合、お客様の満足度は納品スピードで決まります。このように、いろいろなケースが考えられるため、お客様の購入頻度が下がった原因を常に探ることは重要です。原因を理解しないままでは、大きな損失になりかねません。
また、顧客の購入頻度は生鮮品と非消耗品では異なりますよね。そのため、食品や雑貨を販売する企業と、家具を販売する企業では、Frequency指標も異なります。購入頻度の背後にある決定要因を特定して分析しない限り、この指標を最大限活かすことはできません。
Monetary value(購入金額)
最もお金を使った人が、本当に優良顧客といえるのでしょうか?もし、その人たちが3、4年に一度しか購入しなかったり、今後、製品を購入しなくなったりしたらどうでしょうか。RecencyとFrequencyと同様に、金銭的な要素だけではベストカスタマーを見つけることはできませんが、3つの指標の中でも欠かせない要素であることは間違いないでしょう。下の表で、その詳細を見てみましょう。
Recency(最終購入日) | Frequency(購入頻度) | Monetary value(購入金額) | 合計購入金額 | 過去3年間の合計購入金額 |
---|---|---|---|---|
1年以内 | 6回/年 | 5,000円 | 5,000円x6=30,000円 | 90,000円 |
1年以内 | 12回/年 | 1500円 | 1,500円x12=18,000円 | 54,000円 |
3年以内 | 1回/3年 | 150,000円 | 150,000円x1=150,000円 | 150,000円 |
一番上の顧客は、1年間に6回購入するたびに平均5,000円ずつ使っています。一方、別の顧客は1年間に12回、1,500円使っており、この差はわずか12,000円に過ぎません。また、3年間の総支出はそれぞれ90,000円と54,000円になります。例えるなら、3年に一度、家全体を塗装するために150,000円を使う一回限りの購入者に比べ、彼らは定期的な修理のために少量の塗料を購入するような顧客なのです。ここで、あなたにとっての一番の顧客は誰でしょうか?
RFMの最適化
RFMデータから顧客のペルソナに関するより正確な見識を得たい場合、追加の属性を組み合わせて、RFM分析を最適化することができます。たとえば、B2Bのコンテキストでは、顧客の役職はRFM分析に加えて考慮すべき重要な変数になります。業績の良い顧客の多くがCIO、CTO、プロジェクト・マネージャーなどの役職を持っている場合、同類の役職を持つセグメントの潜在顧客に対して、より積極的なマーケティングを行うべきです。なお、小規模な組織では一般的に、役職の種類がそれほど多くないため、この方法でRFM分析を最適化しようとする場合は、会社の規模を考慮して検討することが重要です。
年齢データによる顧客パフォーマンスの最適化も、同様な例です。保険業界のマーケティングでは、年齢が重要なファクターとなります。もし分析によって、重要顧客が40歳から55歳であることが判明した場合、マーケティング戦略に利用できる有意差を発見したことになります。
同様に、地域も重要な要素になる可能性があります。広告の効果や製品の妥当性は、人口、文化的嗜好、気候などの地理的要因に左右される傾向もあります。自社の優良顧客がどの地域から来るのかを詳細に把握することは、新規顧客をターゲットにしたマーケティング施策の位置づけや、既存の重要顧客のニーズに対応するのに役立ちます。この分析は、RFMの結果を国、地域、郵便番号などで分類することで、だいたいの傾向をつかむことができます。
さらに、売上、担当者の性別、会社規模など、RFM分析に重ねることができる要素がある場合、基本的なセグメントに収まりにくい、少数派の顧客を分類するのに役立ちます。この情報は、より良いマーケティング戦略に適用され、顧客のペルソナを把握するためにも利用できます。
RFMスコア
RFM分析で最もよく使われるスコア表は、Recency、Frequency、Monetaryの各カテゴリーに1から5までの点数(5が最高で、1が最低)を割り当てる方法です。最近、商品を多く購入している顧客であれば、Rのカテゴリーに高いスコアを割り当てます。また、購入回数が多ければ、Fカテゴリーでより多くの点数を割り当て、購入金額が多ければ、Mカテゴリーで点数を与えます。これらの点数を合計して、RFMのスコア表を構成します。すでに定義されている標準的なRFMスコア表を以下に用意しましたので、ぜひ参考にしてください。
RFMスコア表のサンプル
セグメント | R | F | M | アクション |
---|---|---|---|---|
チャンピオン 最近購入しており、頻度も高く、購入金額も大きい | 4-5 | 4-5 | 4-5 | あなたにとって最良の顧客です。頻繁にコミュニケーションを行い、優先して情報を共有し、特別なサービスを提供しましょう。ロイヤリティプログラムやメンバーシップサービスを提供し、彼らを重要視していることを伝えましょう。 |
ロイヤル・カスタマー 購入金額も大きく、プロモーションへの反応も良い | 2-5 | 3-5 | 3-5 | 彼らはあなたの上顧客です。プロモーションへの反応も良いでしょう。定期的に情報を提供し、アップセル、クロスセルを促しましょう。この顧客はチャンピオンに昇格する可能性があります。 |
新規カスタマー 最近、新規の購入を行い、購入金額は平均的である | 4-5 | 1 | 1 | 新規カスタマーはあなたのビジネスを拡大する可能性を秘めた顧客です。リピート購入を促すサポートサービスなどを早い段階から実施しましょう。あなたの製品の価値をしっかりと伝え、良い条件を提示し、関係構築を行いましょう。 |
リスクがあるカスタマー 購入金額は大きく、頻度も高いが、最近は購入していない | <=2 | 2-5 | 2-5 | 再度アクティブカスタマーに昇格させる必要がある、重要な顧客です。パーソナライズしたメールを送り、最新のプロモーション情報を提供しましょう。 |
休眠顧客 購入金額は平均以下、頻度も低く、購入はだいぶ期間があいている | 1-2 | 1-2 | 1-2 | 再購入の可能性が高くないため、工数をかけすぎないようにしましょう。通常のニュースレターを定期的に配信するなどの対応で、再購入を促しましょう。 |
以上のように、最終購入日、購入頻度、購入金額などを理解し、特定することは、顧客をセグメント化するために必要ですが、膨大な顧客データからこの作業を行うのは大変ですね。そこで、各セグメントのスコアを設定するだけで、あとはシステムが分類、可視化してくれるCRMの導入をおすすめします。チャンピオン、ロイヤル・カスタマーなどを瞬時に特定し、把握しましょう。RFM分析に基づくアプローチは、顧客を理解し、長期的な継続と企業成長において、大きな利益をもたらしてくれるでしょう。 詳細は、こちらの資料をご覧ください。