このレッスンでは、DXへのCRM/SFAツール活用の最初のステップとして、ツールの環境を用意し、マーケティングや営業活動におけるターゲットとなる見込み客の管理項目の解説・項目のカスタマイズ・レポートによる集計などについて学んでいきます。※CRM/SFAツールの例としてZoho CRM が登場します。
CRM/SFAツールを用意
マーケティング領域・営業領域において、顧客理解とデータドリブンな業務遂行を実践する環境として、活用したいCRMまたはSFAツールを用意しましょう。
今回は新規顧客開拓を行う際に具体的なターゲットとなる見込み客を管理し、顧客分析や優先順位をつけるための属性情報などを活用していくため、見込み客と既存顧客を別のリストとして管理し、独自の管理項目を追加・カスタマイズできるツールを選ぶと良いでしょう。
今回はCRM/SFAツールの一例として、Zoho CRM を活用した場合の設定手順を紹介します。
アカウントを作成
Zoho CRM のアカウント作成手順は以下の通りです。
- Zoho CRM トップページへアクセス
- アカウント作成フォームへ必要な情報を入力し送信
- 2で登録したメールアドレス宛てに認証メールが届き次第開封
- メールに記載された認証用のURLをクリック
- アカウント認証完了
- 6で認証成功した場合は、自動でZoho CRM の画面が表示
- アカウント作成完了

Zoho CRM のアカウントは無料で作成でき、15日間はトライアル期間としてZoho CRM の有償プランの機能を利用可能です。トライアル期間終了後は、自動的に無料プランへ移行します。
アカウント認証完了後は、自動的に画面がZoho CRM へと切り替わります。切り替わらない場合は、トップページ右上の[サインイン]から情報を入力し、アクセスしましょう。
Zoho CRM にアクセスした後に組織情報の更新画面が表示され、ユーザー登録や権限の設定へと移ります。
ユーザーを招待(複数で利用する場合)
リードの管理業務やメルマガ作成・配信業務を複数で行う場合は、関係する担当者をユーザーとして招待し、データ共有しながら利用できる設定をします。ユーザーを招待する手順は以下の通りです。
- Zoho CRM 右上の歯車マークの[設定]をクリック
- [一般]のセクションから[ユーザー]を選択
- ユーザー管理ページで、[ユーザーを追加]をクリック
- 新しいユーザーの情報を入力
- [送信]をクリック(同時に招待メールが新しいユーザーへ送信される)
- 新しいユーザーは、受信したメールに記載のリンクをクリック
- アカウント認証後、招待完了


招待されたユーザーは、アカウント認証後すぐにZoho CRM を使えます。また、無料トライアル期間中は、管理者を含め最大3ユーザーで利用できます。
権限を設定
CRM/SFAツールを複数で利用する場合、業務内容や役職に合わせた権限設定が必要です。権限を設定することで、情報の更新や編集、削除は権限を持つ人のみができるようになります。これにより、必要な情報の上書きや削除といった人為的なミスやトラブルを防止できるだけでなく、流出防止を含めて顧客情報の適切な管理にもつながるでしょう。ユーザーの権限設定は以下の通りです。
- Zoho CRM 右上の[設定]をクリック
- [セキュリティ管理]のセクションから[権限]をクリック
- [標準]をクリック(※一般ユーザーの場合は[標準]、管理者向けの場合は[管理者]を選択)
- 基本の権限設定を行う


基本の権限設定では、見込み客や連絡先、取引先といったタブごとに表示、作成、編集、削除の一般ユーザーの権限設定ができます。Zoho CRM ではデータを登録するデータベースを「タブ」と呼びます。画面上部に並んでいる[見込み客][連絡先][取引先]などがタブです。エクセルでデータを保存する際には、データをシートに分けて管理しますが、これと同じく、CRM/SFAもデータをタブで分類している、と理解すると分かりやすいでしょう。
一般ユーザーには付与されていない、データのインポートやエクスポートなどの権限を自由に選択して付与したい場合は、新しく権限を作成し、メンバーごとに付与することも可能です。新しい権限の作成方法は以下の通りです。
- Zoho CRM 右上の[設定]をクリック
- [セキュリティ管理]をクリック
- [権限]をクリック
- 画面右上の青ボタン[新しい権限]をクリック
- 権限名と説明を入力、権限の複製の有無を選択
- [作成]をクリック

ここまでが各種権限設定の方法です。ユーザーへ過度な権限を与えてしまうとデータの誤操作や情報漏洩のリスクを高めますので、社内検討の上、適切に設定するようにしましょう。
見込み客の管理
ここまでで基本設定となるメンバーの登録と権限付与が完了しました。次に顧客情報の中でも、マーケティングや営業活動におけるターゲットとなる見込み客の管理を行います。
見込み客は一般的にリード(Lead)とも呼ばれ、例えば展示会やインターネット広告経由で獲得した個人の情報であり、具体的な商談や取引が成立するまでの顧客未満の個人情報のことを指します。
見込み客に対して、マーケティング・営業担当者が、見込み客の状況に応じた必要なアクションを起こすことで、具体的な商談が始まり、契約にまで至れば本来の意味での顧客となっていきます。
顧客を理解し、顧客が求めるニーズを満たす活動をするためには、見込み客を適切に管理し、アクションを起こし、アクションの結果を評価するためのデータを保持・活用する必要があります。
Zoho CRM における見込み客の一覧画面

Zoho CRM における見込み客の詳細画面

ここからは、基本的な管理項目とデータを活用するために必要な管理項目、項目の追加方法をなどを説明します。
見込み客の基本的な管理項目
まず、見込み客を管理していく上では、基本となる個人や個人が所属する組織の情報を管理することが求められます。
具体的には、「氏名」「会社名」「部署名」「役職」「メールアドレス」「電話番号」「郵便番号」「住所」などです。名刺に記載されている情報の管理が基本となるとイメージするとよいでしょう。
顧客情報を活用する上ではこれらの情報を適切に管理していく必要がありますが、データのあいまいさを排除したり、活用しやすい形でデータを保持したりするために、感覚的な管理方法とは異なる単位でデータを分割する必要が出てきます。
例として、「住所」項目について考えてみましょう。
住所を「都道府県」「市区町村」「町名・番地」に分割する
住所は、一つの情報単位として管理することもできますが、「都道府県」「市区町村」「町名・番地」に分けることが可能です。
顧客とやり取りをする上では、住所情報を必ずしも分割する必要はありませんが、例えば、都道府県ごとの見込み客数や売上などを集計したい場合には、あらかじめ住所を都道府県で分けて管理しておく必要が出てきます。
CRM/SFAツールでは、データを活用するためのデータ項目があらかじめ用意されていることがほとんどですが、自社で管理したい項目が用意されているか、必要に応じてカスタマイズできるかがツール選びでは重要なので、意識しておきましょう。
その他の基本的な項目では、「氏名」を「姓」と「名」で分けて管理する、「住所」をさらに「納品先」と「請求先」を分けて管理するといったことが行われます。
見込み客の重要な管理項目
見込み客を管理していく上では、基本となる項目だけでなく、見込み客に優先順をつけたり、見込み客の状態を管理し、フォローすべきタイミングを逃さない管理項目が必要です。
さらに具体的なアクションを起こした結果を振り返るための項目などもあると、データ活用が進みやすくなります。
多くのCRM/SFAツールで用意されている重要な見込み客の項目として、「見込み客のデータ元」「見込み客のスタータス」の2点について解説します。
見込み客のデータ元
「見込み客のデータ元」は、顧客未満の個人情報をどのような経路(ルート)で獲得したのかを管理する項目です。
Zoho CRM の画面上では、以下のような項目があらかじめ用意されています。


「見込み客のデータ元」を管理することで、データの登録日と併せて抽出し、「今月の展示会の参加者だから早めに初回フォローを行うべき対象者である」といった判断がつきやすくなります。
また、さまざまなマーケティング・営業活動を行い、CRM/SFAツールに履歴を残していくことで、どの経路から獲得した見込み客が商談化しやすい、短期間で受注にまで至りやすい、大型案件化しやすいといったデータが蓄積されます。
このようなデータに基づいて、例えば、「今期は残り3カ月だから、短期間で受注にまで至りやすい経路であるWeb問い合わせからの見込み客への対応に注力する」といった意思決定を行えるようになります。
Zoho CRM に用意されている「見込み客のデータ元」は、あくまでさまざまな業界や顧客で利用されている項目を集めたサンプルですので、自社で管理すべき項目にカスタマイズして活用しましょう。
選択肢をカスタマイズする方法は以下の動画を参照してください。動画内では、いくつかの不要な項目を削除して、項目のカスタマイズが画面上に反映されていることが確認できます。

見込み客のステータス
「見込み客のステータス」は、見込み客がどんな状態にあるかを管理し、誰が何をすべきなのかを明らかにするための項目です。
Zoho CRM の画面上では、以下のような項目があらかじめ用意されています。


「見込み客のステータス」を管理することで、例えば
- すでに一度連絡をしていて、今後連絡が不要な見込み客なのか(競合であったなど)
- 予算確保などもされておらず、当面はメルマガで関係をつなぐべき顧客なのか
- すぐにでも営業担当者がフォローを行い、商談化に向けたアクションを行うべき見込み客なのか
などが判断できるようになります。
また、個別のデータの判断だけでなく、
- 今月に登録されてまだ何もアクションされていない見込み客が何件あるのか
- 担当者がそれぞれ抱えている見込み客のステータス別の見込み客件数
などを集計することもできるようになります。
Zoho CRM に用意されている「見込み客のステータス」も、さまざまな業界や顧客で利用されている項目を集めたサンプルですので、自社で管理すべき項目にカスタマイズして活用しましょう。
カスタマイズは、「見込み客のデータ元」と同じように実施できます。
レポートによる見込み客の一覧と集計
Zoho CRM では、「見込み客のステータス」や「見込み客のデータ元」などの重要な項目に基づくさまざまなレポートがあらかじめ用意されています。
レポートによる「見込み客のステータス」や「見込み客のデータ元」ごとの見込み客件数や一覧の確認手順については、以下の動画を確認してください。

上記の動画のレポートを活用することで、組織における見込み客の状態や件数を簡単に把握することができ、マネージャ―が各担当者にフォロー・指示を出しやすくなり、各担当者は自分が対応すべき見込み客とアクションを名確認理解できるようになります。
今回はCRM/SFAツールを活用する例として、見込み客の管理について学んできました。
本レッスンで学んだ内容は、組織内でDXを進めていく上で、マーケティング領域における最低限の顧客情報のデジタル化の一例といえます。
実際のマーケティング・営業活動においては、今回ご紹介した環境やデータを活用して見込み客へのフォローを行い、さらに対応を進め、最終的に受注・納品を目指した活動を行っていくことになります。
次回のレッスンでは、見込み客のフォロー後に行う見込み客の変換、マーケティング・営業活動をまたいだ業務プロセス管理について学んでいきます。
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