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営業クロージングとは?

営業クロージングとは

営業におけるクロージングとは、商談の最終場面で顧客から成約・受注を得るための重要なステップです。ヒアリングから交渉段階では、お互いの条件をすり合わせ、確認します。
その後、クロージングを適切なタイミングで行うことが大切です。クロージングでは、顧客の契約する意思を確認し、成約・受注に結びつけることを目指します。適切なクロージングを行うことで、営業の成功確率が高まります。

クロージングが重要な理由

商談におけるクロージングは、顧客から成約を得るための重要なフェーズです。営業プロセスを通じて顧客のニーズを的確に捉え、最適な提案を行ったとしても、適切なクロージングができなければ失注してしまう可能性もあります。しかし、裏を返せば、適切なクロージングを行うことができれば、成約率の大幅な向上が期待できるとも言えます。このように、クロージングはその質によって、営業の成果を左右するため、クロージングスキルを磨くことは営業成績の向上に繋がります。

営業クロージングの流れ

営業のクロージングは、各ステップで顧客の反応や意思を確認しながら進めることで、スムーズに成約へつなげられます。ますがクロージングの流れを理解しておきましょう。

クロージングの流れ

テストクロージング

テストクロージングとは、商談の途中で顧客の購買意欲や意思を確認する営業テクニックです。顧客に製品やサービスの提案を行った後、その反応を観察します。例えば、「この機能についてどう思われますか?」や「このプランはお客様のニーズに合っていますか?」といった質問を投げかけると良いでしょう。この時に、顧客の反応が良ければクロージングへ進み、悩んでいる場合は、その原因を探り、課題の解決に努めます。このステップでは、顧客の本音を引き出し、商談の方向性を見極めることが重要です。

クロージング

クロージングでは、顧客から契約の意思を引き出すために、明確な問いかけを行います。例えば、「この条件で契約を進めてもよろしいでしょうか?」といった具体的な質問をすることで、顧客に決断を促します。また、多少の条件調整が必要な場合は、「納期については調整可能ですので、ご相談ください」といった形で譲歩することも重要です。曖昧な問いかけは避け、明確に契約の意思を確認しつつ、多少の調整する余地を残しておくことも需要です。これにより、顧客の懸念を解消し、成約に近づけることができます。

契約締結

契約締結のステップでは、これまでの商談で合意した条件を再確認します。特に以下の条件に食い違いがないか入念に確認しましょう。

  • 契約金額:提案した金額が正しいか確認します。
  • 納期:商品やサービスの納品日を明確にします。
  • 納品数:提供する商品やサービスの数量を確認します。
  • 支払い条件:支払い方法と期日を確認します。
  • 保証条件;保証内容や期間を確認します。
  • サービス内容:提供するサービスの詳細を再確認します。

これらの条件を確認し、問題がなければ契約書にサインをします。このタイミングでの確認を怠ると、後々トラブルの原因となる可能性があるため、注意が必要です。例えば、納期の遅れや納品数の間違いが発生すると、顧客との信頼関係に亀裂が生じる可能性があります。

クロージングの前にすべきこと

クロージングを成功させるためには、商談の事前準備が不可欠です。十分な準備があれば、顧客の心理状態を理解し、その場の状況に合わせて柔軟に対応できます。

顧客ニーズや課題を把握

効果的なクロージングを行うためには、顧客のニーズや課題に対する深い理解が欠かせません。ニーズや課題の本質を捉えることで、顧客の心に響く提案が可能になります。その際に役に立つのがBANTです。BANTとは、以下の4つの単語の頭文字を取ったもので、これらの要素を明らかにすることにより、顧客の状況を正確に把握できます。

  • Budget(予算): 顧客の予算を確認します。
  • Authority(決定権): 誰が最終的な決定権を持っているかを確認します。
  • Need(ニーズ): 顧客の具体的なニーズを把握します。
  • Timeframe(導入時期): 導入時期や決定のタイミングを確認します。

BANTを活用することで、顧客のニーズや課題の本質に対する理解を深め、的確な提案を行いましょう。

あらゆる選択肢を想定する

クロージングの前には、あらゆる選択肢を想定しておくことが重要です。顧客から提示される可能性のある条件や質問に対し、適切な回答を用意しておかなければなりません。例えば、「価格交渉」「納期の調整」「追加機能の要望」などが考えられます。顧客からの予期せぬ条件提示や質問に対応できなければ、成約のチャンスを逃してしまう可能性もあります。そうならないためにも、事前に顧客が提示しそうな条件や質問を洗い出し、それぞれに対する回答を準備しておきましょう。

成約後のゴールイメージを共有する

クロージングの前には、成約後のゴールイメージを顧客と共有することが重要です。ゴールイメージとは、導入後の業務改善や成果に関する具体的なイメージです。例えば、以下の点について、数値目標を交えながら話し合いましょう。

  • 作業効率の向上: 導入後にどれだけ効率が上がるか具体的に示します。
  • コスト削減: 導入後のコスト削減効果を説明します。
  • 顧客満足度の上昇: 顧客満足度がどのように向上するかを示します。

また、顧客に成約後のメリットを具体的にイメージしてもらうためには、導入事例や期待される数値といった具体的な成果を示すことが有効です。さらに、充実したアフターフォローをアピールして安心感を与えるのも良いでしょう。これを行うことで、顧客は成約後のポジティブなビジョンを持ちやすくなり、前向きな判断を下しやすくなります。

クロージングを上手に行うコツ

クロージングを成功させるためには、顧客の心理を的確に捉え、適切なテクニックを使い分けることが重要です。顧客の購買意欲・性格・製品の特性などに合わせて、最適なクロージング手法を選択し成約率を上げましょう。

サイレントクロージング

サイレントクロージングとは、沈黙の間を活用したクロージング手法です。顧客が契約するかどうかを悩む場面では沈黙がしばしば起こります。この沈黙は、顧客が製品やサービスの価値を見極めている重要な瞬間です。この時間に、焦ってサービスのアピールや質問をすると逆効果になる可能性があります。顧客が沈黙している間はこちらも沈黙を守り、次に顧客が話し始めたら、その反応に合わせてクロージングを再開します。例えば、「この機能はいかがですか?」と質問した後に沈黙が続いた場合、焦らずに待ちましょう。

引きのクロージング

引きのクロージングとは、あえて購入を勧めない手法で、顧客の購買意欲を高めることに目的とします。特に高額製品や営業慣れしている押しの強いアプローチはかえって逆効果になる場合があります。例えば、「この製品は高額なので、よく検討してから決めてください」と伝えることで、顧客は自分の意思で購入を決断したいと考え、結果的に成約率が上がります。

イエスセットクロージング

イエスセットクロージングとは、本題の前に小さな「イエス」の返事を複数回もらうことで、最終的な成約を得やすくする手法です。人は一度「イエス」と答えた相手に対して、本題でも「イエス」と答える傾向があると言われています。これは心理学に基づいた人間の行動パターンで、「意見を簡単には変えたくない」という心理が働くためです。例えば、「この製品の機能について詳しく説明しましょうか?」などの簡単な質問から始め、「イエス」と答えてもらえる雰囲気を作ります。そうすることで、本題の成約においても、相手が「イエス」と答えやすい流れが作れるのです。

想像させるクロージング

想像させるクロージングとは、顧客に購入後の様子を具体的に想像させることで、購買意欲を高める手法です。具体的なストーリーとして、購入後のメリットを説明します。例えば、「この製品で業務効率が30%向上し、残業時間が週10時間削減できます。結果としてコスト削減と売上増加が期待されます。」などと購入後のメリットを具体的に伝え、顧客にポジティブな未来を想像させます。

選ばせるクロージング

選ばせるクロージングとは、顧客に「買うか買わないか」の二者択一ではなく、「AとBのどちらを選ぶか」という選択肢を与える手法です。例えば、製品やサービスのプランを複数用意し、「Aプランは低コストで、Bプランは追加機能が含まれます。どちらをご希望ですか?」と問いかけます。顧客は自分に合ったプランを選ぶことで、購買意欲が自然に高まります。

クロージング トーク例

クロージングトークは、営業活動のクライマックスともいえる場面で使います。このタイミングでは、顧客の心理的障壁を取り除き、成約へつなげるための言葉選びが重要です。状況に応じて下記のトーク例を活用してみましょう。

サイレントクロージング例

  • 営業:弊社の製品やサービスについて、ご納得いただけて良かったです。それでは、導入に向けて進めたいのですが、ご懸念点などはありますでしょうか?
  • 顧客:少し費用面で懸念があります。
  • 顧客:(考え込む)
  • 営業:(10秒の沈黙)承知しました。弊社では今月ご契約いただいたお客様に限り、初月の利用料金が半額になるキャンペーンを提供しております。
  • 顧客:(考え込む)
  • 営業:(5秒の沈黙)、弊社ではお客様の予算やリソースに合わせて柔軟な導入プランをご提案できます。初期コストを抑え、段階的に機能拡張する方法で無理なく運用できます。具体的な導入プランを改めてご提案しますが、いかがでしょうか?
  • 顧客:(沈黙)わかりました。一度具体的にご提案いただけますか?

このように、質問をした後には沈黙し、顧客の反応を待ちます。沈黙に耐えられず話し始めてしまうと逆効果になるため、顧客が困惑している様子であれば適宜フォローを入れるようにしましょう。

引きのクロージング例

  • 営業:本日はお時間を頂戴しありがとうございました。ご質問はありますか?
  • 顧客:とても魅力的ですが、すぐの契約は決められません。導入費用の負担が大きいと感じています。
  • 営業:おっしゃる通り、弊社製品は高価格帯で費用対効果に悩まれる方も多いです。ご決断が難しければ無理にお勧めしませんが、これまでの実績と導入事例から費用対効果には自信があります。
  • 顧客:費用に見合う価値があるか不安ですが。
  • 営業:ご納得いただいて上で導入されることをお勧めします。他社様と十分に比較していただけたら幸いです。
  • 顧客:わかりました。少し時間をください。
  • 営業:ありがとうございます。長期的には費用以上の価値を提供できると確信しています。追加の質問や相談には随時お答えするので、じっくりご検討ください。気になる点などがありましたら、お気軽にご連絡ください。
  • 顧客:ありがとうございます。

このように、自信を持って行うことが重要で、弱気になると効果がありません。このテクニックは顧客が製品やサービスに魅力を感じていなければ通用しないため、あらかじめ顧客の確度を探る必要があります。

イエスセットクロージング

  • 営業:弊社の製品で、日報作成やレポート作成などの業務の負荷を下げることができそうでしょうか?
  • 顧客:はい、そう思います。
  • 営業:ありがとうございます。日々のルーティン業務が効率化されれば、営業の方は、より営業活動に集中できそうでしょうか?
  • 顧客:そうですね。
  • 営業:長期的に見て、投資対効果が期待できそうでしょうか?
  • 顧客:はい、長期的にメリットがあると思います。
  • 営業:それでは、具体的に製品の導入計画について進めても宜しいでしょうか?
  • 顧客:はい、導入したいと考えています。

このように、簡単な質問で「イエス」と答えてもらうことを繰り返し、最終的な成約への心理的ハードルを下げていきます。質問の内容や順序を適切に設定することが重要で、不自然な流れにならないよう注意が必要です。

想像させるクロージング

  • 営業:弊社製品で時間削減はどのくらい可能でしょうか?
  • 顧客:少なくとも30%は削減できると考えています。
  • 営業:つまり、1日あたり2時間以上、時間を削減できるということですね。
  • 顧客:かなりの時間を他のタスクにあてられそうです。
  • 営業:その時間を使って、新規のお客様の開拓や既存のお客様のフォローアップに取り組めそうですね。
  • 顧客:新たな売上を作るための取り組みができそうです。
  • 営業:ぜひ弊社製品を活用して業務改善と生産性向上にお役立てください。

このように、購入後の具体的なメリットを想像させることで、顧客の購買意欲を高めていきます。製品やサービスの特徴をしっかりと理解し、顧客のニーズに合わせて具体的なストーリーを描くことも重要です。

選ばせるクロージング

  • 営業:弊社には「ベーシック」と「プレミアム」の2プランがあります。どちらにご興味ありますか?
  • 顧客:どちらも魅力的ですが、主な違いは何でしょうか?
  • 営業:「ベーシック」は顧客情報を管理するために必要な基本的な機能を備えております。同業他社と比べても機能に見劣りがなく、コストパフォーマンスが高いです。また「プレミアム」はさらに高度な機能と専任サポートがついた質の高いの高いサービスをご提供しています。
  • 顧客:弊社の現状だと「ベーシックプラン」で十分かもしれません。
  • 営業:それでは、「ベーシックプラン」で見積書を用意させていただきます。
  • 顧客:はい、「ベーシックプラン」でお願いします。

このように、顧客のニーズに合わせて2〜3つの選択肢を提示することで、購入への心理的ハードルを下げられます。「選ばせるクロージング」では、顧客のニーズを的確に捉え、最適な選択肢を提示することがポイントです。

クロージング力をあげるための実践方法

クロージング力を上げるためには、さまざまなテクニックを学ぶだけでなく、顧客の視点に立ち、その場の雰囲気を読み取り、適切なスピード感で対応することが重要です。

ロールプレイングで繰り返し練習する

クロージング力を上げるためには、ロールプレイングを繰り返し、実践的なスキルを身につけることが重要です。クロージングで求められるスキルは、実際の営業シーンで使えるスキルが求められます。机上の学習だけでは限界があり、実際の営業シーンで使えるスキルを訓練によって身につけることが求められます。ロールプレイングでは、同僚や上司とさまざまなシチュエーションを想定して行います。顧客役と営業担当者役を交互に演じ、場面に応じたクロージングを選択します。フィードバック、繰り返し練習することで、スキルを磨きましょう。

テクニックに頼り過ぎない

クロージング力を上げるためには、テクニックに頼り過ぎず、顧客との信頼関係の構築を優先することが重要です。テクニックを機械的に使うと顧客に不信感を与え、逆効果になることがあります。顧客のニーズを真摯に受け止め、誠実な姿勢で対話することで信頼関係を築きましょう。テクニックは対話の補助として活用するに留め、顧客の反応を見ながら柔軟に対応することが必要です。

顧客視点を持つ

クロージング力を上げるためには、顧客の視点に立ち、ニーズを的確に捉えることが重要です。顧客は自身の問題解決や利益につながる提案を求めています。顧客の立場に立って質問を行い、彼らの真のニーズや課題を引き出すことで、効果的な提案が可能になります。そのためには、十分な準備と臨機応変な対応が重要です。顧客視点を持つことは、クロージング力を上げるための基本です。

その場の雰囲気を重要視する

クロージング力を上げるためには、その場の雰囲気を見極め、適切に対応することが鍵となります。商談中に顧客の表情や態度、言葉のニュアンスから心理状態を読み取り、適切なタイミングでクロージングに進むことが求められます。顧客が前向きな反応を示している場合はクロージングに進み、躊躇している場合は追加の情報提供や不安解消を行いましょう。

スピード感を意識する

クロージング力を高めるためには、適切なスピード感を意識することが重要です。クロージングは、タイミングが勝負であり、顧客の購買意欲が高まっているタイミングで、スムーズに成約へ進めることが求められます。商談中に顧客の反応を見ながら、顧客の興味や関心が高まっているタイミングで、具体的な提案を行い、意思決定を促します。ただし、焦り過ぎず、顧客の理解度に合わせたスピード感で進めることが大切です。

知っておくべきクロージングテクニック

イエスバッド法

イエスバッド法とは、イエスバッド法は、営業や交渉において、相手に肯定的な反応を引き出すための手法です。この手法では、顧客に「イエス」と「いいえ」の選択肢を提示し、ポジティブな回答を引き出すことで成約に結び付けます。顧客が最初に「イエス」と答えると、その後の質問や提案にも同じように「イエス」と答えやすくなります。

IFクロージング

IFクロージングとは、商談や交渉において、相手に特定の条件を仮定させることで、成約を促す手法です。この手法では、仮定法を使って顧客に購入意欲を引き出します。例えば、「もし〜ならば、〜しますか?」という形式で、顧客が特定の条件を満たした場合に購入するかどうかを質問します。

松竹梅の法則

松竹梅の法則は、商品やサービスの提案や価格設定において、3つの選択肢を提示する手法です。安価な「松」、中価格帯の「竹」、高価な「梅」の中から、消費者に選択させることで、中間の選択肢が最も選ばれやすいという心理を利用します。これは、安価すぎて信頼性に欠けると感じられる「松」と、高価すぎて手が出しにくい「梅」とのバランスが良いとされるためです。

損失回避の法則

損失回避の法則とは、消費者の意思決定において、損失を最小限に抑えようとする心理的傾向を利用する手法です。この手法では、商品やサービスを購入することで得られる利益よりも、その選択によって失う可能性があるものを避ける傾向が強いと考えられます。そのため、消費者に対して損失を避けることができるという点を強調することで、商品やサービスの魅力を高めることができます。

ドアインザフェイズ

営業業や交渉において、最初の失敗や拒絶を乗り越え、再度チャンスを得ることを指す手法です。営業や交渉は、最初の提案やアプローチが成功しなかった場合でも、その後の対応やアプローチ次第で再度成功する可能性があります。この手法では、失敗や拒絶を受け入れ、その経験を生かして改善し、再度チャンスをつかむことが重要です。粘り強さや柔軟性が求められる手法であり、営業や交渉において成功するための基本的な考え方の一つです。