営業プロセスには、リードの認定、顧客の獲得、取引の検討、製品の納品、作業指示書の作成など、さまざまな活動が含まれます。これらのプロセスは、各ステップを適切な順序で実行しなければ完了できません。例えば、作業指示書を提出するには、ジョブステータスや請求書の日付が必要です。また、リードを「興味なし」とマークする前には、2回のフォローアップメールを送信し、電話をかける必要があります。
これらの営業プロセスには一定のルールが必要です。このルールは、何をすべきか、いつ実行すべきか、どのように行うべきかを明確にし、プロセスの効率を向上させる手助けをします。これにより、営業活動を進める際の混乱を防ぎ、成果を上げやすくするのです。
セールス・ケイデンスとは何か?
セールス・ケイデンスとは、営業活動を効果的に進めるための「ルールブック」や「手順書」のようなものです。営業担当者が特定の目標を達成するために実施すべきアクションを、順序立てて定義しています。具体的には、送信すべきメール、送付する請求書、マネージャーに承認を求めるタイミングなどの詳細が含まれています。これにより、営業担当者はそのプロセスをしっかりと理解し、効率的に従うことが可能になります。
言い換えれば、セールス・ケイデンスは「営業活動の地図」と言えるでしょう。
セールス・ケイデンスの構築方法
セールス・ケイデンスを構築する前に、マネージャーはプロセスをしっかりと見直し、無駄なアクションを排除することが重要です。
ケイデンスを設定する際には、どのアクションが効果的で、どれがそうでないかをしっかりと検証します。例えば、1日に何度もフォローアップのEメールを送ることがリードとの連絡に効果がない場合、代わりに電話をかける方が効果的であると判明すれば、Eメールを電話に置き換えるといった変更を行います。
御社に最適なケイデンスは、御社の営業モデルに依存します。
シンプルなセールス・ケイデンス
営業サイクルが短く、取引額が少ない場合や意思決定者が少数の場合、これは「トランザクション型営業モデル」に該当します。
この場合のケイデンスは、販売完了までのタッチポイント(顧客との接点)が少なく、比較的シンプルなものとなります。
この場合のセールス・ケイデンスでは、「いつEメールを送るべきか」、「どのEメールテンプレートを使用すべきか」、「使用すべきコールスクリプトは何か」といった詳細を指示します。また、各ステージが終わる前に必要な活動をすべて完了させたかを確認するためのチェックリストを提供することもできます。これにより、営業活動が体系的に進められ、営業プロセスが確実に実行されるようサポートできます。
#1. インバウンド・リードに対する営業プロセス
すでにあなたのビジネスに興味を示しているリードや、過去にコンタクトを取ったことがあるリードは、比較的関係構築しやすい存在です。彼らはあなたのブランドを知っているため、電話をかけたり、メールを送ったり、SNSでつながったりすることが容易です。このような場合、連絡の頻度は、相手が「連絡しないでほしい」と明確に伝えない限り、通常1~2日おきに行うのが一般的です。以下は、このような状況におけるセールス・ケイデンスの一例です。
1日目 - 挨拶のメールを送信し、SNSでつながる。
2日目 - 電話をかけて、アポイントを取ろうと試みる。
3日目 - 待機中。
4日目 - フォローアップメールを送信し、再度電話をかける。
5日目、6日目 - 待機中。
7日目 - まだ興味があるかどうかを電話で確認する。
8日目 - 返答がない場合は、最後の連絡を取り、案件をクローズします。
このような流れで、相手の反応を見ながら適切なタイミングで連絡を取ることが可能です。
#2. アウトバウンド・リードに対する営業プロセス
新規リードの場合、営業担当者は詳細なやり取りに入る前に、まずそのリードの関心度を評価する必要があります。そのため、最初に送るメールを工夫し、その後の連絡はリードを圧倒しないように適切なペースで続けることが重要です。
以下は、アウトバウンド・リードにおける判断プロセスの一例です。
1日目 - 自己紹介とビジネス紹介のメールを送信する。
2日目 - 電話で送信したメールが届いているか確認し、アポイントを取る。
5日目 - ソーシャルメディアでつながり、その後、電話でその他の詳細を収集しました。
9日目 - 「まだご連絡はありませんか?」というフォローアップのメールを送信しました。
12日目 - 電話をかける。
14日目 - 再度フォローアップのメールと電話を行います。
15日目 - ソーシャルメディアでリードが活発であれば、ツイートを投稿する。
16日目 - 興味があるかどうかを電話で確認する。
18日目 - 最後に「今後ともよろしくお願いいたします」といったメールを送り、連絡を中断します。
このプロセスを通じて、リードがどの段階で反応を示し、どのタイミングで次のステップに進むかをしっかりと見極めることが重要です。
分岐型セールス・ケイデンス
#1. 大企業との取引
営業サイクルが長く、取引金額が高い場合や、意思決定者が5〜6人以上いる場合には、「リレーショナル・セールス・モデル」を採用することが一般的です。特に大企業の営業プロセスでは、営業担当者が顧客との信頼関係を強化することに重点を置くため、営業サイクルは長期化し、タッチポイントも増加します。
このような大規模な組織との取引は、担当者が顧客との関係構築に多くの時間を費やさなければならないため、時間がかかる傾向があります。営業活動は、電話やEメールへの反応によって次に取るべきアクションが異なります。マネージャーはこのプロセスを分析し、さまざまな経路に対応できるように複数の分岐を持つセールス・ケイデンスを作成します。
例えば、電話やEメールに対する反応を基に、次のアクションをどのように変更すべきかを決定します。反応が良ければ、さらに深く掘り下げてアプローチを続け、反応が薄ければ、フォローアップの方法を変更するか、別のアプローチを試みることになります。
下の画像は、Zoho CRMのブループリント機能を使用して作成した分岐型セールス・ケイデンスのサンプルです。ブループリント機能を活用することで、営業チームは各段階でどのようなアクションを取るべきかを一目で把握し、最適な営業戦略を実行することができます。

#2. ECビジネスにおける商品販売
ECにおける商品販売の成功には、魅力的な商品ページの作成、効果的なマーケティング戦略の実施、顧客サービスの向上が不可欠です。また、在庫管理や配送の効率化も重要なポイントです。これらの要素を総合的に考慮することで、ECビジネスの競争力は高まります。
ECにおいては、顧客の行動や反応に応じてさまざまな流れが考えられます。
・Webサイト訪問から商品配送まで:
ECにおける商品の販売は、顧客がWebサイトを訪れ、商品に興味を示し、商品をカートに入れ、注文を確定し、支払いを済ませ、最終的に注文が発送されるという一連のプロセスから成り立っています。この流れをできるだけスムーズにすることで、顧客は商品を受け取り、取引が完了します。
・注文途中での中断:
顧客が販売プロセスの途中で離脱したり、注文を中断したりする場合、別の流れが発生します。例えば、顧客が商品をカートに入れたまま放置したり、注文はしたものの支払いを行わなかったり、購入せずにWebサイトを離れたりすることがあります。このような場合、企業は顧客を逃さないように対策を講じる必要があります。具体的には、カートに残っている商品を思い出させるリマインダーメールを送信したり、支払い手続きを促したり、取引を続ける意思があるかを確認するために電話をかけたりすることが考えられます。
・返品対応:
顧客が商品を返品した場合、返品に関する別のプロセスが発生します。このフローでは、販売チームが返品処理を行い、返金や商品の受け取りに関する対応を行います。
上記の各アクティビティは、それぞれ異なるチームが担当することが一般的です。例えば、支払いを担当するチーム、返品を担当するチーム、カートのリマインダーやフォローアップを行うチームなどがあります。これらのプロセスがスムーズに連携し、適切に進行するためには、各チーム間での調整が不可欠です。

#3. 購買行動終了後のコミュニケーション
購買行動が終了した後のコミュニケーションは、顧客との関係を深め、リピート購入やロイヤルティを促進するために非常に重要です。この段階では、顧客のフィードバックを収集し、今後のサービス向上に役立てることが求められます。
まず、顧客に対して感謝の意を示すことが大切です。購入後のフォローアップメールやメッセージを通じて、顧客が選んでくれたことへの感謝を伝えましょう。また、顧客の体験についてのアンケートを実施し、意見や感想を聞くことで、今後の改善点を見つけることができます。
さらに、購買行動終了後のコミュニケーションでは、特別なオファーやプロモーションを提供することも効果的です。これにより、顧客の再訪を促し、ブランドへのロイヤルティを高めることができます。
最後に、顧客との関係を維持するために、定期的な情報提供やニュースレターの配信を行うことも重要です。これにより、顧客はブランドとのつながりを感じ、次回の購入を検討する際に思い出してもらいやすくなります。
このように、購買行動終了後のコミュニケーションは、顧客との長期的な関係構築に欠かせない要素です。
これらのプロセスが円滑に進むためには、部門間での情報共有が重要です。たとえば、保険業者の場合、クレームが発生した際には、クレームの状況や交換費用などの詳細が迅速に収集され、顧客にタイムリーに共有される必要があります。このような調整が行われることで、顧客は安心感を得ることができ、より良い関係を築くことが可能になります。
ケイデンスは、部門間のコミュニケーションギャップを埋める役割を果たします。たとえば、クレームの要請があるたびに必要な情報を自動的に収集し、ベンダーと連絡を取り、顧客に進捗状況をタイムリーに伝えることができます。これにより、各段階で顧客に通知を送り、タイムラインやその他の重要な詳細を的確に伝えることが可能となります。

セールス・ケイデンスはビジネスプロセスをより効率的かつ組織的にする役割を果たします。セールス・ケイデンスにより、チームメンバー全員が各顧客に合わせた綿密に設計された営業プロセスに従うことができ、案件が進行中に取りこぼされることなく管理されます。
また、営業チームは顧客の反応をより正確に把握し、そのフィードバックを基にアプローチを改善・洗練することが可能です。