CRM/SFA用語集 RPA

公開日:

2023年4月6日

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執筆者 菊池 紗矢香

RPA

RPAとは?

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)とは、反復的で単調的なビジネスタスクを自動化するソフトウェア技術のこと。ワークフローを最適化し、従業員がより有意義な業務に集中できるようにするためのソリューションで、業務効率の向上とコスト削減を目的に導入されます。RPAのメリットは、日本地域における市場シェアの拡大からも明らかであり、2023年末には1500億円を超えると予想されています。

RPAの普及が進む、デジタル時代

RPAの導入は、年商50億円以上の大企業で多くみられますが、中小企業でも導入する企業は増加傾向にあります。RPAは、ルールエンジン、AI、機械学習などの高度な認識技術によって自動化することで、データ管理・入力、会議日程調整、メールなどのバックオフィス業務のあり方を変革してきました。特に、2017年から2020年にかけては導入企業43.1%という大幅な増加を示したことからも、RPAが非常に注目されていることがわかります。しかし、2020年には中小企業の5社に1社しかRPAを導入しておらず、まだまだ導入の余地があります。

参考:JUAS, 企業IT動向調査報告書2021, ユーザー企業のIT投資・活用の最新動向
*この図における大企業は、売上高が1兆円を超える企業、中小企業は、売上高が100億円以下の企業で算出しています。

RPAでビジネスチャンスを切り拓く

RPAを活用することで、反復的で時間のかかる作業を自動化。人的ミスの削減などから業務改善はじめ、最終的には組織全体の業績向上まで期待できます。ここでは5つの業界でのRPAの活用例とその効果を紹介します。

業界RPAの活用例
医療データ入力やカルテの管理など、繰り返し作業を自動化し、効率化やミスの削減を実現しています。また、予約や請求・クレーム処理の管理にも利用されています。
製造業在庫管理、品質管理、受注処理などの定型業務を自動化に活用されています。また、需要の変化への迅速な対応にも役立てられています。
小売在庫追跡、注文処理、カスタマーサービスなどの作業を自動化に活用されています。
人材紹介・派遣 新入社員のオンボーディングや、パフォーマンス管理、福利厚生管理などの業務を自動化。業務時間を削減し、精度を向上させ、コストを削減することに貢献しています。
保険保険金の請求処理、保険契約の管理などの作業の自動化に活用されています。人的ミスを減らし、より迅速で正確な顧客サービスを提供することに貢献しています。

RPA vs AI - ビジネスニーズに合うのはどっち?

人工知能(AI)とは、学習、推論、問題解決など、通常は人間の知的活動を必要とする作業を行うようプログラムされたコンピュータのことです。企業は、AIとRPAという2つの技術を活用することで、運用コストの削減、顧客満足度と従業員のモチベーション向上を実現することが期待できます。

カテゴリRPAAI
タスク管理データ入力や請求書処理など、ルールに基づいたルーチンワークや反復作業を自動化することを目的に設計されています。消費者行動の予測やデータのパターンの特定など、膨大なデータ分析やそれに基づいた意思決定がきるよう設計されています。
知能レベルあらかじめ設定された指示に従い、ルールベースで自動処理を行います。AIのアルゴリズムは、データを分析し、そのデータに基づいて処理します。自己学習して徐々に精度を向上します。
自動化の範囲特定のタスクやプロセスを自動化します。より大規模で複雑な業務を自動化するよう設計されています。
実装難易度既存システムへの影響を最小限に抑え、短期間での導入が可能です。より高度なアルゴリズムと技術的な専門知識が必要です。
コストRPAは一般的にAIよりもシンプルな技術であり、技術的な専門知識も必要ないため、安価です。高度なアルゴリズム、データ分析、機械学習機能への多大な投資を必要とします。

RPAが求められる3つのビジネス課題と理由

課題1. ルーティン作業
繰り返し行うルーティン業務は、人的ミスを招く可能性があります。RPAは、こうした業務を自動化し、正確性を確保します。例えば、データ入力や、請求書作成、メールの一次返信などが該当します。機械的に処理できる作業は、RPAに任せましょう。

課題2. 分立するレガシーシステム
特定の組織やチーム内だけの利用に特化したレガシーシステムの存在がネックになることも。RPAは、事業全体を見通した自動化に利用できます。例えば、注文追跡、在庫管理、出荷追跡や、サプライチェーンの管理におけるデータ収集、分析など、財務報告業務の自動化にも利用できます。業務プロセスが自動化、改善されれば、めまぐるしく変化する市場やビジネスニーズにも柔軟に対応できるようになります。

課題3. 重要規則やコンプライアンスの確認
規則やコンプライアンスの確認は、業務プロセスの中でも重要なポイントですが、手作業で行うと時間がかかり、エラーも起こりやすいもの。RPAで、こうしたタスクを自動化し、迅速に要件を確認できるようになります。効率よくエラーやペナルティのリスクを低減し、コスト削減と収益性の向上も実現します。

RPA導入時に評価すべき要素

事業の包括的な計画なしにRPAを導入したり、自社運用に合わないRPAツールを選択してしまうと、かえってコスト増加や生産性低下など、さまざまな問題が発生する場合があります。
また、導入プロセスにギャップが生じ、従業員の混乱や不満につながる可能性もあります。RPAを適切に導入・運用し、期待する効果を得るためには、慎重に計画を立て、自社運用に最適なRPAツールを選択することが重要です。ここでは、RPA導入を成功させるための7つのステップを紹介します。

  1. 現在のプロセスを評価
    現在のビジネスプロセスを評価し、RPAが最も求められている領域を特定します。ここでは、日々の業務からルーティン作業、ルールベースの作業、時間のかかる作業を探します。

  2. 適切なRPAツールを選定
    使いやすさ、拡張性、セキュリティ、コストなどの要件を考慮して、組織の目標や要件に合致するRPAツールを選定します。

  3. 適切なチームを選択
    RPAの導入と管理に必要な技術的な専門知識を持つチームまたは外部のパートナー企業を選びます。このチームには、RPAで自動化できる領域を特定するため、事業や施策のプロセスに理解がある人を含める必要があります。

  4. 実装を計画
    RPAを導入するための明確な計画を策定します。この計画は、時間軸に沿ったマイルストーンと、必要なリソースを考慮して行う必要があります。導入プロセスで発生する可能性のある障害や懸念点にも対応できるよう、余裕を設けることをおすすめします。

  5. データの安全性を確保
    RPAは、セキュリティを念頭に置いて設計する必要があります。RPAシステムがセキュリティの規制やプライバシーポリシーを遵守していることを確認します。

  6. チームトレーニング
    RPAを利用するチームがスムーズに適応できるように、トレーニングとサポートを提供します。RPAが日々のワークフローにどのように適合し、どのように効果的に活用できるか、理解を深めます。

  7. 成功の測定と監視
    RPAがビジネスプロセスに与える影響を継続的に測定・監視します。データを使用してパフォーマンスを追跡し、改善すべき領域を特定します。

RPAの実戦的な活用法

営業からマーケティングまで、RPAは様々な分野で活躍し、さらに広まりを見せています。ここでは、3つの部門におけるRPAの導入とその効果について見ていきましょう。

営業部門

顧客からの注文を管理してタイムリーかつ正確に実行することは、営業部門においてごく一般的な課題です。在庫確認や顧客情報の確認、見積書・請求書の作成など、複数の工程があり、これらを手作業で行うと時間がかかるうえ、ミスも起こりやすいです。マッキンゼーのある調査では、営業関連の活動の30%は自動化可能と見込んでいます。

出典:MacKinsey & Company 「Sales automation: The key to boosting revenue and reducing costs」 (2020年3月13日)

営業部門にRPAがどう役立つのか

RPAが、メールやWebフォームなどさまざまなチャネルから注文データを収集し、販売注文システムに入力。また、顧客情報の確認や在庫状況の調査など、間違いやいたずらで行われた注文でないかなどもチェックできます。請求書の作成や顧客への確認メールの送信も人手を介さずに行うことが可能になります。

マーケティング部門

マーケティング部門に共通する課題として、取引先情報、購買履歴、エンゲージメント指標など、大量の顧客データの管理・分析が挙げられます。

マーケティング部門にRPAがどう役立つのか

RPAが、取得したデータを抽出し、CRMなどの基幹システム自動で入力。さらに、フォーマットの標準化や重複データの排除など、データのクリーニングや整理も可能です。RPAによるデータ管理の自動化は、データの正確性と完全性を向上させるため、顧客エンゲージメント向上の効果も期待できます。

経理部門

経理部門は、財務諸表作成、売掛金・買掛金処理、給与計算管理など、細かな手作業が多いだけでなく、複雑なプロセスも数多く管理しなければなりません。これらのプロセス管理もまた、膨大な時間を費やし、多くの労働力を必要とするため、人件費の高騰や人的ミスといったリスクに直面しやすい傾向にあります。

経理部門でRPAがどう役立つのか

データ入力、請求書処理、財務報告などのタスクを処理できるRPAを活用すれば、プロセスが自動化され、手作業の必要性を大幅に減らすことができます。

出典:Gartner「Robotic Process Automation (RPA) in Finance

Gartner社のある調査によると、1台のファイナンスRPAボットは、従業員1名に対し最大30倍の作業量を代替できる可能性があり、つまり、より少ない人員で同じレベルの仕事を達成できることになります。

シームレスな営業オペレーションを実現。
CRM/SFAとRPAの連携がもたらす力とは

営業業務の効率化は、競合他社に差をつけたい企業にとって極めて重要です。そのためには、CRM(Customer Relationship Management)やSFA(Sales Force Automation)ツールとRPA技術を連携することが有効です。ここでは、RPAとの連携の効果と、シームレスな営業業務につながる方法を探ってみましょう。

課題RPA統合型CRMが解決する方法
営業チームは、CRM/SFAシステムへのデータ入力に時間を費やしていることが多い。名刺、電子メールの署名、Webサイトなどのソースから、連絡先の詳細、リード、機会データをCRM/SFAシステムに自動的に入力することができます。
顧客とのやり取りや注文履歴、フィードバックなどの顧客データは複数のシステムに分散していることが多く、利便性が低くなりがち。CRM/SFAシステムへ顧客の注文履歴やフィードバックのデータを自動的に更新し、営業チームが必要な最新情報を簡単に入手できるようになります。
リードのスコアリング、顧客へのフォロー、ミーティングのスケジュール設定などの反復作業を行っており、非効率かつ遅延を招きやすい。CRM/SFAのデータを分析し、リードスコアリングを自動化します。
また、確度の高いリードを特定して、
営業担当者に割り当て、フォローアップもスムーズにできるようになります。
リソースや時間には限りがあるため、期待されているレベルのサービスを提供することに苦労している。製品に興味を示した顧客にパーソナライズされたフォローアップメールを送信し、より多くの情報を提供し、セールスファネルをさらに通過させます。
データ分析は時間がかかり、手作業で行うのは困難。営業データを自動的に分析して傾向を特定し、顧客行動に関する洞察を提供します。これにより、商品提供や営業戦略についてデータに基づいた意思決定を行えるようになります。

現代のめまぐるしく変化するビジネス環境では、営業活動もスマートに進められる必要があります。CRM/SFAの導入とRPAを組み合わせることは、業務の自動化と一元管理された顧客データを組み合わせることにつながります。業務を大幅に改善され、効率化された営業プロセスと、顧客満足度の向上が期待されます。

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