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CRM/SFA 導入事例サイバー大学はどのように営業担当者の働き方を変えたのか? Zoho CRM活用のノウハウと運用に乗せるための苦労・工夫を聞く

お話を伺った方

cystopmin産学教育連携部マネージャ 近松 忠昭様

2006年の設立以来、eラーニング分野におけるパイオニアとしてオンライン教育の世界をリードしてきたサイバー大学。そのノウハウを様々な企業や団体、学校における教育や研修で活用してもらおうと開発されたプラットフォーム「Cloud Campus」の営業活動において、リードの獲得や管理、受注後の顧客管理に至るまで「Zoho CRM」が活用されています。具体的にどのような工夫をして業務を効率化し、そしてその仕組みを社内に浸透させていったのでしょうか。※「Cloud Campus」はサイバーユニバーシティ株式会社より株式会社サイバー大学に事業承継されました。

目次

■自社フローのなかでZoho CRMを活用するための5つのポイント

■新しいシステムを社内定着させるための3つのポイント

■「これまでやってきたことは、無駄ではない」という前提に立ち、現場に寄り添う

■自社フローのなかでZoho CRMを活用するための5つのポイント

全体の業務フロー

(1)リード管理が属人的にならないよう「定義」を決めて共有

獲得するリードはオウンドメディアの問い合わせフォーム、社外のオンラインメディアの資料請求などで集まり、Zoho CRMに集約するところからスタートします。量としては毎月80~100件前後の新規リードが入ってくる状態です。そこから、リードごとに「未対応」「架電済み」「ヒアリング済み」など細かくステータスを変更していき、各ステータスに応じた案内メールやアプローチを行いながら商談につなげる、という対応を行います。

例えば、新規リードに対して電話でアプローチする場合には、担当者はZohoを開いてリードの内容や過去の履歴などを確認し、会話の内容に応じてデータを更新していきます。そこで工夫しているのが、ステータス管理です。実際に電話をして、相手がどのような反応だったのか。ヒアリングをしてみてどのような印象だったのか。その判断を個人の感性に委ねるとステータスにバラつきが出てしまいます。そこで、ヒアリング内容をあらかじめ決めておき、Zoho CRMの入力項目として設定しています。これらの項目をもとに「相手がこのような状態になったら、このような意向が確認できたらこのステータスにする」という定義をきっちりと定め、ドキュメントで共有しています。

見込み客の管理画面

また、商品の検討に前向きなホットリードの選出についても、ステータスの定義を定めることで確実に行うことができます。例えばリードのステータスが進み、別の商談担当者に引き継がれた際に「ホットリードだと思ってアプローチしたら、実はそこまで高い意欲はなかった」「実は導入に前向きなのに対応が遅れてしまった」というような認識の違いによる機会損失を防いでいます。厳しくステータス管理をすることでホットリードの数は減ってしまいますが、「Cloud Campusを必要としている顧客」に確実にリーチできるようになりました。

(2)初回のお問い合わせ〜購入後のライセンス管理まで、ひとつの顧客データで管理

Zoho CRMを導入するときには「リテラシーの低い人でも活用できる仕組みにする」という方針があったので、リードから商談への移行時にも手動作業の手間がほぼ掛からない形を実現したいと考えました。

例えば、アプローチしているリードのステータスが「S(商談化)」になると、自動的に新規商談を作成する仕組みになっています。すると、リードのデータは「見込み客」タブから「商談」タブへと自動的に移行し、本格的な商談のフォローが始まります。データひとつひとつにユニークなIDが付与されていることによって、新規リードからアプローチの履歴などをすべて引き継いだ状態で商談データが作れるのが便利なポイントですね。

さらに、商談がクロージングして契約になった場合も、今まで追加したデータが「ライセンス管理」のタブに移行する仕組みになっています。Zoho CRMの導入前はエクセルで手動管理していましたが、商談化しているのにステータスが変更されていなかったり、商談を希望するリードがあるのに見落としてしまったりといった対応漏れがありました。そうした失敗を避けるために、顧客はひとつのデータで管理し、現在どのステータスにいるのか、すぐに把握できるようにしています。また、新規リード対応する担当者がアサインされると通知メールが飛ぶ仕組みになっていて、担当者は自分が対応すべき顧客を管理画面で確認することができます。

(3)差し込み項目を利用し、メールをワンタッチで送信

Cloud Campusはオンラインサービスなので、商談のなかで「試してみたい」という声をいただきます。その際にはトライアル用のユーザーIDを発行しますが、Zoho CRMを導入する前は手動でIDを発行し、メールで送付していました。現在はZoho CRMのオートナンバー項目を利用することで、ユニークなトライアルIDを自動的に作成し、メール送信時には各IDがメールの文中に自動的に挿入され、送信されます。

手入力による手間が省けるので効率化でき、手動作業で起きてしまう誤送信などのミスもなくなります。また、商談のなかで「試してみたい」という声があった際にお待たせすることなく、すぐにトライアルIDを提供することができるので、商談がスムーズに進みます。

(4)見積書の作成・承認・送付もすべてZoho上で対応

トライアルIDと同じように、見積書の作成、承認、送付もZohoからワンタッチで行えるようにしています。これまではエクセルで作成した見積書を印刷し、上長の押印が済んだらPDF化し送付する、という手間も時間もかかるフローでした。今はあらかじめ登録した商品マスタから依頼に合わせて商品を選択するだけで、見積書が作成、PDF化されます。作成済、承認依頼、承認済といったステータスを設定しており、管理画面上の操作で上長に通知メールが配信され、都度顔を合わさなくても承認作業を進めることができます。

ちなみに商品のマスターデータや見積書、メールテンプレートはZohoの管理画面から簡単に変更・追加できるので、手間ではありません。例えば価格改定があった場合やメールの文面を変更する場合などもすぐに対応できます。

(5)Zoho Deskでサポート部門ともシームレスに連携

商談を重ね、晴れて受注をいただくと、これまで「商談」タブにあった顧客データは、ステータスを変更して契約内容を入力することでそのまま「ライセンス管理」のタブに移行します。

CloudCampusは利用開始時に契約企業の専用環境を構築しますので、「ライセンス管理」上で必要なデータ(申込情報や請求先、契約プランなど)がそろったタイミングで、システム部門へ構築依頼の通知がされます。 環境構築後、営業部門にて正しく構築されているかチェックを経て、問題なければ顧客へ連絡します。その際もライセンス情報のステータスを「利用中」に変更するだけで、エンドユーザーの担当者宛に利用開始に必要なアカウント情報やマニュアル、サポート窓口の案内を含めたメールがCRMから配信され、サービスの利用を開始することができる、という仕組みになっています。一方で、エンドユーザーの情報は、ライセンス情報が「利用中」になった時点で、サポートチームが管理する顧客リストに自動的に追加され、メンテナンス連絡や障害発生時の連絡先から漏れないよう即時反映されます。ここまでの流れで手動メールは一切ありません。Zoho上で一元管理することで、各部門での連携がミスなくスピーディに行われ、利用開始即日からサポート窓口が手厚いサポートを開始できます。

また、ユーザーサポートに関してはZoho Deskも導入しています。顧客から問い合わせ受けた際は、チケット制で問い合わせを管理し、ステータス管理の機能を使い、対応する担当者のアサインやシステム部門へのエスカレーションなどを効率よく行っています。

――ここまで、Zoho CRMの様々な機能を実際のワークフローの中でどのように活用しているのかについてご紹介いただきましたが、Zoho CRMの運用を開始してワークフローの中で最も大きく変わった部分はどのような点ですか?

「新規リード」「商談中」「利用中」といった顧客のステージに応じてタブを使い分け、シームレスに顧客データを移行・連携できる部分は、ワークフローを大きく変えました。新規リードとしてZoho CRMに入ったときから、利用を開始してサポートをするところまで、すべての過程をワンストップで管理できます。ステータスの軸が複数あると見込み顧客・顧客を管理しきれない場合もありますが、そこを一気通貫でできる。ステータスの定義もしっかりしているので、顧客の分析もできるのです。また、システム部門やサポート部門との連携も、情報の受け渡しの手間を大きく省いてシームレスにできる点は、営業活動の効率化に大きく貢献しています。

■新しいシステムを社内定着させるための3つのポイント

前半では、Zoho CRMの様々な機能を自社のワークフローの中でどのように活用しているのかについてご紹介いただきました。ここからは、Zoho CRMを社内に実装し、営業活動の中核システムにまで定着させるために、どのような工夫をされてきたのかについて、3つのポイントでご説明いただきました。

(1)「今までのやり方は変えない」からワークフローを考える

このような新しいシステムを導入しようとすると、「より楽をするために活用したい」という人と、「今までのやり方を変えたくない」という人がいます。特に、多少手間だとわかっていてもこれまでの方法を変えたくないという層がある程度の割合で必ずいるものです。そういう人たちが新しいシステムにアレルギーを起こして、しかも社内で声が大きかったりすると、本当は便利なシステムなのに組織の中で受け入れてもらえないということは往々にしてあります。そこで、「なんで便利なのに使わないの?」と“上から目線”になってしまうと絶対に上手くいかないと思います。

そこで私たちは、「あなたたちのやり方は変えなくてもいいですよ」というスタートラインからシステムを導入しました。Zoho CRMを導入する前はエクセルでステータスを管理していて、非効率と思える要素や無駄だと感じる要素もありましたが、それらをまとめて全部Zoho CRM上に再現したのです。「今までの作業は変えない」ということを入口にZoho CRMを使い始めてもらい、そこから徐々に手間や無駄を省きワークフローを改善していきながらシステムに慣れてもらいました。急進的に進めてハレーションを生み出すのではなく、じっくりと時間をかけて進めていきましたね。

例えば、リードのステータス管理をする担当者と商談を進める担当者では見るタブが異なりますので、それぞれの項目に集中できるように、裏側でZoho CRMの自動化プロセスやデータ連携が走っていても、それを意識させないようなユーザー体験を意識しました。「何も考えずに、今まで通りすればいい」というスタンスは崩さずに進めていくと、みんなが徐々に利便性を感じ始めてくれて、定着していきました。そして「こうすればもっと便利になるのは?」という意見が生まれるようになり、Zoho CRMを好きになっていってくれましたね。

データベース構築の際、数字のズレには細心の注意を払いました。このような営業管理の仕組みは、数字にズレが生じると不信感・不安感に繋がってしまいます。今までエクセルで手計算していた数字とZoho CRMのシステムが集計する数字にズレが生じないように慎重に構築をしていきました。

(2)徹底的にシンプルなワークフローで、営業担当者の働き方を変える

営業管理において必要とされる情報は限られているはずなのに、実際には不要と思われるような情報を追記・転記したり、集計する作業がワークフローのなかで多く散在していて、その作業をするためのちょっとした時間が積もり、大きな比重を占めていました。その時間が削減できないことで顧客の対応が遅れてしまい、スピード感がなくなってしまうわけですね。そこでZoho CRMでは、できることはバックグラウンドで行う作業に任せて、本当に必要な情報を確実に収集して管理できるようシンプルさにはこだわりました。

こうした考え方は、営業担当者の働き方改革にもつながると思います。営業活動の本質は見込み顧客と向き合い商談を進めるために必要な情報を集め、クロージングまでのプロセスを考えることですよね。例えば、深夜まで残業して手作業で顧客リストの更新やレポート作成を行い、売上の進捗を眺めると「がんばって営業した」という満足感や気持ちよさはあるかもしれません。しかし、それは顧客と向き合うという営業活動の本質ではありませんよね。情報の整理やレポートの作成といった営業管理に関する手間はシステム化して徹底的に省いてあげることが重要だと思います。

(3)目に見える効果を示し、社内の支持を得る

Zoho CRMを導入して浸透するまでは約半年くらいでしたが、前述のとおり社内に味方を作ることができたので長期間は掛かりませんでした。社内で導入効果を実感してもらうために、一番わかりやすいのは効率化の実現=工数の削減です。例えば、リード獲得から商談に至るプロセスでは、初回メール・リマインドメールの送信に掛かる人的工数をゼロにできたことで年間90時間の工数を削減できました。また、トライアルIDの発行や見積書の作成・送付の工数も年間77時間削減できました。

リード獲得から受注に至るまでのワークフローと工数削減効果

今までの方法ではこれくらいの手間が掛かっていたということを明確にし、Zoho CRMを導入すると手間=工数がこれくらい削減されるというメリットを明示することで、「残業時間をできるだけ減らしたい」という経営層には共感を得られるわけです。「このツールには意味がある」ことをしっかりと示していくことが大切だと思います。当然、新しいツールの導入には様々なアレルギーが生まれますが、それでも「これだけ変わっている」という証拠をワークフローとともに示すことで、営業担当者自身も改めて理想のワークフローを理解するきっかけ、「もっと楽にしよう」と考えるきっかけになるのです。

ちなみに、今年度は営業担当者の数が導入時よりも少ないですが、Zoho CRMを導入したことによって、営業活動による売上は人数が減った今のほうが大きいですね。Zoho CRMで見込み顧客のステータス管理をしっかりとしたことによって興味関心の高い見込み顧客の取りこぼしを減らし、本当に必要としている企業に確実にアプローチできるようになったことが、要因のひとつだと思います。

■「これまでやってきたことは、無駄ではない」という前提に立ち、現場に寄り添う

――最後に、これからZoho CRMを運用に乗せていきたいと考えている企業の担当者に向けて、アドバイスとメッセージをお願いします。

実は、CRMを検討したのはZoho CRMが初めてではなく、過去に様々なツールを利用したことがあるのですが、今回ご紹介したようなZoho CRMの導入が実現したのは、過去の失敗があったからこそだと感じています。私も、過去には便利なシステムを無理やり導入しようとして運用に乗せることに失敗してきました。「なんでこんな非効率的なことをしているの?」と、“上から目線”になってしまい、強い抵抗・反発を受けてきたのです。そのような経験から、「楽をしたいのはもちろんだけれど、今のやり方を変えたくない」という考えの人が自分の想像以上に多いということを実感しました。変わることで楽ができるという良さよりも、変えることで感じるストレスのほうが大きいと感じている人が多いのです。

こうした人々の気持ちやこれまでやってきたことを踏まえて、リスペクトして、寄り添いながらシステムの導入を考えるというアプローチが非常に重要ではないかと思います。「これまでやってきたことは、無駄ではない」という前提に立ちながら、その上で「こうすればもっと早く仕事が終わる」「こうすればもっと楽ができる、時間が作れる」という提案をしていくのです。そこを大事にしなければ、もし急進的に導入を進めて「上司の指示だから」という理由で受け入れたとしても、どこかで不満やストレスを感じながら仕事をしなければなりません。これはシステム導入の話だけでなくビジネスの様々なシーンで直面することですよね。組織の中で新しいことを進めるときには必ず話し合い、意見を共有しながら進めます。“上から与える”ことが多くなりがちなシステムの導入も同じように、慎重に様々な人の意見や感想を意識して聞きながら進めていくことが大切なのではないかと思います。

まずは、お気軽に
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