第3回「メールマーケティング運用のポイント:仕組み編」では、メールマーケティングを実現するために、どのような仕組みを導入していくべきか、どのようにツールを選ぶべきなのかをご説明しました。
今回の記事では、メールマーケティングを継続的かつ効果的に運用し続けるために、組織内でどのような体制をとるべきか、日々の運用でどのようなことに気を付けていくべきかといった内容をまとめていきます。
本記事で学べること
- メールマーケティングを効果的に継続運用するための体制づくりのポイント
仕組みだけでは運用は回らない
メールマーケティングに限りませんが、ITツールなどの仕組みを入れただけでは、現実的な運用を継続することはできません。
きちんと運用を実現していくための組織的な取り組みが必要となります。
とりあえず始めて走りながら考えようというのも一つの手ではありますが、目的に応じた運用体制をあらかじめ作っておかなければ、多くの場合で尻すぼみとなってしまいます。
気づいたら半年に1回しかメルマガが配信されていなくて、形式的なものになってしまった、なんてことがないように、運用を開始する前や、仕切り直しをするタイミングで、しっかりと体制を整えておくことが重要です。
運用体制をきちんと組み上げるための5つのポイント
ここからは、具体的に運用体制を整えるために考えておかなければならない5つのポイントを紹介します。
どこから考えればよいかわからないという方は参考としてみてください。
1.企画をきちんとたてる
なにを当たり前のことを、と感じたかもしれませんが、意外ときちんと企画があって開始されるメールマーケティングというのは少ないものです。
なんとなく効果がありそうだから、メール配信の仕組みがCRMツールについていたからといったきっかけで始まることが多いのが実情なのです。
きっかけは上記のようなものでも全く問題ありませんが、少なくとも
- 何のためにメールマーケティングを実施するのか (目的)
- 誰に対して実施するのか (ターゲット顧客)
- どんな内容を送るのか (コンテンツ)
- メールを送る頻度は (配信スケジュール)
- 誰が責任をもって運用して、誰が協力するのか (運用体制)
- 利用するツール (利用システム)
といったことは仮でもよいので決めて、何らかの形で文章などに残しておくとよいでしょう。
一番重要なのは言うまでもなく【目的】です。
この目的次第でそれ以外の項目はほぼ決まってくるといっても過言ではありません。
新規の見込顧客を獲得したいのか、既存顧客との関係性を維持して離脱防止を図りたいのかなど、明確に決めておかないと、効率的で効果的な運用などできるはずがありません。
もちろん目的もターゲット顧客も1つである必要はありませんが、最初はあまり欲張りすぎない方がよいでしょう。
目的もターゲット顧客もあやふやということであれば、いきなり新規顧客を狙うよりは、既存の見込み客もしくは既存顧客との関係性を維持やリピート購入をしてもらうことを当初の目的とするのが、比較的効果が出やすいといえるでしょう。
2.年間スケジュールを決める
企画のところで配信頻度を考えることになりますが、それをより具体的なスケジュールに落とし込む必要があります。
例えば、月に1回送るということを決めるだけでは不十分です。
このレベルでしかスケジュールが決まっていないと、いつまでに準備をすればいいかもあいまいで、他の業務の忙しさに流されて、配信のタイミングを逃したり、とても目的を達成できそうもない品質のメールしか送れないといった残念な結果となってしまいます。
できれば1年を週単位の52週くらいに分けて、この週には内容を決めて、翌週にはコンテンツを作成し、さらに翌週には配信を行うといった具体的なスケジュールを作成しましょう。
スケジュールを作成する際には、一般的な世間のイベント(夏休みとかGWとかお正月など)、企業としてのイベント(新商品の発表や展示会出展など)など、他のメディア(SNSなど)の投稿スケジュールなども併記しておくと、ネタを考えるのに苦労しなくなり、作業漏れなどを少なくできます。
具体的には、以下のようなイメージです。
3.頭を使うことに時間を割く
この項目は少しイメージがつかみづらいかもしれませんね。
他の業務を抱えながら兼任でメルマガなどを運用していると、どうしてもメルマガのコンテンツ作成などがやっつけ仕事になりがちです。
配信スケジュールに間に合わせるために、とりあえず体裁だけを整えたメールを送ってしまったりといったことになってしまうのです。
すでにメルマガの運用を行っている担当者であれば心当たりがあるのではないでしょうか。
このようなメールが何度か送られてくると、顧客側には、面白くもないし、役にも立たない内容しか送ってこないと認識され、配信停止となったり、メールは届くが目を通すことがほとんどなくなるといったことにつながります。
そうならないためには、顧客側が読んで面白いとか役に立つなと思ってもらえるコンテンツを作ることが重要です。
しかし、メールを配信する仕組みがなくて、毎回リストを整備し直さなければならないとか、誤配信におびえながら手動で配信するといった運用になっていては、なかなかコンテンツを作成するための時間は捻出できません。
ですから、よいコンテンツを作成するために時間を捻出する、運用を仕組み化して、余計な負荷や精神的ストレスを担当者ができるだけ抱えないようにすることが必要になってくるのです。
4.いろいろな部署を巻き込む
メルマガなどを定期的に配信していくと、かならずネタ切れ状態に陥ります。
これは一人で担当していたら仕方のないことだといえるでしょう。
どんなに自社の製品のことを知っている営業マンでも、持っているネタには限りがありますし、どんなネタが見込み客や既存顧客に刺さるのかといったことは、個人の行動範囲で見える部分には限界があるからです。
このネタ切れをなくすためには、いくつか方法があるのですが、一番簡単なのは関わる人を増やすという方法です。
・営業マンが見込み客先に言ってされた質問や、刺さった機能。
・サポート担当者がいつもされる質問。
・マーケ担当者がセミナーで必ず話す鉄板ネタ。
一人の担当者が気づかないだけで、見込み客や既存顧客が知りたい情報、知ったら喜ぶ情報というのは、実は社内にあふれているのです。
これを一人がいろいろな人に能動的に行動してネタを引っ張ってくるというのは、なかなかに骨が折れる作業です。
できれば、各担当者が「面白いネタあるよ」とか「今日お客さんからいい反応があってね」といったネタを共有できる場や仕組みを作り上げられるとよいでしょう。
5.各作業の標準化
メールマーケティングを実行していく上で、かならず発生するのが、何らかの形での配信ミスです。
「誤字・脱字」「号数の誤り」「日付や曜日の誤り」「同じ内容を2度配信」「誤ったリストにメール配信」などいろいろなミスが発生します。
このミスは残念ながら完全になくすことは困難です。
どんなに注意して送ろうと思っても自分が作成したコンテンツのミスを完全にチェックすることは困難です。
あるいは、ミスをなくすために、作成者と送信者を分けてダブルチェックを行うといったこともよく行われますが、一定の効果はあるものの、「もう一人がチェックしてくれるだろう」という油断が生まれて、一人で配信しているときよりもミスが出やすくなるなんて皮肉な結果が生まれることもあります。
このように担当者の注意力など、状況や担当者ごとに一定しない不安定なものにたよって運用を行うことは得策とは言えません。
できれば、メールマーケティングにかかわる各作業を標準化して、ミスが出にくい、少なくとも致命的なミス(個人情報の漏洩など)が起こらない仕組みを作ることが必要です。
例えば、メールの配信やコンテンツの誤りというのは、それほどバラエティがあるわけでもありません。
配信リストの誤り、件名のミス、本文のミスなど、誤りが発生する箇所も決まっていますし、発生しやすい内容もほぼ決まっています。
であれば、例えば以下のようなチェックリストを作ってあげて、かならずメール配信をする際には、指差し確認的な形で運用すればミスは格段に減ります。
ダブルチェックを行う際にも漫然と誤りがないかとチェックするより、ポイントを絞ってチェックが行えますので、ダブルチェックの精度も確実に上げられるのです。
他にも、そもそも誤りが発生しやすい項目は含めない(件名に号数は入れないなど)というのも有効です。
いかがでしたでしょうか?
今回は、運用に関する具体的な部分についての説明を行ったので、イメージがつかみにくいところもあったかもしれません。
しかし、今回の内容は実際に運用を継続する上で、細かいけれども重要なポイントを詰め込んでみたつもりです。実際の運用直前や、メールマーケティングを始めてみて、どうにも運用が大変だなとかミスが出やすいと感じたときには振り返ってみてください。
次回の記事では、メールマーケティングを実施する上で、あるいはよりレベルの高いメールマーケティングを実施していくために避けては通れない【セグメント配信】についてお送りする予定です。
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