ROIとは、Return on Investmentの略称で、投資に対する利益率のことを意味します。
投資額に対して得られた収益の割合を示し、投資の有効性を評価するための主要な指標です。株式投資以外でも、事業や施策にかけた費用に対する指標としても用いられています。
ROIが求められるようになった背景
ROIが投資の有効性を評価するための指標として重視され始めたのは、20世紀初頭。資本市場の拡大と世界的な経済成長のもと、企業は投資の成功に基づいた評価方法を必要とするようになりました。シンプルかつ定量的な方法で、投資の成功と失敗を明確に区別する指標を求め、ROIが使用されるようになりました。そして、現在も多くの企業がROIを投資の評価に使用しており、重要な指標とされています。
ROIの計算式と計算例
ROIの計算式:ROI = (収益 - 投資額) / 投資額 * 100%
収益は投資から得られた利益、投資額は投資に支払われた金額を示します。 ROIが正の場合は利益を生み出していますが、負の場合は損失が生じています。
計算例:
例えば100,000円をかけて120,000円の利益(収益)を得た場合、ROIの計算は次のようになります。
ROI = (120,000 - 100,000) ÷ 100,000 × 100% = 20%
この例では、投資額に対して20%の利益(ROI)が得られたことになります。
ROIの活用方法
算出したROIは、ビジネスや投資の評価・意思決定に役立ちます。具体的には以下の3つのポイントがあげられます。
- 有効性の比較検討:複数の投資がある場合、ROIを使用して効果を比較することができます。これにより、最も効果が期待できる投資を選択・集中して配分することができます。
- パフォーマンス評価:ROIを継続的に算出して、投資のパフォーマンスを測定することができます。これにより、投資の成功や失敗を正確に評価することができます。
- 事業展開計画:ROIを算出することで、投資額の回収に必要な期間を計測することができます。これにより、事業展開や将来的な投資について具体的な計画・立案が可能になります。
ROIの目安・基準
業界や投資のタイプなどによって異なりますが、一般的に以下のように評価されます
10%以上:高いリターン
5%から10%:普通のリターン
5%未満:低いリターン
ただし、これらはあくまで目安・基準であり、実際の投資結果は常に市場状況や経済情勢などの要素に左右されるため、保証はされません。また、特定の投資に期待されるROIは常に事前に確定することはできないため、適切なリスクとリターンのバランスを保つことが大切です。
ROIで投資額回収にかかる年数を算出する
ROIを用いて投資額の回収年数を計画するには、投資額と年間収益を用いてROIを算出し、それを基に投資額が回収される期間を算出することが重要です。
まず、投資額と年間収益を収集します。年間収益は、投資から得られる年間収益、つまり投資から得られる収益(利益)の額です。次に、ROIを算出します。
例えば、ある投資家が100,000円を投資し、その投資から得られる年間収益が20,000円とします。この場合、ROIは、(20,000円 / 100,000円)× 100 = 20%となります。
ROIが分かったら、投資額が回収される期間を算出することができます。回収期間は、投資額を年間収益で割ったものです。
この計算を行うことで、投資が回収される期間を把握することができます。
例えば、ROIが20%である投資に100,000円を投資した場合、1年で20,000円の年間収益が得られます。
この場合、100,000円 ÷ 20,000円 = 5年になるので、この投資から回収するまでに5年かかることが予測できます。
しかし、ROI(Return on Investment)の具体的な回収期間は、市場状況、投資先、投資戦略などに応じて異なりますので、十分な事前調査を行い、投資計画を練ることが大切です。回収期間を計画する際には慎重に投資先を選択し、ROI以外の情報もふまえて総合的に判断することが重要です。
ROIと費用対効果の違い
ROI(Return on Investment)と費用対効果(Cost-Benefit)は、どちらも投資の結果を評価するために使用されていますが、その意味と算出方法に違いがあります。
ROIは、投資した資金に対する利益率のことで、投資利益(投資収益 - 投資費用)を投資費用で割った値で算出されます。ここで算出された値が高ければ、投資した資金に対して得られる利益が大きいことを示しますが、値が低ければ、投資した資金に対して得られる利益が少ないことを示します。
費用対効果は、投資にかかる費用と得られる利益を比較するための指標のことです。費用対効果は、投資費用を得られる利益で割った値で算出されます。費用対効果は、ビジネスやプロジェクトの効率性を測定するために使用されます。
このように、ROIは投資のリターン率を示すものであり、費用対効果は投資の価値を評価するものです。どちらも投資の結果を評価するための指標であることは変わりありませんが、算出方法とその用途が異なります。
ROIと似ている各指標との違い
ROIと似ているビジネス指標はいくつかありますが、中でもROE、ROIC、ROA、ROAS、CPAはそれぞれ異なる側面・観点で評価するために使用されています。それぞれの指標について、ROIとの違いを説明します。
ROIとROICの違い
ROICはReturn On Invested Capitalの略語。ROIとROICは、いずれも投資から得られる収益に対する投資額の比率を示す指標ですが、ROICでは課税調整後の利益から、企業が投下した総資本で割った値である点で異なります。
ROIとROEの違い
ROEはReturn On Equityの略語。株主資本に対する利益率を示す指標で、企業が得た利益を株主が投資した資本額で割ったものです。ROIは投資全体に対して使用することができますが、ROEは株主単位で、投資家が株式を選択する際に使用される重要な指標です。
ROIとROAの違い
ROAはReturn On Assetsの略語。企業の資産活用の効率性を示す指標で、企業が保有する総資産から得た利益を割ったものです。企業がどのくらい効率よくに資産を活用しているかを評価するために用いられます。
ROIとROASの違い
ROASはReturn On Advertising Spendの略語。広告費用から得られる収益に対する広告費用の比率を示す指標です。ROIが投資や経営者視点の評価指標であるのに対し、ROASは広告・マーケティング分野で特定の広告の効果を評価するために使用され、広告費用の収益性を分析する際に役立ちます。
ROIとCPAの違い
CPAはCost per AcquisitionまたはCost Per Actionの略語。1つの成果または顧客を獲得するためにかかった費用を評価する指標です。ROIは長期的視点かつビジネス全体を評価するために用いられますが、CPAは特定の広告や施策における効果を評価するためによく用いられます。CPAが低ければ、企業はより少ない費用でより多くの顧客を獲得することができるため、効率的であると言えます。