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ウェビナーとは
ウェビナー(Webinar)とは「ウェブ(Web)」と「セミナー(Seminar)」かけ合わせた造語で、オンライン上で開催するセミナーのことを指します。オンラインセミナーやWebセミナーとも呼ばれます。
ウェビナーはZoomなどのオンライン会議ツールや動画配信ツールなどを用いて開催します。
開催する企業にとっては、開催地に影響されなくなるので、これまで開拓できていなかった顧客層にアプローチをかけるチャンスになります。主に「新規リードの獲得(リードジェネレーション)」や「リードの育成(リードナーチャリング)」を目的として多くの企業に活用されています。
参加者はにとって、インターネット環境さえあればパソコンやスマートフォンなどを使ってどこにいても視聴できます。参加者はカメラをオフにして視聴できるので、オフラインのイベントよりも気軽に参加できます。
ウェビナーとオフラインセミナーの違い
従来のオフラインセミナーとウェビナーの違いをまとめてみました。
比較点 | ウェビナー | オフラインセミナー |
形式 | オンライン | 会場で対面形式 |
コスト | ツール利用料 | 会場費、人件費、交通費、備品代、搬入費用など |
会場 | オンライン | 場所の手配・準備が必要 |
スタッフ | 講師(司会、アシスタント) | 講師、受付、営業、案内係など |
参加可能人数 | ツールの上限に依存 | 会場の広さに依存 |
参加方法 | ネット環境があれば参加可能 | 会場まで足を運ぶ |
コミュニケーション | チャット、質問機能など | 直接会話できる |
ウェビナーは、コストを抑えられ、参加のハードルが低いですが、ネット環境ならではの難点があり、コミュニケーションにも工夫が必要です。
対して、オフラインのセミナーは費用や日程調整、遠方の参加者を期待できないのは欠点ですが、双方向のコミュニケーションを取りやすいので講師と参加者の関係を構築しやすい点、配布物の利用しやすさなどオフラインならではのメリットもあります。
ウェビナーのメリット
開催場所・日時の制約がない
ウェビナーは、開催場所・日時の制約がありません。最大のメリットはここにあります。
オフラインの場合、開催場所や日時によって参加することが不可能な人も多くいます。
ウェビナーは遠隔地にも配信が可能のため、地方や海外にいる人でもインターネット環境さえあれば参加してもらえます。
また、録画機能を利用すれば、当日都合がつかない人も配信によって視聴してもらえます。
開催場所と日時の制約がなくなることで、集客できる範囲が大きく広がります。
会場の都合を考慮する必要がないので大規模なイベントも開催しやすい点もメリットです。
コストが低い
オフラインのセミナーに比べて費用がほとんどかからない点もメリットです。
ウェビナーの費用は、配信ツールの費用の他には講師と司会・アシスタントの人件費のみです。
オフラインでは、会場を抑えてセッティングし、当日の受付や案内係なども配置しなければならないので、会場費、人件費、交通費、備品代、搬入費用などさまざまなコストがかかります。
参加のハードルが低い
オンライン開催は、参加者にとってメリットが大きいです。
会場までの交通費や移動時間がかかりませんし、移動中や食事中、育児中でも参加できます。
また、席によってステージが見にくいということもないですし、都合によって途中で退室することもできます。
オフラインではセミナーのために半日~1日予定を空けなければいけないことも多いので、ウェビナーは圧倒的に参加しやすいイベントといえます。
ウェビナーのデメリットと対応策
セミナーの質が機器や通信環境に左右されやすい
ウェビナー開催における最大のデメリットともいえるのが、配信トラブルのリスクです。
ウェビナーは、配信者・参加者それぞれが利用する機器や通信環境によってどうしても音声や画質に影響が出てしまいます。
オンライン開催である以上避けては通れない問題ですので、配信までにできる限りの対策を取っておきましょう。
主な対策としては「配信環境を整える」「推奨環境を設定して告知する」「録画して後日配信する」の3つです。
配信環境を整える
参加者側の機器や通信環境によるトラブルはどうすることもできませんが、配信側が原因のトラブルは事前準備で防ぐことができます。
後ほど解説する配信に必要なツールを用意するほか、事前にリハーサルをして機材や通信状況に問題がないか、参加者が集まった状態でも配信が止まったりしないかを確認しておきましょう。
推奨環境を設定して告知する
配信と視聴にどの程度の環境が必要かを調べて推奨環境を設定します。
事前の案内で推奨環境を告知して参加者側が原因のトラブルを減らす目的のほか、ウェビナー当日の対応の基準にもなります。
録画して後日配信する
ウェビナーの内容を録画して配信することで、当日に機材や通信状況によって講演を見られなかった参加者に対応するという手もあります。
録画配信に耐えうる品質にする、という手間はありますが、当日に都合がつかなかった人への対応にもなりますので可能ならば実施しておきたい対策です。
参加者の反応が見えにくく途中離脱されやすい
オンラインならではの欠点として、参加者の反応が分かりにくい点があります。
多くの場合ウェビナーの参加者は、カメラ・マイクをオフの状態で参加します。
講演者が参加者の反応を知るには、チャットでの質問を促すか、挙手や投票・アンケート機能を使うほかありません。
参加者の反応を見て話す内容を変えるといったことができないので、一方的な情報発信になりがちです。
オンラインでのセミナーになぜか集中できないという人の原因はここにあります。
Faber Companyの「Webマーケター100名超を対象に"ウェビナー"の意識調査を実施調査」によると、受講者の半分が流し見という回答でした。
かつてのオフラインのセミナーは途中で退室すると目立つので、参加者が途中離脱することはめったにありませんでした。しかし、ウェビナーは途中で抜けても講演者の目につきにくいため途中離脱する参加者も多いです。
離脱率を抑えるには最初の20分がカギ
株式会社トップランナーマーケティングの「ウェビナーに関する意識調査」では、60分間のウェビナーでは55.9%が開始20分以内に視聴し続けるか否かを判断していることが分かっています。
ウェビナーでは、この20分間で魅力的な講演だと思わせなければなりません。
そのためには有益な情報を提供するほか、参加者とコミュニケーションをとることが有効です。
参加者とコミュニケーションをするために、チャット、挙手や投票・アンケート機能を活用するのですが、使い方にはコツがあります。
まず「チャットを入力する」という行為はある程度ハードルが高いので、ただ「質問はありませんか?」と話しかけてもよほど意欲的な方しか反応してくれません。
ポイントとしては「挙手や投票機能を使う」「参加者も結果が気になることを聞く」の2点です。
例えば、「人材採用をテーマにしたセミナー」で「採用ポータルサイトを活用しているか」について質問してその普及率を参加者とともに確認するといった具合です。
ウェビナー開催までの手順
1.目的・テーマを決める
まずはウェビナーを開催する目的を明確にします。
社外に向けて開催する場合、目的は「新規リードの獲得(リードジェネレーション)」や「リードの育成(リードナーチャリング)」になることが多いです。
この場合KPI(重要業績評価指標)としては「予約者数」「受講後の商談化率や受注率」などを設定します。
KPIは予算や人的リソースを考慮してできるだけ、具体的な数値を設定します。
2.開催形式を決める
ウェビナーの開催形式は「リアルタイム配信(ライブ配信)」と「録画配信(オンデマンド配信)」の2つがあります。
リアルタイム配信は、決められた時間にセミナーを開催して生放送で配信する方法で、チャットのなどでの質問に反応するといったコミュニケーションが可能です。
ライブ感を出せるので、オフラインのセミナーを同じ雰囲気で開催したい場合に使われます。
録画配信は、主催者があらかじめ録画したセミナー動画を配信する方法で、やり直しや編集が可能なので、講演のハードルは低くなりますし、機材や通信トラブルのリスクを下げることができます。
一時停止したり繰り返し同じ個所を視聴したりできるので、資格取得のための学習コンテンツなどでよく使用します。
3.ツール・機材を選ぶ
配信形式を決めたら、そのためのツールを選びます。
ツールは、チャットやアンケート機能、録画機能、最大接続数、サポート体制などを考慮して選びます。
リアルタイム配信をする場合は、チャットやアンケート機能がないと意味がありませんし、録画配信には録画機能や過去の動画を保存しておく機能が必要です。
ウェビナーを開催するためのツール
ツール名 | 特徴 |
Zoom | 人数上限:10,000人 その他:Web会議用のツールだが、ウェビナーツールとしても有用。 |
V-CUBEセミナー | 人数上限:10,000人 その他:配信時の画面構成をカスタマイズする機能、アンケート収集機能などを搭載。 |
コクリポ(Cocripo) | 人数上限:100人 その他:ウェビナーに特化したツールで参加も配信も容易に行える。 |
Qumu(クム) | 人数上限:10,000人 その他:動画の編集機能や視聴者の受講状況も確認機能を搭載。 |
Microsoft Teams | 人数上限:5,000人 その他:配信時の画面構成をカスタマイズする機能、アンケート収集機能などを搭載。 |
YoutubeLive | 人数上限:10,000人 その他:YouTubeのライブ配信機能。Zoomと組み合わせて定員を気にせずウェビナーを開催できる。 |
Zoho Meeting | 人数上限:100人〜 |
ウェビナー開催に必要な機材
ウェビナー開催に必要な機材は「PC」「マイク」「カメラ」の3つです。加えて可能ならば「有線接続」できるような環境を用意しましょう。
機材 | 選び方 |
PC | ※Zoom推奨要件 |
インターネット接続 | 有線接続を推奨。 |
マイク | 単一指向性のものが望ましい。 |
カメラ | PC付属のカメラで良い。 |
PCの要件はオフィスで使っているものならば、ほとんどの場合この水準は上回っています。
ウェビナーを開催するにあたって機材にこだわるなら、まずマイクを買うのがおすすめです。
配信していると気付きにくいですが、PCやエアコンの稼働音、周囲の人の話し声はノイズとして配信されてしまうことがあります。
「単一指向性」という特定の方向の音のみを拾うものを選択するとこうした雑音が入りづらくなりますのでおすすめです。
おすすめのマイク
https://row.hyperx.com/ja/products/hyperx-solocast-usb-microphone?variant=40916449558733
カメラはPCに付属のもので問題ありません。
画質に関しては、「Zoom」や「Meet」の送信可能なビデオの画質は720p(HD)、「Teams」は1080p(フルHD)まです。フレームレートに関しても 「Zoom」「Meet」「Teams」は最大30fpsまでしか対応していませんので、新たに用意する場合でもそれ以上のものを用意する必要はあまりありません。
ただ、複数人での講演を予定している場合は、画角が広い100~120度程度の製品を選びましょう。
一人用でおすすめのWebカメラ
https://www.logicool.co.jp/ja-jp/products/webcams/c922n-pro-stream-webcam.960-001262.html
二人用でおすすめのWebカメラ
https://direct.sanwa.co.jp/ItemPage/CMS-V53BK
4.スタッフ・配信場所を確保する
ウェビナー開催に向けて講師の確保、司会進行や参加者対応をする要員、通信トラブル等が発生した際に対応するスタッフを配置します。
ウェビナーの規模によってはすべて講師が担当する場合もあれば、スタッフ対応のスタッフを複数用意する場合もあります。
初めて開催する際は、予期せぬトラブルも多く発生しますので人員を多めに確保しておいた方が用でしょう。
また、配信する場所も用意する必要があります。
会議室やレンタルスタジオなどで問題ありませんが、できるだけインターネット接続が安定しており、背景に余計なものが映り込まず、雑音が入らない部屋を選びましょう。
5.集客を始める
認知度の低い企業やサービスがウェビナーを実施する場合、課題となりやすいのが集客です。主な集客チャネルとしては以下のようなものがあります。
- 自社HP
- SNS
- メール配信
- セミナー情報サイトへの掲載
- SNS広告
- リスティング広告
- バナー広告
- プレスリリース配信
ウェビナー集客にあたってはさまざまなチャネルを並行して活用すべきですが、悩んだ際はまずは自社のリードリストに対するメール配信から取り組むのがおすすめです。
株式会社トップランナーマーケティングの「ウェビナーに関する意識調査」では、「ウェビナー参加きっかけ」で最も多いのは「企業のメルマガ」という結果が出ています。特に開催の目的が「リードの育成(リードナーチャリング)」場合は、メール配信を積極的に活用するようにしましょう。
しかし、ウェビナーの主目的が「新規リードの獲得(リードジェネレーション)」にある場合は、集客チャネルをメール配信だけに頼るわけにはいきません。
そのようなケースでは、他社との共催形式とするのもひとつの手段です。
「事業としては競合しないが、ターゲット層が同一の企業」が共催の候補として最適です。共催には、集客コストが低減されるほか、両企業が保有するリードのリストを自然と交換できる、という見逃せないメリットがあります。
共催ウェビナーの例
ターゲット | 主催 | 共催 | ウェビナーテーマ |
会計・経理担当者 | 会計事務所 | 会計ソフトベンダー | 会計ソフトで効率化する企業会計 |
企業研修担当者 | 研修会社 | eラーニングツールベンダー | リモートワーク時代に求められる人材開発体系とは? |
(スタートアップ企業の)IT担当者 | システム開発会社 | エンジニア人材紹介会社 | 事例に見る、スタートアップ企業におけるシステム開発体制のベストプラクティス |
多くの企業が共催のセミナーを実施しており、リサピーがBtoBの企業ウェビナー担当者100名を対象に実施した調査では 「勤め先でこれまで、単独もしくは共催のどちらのウェビナーを実施してきたか」という質問に対し、83%が「単独ウェビナー」、49%が「共催ウェビナー」を開催してきたと回答しています。
6.ウェビナーを開催する
開催当日は15~30分前には準備を済ませて待機しておきましょう。
本番では、やや明るめの声で話す、表情やボディランゲージは少し大袈裟なくらいに行うよう意識しておきます。
また、今後のウェビナーの改善や方針の見直しのために、終了前に参加者にアンケートの回答を促しましょう。
7.アフターフォローを行う
社外に向けたウェビナーもオフラインのセミナーと同様マーケティング活動の一環として行われますので、参加者は見込み客です。
ウェビナーに参加して興味が増している状態のうちに、メールや電話でフォローを行い商談化・案件化を狙いましょう。営業部門やインサイドセールス部門との連携が重要です。あらかじめフォローアップ用のメールテンプレートやフォロー電話のトークスクリプトを用意しておくことをおすすめします。
8.結果の分析
ウェビナーをマーケティング活動の一環として継続的に行うなら、結果の分析は欠かせません。
ウェビナーを評価する指標としては以下のようなものがあります。
- 予約者数
- 参加率
- 登録獲得単価
- アンケート回答率
- 満足度
- アポイント獲得率
- 成約率
予約者数
予約者数は、開催前の申し込みの数です。
予約者数が少ない原因としては「日時や内容がターゲットと合致していない」「作成したLPやバナーに問題がある」「申込方法が分かりづらい」などが考えられます。
集客段階での改善が必要ですので「メールやイベントのタイトルを工夫する」「メールやページ内容を修正する」「別の集客施策を実施する」などの方法を試してみるとよいでしょう。
参加率
参加率=当日参加者数/予約者数
参加率は予約者数に対しての参加数の割合を意味します。
ウェビナーの参加率は平均で46%といわれています。
出典:「26 Webinar Statistics to Know in 2023」(99Firms社)
できるだけ参加率を上げるための手法としては「リマインドの連絡を行う」「参加しやすい開催日時を設定する」「告知から開催まで間隔を空けすぎない」「参加者特典を用意する」などが考えられます。
登録獲得単価
登録獲得単価=集客時の広告料÷予約者数
登録獲得単価を把握する事で1人当たりの申込に対してどれくらいのコストが発生したかを認識することができます。
ウェビナーへの予約数が良かったとしても広告料がかさんでいれば、広告の配信量を調整しなければなりません。
ウェビナーへの申し込みはすべてが売り上げに繋がるわけではないため、ウェビナー開催にかかった費用、獲得単価に関しては必ず把握しておきましょう。
アンケート回答率
アンケート回答率=アンケート回答数÷参加数
アンケートは今後のウェビナーの改善や方針の見直しのために非常に重要な指標です。
アンケート回答率が低い場合は、ウェビナー開催中にリマインドを複数回行ったり、回答者限定の特典を用意したりして回答率の上昇を図りましょう。
満足度
満足度は、アンケートを通して調査する指標で、ウェビナーに参加することで悩みや課題が解決されたか、新しい気づきや発見があったかなどを確認する指標です。
主催側では上手くできたと思っても、アンケートを確認してみると参加者側には不満があったということもあります。
今後のウェビナーの方針や内容を決める際の判断材料となりますので、アンケート内ではしっかりと満足度を計る設問や感想を記述できる設問を設置しておきましょう。
商談化率
商談化率=商談獲得数÷参加数
商談化率とは、ウェビナーにおける重要な指標です。
どの程度のちの商談に移行、誘導できたかを計算するための指標です。
単にウェビナーを一度開催するだけでは、商談につなげることは難しいので、ウェビナー開催後にしっかりと架電やお礼メールなどで参加者をフォローアップしていきましょう。
成約率
成約率=獲得契約数÷商談化数
成約率は「獲得率」「契約率」ともいわれ、開催後に獲得した商談のうち、どれくらいが成約に至ったのかを示す指標です。
成約率を確認することで、ターゲット設定にズレがなかったか、フォローアップに問題がなかったかなどを把握することができます。
売上
ウェビナーがどれだけの売上につながったかは最も把握すべき数字でしょう。ブランディングやCSR(企業の社会的責任)活動でない限り、ウェビナーは売上につなげる必要があります。時流のテーマでたくさん集客できたとしても、ビジネスにつながっていなければ意味がありません。ROI(投資利益率)を把握する意味でも、売上はしっかりと把握しましょう。