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どう活用するか整理しよう
Excelファイルは表計算ソフトであるため、顧客情報の管理を目的とした細やかな設定やルール決めは自分たちで行う必要があります。そのため、Excelで顧客管理するにあたって、自社でどのように使うかを整理し、その状況に合わせた設定やルール決めが必要になります。5W1Hに分けて、Excelファイルをどう活用するか、整理しましょう。WHAT、WHY、HOWについてはどの組織も同じであるため、WHO(誰が)、WHEN(いつ)、WHERE(どこで)を整理しましょう。
WHO(誰が使う) ※閲覧や変更の制限に関連 | 営業部門のみ or 営業部門以外も含む |
WHEN(いつ使う) ]※同時編集設定に関連 | 特定の時間 or いつでも |
WHERE(どこで使う) ※ファイルの置き場所に関連 | 会社内 or 会社外も含む |
WHAT(何を使う) | 「顧客管理・商談管理テンプレート」のExcelファイル |
WHY(なぜ使う) | 顧客情報の管理が目的 ※営業成績の管理を目的としたダッシュボードの運用については後のレッスンで解説 |
HOW(使い方) | レッスン2で解説済み |
運用に必要な設定やルールを決めよう
Excelファイルをどう活用するか状況を整理できたら、具体的な運用に必要な設定をしたり、ルールを決めたりしましょう。
閲覧や変更の制限
Excelファイルを誰が使うかが整理できたら、状況に合わせて下記の運用を進めましょう。特に、営業部門以外も活用する場合は、営業部門以外の担当者が不要な編集をしてしまわないよう、保護機能などを活用しましょう。
WHO(誰が使う) ※閲覧や変更の制限に関連 | 営業部門のみ or 営業部門以外も含む |
営業部門のみ
- 社内の営業部門のみがアクセスできる共有フォルダなどに配置
- ファイルはパスワードを使用
- パスワードは定期的に更新
- 定期的にバックアップファイルを作成
- 必要に応じて変更の制限やブックを保護
- 情報システム部門の担当者がいれば管理の助言をもらい厳守
営業部門以外も含む
- 社員のみがアクセスできる共有フォルダなどに配置
- ファイルはパスワードを使用
- パスワードは定期的に更新
- 定期的にバックアップファイルを作成
- 変更の制限やブックを保護
- 情報システム部門の担当者がいれば管理の助言をもらい厳守
便利な機能 | 説明 |
読み取りパスワード・書き込みパスワード | 不用意な閲覧や編集を避けるために、Excelファイルにパスワードを設定して関係者以外はExcelを開けないようにする機能です。下記から設定できます。 ファイル>名前を付けて保存>オプション |
ブックの保護 | ユーザーがExcelのワークシートの操作(シートの追加、削除、移動、名前の変更)や、非表示のシートを表示する操作をできないようにする機能です。シートの削除は情報の損失に直結しますので設定しましょう。 校閲>ブックの保護 で設定できます。パスワードは空欄のままでも、保護自体はでき、誤操作は防ぐことができます。ただ、誰でもブックの保護を解除することができるので、意図的な変更は避けられません。 |
シートの保護 | シートの保護はシート内のセルの編集を制限する機能です。シートの保護を有効にしておくことで関係ないセルの編集を防ぎ、データ入力をしてもらうセル以外の編集をできないようにします。設定は、はじめに、編集し続けたいセルのロックを解除する設定をし、その後にシート全体を保護する、という流れです。 例えば、商談管理シートでいうと、E列、F列、H列以外は営業担当者が編集できる必要があるため、それ以外の範囲を選択して右クリック>セルの書式設定>ロックのチェックマークを外して[OK]を押下ます。 その後に、校閲>シートの保護で必要な要素にチェックを入れて[OK]を押下すると設定は完了です。 保護されているセルを編集するとアラートが出て編集できなくなっています。 シートの保護はセルに関わる制限で、ブックの保護は各シートに関する制限です。うまく使い分けましょう。 |
同時編集設定
Excelは、初期設定のままでは複数人が同時に同一ファイルを編集することはできません。ファイルをいつ使うかを整理し、複数人が同時に編集したい場合は「共同編集」または「ブックの共有」の設定をしましょう。
WHEN(いつ使う) ※同時編集設定に関連 | 特定の時間 or いつでも |
特定の時間
- 誰がいつExcelファイルを編集するか、時間割を決定
いつでも
- 「共同編集」または「ブックの共有」を設定
便利な機能 | 説明 |
共同編集 | 共同編集とは、マイクロソフト社のクラウドサービスOne Driveにアップロードした1つのExcelファイルを複数人で編集できる機能です。Microsoft365やExcel2019以降のExcelで使うことができます。 まず、Excelファイル右上の[共有]からOne Driveにファイルをアップロードします。 アップロードした後、同じく[共有]から社内の営業担当者など共有対象者を入力して招待を送信します。 共同編集は便利な一方で、クラウド上にデータがあるためリンクが分かれば閲覧できてしまう、などといったセキュリティのリスクがあります。このため、One Driveに顧客情報をアップロードすること自体を自社で認められているかは情報システム部門や経営陣の判断を仰ぎましょう。 |
ブックの共有 | ブックの共有とは、1つのExcelファイルを複数人で編集できる機能です。Microsoft365はもちろん、Excel2007のような古いバージョンのソフトしか持っていない場合にも使え、クラウド上ではなく社内のサーバーなどに置いておくことができます。ただ、テーブル機能を使っているファイルは共有することができませんので「顧客管理・商談管理テンプレート」を共有する際は、テーブル機能を解除する必要があります。 ブックの共有には、初期設定でが非表示になっている「ブックの共有(レガシ)」をリボンに追加し、そのアイコンをクリックして共有します。 [ファイル]>[オプション]>[Excelのオプション]>[クイックアクセスツールバー] ブックの共有は、テーブルがあると使えないほか、セルの挿入やマクロ作成などブックを共有すると使えなくなる機能もあります。また、保存するまで他の人の編集状況は確認できません。 |
ファイルの置き場所
Excelファイルの置き場所については、前述の同時編集設定にもかかわりますが、会社内で使う場合は社内の関係者のみがアクセスできる自社サーバーとなる場合が多いでしょう。リモートワーク先など会社外を含む場合でも、VPNを経由してアクセスできる場所であったり、組織のOne Drive上であったり、関係者のみがアクセスできる環境に情報システム部門と相談して置くようにしましょう。
WHERE(どこで使う) ※ファイルの置き場所に関連 | 会社内 or 会社外も含む |
データの保護とセキュリティを考えよう
ここまで、随所で「情報システム部門と相談しましょう」と、データの保護とセキュリティに関して専門部署の助言を促してきました。というのも、顧客データは個人情報であり、もし情報が漏洩した場合は企業が社会的信用を失います。
大事なデータをどのように管理するか迷った場合は、国際的な情報セキュリティの規格であるISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)や独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が提供するガイドラインを参考にしてもよいでしょう。
ISMSが定める情報セキュリティの3要素 | |
機密性 | 認められた人だけが情報にアクセスできること |
完全性 | 情報が正確であり、改善や破壊が行われていないこと |
可用性 | 必要なときに情報にアクセスできること |
一般社団法人情報マネジメントシステム認定センターの表を基に作成