MQLとは?

MQLとは

MQL(Marketing Qualified Lead)とは、獲得したリードのうち、マーケティング部門が特定の基準に基づいて、案件化する可能性が高いと判断したリードのことを指します。MQLは「ホットリード」とも呼ばれ、単にウェブサイトを訪問したり資料請求を行ったりしたリードとは異なり、製品やサービスに対して高い関心を示し、購入意欲を見せる場合に識別されます。例えば、ウェブサイトの訪問頻度、ホワイトペーパーのダウンロード、ウェビナーへの参加など、マーケティング活動に対する関心が高い場合があります。また、製品やサービスに関して追加の情報を求めたり、価格についてを問い合わせを行ったりする行動が見られる場合にも、その顧客は案件化する可能性が高いと判断されます。

マーケティングチームは、MQLを営業チームに引き渡す前段階として評価し、営業チームはこれをさらに詳細に評価します。そして、購入する可能性が高いと判断した場合、SQL(Sales Qualified Lead)として取り扱います。MQLの主な目的は、営業チームにとって有望なリードを提供し、効率的な営業活動をサポートすることです。

MQLとSQLの違い

MQLに似た言葉として「SQL(Sales Qualified Lead)」があります。SQLとは、マーケティングチームから引き継いだリードのうち、営業チームによって評価され、実際に購入する可能性が高いと判断されたリードのことを指します。SQLは、リードが製品やサービスに対して強い関心を持ち、購入意欲を強く示している段階にあります。例えば、予算や導入時期が明確になっている場合、製品のデモや見積書をリクエストした場合、さらに具体的な値引き交渉を求めた場合など、導入に向けて積極的な行動が見られる場合に、SQLと判断されます。そのため、営業チームは、SQLに対して積極的に商談を進め最終的な契約に至るように活動します。

MQLとSQLの違いは、リードの関心度と購入意欲の段階にあります。MQLは、マーケティング活動を通じて創出され案件化する可能性が高いリードであり、SQLは、高い購入意向を示していると営業チームによって評価されたリードです。この二つのステージを明確に区別し、適切に管理することで、企業は効率的なリードナーチャリングと営業活動を実現し、ビジネスの成長を促進することができます。

MQLの重要性

MQLを定義し、効率的に活用することは、マーケティングと営業の両部門が連携しやすくなり、効率的なリード管理が可能になるため、企業全体の成約率の向上や業績改善につながります。マーケティングと営業それぞれの視点から、MQLの重要性を詳しく見てみましょう。

マーケティングの視点

MQLは、マーケティング活動を通じて案件化する可能性が高いと判断されたリードです。そのため、MQLのデータを分析することで、どの施策やコンテンツが最も効果的かを把握でき、マーケティング戦略を最適化できます。この結果、リソースを効率的に配分し、高いROI(投資対効果)を実現することが可能になります。また、MQLのデータを分析することで、どのような属性や行動が購買意欲の高さにつながるかを把握できます。これにより、今後のマーケティング活動において、より精度の高いターゲティングが可能になり、さらに質の高いリードを創出することができます。さらに、MQLは営業部門にとっても有望なリードです。MQLを定義して営業部に引き渡すことで、両部門が効果的に協力しやすくなり、企業全体の業績が向上に寄与します。

営業の視点

MQLは、マーケティング部門がすでに案件化する可能性が高いと判断されたリードであるため、営業部門はこれらのリードを優先してアプローチすることで、営業活動の効率が大幅に向上します。具体的には、MQLをリスト化して管理することで、営業担当者はアプローチすべきリードの優先順位を明確にすることができます。例えば、営業担当者が一日に多くのリードにアプローチする必要がある場合、MQLへの対応を優先することで効率的に時間とリソースを使うことができます。この結果、無駄な営業活動を減らし、効率的なリード管理が可能になります。

また、MQLに対するアプローチは、一般的なリードに比べて成約率が高いことが多いです。営業担当者が迅速にアプローチし、適切なフォローアップを行うことで、売上目標の達成に大きく貢献します。このように、MQLを活用することで、営業活動全体の効率を向上させることができます。

MQLの判定基準

MQLかどうかを判断するために、「行動情報」「属性情報」「スコアリング」の3つの要素を考慮する必要があります。それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。

行動情報による評価

行動情報は、リードが製品やサービスに興味を持っていることを示す指標です。以下は、代表的な行動情報はです。

WEBサイトの訪問回数

リードが料金ページや製品比較ページ、機能ページなどの特定のページを頻繁に訪問する場合、そのリードは自社サービスに高い興味関心を持っている、もしくは高い課題感を抱えている可能性を示しています。

コンテンツのダウンロード

ホワイトペーパーやeBookなどの資料をダウンロードするリードは、より深い情報を求めていることを示しており、これも自社サービスへの関心度が高いことを意味します。

ウェビナーへの参加

関心度の高いリードは、ウェビナーやセミナーなどのイベントに積極的に参加する傾向があります。

メール開封率、クリック率

自社が送付したマーケティングメールについて、開封されているかやリンクがクリックされているかは、リードの自社サービスへの興味関心度合いを測る重要な指標です。

属性情報による評価

リードの基本的なプロフィール情報を指します。この情報を基に、リードの価値や適合度を評価することができます。具体的な属性情報には以下のようなものがあります。

企業規模

リードが属する企業の規模が大きい場合、その企業は購買力が高く、成約時の単価も高い傾向があります。例えば、大企業のリードは一般的に予算が大きく、より大規模なプロジェクトになる傾向があります。

業界

特定の業界に属するリードは、その業界に特化したソリューションを必要とする場合があります。例えば、医薬品業界のリードは、その業界に特有の規制やニーズに対応した製品やサービスを求めることが多いです。

役職

リードの役職が高い場合、その人物は購買の決裁権や決定権を持っている可能性が高いと判断されます。例えば、CEOや部門長といった役職にあるリードは、最終的な購入決定を下す権限を持っていることが多いです。

地域

地域性の高い製品やサービスを販売する場合、リードが属する地域の市場特性や購買行動が成約に影響を与えるため、地域情報は重要な判断材料となります。例えば、特定の地域でのみ展開しているサービスや、その地域特有のニーズに対応した製品を扱っている場合、地域情報は極めて重要です。

属性情報を総合的に考慮することで、リードの価値や適合度を正確に評価することができ、効率的なリード管理が可能になります。

スコアリングによる評価

スコアリングによる評価は、行動情報および属性情報の各要素に点数を与えることで、リードの価値を総合的に判断する方法です。スコアリングを活用することで、より客観的に「該当のリードがMQLかどうか」を判断することができます。

行動スコア

行動スコアは、リードの行動情報に基づいてスコアを付与し、その興味度を数値化するものです。例えば、製品の機能紹介ページを訪問した場合に10ポイント、ホワイトペーパーやeBookをダウンロードした場合に20ポイントを付与するなど、リードの行動に対して具体的な点数を設定します。これにより、リードがどの程度自社の製品やサービスに関心を持っているかを定量的に評価できます。

属性スコア

属性スコアは、リードの属性情報に基づいてスコアを付与し、その購買力や適合度を数値化します。例えば、企業規模が500名以上の企業の場合に20ポイント、決定権を持つ役職(例えばCXOクラス)であれば50ポイント、部長クラスであれば20ポイントを付与するなど、リードの属性に対しても具体的な点数を設定します。これにより、リードの購買力や組織内での影響力を評価できます。

総合スコア

総合スコアは、行動スコアと属性スコアを合計して計算します。例えば、行動スコアが100ポイントであり、属性スコアが50ポイントの場合、総合スコアは150ポイントとなります。この総合スコアに基づいて、リードがMQLとして評価されるかどうかを判断します。総合スコアが一定の基準を満たしたリードをMQLとして認定し、営業部門に引き渡すことで、より効果的なリード管理が可能になります。

このように、スコアリングによる評価は、リードの行動情報と属性情報を数値化して総合的に判断するため、客観的かつ効率的なMQLの評価が可能となります。

MQLを効果的に創出する方法

MQLを効果的に創出するには、マーケティング部門と営業部門が連携し、それぞれの強みを活かすことが重要です。ここでは、MQLを創出する2つのパターンとそれぞれのステップを詳しく解説します。

パターン1:インサイドセールス部門がアプローチする場合

Step 1 リードジェネレーション

マーケティング部門は、リードジェネレーションをオフラインとオンラインの両面から行います。オフライン施策には展示会への出展、セミナーの開催、業界誌への広告掲載などが含まれます。特にリードと直接会話のできる展示会やセミナーでは、その場でリードの課題やニーズを聞き出すこともでき、確度の高いリード獲得できる可能性が高いです。
オンライン施策としては、ランディングページの作成、ホワイトペーパーの提供、SEO対策、SNSマーケティング、メールマーケティングなどがあります。特に、ターゲットに合わせたコンテンツを提供し、SEO対策を行うことで、リードを効率的に集めることができます。

Step 2 インサイドセールス部門によるアプローチ

マーケティング部門がオンラインやオフライン施策を通じて獲得したリードに対して、インサイドセールス部門が電話やメールでアプローチを行います。この段階で、リードは「BANT」に基づいて評価されます。「BANT」とは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の4つの要素の頭文字を取ったもので、BANTを基にリードの購買意欲を評価します。十分に購買意欲が高いと判断されたリードは、営業部門に引き継がれます。

Step 3 リードナーチャリング

インサイドセールス部門から引き継いだリードに対し、マーケティング部門は引き続きアプローチを行い、購買意欲を高めます。CRM(顧客関係管理)ツールやMA(マーケテイングオートメーション)を活用して、メールマガジンやウェビナーなどを通じてリードに情報提供を行いリードどの関係を深めます。この時、リードのニーズや課題を理解し、それに合致した情報やコンテンツを提供することが重要です。

Step 4 リードクオリフィケーション

マーケティング部門がリードナーチャリングを経て、十分に購買意欲が向上したと判断されたリードは、営業部門へと引き渡されます。営業部門は、これらのリードに対して商談を進め、最終的に受注へと繋げていきます。

パターン2:マーケティング部門がアプローチする場合

Step 1 リードジェネレーション

マーケティング部門は、オフラインとオンラインを問わず、さまざまな施策を通じてリードを創出します。具体的には、展示会への出展、セミナーの開催、業界誌への広告掲載などのオフライン施策や、ランディングページの作成、ホワイトペーパーの提供、SEO対策、ソーシャルメディアマーケティング、メールマーケティングなどのオンライン施策を実施します。

Step 2 リードナーチャリング

リードジェネレーションの施策で獲得したリードに対して、マーケティング部門は継続的なコミュニケーションを通じて購買意欲を高めます。例えば、顧客一人ひとりに合わせたメール配信、定期的なウェビナーの開催、コンテンツの提供などを通じて、リードとの関係を深めます。CRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)を活用し、リードの行動をトラッキングし、最適なタイミングで適切な情報を提供します。

Step 3 リードクオリフィケーション

リードナーチャリングを経て、リードの購買意欲が高まった段階で、マーケティング部門はBANTやその他の評価基準(例えば、MEDDICやCHAMP)に基づいてリードの質を評価します。これらの評価基準に基づき、「十分に購買意欲が向上した」と判断されたリードは、営業部門へ引き継ぎます。営業部門は、これらのリードに対して商談を進め、最終的に受注へと繋げていきます。

MQLへの引き渡しでよく起こる課題

MQLはマーケティング活動を通じて購買意欲が高いと判断されたリードですが、営業部に引き渡した後にいくつか問題が発生することがしばしばあります。マーケティング活動によって獲得したMQLを活かせず、機会損失を招いてしまうケースも少なくありません。

マーケティングと営業の連携がうまくいかない

マーケティング部門が創出したMQLが営業部門に適切に引き渡されず、両部門の間で連携が取れていないことがあります。例えば、リードを引き渡す際の評価基準がマーケティング部門と営業部門で十分にすり合わせできておらず、マーケティング部門が「MQLとして十分」と判断したリードが、営業部門では「まだフォローに値しない」と見なされるケースがあります。また、両部門のコミュニケーションが不足しているため、MQLの情報が十分に共有されておらず、営業担当者が顧客のニーズや課題を十分に把握できず、適切なアプローチができないことがあります。

MQL情報を引き継いでも営業部門で放置されてしまう

リード情報が営業部門に引き渡された後、適切なフォローアップが行われないケースがあります。例えば、営業担当者が他の業務に追われてリードへのフォローアップを後回しにしてしまい、結果的に商談機会を逃してしまうことがあります。

MQLの定義が不明瞭で、成約に繋がらない

マーケティングと営業部門でMQLの定義が不明確な場合、リードが適切に評価されず、成約に結びつかないことがあります。例えば、MQLの基準が曖昧であるために、「どのようなリードをMQLと定義するのか」が明確に定められておらず、マーケティング部門の担当者によってMQLの判断基準にばらつきが生じてしまいます。結果的に、営業が受け取るリードの質にもばらつきが生じ、成約率が低下につながることがあります。

MQLとSQLをうまく連携させるポイント

MQLとSQLをうまく連携させるためには、マーケティング部門と営業部門の両部門で共通の目標を持ち、協力して取り組みを進めることが重要です。

部門間の情報共有の徹底

MQLとSQLをスムーズに連携させるためには、マーケティング部門と営業部門の間で以下の情報を共有することが重要です。

MQLになった経緯

どのような経緯でMQLとなったのかを詳細に共有します。具体的には、どの施策で獲得したリードなのかのか、ウェブサイトのどのページを訪問したのか、どのようなeBookをダウンロードしたのかを明示します。

属性情報

MQLの企業規模、業界、役職、地域などの情報を詳細に共有します。企業規模には従業員数や年間売上高、役職にはだれが意思決定権を持つ人物かどうかなどの情報を含みます。

リードナーチャリングで送ったメールの内容

どのようなメールを送信し、どのコンテンツを提供したのかを共有します。例えば、ニュースレターの内容、製品アップデート情報、ウェビナーの案内メールなどを含めます。その際、各メールの開封率やクリック率などのデータもあると好ましいでしょう。

ウェビナー・セミナーへの参加の有無

どのウェビナーやセミナーに参加したのかを共有します。具体的なイベント名、参加日時、イベント中にした質疑内容、イベント時に取得したアンケート情報などを含めます。

ヒアリングしたリードのニーズや課題

インサイドセールスなどを通じてMQLから直接ヒアリングしたニーズや課題の情報を共有します。具体的には、現在抱えている問題、解決したい課題、予算の範囲、導入のタイミングなどの情報を含めます。

これらの情報を共有することで、営業部門はMQLを引き渡された直後でも顧客をより深く理解し、適切なアプローチを行うことができます。

CRMツールを活用する

CRM(顧客関係管理)ツールを活用することで、マーケティングと営業の連携を強化できます。CRMツールは、リード情報の一元管理や進捗状況の可視化を可能にし、両部門が共通の情報を持つことができます。例えば、リードのステータスやフォローアップの履歴をリアルタイムで共有することで、営業が迅速に対応できる環境を整えることができます。また、リードの評価基準や引き渡しルールなどを明確に定義し、ツールに条件を設定することで、基準を満たしたリードを自動的にMQLに営業に引き渡しをすることで、業務効率を向上させることができます。

SLA(Service Level Agreement)の設定

SLAを設定することで、マーケティングと営業の明確な基準とプロセスを確立し、連携を強化できます。SLAには、MQLの定義、引き渡し基準、フォローアップのタイムラインなどを明記します。例えば、マーケティングが一定の基準を満たしたリードをMQLとして引き渡す際のタイミングや営業がリードを受け取った後に一定期間内にアクションを起こすルールを規定することで、リードが放置されるのを防ぎ、成約率を向上させることができます。SLAの設定をする上で考慮すべきポイントの例は、以下の通りです。

SLAの設定例

  • MQLの引き渡しタイミング:MQLとして評価した後、24時間以内に引き渡す。
  • 営業部門による対応期限:MQL受け取った後、3営業日以内にフォローアップを行う。
  • 情報共有の頻度:週1回の定例ミーティングで進捗状況や問題点を共有する。
  • エスカレーションルール:営業が対応しない場合、上長にエスカレーションして迅速な対応を促す。

SLAを周知する

SLAを効果的に運用するために、マーケティング部門と営業部門間でMQLの定義、評価基準、引き渡しルールを明確にし、共通認識を持つことが重要です。また、MQLの育成方法やアプローチ方法等を標準化することで、部門間の連携を強化し、MQLの質を向上できるでしょう。
そのための具体的な取り組み例としては、以下の通りです。

  • MQLと非MQLの区別を明確にし、全員が同じ基準でリードを評価できるようにします。
  • リードの質を客観的に判断できるよう、具体的な評価基準を設定します。例えば、リードの行動スコアや属性スコアに基づいて評価を行います。
  • スムーズな引き渡しを実現するために、MQLからSQLへの引き渡しルールを詳細に定めます。
  • リードナーチャリングの施策や方法を標準化し、一貫性のあるアプローチを確立します。
  • 成約率向上を目指し、営業部門のアプローチ方法も標準化します。具体的なトークスクリプトやフォローアップテンプレートを用意することで、営業活動の質を均一化します。成約率向上に向けて、営業アプローチの方法を標準化する。

これらの取り組みを通じて、マーケティング部門と営業部門が連携しやすくなり、MQLからSQLへのスムーズな移行が実現できます。

関連用語

MAL

MALは”Marketing Accepted Lead”の略です。マーケティング部門は、リードジェネレーション(Web広告やランディングページの作成等)により新規のリードを獲得しますが、獲得したリードの中には競合企業や属性としてターゲットにならず、フォローする必要のないリードも一定数存在します。MALは、リード全体から上記のようなフォロー対象外のリードを除外した「今後リードナーチャリングの対象とすべきリード」を指します。

TQL

TQLは”Teleprospecting Qualified Leads”の略であり、インサイドセールス等の「電話(Tel)」を担当する部門がフォローアップの対象とするリードです。電話のみで成約を目指す場合、あるいは、行動情報や属性情報から特に成約に繋がる可能性の高い場合には「TQL」と判断し、インサイドセールスが顧客への課題ヒアリングや情報提供を行います。

SAL

SALは”Sales Accepted Lead”の略です。マーケティング部門またはインサイドセールスから引き渡され、営業部門が対応を受け入れたリードです。リードの状況によって営業部門がフォローすべきでないと判断した場合には、マーケティング部門またはインサイドセールスに差し戻されることもあります。