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- 1.[基礎学習] CRMとは6 解説動画
- 2.[基礎学習]CRMの導入目的と実現手段
- 3.[基礎学習]顧客視点によるビジネス課題の特定と優先順位付け
- 4.[基礎学習] CRMによる具体的な課題解決
- 5.[基礎学習] CRMに登録するデータと活用の考え方
- 6.[実践編] CRMの環境準備と導入ステップ
- 7.[実践編] ユーザーを追加して、役職と権限をコントロールする
- 8.[実践編] CRMの初期設定をカスタマイズしましょう
- 9.[実践編] CRMのデータベースに顧客とのやりとり履歴を追加する - メール基礎編
- 10.[実践編] CRMのデータベースに顧客とのやりとり履歴を追加する - メール応用編
- 11.[実践編] CRMのデータベースに顧客とのやりとり履歴を追加する - 電話編
- 12.[実践編] CRMをカスタマイズしてデータをインポートする
- 13.[実践編] Webフォームから直接CRMに登録して担当者を割り当てる
- 14.[実践編] レポートをCRMで作成する方法
CRMの導入目的
CRM(Customer Relationship Management)は、その名の通り顧客との関係性を向上し、長期的な業績向上を実現するマネジメント手法です。
しかし、一言でCRMといっても、組織によって導入目的は異なるため、目的とその実現手段を意識した導入・活用を行わなければ、成果を上げることはできません。ここでは、一般的なCRMの導入目的を3つご紹介していきます。
目的①顧客理解
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CRMを導入する第一の目的は、顧客を深く理解することです。
企業は、顧客への理解を深め、商品開発や営業活動の改善などに活かすために、顧客にアンケートを取ったり、顧客の購入履歴を保存したり、さまざまな顧客に関連する情報を集めたりします。しかし、顧客や顧客との接点が増えるにつれて、顧客に関する情報量が増加し、情報の管理が追いつかず、せっかくの情報を活かすことができない状況が発生します。
このような状況では、顧客ニーズの変化に対応することができず、ニーズの変化に伴う売れ筋商品の変化などに気付くのが遅れたり、顧客から信頼を得られづらくなり、競合との競争に負けてしまうといったことが起こりやすくなります。
そこで、顧客に関連する情報が増大する状況に対応するために、CRMが導入されます。CRMによって、必要な顧客関連情報を自動・手動問わず収集・活用する環境が準備され、顧客理解を進めるための仕組みが構築可能となるのです。
つまり、CRMを導入・活用することで、自社にとっての顧客全体の状況や変化、個々の顧客の状態を把握して適切な行動をとることができるようになります。
目的②長期的な関係構築による業績の向上
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CRMの導入のもう一つの目的は、顧客との長期的な関係を築くことで、安定した収益基盤を構築し、持続可能な成長の実現を目指すことです。
顧客への営業活動や販売活動を行う組織では、月や四半期、年度といった短い期間の中で受注や売上といった成果を求められることが多く、現場の担当者は顧客との長期的な関係性作りよりも、短期的な成果を求めた活動をとりやすくなります。
短期的な利益を求めた活動は当然ながら顧客の離反を招くこととなり、常に新しい顧客を獲得する必要が出てきます。新しい顧客の獲得は、既存顧客との取引に比べて、広告の出稿や展示会への出展など、コストのかかる施策が必要となり、また既存顧客との取引に比べ失注率も高く、信頼を得るまでの期間を要することも多くなります。つまり、同じ売上を獲得するのにコストが掛かるため、組織全体の利益にマイナスの影響が出やすくなるのです。
そこで、短期的な利益よりも顧客との長期的な関係性作りに主眼を置いた組織運営が求められ、その実現のためにCRMが導入されます。CRMによって、短期的な売上だけでなく、中長期の売上や利益が顧客単位で見える化されます。利益などの結果が見える化されることで、現場の担当者の意識が変わり、顧客との信頼関係作りが自身の利益にもつながることが明確となり、担当者レベルで行動が変わっていきます。
つまり、CRMを導入・活用することで、組織全体が顧客との長期的な関係性作りを重視した意識を持つようになり、現場の担当者が継続的な業績向上を目的とした適切な行動をとることができるようになります。
目的③顧客の優先順位付けによる業務効率向上
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CRMの導入の目的の一つに、組織内の活動の業務効向上が挙げられます。
すべての見込み客や既存顧客を手厚くフォローできればよいのですが、実際問題として、ほとんどの組織ではすべての顧客に完璧な対応を行うだけのリソースを保持していません。そのような状況で、新規顧客開拓や既存顧客フォロー、事務手続きまでを現場の営業担当者に任せて成果を求めると、手が回らないことによる優良顧客の離反、現場の疲弊やミスの多発、離職率の増加などさまざまな問題が起こります。
そこで、自社にとって継続的な関係作りを行うべき顧客を選び、優先順位ごとに行動を変えるような、自社のリソースの効率的な活用が必要となります。具体的には、長期的な利益につながる顧客やブランド向上につながるような優先順位の高い顧客に対しては、各担当者が手厚いフォローを行う一方で、それ以外の顧客に対してはテクノロジーを活用した効率的なフォローを行うことが求められ、その実現のためにCRMが導入されます。
つまり、CRMを導入・活用により、顧客を適切に分類することで、ある時点でどの顧客に対する活動を優先すべきなのかが明らかになり、組織全体の業務効率化を実現できるようになります。
CRMの導入目的を達成する手段
CRM導入の目的が整理できたら、次に考えるべきは具体的にどのようにその目的を達成するのかの手段を明らかにすることです。
CRMを導入した後に、どのようなデータを活用して、営業活動や顧客とのコミュニケーションを変化させ、求める成果を生み出すのかを具体的にイメージしましょう。
手段①顧客情報の一元管理とマルチチャネル対応
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CRM導入の第一歩として、あらゆる顧客情報を一元管理する仕組みを整えることが重要です。顧客情報が異なる部門やツールに分散していると、全社的な顧客理解が阻害され、迅速な意思決定が困難になります。さらに、顧客との接触が複数のチャネル(電話、メール、SNS、チャットボットなど)にまたがる現代において、統合された管理は欠かせません。
また、今までは営業担当者の頭の中やメモ帳にだけ存在したような、属人的に管理されていた情報も収集し、組織横断的に活用できる仕組みも重要となります。
ただし、すべての情報を集めようとすると、情報の取得コストの問題もあり、取得・保存コストに対して適切なリターンが得られない可能性もでてきます。例えば、営業担当者に利用するかどうかもわからない情報の収集と入力を命じても、信頼性の低いデータが集まるだけで、一切活用できないといったことが起こりえます。
特に手動でデータを集めざるを得ない情報などは、絞り込んで獲得し、自動で収集できるデータと区別して管理する必要があります。自社の活動にとって重要な情報から収集し、徐々に顧客情報に紐づけるデータを増やしていくことを検討しましょう。
具体例①: ある食品卸売業の中小企業では、営業担当者が顧客ごとの課題や興味・関心、購入頻度や予算などを個人的に把握していました。しかし、担当者が異動や退職すると、顧客の情報が完全には引き継がれず、顧客対応の質が低下する問題が発生していました。CRMを導入し、全顧客の基本情報や過去のやり取りをシステムに記録することで、この問題が解消され、誰でも迅速かつ適切な顧客対応が可能になりました。
具体例②: あるECサイトで雑貨販売を行っている企業では、SNSの運用を行っているマーケティングチームと問い合わせ対応を行うカスタマーサポートチームで顧客情報が別々に管理されていました。この結果、SNS経由で入って来たクレーム処理の際に情報不足が原因で対応が遅れ顧客満足度の低下を招く場面が頻繁に起こっていました。CRM導入後、顧客の販売履歴や問い合わせ情報だけでなく、SNSでのコミュニケーション履歴も統合することで、迅速かつ一貫性のある対応が可能になりました。
手段②
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CRMでデータの一元化が進み始めたら、次にデータの具体的な活用を進めていく必要があります。顧客数や売上などの基本的な情報や顧客への活動履歴を基にPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回すことで、営業やマーケティング活動を最適化することができるようになります。
例えば、自社が掲げる売上目標を達成するには、一定の顧客数や受注率、顧客単価を達成することが求められます。目標が未達に終わった際に、顧客獲得数が少なかったのか、受注率が足りていなかったのかなど、どこに原因があったのかを明らかにしない限り、次の期の目標達成はおぼつきません。
マーケティング活動や営業活動など自社のどの領域に課題があるのかを明らかに、その課題をクリアするためにデータを活用する文化を組織に根付かせていきましょう。
具体例①: ある保険会社では、見込み客への営業活動を行う対象の絞り込みや実施タイミングを個人の経験や勘に頼っていました。CRM導入後、各顧客とのやり取りやキャンペーンの反応を記録し、それに基づいて次のアクションを計画するPDCAサイクルを構築。過去のフォローアップが契約につながったケースの分析を基に、最適なフォローのタイミングと方法をチームで共有し、新規契約率が向上しました。
具体例②: ある建築資材メーカーでは、定期的に展示会に出展し、顧客の獲得を行っていましたが、投資対効果が見えていないことが課題でした。CRMを導入したことで、各展示会の出展費用、獲得した見込み客、商談発生率、受注率、受注金額などを簡単に集計できるようになり、投資対効果を判断できる環境が整いました。投資対効果の低い展示会出展を取りやめ、メディア出稿などの新たな施策への予算の振り分けを行い、マーケティング施策の全体最適化を図れるようになりました。
手段③データを活用した顧客のセグメンテーション
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組織の業務効率を上げるために有効なのが、CRMに蓄積されたデータを活用した顧客のセグメンテーションです。顧客のセグメンテーションとは、顧客を共通の属性や行動履歴に基づいてグループ化し、それぞれに最適なアプローチを行う手法です。組織内の限られたリソースを最大限に活かすためには、顧客のセグメンテーションによる優先順位付けが有効となります。
例えば、企業が抱える課題は、規模や業種によって共通のものとなりやすい傾向があります。その共通の課題を解決する商品やサービスを新たに開発し提供することで、より高い付加価値を提供することができるようになります。
また、顧客の購入履歴などに基づく分析により顧客を分類し、コストを掛けることでより大きなリターンが見込める顧客を見極めたり、今後優良顧客に育つ可能性が高い顧客層に対する施策を実行するなど、効率的な活動が行えるようにもなります。
注意点としては、取得しやすい年齢や性別、企業規模や業界などの属性情報だけでは、有効な施策が見いだせない可能性があることです。既存の優良顧客がなぜ自社の商品やサービスを選んでくれているのか、どこに価値を感じてくれているのか、それはどんな人や組織にとって共通化されるのかなどを分析し、さまざまな活動に活かしていく必要があります。
具体例①: ある中小規模のIT企業では、すべての顧客に対して同じ頻度で営業活動を行っていましたが、重要顧客への対応が手薄になる問題がありました。CRMを導入し、既存の取引実績だけでなく、成長率や社内シェア、担当者の価値観などによる新たな指標で、顧客を分類。優先度の高い顧客には専任の担当者をつけて、高頻度で定期的なフォローを行いました。それ以外の顧客には、予算編成時期などの重要なタイミングにアラートを出し、漏れのないフォローを行うことで、限られたリソースで最大限の効果を上げることができるようになりました。
具体例②: あるECアパレル企業では、顧客を購入金額や頻度に基づいて「VIP顧客」「通常顧客」「休眠顧客」に分類しました。VIP顧客にはさらなる購入を促す限定オファーを提供し、休眠顧客に対しては、再訪問を促すリターゲティング広告を配信することで、売上を増加することができました。
CRMで実現する持続可能な業績向上
CRMの導入は、顧客理解や顧客の優先順位付け、長期的な関係構築を通じて持続可能な業績向上を実現するための重要な手段です。これらの目的を達成するためには、顧客情報の一元管理、データを活用したセグメンテーション、そしてマルチチャネル対応や活動履歴に基づくPDCAサイクルを効果的に活用することが必要です。
CRMを目的に沿って正しく導入・活用することで、単なるシステム導入に留まらず、企業全体の営業力やマーケティング力を強化することが可能です。まずは、自社の目的に合わせたCRM選びから始め、少しずつその効果を実感していくことが成功の鍵と言えるでしょう。
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