CHAMPとは
CHAMPとは?
CHAMPとは、顧客の課題解決に取り組むことで、見込み客(以下、リード)から顧客への変換(つまり、成約率の向上)を目指すフレームワークです。
CHAMPは、以下の4つの要素で構成されており、それぞれの頭文字などを取った総称です。
- CHallenge(課題):リードが解決したい課題
- Authority(決裁権):その商品やサービスの購入の意思決定をする人
- Money(費用):課題解決に割り当てられた予算
- Prioritization(優先順位):リードが考えている課題解決の優先度
成約率を高める営業を行うには、リードを絞り込み、相手が望むソリューションを提案することが重要です。しかし、課題を聞き出すまでが難しいと感じている営業担当者も少なくありません。
CRM(顧客管理システム)を提供する米Salesmateが行った調査によると、アポイントメント(以下アポ)なしで法人や個人を訪問し、自社の商品やサービスを説明する「飛び込み営業」の場合、アポを獲得できる確率は全体の2%だといいます。仮にリードを獲得したとしても、商談に進まずに終わってしまうケースも少なくありません。
リードがその商品やサービスを必要としているかどうかを見極めたり、成約に向けアプローチしたりすることは難しいでしょう。リードから情報を自然に引き出す役割を果たすのがCHAMPです。
CHAMPは、リードが抱えている課題や意思決定に関わる決裁者の存在や予算を聞き出し、リードがどの程度課題解決を望んでいるのかを評価します。リードを評価しニーズに合わせたソリューションを提供できるという点が、CHAMPを用いるメリットといえるでしょう。
営業プロセスにおけるCHAMP
営業プロセスにおいてCHAMPは、クロージング(顧客との取引や契約の最終段階)に入る前に用いられます。繰り返しになりますが、CHAMPの目的は商品やサービスを必要としている相手かどうかを見極めて商談を行い、成約率を上げることです。営業担当者は、CHAMPを通じてアプローチすべきリードを見極めて、効果的なフォローアップを展開できるでしょう。チームで営業している場合は、メンバー同士でリードに関する情報を共有し、チーム単位で協力しながら商談を進めることも可能です。
CHAMPを構成する4要素
CHAMPを構成する4要素について以下に説明するとともに、質問例を紹介します。
課題(CHallenges)
リードが解決したいと考えている課題のことです。このフェーズでは、リードが抱えている悩みを聞き、課題を洗い出します。
全ての顧客が、直面している課題を明確に理解しているとは限りません。この段階では、顧客がどの程度、課題を意識しているかを把握し、それに合わせて質問をするのが無難です。
◯質問例
- 何かお困りごとはありませんか?
- 改善できずに困っていることは何ですか?
- 課題を解決するために、どのように取り組んでいきたいとお考えですか?
- ビジネスを発展させるために何かサポートは必要ですか?
- 現在抱えている課題について、一番先に解決したいことは何でしょうか?
決裁権(Authority)
決裁権とは、最終的な意思決定を下す権利のことで、それを持つ人を「決裁者」といいます。商談に応じている相手は必ずしも決裁者とは限りません。決裁を下す人がケース・バイ・ケースで異なるという会社もあります。決裁者ではない人に話を進めて手応えをつかんでも、決裁者が「No」と言った場合は、それまでのプロセスは全て徒労に終わってしまうでしょう。無駄な時間を省くためにも、「決裁」では決裁権の所在や決裁者を知るための質問をします。
◯質問例
- 最終的な決断を下す権限をお持ちですか?
- 意思決定プロセスにおけるあなたの役割を教えてくださいますか?
- あなた以外に決裁に関わる方はいらっしゃいますか?
- 次の商談において決裁者の方にご同席いただくことは可能ですか?
- その他意思決定プロセスに関わっている方はいらっしゃいますか?
費用(Money)
課題解決のために使える費用のことです。課題解決の意思があったとしても、商品やサービスを導入する費用がなければ成約に至ることは難しいでしょう。つまり、商談においては、会社がプロジェクトに対して予算を付けているかどうかを確認することも大切なのです。「費用」では、予算の有無や課題解決のために費用をかける余裕があるかどうかを確認するための質問をします。
◯質問例
- このプロジェクトに予算は割り当てられていますか?
- プロジェクト実行に当たり、予算を確保されていますか?
- 予算はいくらでしょうか?
- 予算を利用できるのはいつごろでしょうか?
優先順位(Prioritization)
顧客が考えている課題解決に対する緊急性や優先順位を確かめることが、「優先順位」の目的です。ここでは、課題解決に向けてどの程度前向きであるかを把握できるような質問をします。実際にプロジェクトを実行すると決まった場合は、スケジュールについても確認しましょう。
◯質問例
- このプロジェクトの優先順位について、決裁者全員の同意を得ていますか?
- このプロジェクトはいつからいつまでですか?
- このプロジェクトを実行するのに障害となるものはありますか?
- プロジェクト実施にあたり、当社の商品が御社のニーズをどの程度満たしているとお考えでしょうか?
CHAMPを活用することで特に成果が見込める企業像
企業の現状に合わせてCHAMPを利用することで、営業トークの改善が見込まれます。ここでは特に、BtoBにおける成果が期待できる企業のタイプについてご紹介します。
複数の商談先を抱える企業
商談先が増えるにつれて、リードに優先順位をつける必要がありますが、リードを評価する基準がなければ、優先順位をつける作業は難航するでしょう。リードが抱える課題や緊急性などを把握できるCHAMPは、リードの評価基準として理想的です。リードを評価する方法としてフレームワーク化されているCHAMPを用いることによって、多数のリードがいても常に同じ基準で評価できるようになるのです。CHAMPを基準に置くことでリードの絞り込みを効率的に行い、商談へとスムーズにつなげることが期待できるでしょう。
営業とマーケティングの連携で商談を進めている企業
営業部門とマーケティング部門がそれぞれ独立している企業では、情報の共有が不十分である場合も少なくありません。マーケティングから営業へとスムーズにつなげることは、成約率の向上にもつながります。CHAMPでリードを評価し、その情報を共有するなど両部門が相互に協力し合うことで、リードへの有効なアプローチを策定しやすくなるでしょう。
CHAMPを使ったリード評価の方法・流れ
CHAMPを用いたリードの評価は、以下の流れで進めます。
- ①リードを定義する
- ②CHAMPに入る前のディスカバリーコール(リードとの初会話)を実施する
- ③CHAMPを用いて質問する
- ④優先すべきリードかどうかを評価する
①リードを定義する
最初に商品やサービスの成約につながりそうなリードを定義します。そのためには、ペルソナを作成し、分母となるリードを発掘します。具体的には、自社が持つデータをはじめSNSやホームページ、メルマガ、オフライン上のつながり(例:知り合いからの紹介)、セミナーや相談会などを通じて、商品やサービスに興味を示してくれそうな人の情報を集めリストを作成します。
②CHAMPに入る前のディスカバリーコールを実施する
ディスカバリーコールを実施する主な目的は、次に続くCHAMPにスムーズにつなげるためです。ディスカバリーコールを有意義なものにするために、事前評価を実施しましょう。具体的には、リードが運営しているホームページやSNSなどをチェックし、事業活動や企業文化、主力商品、働いている社員などの情報を収集してリードについて理解を深めます。
ディスカバリーコールでは自己紹介や軽い雑談をメインに、今後の商談に対する期待感を把握しつつ、リードがCHAMPの質問に答える準備ができているかどうかを確認することがポイントです。
③CHAMPを用いて質問する
CHAMPのフレームワークに沿って、課題→決裁権→費用→優先順位の順に質問します。基本的には事前に設定した質問をしていきますが、より掘り下げて理解を深める必要があったり、リードが気後れしていたりしている場合は、無理に次のステップに進まずに、リードが納得するまで話を聞くことが重要です。
④優先すべきリードかどうかを評価する
CHAMPによる質問が終わったら、リードを評価し商品やサービスの紹介に進むかどうかを判断します。リードが抱えている課題を解決する手段として自社の商品やサービスを選ぶ可能性が高い場合は、そのままクロージングに進みます。
関連用語
購入プロセスに関するフレームワークは、CHAMPの他にも複数あります。
ここでは、BANTとFAINTについてご紹介します。
BANT
BANTは以下の用語の頭文字を取った造語で、法人営業のヒアリングで用いられるフレームワークの一つです。
- Budget(予算):課題を解決するために確保している予算
- Authority(決裁権):商品やサービスを購入する意思決定権
- Needs(必要性):顧客が感じている商品やサービスの必要性
- Timeframe(導入時期):商品やサービスを購入する予定日
これらの要素は成約するのに不可欠で、どれか一つでも欠けると成約に結びつく可能性が下がるといわれています。
CHAMPでは課題が優先されているのに対して、BANTでは予算が先にきます。CHAMPはリードの抱えている課題を軸に顧客になるかどうかを見極めますが、BANTは購買要件を軸にリードを評価します。
FAINT
FAINTもリードを評価するフレームワークの一つで、以下の要素で構成されています。
- Funds(資金):商品やサービスを購入するのに必要な資金
- Authority(権限):商品やサービスを購入する意思決定をする人
- Interest(興味・関心):提案したソリューションに対する興味
- Need(必要性):商品やサービスを購入する必要性
- Timing(時期):商品やサービスを購入する時期
BANTと同じように、FAINTも金銭的な要素から入ります。けれども、BANTが予算を確保しているかどうかを確認するのに対して、FAINTは、購入するだけの資金力が企業にあるかどうかをリードの条件としています。