【はじめに】KPIの設定方法
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まず、KPIの設定方法の手順をおさらいしておきましょう。
[KPIの設定と振り返り方法まとめ]
- KGIとKPIの設定
a. 目標となるKGIを確認する
b. KGIと現状ギャップを洗い出し、その関連する指標を洗い出す
c.KGIに対してKSFとなる要素を吟味し、策定する
d. SMARTの原則や四則演算、要素の重複などに注意しつつツリーを作成
e. 重要要素となるKPIを策定する - データを収集できる体制を作る
a. 属人化させないことが重要 - そのデータを基にモニタリングと評価をする
- 業務プロセスの改善をする
KPIの設定方法の基本を学びたい方はLesson 1 をご覧ください。
今回はこのLesson 1 を基に、営業部門のKPI設定のシチュエーションを想定して解説します。
営業KPIの設定時のよくある失敗
営業 KPI を設定する前に、よくある失敗を把握しましょう。 よくある失敗は以下の2点です。
- 安易に営業活動量をKPIにしてしまう
- 平均顧客単価を軽んじる
事前に失敗を把握することによってリスクを回避できます。
安易に営業活動量をKPIにしてしまう
平均顧客単価は簡単には向上させられないため、営業活動量をKPIに設定しがちです。営業活動量とは、商談数に関連する「架電数」「訪問数」が代表的です。
ただし、営業担当者の時間は有限であり、架電や訪問を気合いと根性で増やす目標は現実的ではありません。
例えば、4月に目標架電数が1,000件、5月が2,000件に設定したとします。営業日数が20日と考えて1日の架電数は50件から100件に増加します。5月は大型連休があるため実際はもっと電話をかける必要があります。
1件当たりの架電時間を短縮するだけでは対応できない数です。架電できる時間をもっと増やすため、顧客や社内から依頼されたタスクの優先順位は下がり、営業時間外に残った業務を対応する人もいるでしょう。
4月 | 5月 | |
目標架電数 | 1,000 | 2,000 |
また、営業活動量を増やしても結果が出なかった場合、安易に設定したKPIに振り回されて疲弊するだけでなく、営業担当者のモチベーションが低下するリスクがあります。
業務に集中できていない状態で架電を行うと、アポイントメント(以下アポ)をとりあえず取りたいという気持ちが先走って実績を誇張して提案してしまうかもしれません。商談時に電話で聞いた話と違うというクレームが発生する可能性が高くなり、会社としても信頼を失い、機会損失が生じるでしょう。
平均顧客単価を軽く見てしまう
平均顧客単価を安易に下げる値下げキャンペーンを実行してしまう組織が一定数あります。
例えば、KPIを商談数に設定しているのに、平均単価を下げる値下げキャンペーンを期中に無計画に実行してしまうケースです。法人向けに1台100,000円のPCを販売している場合、期中に1台50,000円の値下げキャンペーンを行うと売上が半減してしまいます。
商談数 | 成約数 | 売上 |
20 | 4(成約率20%) | 400,000円(1台100,000円) |
20 | 4(成約率20%) | 200,000円(1台50,000円) |
値下げキャンペーンで一時的に商談数や成約率は上がるかもしれませんが、当初見込んだ売上400,000円に届くためには、2倍の商談数が必要、という計算になります。
商談数 | 成約数 | 売上 |
40 | 8(成約率20%) | 400,000円(1台50,000円) |
値下げのアピールにより「お得にサービスを利用できる」と感じてもらえ、一時的に商談数が増えるかもしれませんが、売上目標を達成するには商談数の総数を増やさなければなりません。架電も行っている営業担当者は、2倍の商談数を設定しなければならず、疲弊してしまうでしょう。
営業における重要KPIを定めるコツとStep
営業における重要KPIの定め方のコツをStepで紹介します。
Step1:企業の前提条件を洗い出す
Step2:前提条件を基にステークホルダーとKPIをツリー化、ブレイクダウンする
Step3:マネジメントできる対象を吟味、重要KPIを決定する
Step4:ひも付くマーケティング施策を決定し、ステークホルダーに意図を共有する
Step5:KPIモニタリング体制の確立・KGIの相関関係の検証をする
ここでは各Stepについて詳しく解説します。
Step1:企業の前提条件を洗い出す
営業領域では、何を重要指標にするかによって結果が大きく変わります。
KPI設定を誤る原因は、前提条件の洗い出し漏れであることが少なくありません。まずは前提条件を洗い出しましょう。
営業領域におけるKPI設定時の重要な変数は、以下の2点です。
- 成約件数
- 平均顧客単価
成約件数をKPIに設定する場合は、商談数を増やすか成約率を上げるかによって対策が変わってきます。
平均顧客単価をKPIに設定する場合は、リピート商談数を増やすのかリピート成約率を上げるかによって対策が変わるでしょう。
Step2:前提条件を基にステークホルダーと関連指標をツリー化、ブレイクダウンする
上記の前提条件を加味し、KPIツリーを作成していきましょう。
第一のポイントとなるのは、前提条件で洗い出した、ステークホルダーを加味することです。どこ指標をどの部署がコントロールしているのか、自分でコントロールできるのはどこなのかを明確にしましょう。
例えば、今回のケースでは売上を10%アップすることを目標に設定します。
その場合、関連指標とステークホルダーを洗い出すと以下のようになります。
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KPIから逆算して、売上を10%アップするためには、何件のリード数が必要になるのかを、あらかじめマーケティング担当者と認識を合わせる必要があるでしょう。
Step3:マネジメントできる対象を吟味、重要KPIを決定する
前提条件で洗い出したステークホルダーや、成約件数または平均顧客単価のどちらを重要な指標にするかによって対策が異なります。
営業のKPIからは、自部署でコントロールできないものは除外しましょう。そして、どのKPIがKGIに波及効果をもたらすかを見定めて、重要なKPIを設定します。
今回のケースでは、マーケティング部が一定の施策を実施し、リード数が十分にあるとします。営業部門は成約率に自信があるため、商談数を増やすためにアポ獲得率を第1のKPIに設定し、母数が多いリードに対して架電を優先させることにしました。
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Step4:ひも付く営業施策を決定し、ステークホルダーに意図を共有する
KPIツリーを参考にしながら、どのような施策を実施すべきかを決めます。
例えば、アポ獲得率を上げるために、AIが搭載されたクラウド電話サービスを利用し、ハイパフォーマーのトーク内容を文字起こしして分析することにしました。
分析すると、ハイパフォーマーは架電をする前に顧客情報を調べ、仮説を立てた内容を基にニーズを確認しながらサービスのメリットを提案しているのに対し、ローパフォーマーは一方的に提案をしていることが明らかになりました。
施策として、ハイパフォーマーがどのように顧客情報を調べ、仮説を立てているのかをマニュアル化し、共有することができます。一方的な提案を減らすだけでなく、顧客に寄り添った提案ができるようになるでしょう。
ステーホルダーに意図とタイムラインの共有を
施策が決定したら、マーケティング部などのステークホルダーに意図とタイムラインを共有しましょう。マーケティングと営業ではお互いの目的が違うため、背景を事前に共有しないと足並みがそろわない可能性があるからです。
例えば、架電のために必要なリードがあり、マーケティング部から顧客リストが共有されたとしても、実際に営業担当者が架電してみると、顧客のニーズと自社のサービスがかみあわないことがあります。。
架電の結果が悪かった場合の対策をマーケティング部門と話し合っておかないと、月末が近くなっても十分な商談を獲得できず、目標が未達になるケースが発生しかねません。
ステークホルダーにタイムライン、KPI指標、意図を事前に共有し、以後の円滑なコミュニケーションができるようにしましょう。
Step5:KPIモニタリング体制の確立・KGIの相関関係の検証をする
Step 5では、営業の施策に対して、定めたKPIと関連指標を常に把握できることが重要です。
しっかりとした体制を作らないと、進行後に数値の棚卸しができず、改善ができなくなるためです。
例えば、オンラインで共有できる表計算シートやCRM/SFAツールなどを用いてKPI数値をモニタリングする体制を整えることが必要です。
日々の営業活動量とKPIの実績を照らし合わせることによって、目標達成が可能かを把握できます。1週間の行動を見て目標数値から大きく遅れている場合は、早期に対策を講じましょう。
以上のように、日々の営業活動からKGIに及ぼす影響度を観測し、初期の仮説に基づいたKPIを検証していきましょう。
これらのStepをもって、一連のPDCAが回り始めます。
BtoB・BtoCにおける営業KPI設定のケーススタディ
BtoC、BtoBそれぞれの典型的なケースを紹介します。
BtoC営業のKPI設定
サービスの認知度がある企業の場合
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サービスの認知度が高くすでに多くの反響がある場合、営業担当者が商談を増やす努力をそれほどしなくてもよく、いかに即決してもらうことが重要になります。
例えば、不動産賃貸営業の場合、不動産業者専用のデータベースで物件情報を共有しているため、不動産屋によって紹介される物件に大きな違いがないことがあります。
顧客から「希望の物件がないので他でも探してみます」と言われないように、即決してもらい成約率を上げるための対策が必要です。
紹介した物件を気に入ったkれど家賃を抑えたいと考えている顧客には、即決した場合の割引を用意して決断を促したり、ハイパフォーマーのクロージング方法を同席して観察し、トーク内容をメモしてロールプレイングを行うことで、顧客に今契約しなければ損をすると感じてもらえる提案ができるようになるでしょう。
関連商品が豊富な企業の場合
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関連商品が豊富な企業の場合、売上アップのためには、やみくもに顧客を増やすというよりも、主要な商品を購入する際に関連商品を一緒に購入してもらうことで、購入単価を上げていくことが可能です。
例えば自動車ディーラーの営業の場合、車を販売する際にバックモニターやドライブレコーダーといったオプションを提案することで購入単価の向上を図ったり、車を初めて購入する顧客には、オイル交換や自動車保険の更新手続きをサポートするメンテナンスパックを購入してもらうことにより、同じ顧客数でも売上を上げていくことができます。
関連商品を選定する方法は以下の通りです。
- 購買情報から過去3カ月間などの一定期間で人気商品Aを購入したユーザーを抽出する。
- 人気商品Aを購入したユーザーが同時期に購入した商品を抽出する。
- 人気商品がA以外にも複数ある場合は、①と②の順にデータを抽出する。
選定後は、セット商品を設計し、まとめ買いすることで顧客にメリットがあることを提案し、反応を見ながらクロージングの改善を図りましょう。
BtoB営業のKPI設定
狭い市場の企業の場合
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狭い市場でビジネスをする企業の場合、そもそも顧客の数が限られていて商談数をどんどん増やせる状況にはありません。成約率も劇的に改善できない、となると売上に貢献できるのは単価となります。
例えば、工作機械を営業する場合、営業担当者が業界に関する情報を定期的に提供するなどして付加価値を上げて値上げしたり、工作機械を含めた製造システム全体のプロセス改善を提案できるようにしてコンサルタント料を設定する、といったことができます。
商談での営業力が強い企業の場合

経験豊富な営業担当者がそろっている成約率が高い企業の場合、商談に持ち込みさえすれば売上に貢献する確率が高まるため、商談数を確保することこそが重要です。
例えば、スタンダードプランが100,000円のクラウドサービスを提供しており、月の商談数が10件で成約率が30%の場合、売上は300,000円です。
- スタンダードプラン: 100,000円
- 成約率: 30%
- 商談数: 10件
計算式は以下の通りです:
10件(商談数)×30%(成約率)=3件(成約件数)
3件(成約件数)×100,000円(スタンダードプラン)=300,000円(売上)
さらに売上を上げるためには、商談数を増やす必要があり、どのアプローチが効果的かを検討します。
架電でのアポ獲得のみ行っていたのであれば、営業からの個別メールを送ってアプローチしてもよいでしょう。架電のアポ獲得率について、営業担当者別に差があるのであれば、アポ獲得率が高い担当者のノウハウを共有する取り組みも効果的です。活動量
営業におけるKPIからボトルネックを発見する方法
営業における成果は行動と質によって大きく変わるため、日々の営業活動量を管理しつつ、KPIからボトルネックを発見して早期に対策を講じましょう。
行動のボトルネックを発見する方法は、過去と当月の活動量を比較することです。
例えば、新人営業担当者の架電数が5月に比べて6月の方が落ちている場合、モチベーションが下がっていることやクレーム対応に追われていたなど、数字から原因を把握して改善策を考えられるからです。
架電数 | アポ数 | 提案数 | 成約件数 | |
5月 | 1,000 | 10 | 5 | 2 |
6月 | 600 | 6 | 3 | 0 |
また、質のボトルネックを発見する方法も、過去と当月の提案数を比較すると発見できます。
例えば、法人向けのPCを販売しており、先月に比べて成約率が3割落ちた場合、営業先のエリアや業界を変えたことが原因ではないかと仮説を立てられたならば、翌月はエリアと業界をいったん戻す、といった打ち手が考えられます。さらに、今後エリアや業界を変える場合は成約率が下がることを想定した体制をあらかじめ組む、といった対策ができます。
架電数 | アポ数 | 提案数 | 成約件数 | |
5月 | 1,000 | 10 | 5 | 3 |
6月(当月) | 1,200 | 12 | 4 | 1 |
上記で説明したKPIからボトルネックを発見する方法はあくまで一例ですが、過去の営業活動量と比較することにより、仮説を立てたり課題を明確にすることから始めましょう。
KPIから営業組織を強化する方法
KPIから営業組織を強化する方法は以下の3点です。
- 結果が出やすいタスクを優先する
- KPIを管理しやすいツールを活用する
- 適切な人材の配置
KPIを管理しつつ、営業組織を強化する方法を学びましょう。
結果が出やすいタスクを優先する
KPIを達成するための解決策を考え、結果が出やすいタスクを優先して行動することで、生産性が向上するだけでなく、結果までのスピードも速くなります。
例えば、成約率を20%から30%まで上げたい場合、解決策を洗い出して、成果の出やすいタスクを決定しましょう。
期間限定で割引の提示をすれば成約率を上げられると判断した場合は、どのタイミングで割引の提案をするのかシミュレーションを行ったり、成約した顧客の共通点を分析してみましょう。
設立10年目からの企業からの成約率が高いと分かった場合、リードを見直す必要があるかもしれません。
KPI | 解決策 | 成果の出やすさ |
成約率20%→30% | 成約した顧客の共通点がないか分析する | B |
期間限定で割引の提示をする | A | |
成功事例集を作成して提案をする | C |
限られた営業時間内で効率よく成果を出すためには、何を優先して行動すべきかを考えてみましょう。
KPIを管理しやすいツールを活用する
KPIを管理しやすいツールを活用しましょう。
入力がしづらかったりすると、業務の負担が増えるだけでなく、誤入力をすると実際の活動量にズレが生じてしまい、KPI未達の原因となります。
Excelなどの表計算ツールを共有して利用する場合、データが壊れるリスクがあるだけでなく、誤ってデータを削除してしまうこともあります。
定期的にデータのバックアップを取るなどの対策を講じましょう。
適切な人材を配置する
KPIの進捗を他の営業担当者と比較することで、成約率が高いことや架電からの商談化率が高いなどの強みが明らかになることがあります。
例えば、BさんはAさんより架電が得意で、AさんはBさんよりクロージングが得意であることがわかります。
営業担当者 | 架電数 | アポ数 | 提案数 | 成約件数 |
A | 1,000 | 10(アポ率1%) | 6 | 3(成約率50%) |
B | 1,000 | 25(アポ率2.5%) | 4 | 1(成約率25%) |
営業の効率化を図るために、一気通貫型の営業ではなく分業制を採用する組織も増えているため、成約率が高い担当者にはフィールドセールスの業務に集中してもらうなど、営業担当者の成果が出しやすい環境を整えるための人材配置が大切です。
営業担当者も自身の強みが分かった状態で業務に取り組むことができ、成果に貢献した場合はチーム内で認められ、自信をつけられるでしょう。
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