CRM/SFA 導入事例地域密着調剤薬局がアナログ→kintone→Zoho乗り換え。ケアマネジャーや病院情報の管理だけでなく採用DXで"コストゼロ"を実現。

75歳以上人口が2000万人を超え在宅医療の需要が高まる中、地域医療は全国的な課題となっている。その最前線で人々の病気や健康と向き合う薬局においても、属人化したアナログ業務をDX化する流れが始まっている。
瀬戸内海を望む愛媛県北東部に位置する今治市は人口約14万人を有する県内第二の都市だ。その今治で二代にわたり調剤薬局を営んでいるのが、平野薬局(株式会社平野)だ。今治市内に7店舗を構える平野薬局では、業務アプリツールkintone で行っていた病院やケアマネジャー、大学をはじめとする顧客情報の管理をZoho CRM へとリプレイスした。業務全体のプロセスを管理できるようになっただけでなく、採用においてもZoho CRM からのメール配信を活用して薬学部生と関係を築き”コストゼロ"を実現など、全社的なDXを進めている。
代表取締役社長の松田泰幸氏、導入に携わった総合事務の兒玉千晴氏、導入をサポートした認定パートナー株式会社関西の青山敬三郎氏に話を聞いた。

「Zoho CRM からメールを送信し、プロセスを全て管理できるようになったのは大きな変化です」

平野薬局(株式会社平野) 代表取締役社長
松田泰幸氏

― はじめに平野薬局について教えてください。

松田氏:平野薬局は愛媛県今治市にある調剤薬局です。創業は1980年で、今治市内で7店舗を展開しています。社員数は39人で、そのうち薬剤師が20人、事務員が16人、管理栄養士が3人という構成です。
調剤薬局は医師が書いた処方箋に従い患者様の薬を調剤するのですが、私たちは単に薬をお渡しするのではなく、「健康を提供する」をモットーにさまざまな付加価値を提供しています。
その一環として行っている取り組みが、健康教室や田植え体験といった各種イベントです。地域の方々を対象に、特定のテーマ(例えば「貧血」や「骨粗しょう症」など)について薬剤師による講義を受けてもらった後、管理栄養士と一緒に料理教室を行うなど、体験型の学びを提供しています。他にも、ヨガ教室や健康体操などを薬局内にあるイベントスペースで開催しています。
このように多くの人がイメージするいわゆる“薬局”とは異なる、コミュニティなどの提供を通して地域住民のQOL(生活の質)向上までサポートする新しい薬局を目指しています。

患者、ケアマネ、大学…属性ごとに顧客情報が孤立。採用にも高額なコストが

― 幅広い取り組みは、いわゆる「薬局」とは一線を画す印象です。

松田氏:はい。義父の先代(現、平野啓三会長)は医薬分業の創成期に薬局を立ち上げた、今治における薬局業界のいわばパイオニア的な存在でした。新しいことを取り入れることに積極的な方で、早い時期から環境問題といったテーマを取り入れて地域貢献していこうというビジョンを持っていました。Zoho によるDXもその一環で、常に新しい事に取り組んでいくという姿勢は先代から続いている社風になっています。

― Zoho CRM を導入する前はどのような課題を抱えていましたか?

松田氏:大きな問題は、とにかくアナログだったことです。
もともと電子カルテは薬以外の情報を記録できる仕様ではありません。薬局に関わるさまざまな情報はすべて紙ベースで管理していて、店舗同士の薬の在庫も電話やFAX、時には対面でやりとりしていました。
この状況を打破するべく、2016年に株式会社関西の青山さんのサポートを受けてkintone を導入しました。これにより患者様の情報や在庫の情報、ケアマネジャーの情報などをデータベース化し、どの店舗でも管理できるようになるなど一定の成果は得られました。
しかし、kintone は情報がそれぞれのアプリで孤立していて集計や分析に不向きであるという欠点がありました。また、kintone はユーザインタフェースがすべてのアプリで共通のため、例えば薬剤師が患者様のデータを見たい時も、付き合いのある大学のデータを見たい時も、それぞれ重点的に見たい項目は全く違うのにユーザインタフェースが全て同じだったため、シンプルに使いたい社員にとっては扱いにくかったのです。患者様についても、薬だけでなくケアマネジャーからの情報や薬局側が配慮したい情報が1カ所に分かりやすく集まっているのが理想でした。

情報がデジタル化できた一方、「情報の活用」も問題になりました。ケアマネジャーや病院の担当者のメールアドレスをkintone に登録できても、そこからメールを送ることができず、もどかしい状態でした。
また、特に力を入れたかったのは採用活動です。薬剤師は慢性的な人材不足で、業界では毎年採用するために人材紹介会社に多額の費用を払って採用するような状況です。
私たちは毎年インターンシップという形で大学生を受け入れ、そこでメールアドレスなどの連絡先をもらっていました。ただkintone にはメールマガジン配信機能がないため、本当に地域に貢献したいと考えてくれている学生とうまくつながれていなかったのです。

― kintone から乗り換えて、Zoho CRM を選んだ決め手は何だったのでしょうか?

松田氏:kintone を入れてさまざまな業務をIT化できました。
しかし、分析や外部発信などがスムーズにできないといった問題があるなど、実現・改善できていない業務がたくさんありました。そのことを青山さんへ相談したところ、「それ、Zoho なら全部できます」と言われたのが決め手でした。

青山氏:Zoho はアプリケーションというだけではなく、それを使うビジネスの流れがきちんと設計されています。Zoho は作業フローまでもが自然に理解できるいわば“ビジネスの教科書”で、その点がkintone との決定的な違いです。
たしかにkintone はいろいろなアプリケーションが作れますが、その流れが「本来あるべき姿かどうか」は自分で判断するしかありません。

kintone からZoho CRM へ乗り換え、業務の流れを構築。“0円採用”も実現

― Zoho CRM の導入でどのように課題を解決できましたか?

松田氏:Zoho CRM は取引先管理のような位置づけで、福祉施設のケアマネジャーや関係がある大学の情報を登録しています。Zoho CRM からメールを送信し、プロセスを全て管理できるようになったのは大きな変化です。
採用活動に関しても、Zoho CRM にインターンシップなどで交流した薬学部生の連絡先を登録し、メールマガジンを送るなど彼らとの関係を維持・構築できるようなりました。
こうした顧客情報管理のおかげもあって、当社が主催している田植え体験や料理教室といったイベントの告知もできるようになりました。今では、地方の調剤薬局でありながら新卒社員を継続的に採用できています。

― 特に採用の部分でZoho CRM の導入効果を感じていらっしゃるようですね。

松田氏:はい。当社に限らず薬剤師の採用難は常態化しており、いい人材を確保することは薬局の規模に関わらず多くの薬局に共通するテーマです。
大手薬局は人材紹介会社などを活用して大量に採用することも可能ですが、私は紹介会社を使うことに抵抗があります。なぜなら、それは自分の将来を他人に委ねていると感じるからです。
私はそうではなく、「私はこうしたい」「私はこうなりたい」という明確な意志を持ち、自分で考え、調べ、平野薬局を選んでくれる学生、つまり平野薬局の理念に共感してくれる人とつながりたいのです。
とはいえ就職活動において我々は大学が主催する企業説明会に参加するなど基本的に受け身の立場です。主体は学生にあったのですが、Zoho CRM を導入することで私たちから情報を発信して、それに興味を持った学生とコミュニケーションを図る、という新しい仕組みを構築できつつあります。

青山氏:Zoho CRM に関して言えば、「採用活動のマーケティングツール」という意味合いが強いと思います。薬局なのでマーケティングという呼称が適切ではありませんが、就活生を見込み客ととらえて、彼らに対して平野薬局からアプローチして採用につなげていく、その起点となる顧客情報をZoho CRM で管理し、メール配信などさまざまな施策を先手先手で打っていく、というイメージです。

― 平野薬局ではZoho CRM を含むオールインワンパッケージZoho One をご利用いただいています。主にどのようなアプリケーションを使っていますか?

松田氏:現在、平野薬局ではZoho One を35ユーザーで契約しています。ほとんどの社員が使っている計算です。Zoho CRM 以外では、Zoho Bigin、Zoho Connect、Zoho Cliq、Zoho Recruit などを使っています。
薬局業における顧客は、「患者様」と「その他の取引先」という2つに分けられます。まず、患者様の薬歴…いわゆる電子カルテは機密性が高い上複雑な管理は必要ないため、Zoho Bigin により別枠で管理しています。
その他、患者様以外の、たとえば病院やクリニック、地域医療のケアマネジャー、就職活動を控える学生さんなどさまざまな顧客情報をZoho CRM で管理しています。

平野薬局になんらかの関心を持つ学生、大学教員、地域医療従事者を[見込み客]タブで管理。Web接客ツールであるZoho SalesIQと連携し算出した訪問スコアを通じてイベントの反響や、メルマガでの開封効果、訪問者の行動を見る指標にしている。

青山氏:Zoho Bigin は薬剤師さんが患者様の情報を管理するために利用しています。Zoho CRM を使わないのかと思われるかもしれませんが、薬剤師の日常業務にとってZoho CRM ではオーバースペック気味です。そのため、あえてダウングレードされたZoho Bigin を利用しています。
このようにZohoであれば、薬剤師さんであればZoho Bigin だけを使うように、各ユーザーが自分の使いたいアプリケーションにログインすればいいのですが、kintone の場合それができません。kintone にログインするとすべてのユーザーが同じ画面になってしまい、幅広く使わない人にとっては非常に使いづらいのです。
また、スマホアプリを使ってPC同様に操作できる点(スマートフォン用に最適化されたアプリで同じ操作ができる点も)も、Zoho ならではのメリットだと思います。

― 兒玉さんは愛媛県外からリモートで働かれていますが、どのような点でZoho の効果を感じていますか?

兒玉氏:以前より社内コミュニケーションが図りやすくなりましたね。
kintone を使っていた頃は、相手に連絡して、待って、リアクションがなければまた連絡して…といった具合で何か返答を得るまでに場合によっては1週間かかることもありました。
しかし、Zohoを導入してからは、「あの件はどうなっていますか?」とZoho Cliq でサクサク聞けて、相手からのレスポンスも早い。
一方、kintone は相手が読んだかさえわかりませんし、すべての情報が一斉に表示されるので、「一体、どれから読めばいいの?」とつい立ち往生してしまい、どうしても時間がかかってしまっていました。

青山氏:kintone は画面上にすべての情報が表示されますが、優先順や情報の分類という概念がありません。したがって、放っておくと情報が埋もれていき、どうしても「あとで見返す」というひと手間が必要になってくるのです。
その点、Zoho はリアルタイムコミュニケーションと固定的な情報との連携、分類が非常によくできています。掲示内容はZoho Connect で共有し、リアルタイムコミュニケーションはZoho Cliq で連絡できますからね。

松田氏:そもそも兒玉さんは今治の薬局店舗で働いていましたが、結婚を機に愛媛県外に移住することになりました。その時「できれば平野薬局で仕事を続けたい」と言ってくれて、ちょうどZoho 導入のタイミングでもあったので、リモート社員に挑戦することになりました。会社としても優秀な人材の流出を防ぎ、新たな仕事づくりにもつながることなので、非常にいい効果をもたらしてくれています。

使いながらビジネス全体の流れが学べるZoho は、いわば“人づくりツール”

― 新たなITツールの導入に際して、現場のスタッフの反応はいかがですか?

松田氏:今回のZoho 導入に際しては、いきなり全社員にアカウントを発行するのではなく、7人の若手メンバーが先行する形でスタートさせました。「とにかくやってみよう」といくつかのプロジェクトをZoho を使ってトライアル&エラーで進めてみました。若い人はITリテラシーが高いので試してみることに抵抗が少なく、失敗してもすぐに解決策を見つけ出します。実際に今年の新入社員もその日のうちに「はじめまして、新入社員の〇×です」とZoho Connect に自己紹介を書き込むなど、自発的に活用し始めてくれたのはうれしかったですね。(すぐにみんなから「いいね!」がたくさん!)
今、その7人が各店舗においてZoho の活用を先導してくれています。
もちろん、中には「せっかくkintone に慣れたのにまた変えるの?」という声もありましたが、アナログからデジタル転換したkintone導入時のような混乱はありませんでした。

― 実際に活用されている兒玉さんは、Zohoのどのような点に魅力を感じていますか?

兒玉氏:Zoho はすべてのアプリケーションがつながっているので、たとえば採用の場面でZoho Sites 経由で応募があった場合、その情報がすべてZoho CRM に入り、アラートが採用担当者へ飛び、イベントからもCRMへ飛び…と全部つながっているところが非常に便利ですね。、今後使いこなしていくうちにますます便利に感じるようになると思います。

― 今後のZoho を使って実現したいことや展望を教えてください。

松田氏:薬局にある雑貨の販売など、薬以外の商品管理もZoho CRM でやりたいと考えていますし、Zoho のツールをもっと活用したいと考えています。

平野薬局がZoho を導入した究極の目的は、「人を育てるため」だと考えています。
なぜなら、人の成長なくして会社の成長はありませんし、特に平野薬局のような小さな会社では、社員一人ひとりの成長が会社の成長によりダイレクトにつながるからです。
ですから、人が育つ風土を大切にする会社――これこそが他の薬局との差別化ポイントであり強みだと思います。
誰しも学校を卒業すると学ぶ機会は限られますが、「職場」という人生の多くの時間を過ごす場所に学びがあればもっと成長できる。Zoho はその大きな助けになってくれるもので、単なる業務改善にとどまらない、人材育成のためのものなのです。
こうしたビジョンの下で平野薬局が目指すべき姿は、地域の人々から求められるスモールグッドカンパニーです。そのためには、いかに地域の課題にコミットできるか、患者様個々のパーソナルサービスに徹せられるかが重要になります。
この点についても、“人づくりツール、Zoho ”はとてもマッチしていると感じています。
採用でいえば、人材紹介会社に払うコストを、教育に充てる…というイメージです。
採用1人につき、Zoho 1アカウント数千円。教育費と考えれば決して高くありませんからね。

― Zoho CRMの導入を検討している企業へメッセージをお願いします。

松田氏:薬局の仕事はアナログなものが多いです。しかし、今時代は大きく変わりつつあります。急激な人口減少に伴う、人手不足はあらゆる業界に共通する課題で、そこを補完するのがDXです。
私たちがZohoで 新しい薬局へと生まれ変わろうとしているように、薬局とDXは非常に相性がいいと思います。ですから、ぜひ一歩踏み込んでやってみてほしいですね。取り入れる価値は十分あります。

Zoho Biginで患者情報を管理して、きめ細やかなサービスを提供

“スモールグッドカンパニー”を標榜し、地域に根差した事業を展開する平野薬局。その中心である薬局業を支えているのが、Zoho Bigin だ。平野薬局ではパイプライン上で、利用相談から指示書の手配、利用開始までのフローを管理。たとえば、どの施設にどのような患者が入院しているかといったデータについて、ダッシュボード上で把握が可能になっている。また、一人ひとりの患者の投薬履歴も簡単に追うことができ、事務担当者が残した詳細なメモを活用することで、一つひとつの情報を「症例」として活用できるのが他の薬局と一線を画す大きな強みだ。平野薬局では常時1000件ほどの症例を瞬時に追うことができるようになっており、Zoho Bigin を活用することで今治市内に7つ構える店舗を横断した貴重なナレッジの共有を実現している。

株式会社平野

  • 所在地:愛媛県今治市北宝来町2丁目2-22
  • 業種:調剤薬局
  • 従業員数:39名
  • ビジネス:BtoB、BtoC
  • 事業内容:薬の調剤、販売
  • 設立:1982年
  • URL :https://www.hirano-pharmacy.co.jp

導入支援パートナーについて

株式会社関西

弊社は地域医療の提供から培った独自の作業療法メソッドを用い、個と集団の成長を促進します。企業・組織だけでなく全ての人が豊かになっていくためにテクノロジーを駆使し、その地域全体の成長を応援します。Zoho を活用したビジネス全体のIT構築設計を行い、提供される商品やサービスの品質が向上するように導入支援を行います。また、それらがしっかりと活用出来るためのITトレーニングも実施致します。

1.ツール 2.使う技術 3.人間が考えるアイデアの3つを軸に、遊びの中から人間が成長し育っていくように企業や組織、そこに属する方々の成長を促します。

  • 本社所在地:〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1丁目11番4-1100号
  • 設立:1989年8月17日
  • 従業員数: 7名(連結)
  • 業種:経営コンサルティング、ITトレーニング、DX化支援、飲食(アンテナショップ)
  • パートナー認定: 認定パートナー
  • ビデオ会議対応:
  • 対応地域: 全国
  • 対応サービス: 全サービス
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