第5回「メールマーケティング運用のポイント:セグメント配信編」では、効果的なメールマーケティングを行う上で欠かすことができないセグメント配信について、具体例をいくつか挙げながらご説明しました。
今回の記事では、メールマーケティングを行った結果が実際によかったのか、悪かったのかを検証するために欠かせない、効果測定について、まとめてみました。
一般的に、どのような指標が使われるのか、技術的にどのように指標が測定されているのか、指標をもとにどう判断して次の配信に活かしていくのか、などを学んでいただけます。
本記事で学べること
- メールマーケティングの運用改善にかかせない効果測定
メールマーケティングでよく使われる指標
メールマーケティングの効果を維持し、さらに改善していくためには効果検証が欠かせません。
そして、感覚的ではない効果検証と改善を行うためには、数字を使った現状把握を継続的に行っていく必要があります。
マーケティングでは、この数字のことを指標と呼びますので、聞いたことがある方も多いでしょう。
(指標という言葉は経営分析などでも使われます)
なんとなく難しく感じる「指標」という言葉ですが、何をもって効果が出ているのかを図るための数字ですので、効果を測定する目的さえ決まっていれば、活用する指標を決定することも、指標を計測して、改善策を考えることも、それほど難しいことではありません。
効果検証の第一歩として、まずはメールマーケティングで一般的に使われることが多い、比較的単純な指標をご紹介していきます。
到達率
到達率とは、リストをもとにメールを送って、どの程度の割合がきちんと配信完了したのかを図るための指標で、ほとんどのメール配信サービスなどで取得が可能です。
具体的には、
(配信数―エラー数)/配信数 × 100
という計算式で表されます。
Zoho Campaignsでの配信結果では、上記画像の赤い囲いの中の数字が到達率となっています。
到達率は、メールアドレスが正しく入力されているのか、という基本的なデータの精度にも依存しますが、送信元情報や送信元のメールサーバーが、スパムメールではないと認識されることが重要です。
開封率
開封率とは、送信が完了した配信数に対して、受信した側がメールを開封した率のことです。
見込み客、顧客が送信したメールにどの程度興味を持っているかを図るための指標といえます。
Zoho Campaignsでの配信結果では、上記画像の赤い囲いの中の数字が開封率となっています。
開封率は、いったいどのように取得しているのかと疑問に思う方も多いのですが、一般的には、HTML形式でメールを配信し、そのHTMLメール中に、1px(ピクセル)程度の極小の透明な画像を入れ込んでおき、その画像が読み込まれたら開封と判断するという仕組みとなっています。
メール配信サービス側で、送信先ごとに識別できる情報も付与されているため、誰が、いつ開封したのかなどの細かい数字も追うことが可能です。
顧客の関心度合いを把握できる開封率ですが、HTML形式のメールが前提条件であるため、メール配信にHTML形式が使えない、顧客の多くがHTML形式の受信を行っていない場合などは、測定ができない、あるいは測定結果が信頼できないため、あくまで参考数値であることを意識しておく必要があるでしょう。
クリック率(遷移率)
クリック率とは、送信が完了した配信数に対して、受信した側がメール本文に記載されたURLをクリックした率のことです。また、配信完了数ではなく、開封した数に対するクリック率を指標とすることもあります。
クリックという顧客行動をベースとして計測するため、顧客のより深い関心度合いを図るための指標といえます。
Zoho Campaignsでの配信結果では、上記画像の赤い囲いの中の数字が配信完了数に対するクリック率、青い囲いの中の数字が、開封数に対するクリック率となっています。
クリック数は、URLに直接遷移するでのはなく、いったんメール配信サービスで管理している測定用のURLに遷移し、その後遷移させたいURLに遷移しなおす(リダイレクト)ことで、計測できます。
クリック率は、その仕組み上、開封率とは異なり、顧客側の環境に依存せず、ほぼ正しい数字が計測可能ですし、HTMLメールでの配信も必須ではありません。
ただし、テキストメールの場合、URLが一般的なものより長く複雑な文字列となるため、ぱっと見で、「これクリックして大丈夫かな?」と思われるようなものとなり、クリック率が低下する要因になりえます。
可能であれば、HTMLメールでの配信とするのがおすすめです。
代表的な指標を3つほど説明しましたが、その他に、登録解除の率を表す解除率(配信停止率)、顧客の行動を促すためのメールの場合には、メールだけでは測定が難しい購入率なども計測して、改善に活かしていくことになります。
指標を計測した後の改善アクション
当たり前ですが、効果測定は測定するだけでは終わりません。
重要なのは、測定した結果を元に具体的な改善アクションを行うことです。
指標はメール配信サービスなどが自動で測定してくれますが、改善のアクションは自分の頭で考えて行動しなければなりません。
例えば、開封率が低下している場合に、具体的にどこをどのように変えればよいのかというのは、意外と難しい問題です。
ここからはいくつかのポイントをご紹介していきます。
開封率が低下、そのときどうする?
開封率は、顧客の利用環境などを置いておくと、短期的には送ったメールの「送信者情報」「件名」「配信曜日」「配信時間」などに依存します。
顧客の興味を引く件名になっていない、送信者情報にも件名にも会社名が入っていて、件名の一番見てほしい情報が、スマホではほとんど見えていないといった問題が起こっている可能性があります。
また、メールを受信する側は多くのメールを受信しており、業務上必ず見なければならないようなメールでない限り、忙しい時に受信したメールは後回しにされて、そのまま埋もれてしまう可能性があります。
どのような件名や配信時間がよいのかは、いろいろと試してみるしかありませんので、いろいろと試して、実際の数字を眺めながら適切な内容や時間帯を探っていきましょう。
先ほど短期的には、と書きましたが、長期的にはやはりメールの内容が見込み客・顧客にとって興味がある、役に立つ内容であるかに依存します。
どんなに興味の引く件名にしても、中身が伴っていなければ、顧客の興味を引き続けることは困難です。
メールの送信先の見込み客・顧客がどんな情報を欲しているのかをじっくり考えて長期的な戦略を練りましょう。
クリック率が低下、そのときどうする?
クリック率は、短期的には、「リンクのある場所」「誘導文」などに依存します。
リンクのある場所などはイメージがつきづらいかもしれませんが、同じURLをメール本文に記載しても、場所によってクリック率が異なることがほとんどです。
例えばメールマガジンの一番よく読まれる内容(メインコンテンツ)の前にURLを記載した場合、メインコンテンツを読みたい読者がほとんどの場合には、メインコンテンツ前に記載されているURLは無視されることが多くなります。
ただし、メールの後半にURLを記述した場合、そこまで到達しない読者がほとんどの場合には、存在すら気づかれませんので、クリック率が低下します。
このようなことを防ぐために、特に誘導を行いたいURLは、冒頭部分と下部の両方に記載し、本文を挟み込むサンドイッチ方式をとるというのが、一つの考え方です。
このサンドイッチ方式はあくまでテクニックの一つであり、あまりテクニックに走りすぎると読者に見透かされることもありますので、使うタイミングなどには注意が必要です。
もう一方の「誘導文」についてですが、URLをクリックしてもらうということは、その先のページに遷移してもらい、より詳しい情報を見てもらうとか、セミナー申込などのアクションを促すことを目的としています。
つまり、その先にどんな情報があるのか、読者にとって、その先の情報を読むことでどんなメリットがあるのかを分かりやすく記載することで、クリック率が上がる可能性がありその誘導するための文章を誘導文などと呼びます。
この誘導文をしっかり考えずに、単なる紹介を行っても読者の注意を引くことはできません。
しっかりと読者をイメージして、どのような紹介を行えばクリックしたくなるのかを考えて誘導文を書いてみましょう。
他にもリンクを目立ちづらいテキストリンクではなく、ボタン形式にするなどわかりやすくリンクであることを明示するといったことも場合によっては必要です。
改善は中長期の視点をもって行う
ここまでで一般的な指標や計測後のアクションの例を説明してきましたが、メールマーケティングの改善を行うには、各メールの配信内容だけでなく、長期的な傾向を意識することが重要です。
1通1通のメールは、送ったタイミングなどによって、本来得られるはずだった効果がたまたま得られないなどの運の要素も必ず持っています。
ですので、ある1通のメールの開封率が低下したからといって、慌てて改善を行うと、場合によっては改善ではなく、改悪になってしまう可能性もあるのです。
つまり重要なのは、メールマーケティングの定石などはしっかり押さえたうえで、短期的な成果と長期的な成果を計測し続け、全体の傾向を見ながら対策を行っていくことといえます。
ここで問題となるのが、メール配信サービスのレポーティング機能です。
多くのメール配信サービスでは、1通のメールに指標を計測して、それをレポートする機能を持っていますが、複数のメールの指標を長期的に横並びにしてレポートできる機能は持っていないことが多いようです。
Zoho Campaignsでも、3通のメールの比較までは以下の図のようにできますが、4通以上の比較は現時点では残念ながらできません。
そこで、長期的な傾向を把握するような場合には、自前でレポーティングする仕組みを用意する必要があります。
一番簡単なのは、Excelで各メールの指標を入力してグラフなどで視覚化することです。
もちろんBIツールなどを使ってまとめる形でも構いませんが、まずはExcelの機能で十分でしょう。
今回は、Zoho Campaigns、あるいは他のメール配信の仕組みでも使えるメールマーケティング効果測定用のExcelテンプレートを用意してみました。
データ入力シートに必要なデータを入れていくと、データが集計される簡単な仕組みになっていますので、ぜひ活用してみてください。下記よりダウンロードできます。
いかがでしたでしょうか?
今回は、メールマーケティングを改善していくために必要な効果検証を行うための基礎的な内容を解説してみました。
次回の記事では、いよいよメールマーケティングを開始する際に、顧客リストの整備や最初のメールでどんな内容を送るべきなのかといった初めの一歩を踏み出すためのシナリオについてまとめる予定です。
【連載記事】 営業担当者でも運用できるZohoメールマーケティング実践法(全8回)
セミナーのご案内
序章+8回の連載で、中小企業でも実践できる、営業担当者でも実践できる「メールマーケティング」についてまとめています。
連載記事では、「なんとなくわかったけど、実践するのはちょっと難しいよね」といったことにならないように、できるだけ具体的な話を入れ込んでいます。
それでも、マーケティング活動を行ったことがない、クラウドサービスを使ったことがないような場合には、なかなか一歩が踏み出せないことも多いでしょう。
ゾーホージャパンでは、そのような「これから顧客データを活かしてメールマーケティングを実践したいけど、どうすればよいかわからない」という方を対象とした、CRMやメールマーケティングの第一歩を踏み出すためのウェビナーを多数開催しています。
メールマーケティングを実践してみたいとか、顧客データを活用するためにCRMを導入したいと思ったら、ぜひウェビナーに参加してみてください。