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[基礎学習] CRMに登録するデータと活用の考え方

ここまでのレッスンで見てきたように、CRM(Customer Relationship Management)は、顧客に関連する様々なデータを保存・活用し、企業の業績向上に貢献するデータ活用プラットフォームです。しかし、CRMにあらゆるデータをただ保存すればよいという訳ではなく、データの入力・管理コストを踏まえて、適切なデータを保存・活用しなければ、せっかくのデータも宝の持ち腐れとなってしまいます。本記事では、CRMを活用するために保存すべきデータやデータ構造などについて解説します。

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[基礎学習] CRMに登録するデータと活用の考え方

そもそも顧客データとは?

CRMは顧客データを一元管理するサービスですが、顧客データといっても様々なデータがあり、どのようなデータが役立つのかを整理した上で、保存や活用を行う必要があります。

代表的な顧客および顧客関連情報としては、以下のようなものがあります。

顧客関連情報

顧客の基本情報

顧客の基本情報とは、個人を特定したり、コミュニケーションをとるための基本的な情報のことです。

具体的には、「姓」「名」「郵便番号」「住所」「電話番号」「メールアドレス」「SNSのID情報」などです。「住所」は後々の利用を考えると、「都道府県」「市区町村」「番地」「建物名」などに分けて管理すると活用しやすくなります。また、法人取引の場合には、「会社名」「部署名」「役職名」「会社の電話番号」なども必要となります。法人取引の場合には、名刺に記載されているものが顧客の基本情報と理解しておけばよいでしょう。

基本情報は、CRM上で必ず管理されるべき項目ですが、基本情報だけでは単なる顧客リストとしての利用しかできないため、以降で説明する属性情報などと合わせて管理することでデータ活用の付加価値が生まれます。

顧客の静的な属性情報

顧客の静的な属性情報は、個人を分類し分析に利用したり、アプローチやフォローの優先順位をつけたりする際に必要な情報です。頻繁には変わらない情報ですが、年齢や職業などは定期的に変わる可能性があるため、一定周期で確認を行わなければならない情報です。

具体的には、「性別」「年齢」「年代」「職業」「家族構成」「趣味」「年収帯」などです。属性情報は、比較的簡単に取得できるものもありますが、「家族構成」「年収帯」など取得しづらい(聞いても答えてもらいづらい)ものもあるため、別の項目を取得し推測することもあります。

法人取引においては、上記以外に「業界」「業種」「部門カテゴリ」「役職クラス」「抱えている課題」「興味・関心」などが挙げられます。ここでの「部門カテゴリ」や「役職クラス」は、名刺に記載されいてる部署名や役職名そのものではなく、例えば「人事」「営業」「マーケティング」などの部門のカテゴリや「経営層」「部門長」「課長」「担当者」といった階層を表す情報です。

詳細な情報をそのまま扱うのではなく、ある程度カテゴライズした情報を属性として扱うことで、顧客を分類しやすくなり、データ活用を進めやすくなります。

顧客の動的な属性情報

顧客の動的な属性情報は、顧客の行動に基づく属性情報で、Webのアクセス履歴や購買履歴情報などが該当します。

具体的には、「購入商品」「購入金額」「購入頻度」「購入最新日」「Webサイトの訪問回数」「Webサイトの訪問頻度」「閲覧ページ」「資料のダウンロード履歴」「セミナーへの参加履歴」などが挙げられます。

動的な属性情報は、顧客の興味や関心、検討状況などを表す情報であり、顧客の状態を把握し、コミュニケーションを取るタイミングを計る上で欠かせない情報です。基本情報や静的な属性情報と比べて、ITツールの活用がなければ取得が難しい情報ですが、一度取得方法が確立されると、自動で取得できる情報となりえます。

動的な属性情報を活用し始める段階が本格的なデータの活用の始まりだといえるでしょう。

顧客の購入・取引履歴

顧客との取引の履歴です。納品やサポートを適切に行う上で欠かせない情報であり、動的な属性情報の元データともなります。

顧客とのコミュニケーション履歴

メールやSNSでのやり取りや、問い合わせ窓口とのやり取りの履歴がコミュニケーション履歴です。個人や組織との履歴を残すことで、個別対応の品質が上がり、顧客満足度の向上につながります。

業務関連情報

顧客に提出する見積書や提案書、請求書などの書類情報やタスク、商談状況などの、業務を遂行する上で必要とされる情報や項目です。顧客側で意識することは少ないですが、業務の標準化や効率化を行う際には欠かせない情報です。

ここまで説明した各種情報のうち、自社の業務遂行や顧客との信頼関係構築に必要な情報を選択し、CRMで管理していきます。最初からあらゆる情報を管理しようとはせずに、基本情報と静的な属性情報から管理をはじめ、管理するデータの範囲を徐々に広げていくのがお勧めです。

CRMの一般的なデータモデル

先ほど説明した顧客関連情報をCRM上で管理を行うことになりますが、一般的なCRMのデータモデルは以下のような構造となっています。

データモデル

※「キャンペーン」や「コミュニケーション履歴」や「タスク」は、「見込み客」や「連絡先」「取引先」「商談」にそれぞれ紐づきますが、図表内では省略しています。

CRMでは、さまざまな顧客関連情報を管理するために情報を格納するテーブル(タブやモジュールとも呼ばれることもあります)が用意されており、各テーブルで適切な情報を入力・管理することで、業務に活かせるデータの準備が整えられます。

顧客の情報は、企業情報である「取引先」、顧客企業に所属する担当者の個人の情報である「連絡先」といった名称で分けて管理され、一つの「取引先」に複数の「連絡先」がひも付く形で管理される形が一般的です。

「見込み客」(リード)は、顧客情報の一種ですが、具体的な商談や取引が始まる前の今後顧客となりうる可能性のある個人や企業情報として管理されます。

なお、「見込み客」と「取引先」「連絡先」を別の情報として扱うことが、マーケティングと営業などの分業が行われてこなかった日本の商習慣とギャップを感じやすい部分といえます。

さらに「取引先」や「連絡先」に一連の営業活動や取引履歴に該当する「商談」や顧客とのコミュニケーション履歴、業務を遂行するために管理する「タスク」などがひも付きます。

それ以外にも、マーケティングや営業施策の対象者を絞り込み、進捗状況を管理したり、投資対効果を明らかにするための「キャンペーン」情報などを顧客情報と紐づけて管理するとこともあります。

ここまで様々な情報について説明してきましたが、最初からすべてのテーブルを利用する必要はありません。

既存の取引先や仕掛中の商談・案件などを管理するところからスタートする場合には、「取引先」「連絡先」「商談」から管理をはじめ、「見込み客」や「タスク」「見積書」など、徐々に管理の幅を広げていきましょう。

課題解決に必要なデータ

ここからは、レッスン4で解説した部門別に抱えやすい一般的な課題を元に課題解決に役立つデータの例を解説していきます。

マーケティング部門の課題解決に必要なデータと活用方法

課題例1.見込み客の状態の見極めと管理

マーケティング部門から営業部門に適切な見込み客を引き渡すためには、見込み客の状態を見極め、状態の変化の履歴を残す必要があります。

具体例としては、法人取引の場合、商品・サービスの検討状況を見極める項目としてBANT情報が有名です。

BANT情報とは、営業活動において顧客からヒアリングする際に用いられるフレームワークで、BANTは[Budget(予算)][Authority(決定権)][Needs(需要)][Time frame(導入時期)]の4つの要素から構成されます。

予算
Budget

予算はどれくらいあるのか。自社製品やサービスを購入するために必要な予算があるか。

決定権
Authority

自社製品やサービスを購入する決定権は誰にあるか。

需要
Needs

ニーズは何か。自社製品がそのニーズを満たせるか。

導入時期
Time frame

導入する時期はいつ頃か具体的に決まっているか。

見込み客として登録した直後には、明確になっていない項目も多く、すべてを聞き出すことは難しいですが、適切な情報提供を重ねて信頼関係を構築することで情報を獲得することも可能です。

例えば、見込み客テーブルで管理する情報として、BANT情報に該当する項目を追加し、4つのうち、3つの項目が一定条件を満たしたら営業に引き渡すといったルールを定めて運用することで、属人性を排除した業務プロセスを実行することが可能となります。

また、個別の見極め項目だけでなく、顧客の状態も管理する場合には、「見込み客ステータス」のような項目を利用するのが一般的です。

「見込み客ステータス」は、

  • [未確認]:見込み客として登録されたが、フォロー等を行っていない状態
  • [コールド]:可能性はあるが、具体的な検討まではまだ時間がかかる状態
  • [ウォーム]:検討が進みつつあるが、もう一押し必要な状態
  • [ホット]:具体的な検討が始まっている状態

のように分類を行い、マーケティング・インサイドセールス担当者が管理して[ホット]といえる状態になったら、営業に引き渡すといった運用が行われます。

上記の例はあくまで一例ですので、自社のビジネスモデルや商習慣にあった項目を利用して、顧客の状態の見極めと管理を行う必要があります。

課題例2.マーケティング施策の投資対効果の算出

マーケティング部門では、さまざまな施策を実行するため、施策ごとの投資対効果を算出し、注力すべき施策の選定や適切な予算配分を行います。

施策ごとの投資対効果を算出するためには、どのような施策で獲得した顧客なのかを明確にする必要があり、そのためには、「見込み客のデータ元」(リードソース)や「キャンペーン」テーブルとの紐づけが利用されます。

「見込み客のデータ元」項目を見込み客を獲得した時点で入力・保存し、その情報を顧客化した後の「連絡先」テーブルに引き継ぐことができれば、具体的どの施策によってどの程度の顧客を獲得できたのか、かかった費用と比べて売上につながった金額はどのくらいかなどを集計できるようになります。

「見込み客のデータ元」の具体例としては、[展示会][Web広告][SNS][セミナー]のような施策のカテゴリーレベルの選択肢を利用することで、それぞれのカテゴリーごとの受注金額や投資対効果を算出可能です。

さらに[2024年4月の〇〇展示会]のような個別の施策の投資対効果を算出する場合には、「キャンペーン」テーブルを利用して、[2024年4月の〇〇展示会]に紐づいている「見込み客」や「商談」情報をもとに集計します。

営業部門の課題の課題解決に必要なデータと活用方法

課題例1.効率的な営業活動のための顧客の優先順位づけ

効率的な営業活動を行うためには、顧客の優先順位付けが重要となります。

顧客の規模などが変わっても1顧客あたりに必要な営業活動量は大きく変わらないことも多いため、同じ時間をかけるのであれば、中長期に得られる売上や利益の金額が高い顧客を優先して活動を行う必要があります。

例えば、「取引先」単位でみた場合、過去の取引実績から、「業界」が[製造業]の顧客の売上比率が高い場合、他の業界よりも[製造業]を優先する方が効率的な活動につながる可能性があります。ただし、営業戦略によっては、あえて[製造業]以外の取引先をターゲットするということもありえます。

個人単位である「連絡先」でみた場合、「役職クラス」が[担当者]レベルよりも、意思決定者に近い[部門長]レベルである方が、受注率が高いといったこともあるでしょう。

さまざまな属性情報と過去の実績を組み合わせて、売上や利益率の高い「取引先」「連絡先」を導き出し、優先順位付けに役立てることが可能です。

なお、優先順位を決める要因が複数ある場合には、各要因をもとに数値情報として「スコア」を算出し、「スコア」の高い順にフォローを行うといったことも行われます。

課題例2.受注予測の精度向上

組織として売上目標を達成するためには、受注予測などの数字に基づいて、定期的な営業活動の見直しを行うことが求められ、この予測精度が高ければ高いほど目標達成は用意になります。

受注予測の算出方法にはさまざまなものがありますが、その一つが商談の進捗状況である「ステージ」による算出です。

ステージ

基本的な考え方は、商談プロセスである「ステージ」が先に進めば受注確率が上がるというロジックです。

過去の実績からステージごとの平均的な受注確率を算出し、商談ごとの「予想受注金額」と「ステージから導かれる受注確率」を掛け合わせて、受注予測金額を算出します。

例:予想受注金額が100万円で、ステージが[意思決定]であれば、受注予測金額は50万円

この受注予測の考え方は、組織における商談数が一定数あるようなビジネスモデルで有効です。大型取引が多く、商談数が少ない場合にはこの算出方法での受注予測はうまく機能しない可能性があります。

そのほかの受注予測の算出方法としては、営業担当者の予測による方法があります。例えば、担当者が管理する「受注予測ランク」のような項目を設定し、[ランクA]なら80%、[ランクB]なら50%、[ランクC]なら30%として計算する。あるいは、ランクA以上商談を受注予測金額の集計対象とするといった方法もありえます。

このような予測方法は、属人性が高くなりやすいため、明確な基準や判断のもととなる項目をどのように聞き出すのかといった標準化とセットで行う必要があることに注意しましょう。

受注予測モデルにはいろいろな考え方があるため、自社のビジネスモデルや過去の実績に基づく予測モデルを作り上げる必要があります。

なお、今回は、法人取引で営業活動を伴う場合の想定で説明を行いましたが、BtoCの場合には、顧客数や顧客カテゴリごとのリピート率、受注単価など元に算出を行うこともあります。

サポート部門の課題解決に必要なデータと活用方法

課題例.顧客状況に応じた適切なサポートの実施

顧客満足度の向上につながるサポートを実施するためには、顧客がどのような状況で問い合わせてきているのかを把握した上で、適切な対応を行う必要があります。

顧客の状況は、取引履歴などを見れば判断がつけられることが多いですが、効率的な対応を進め、属人性を排除するためには、できれば顧客の状況が一目でわかる管理項目があるとよいでしょう。

具体的には、「取引先」単位でみた場合、「取引開始日」のような項目を用意し、

  • 新規顧客:取引開始から半年以内
  • 既存顧客:取引開始から1年以上で、6か月以内に取引がある
  • 休眠顧客:取引開始から1年以上で、6か月以内に取引がない

といった分類をすることで、[新規顧客]は商品やサービスの理解が浅い前提でサポートを行ったり、[休眠顧客]は取引再開の可能性が高いことから営業担当者と連携を取りながらサポートを行うといったことが可能となります。

取引期間以外でも、トータルの「受注金額」や「LTV」(Life Time Value)や戦略的に取引拡大を行いたい「業界」などを使って、対応を変化させるといったこともあり得ます。

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