配信・録画場所の設営
ウェビナーの配信・録画を行うには、まず場所を決める必要があります。自社の会議室などを使う場合のほか、担当者が自宅から1人で配信・録画を行う場合、あるいは、登壇者が複数いたり質の高い映像が求められたりするケースでは貸しスタジオを使うことも考えられます。
会場に出席者を集めて行うセミナーの映像を配信するケースでは、ホールや貸し会議室などの利用も考えられます。ウェビナー用の機材やサポートを合わせて提供する会場もあります。
いずれの場合でも、重要なのは安定した映像と音声を配信できるかどうかです。通信環境や、雑音が入りこまない環境であること、画面への関係者の映り込みを防げるかなど、条件をクリアできる配信・録画場所を確保する必要があります。
特に、会社や自宅から配信・録画を行う場合には、これらの条件を満たしているかを十分に考慮しましょう。場合によっては、照明機材を利用して映像品質を高める工夫も必要になります。
配信状況・機材設定の確認
会場を確保したら機材の設営と設定を行い、通信環境に問題がないかをテストします。
ウェビナーはカメラとマイクが付いたPCがあれば配信できます。しかし、対談形式やパネルディスカッション形式で行うセミナーでは、複数のマイクやミキサーが必要になります。
また、複数のカメラを使ったライブ配信ではスイッチャーやモニターといった設備も必要です。これらの機材の接続が正しいかどうかを確認した上で、出力される映像や音声に問題がないかどうかをチェックします。
通信環境はインターネットの回線速度に依存します。代表的なウェビナーツールであるZoomが公表している「帯域幅の要件」によると、配信者側に求められる回線速度は、1080p HD ビデオの場合で3.8Mbps/3.0Mbps(上り/下り)です。
有線接続であれば数十から数百Mbpsの速度が確保できるため、ほとんどのケースでは問題ないと考えられますが、Wi-Fi環境で接続する場合は配信場所の回線速度を確認しておく必要があります。
Zoomでは「練習セッション」という機能が用意されており、特定の視聴者をパネリストとして招待し、本番の設定で問題がないかどうかをチェックすることができます。登壇者のリハーサルと機材設定・配信状況のチェックを兼ねて練習セッションを活用しましょう。
開催中の動き
ウェビナーをライブ配信でなく録画する場合は撮り直しや編集が可能であるため、1人ですべてを行うことも可能です。
ライブ配信の場合はトラブル対応や出席者とのやり取りへの対応など、専任の担当者を置く方がウェビナーをスムーズに進行することができます。
配信中の機器操作
前述したPC以外の映像・音声に関わる機材をライブ配信のウェビナーで使う際には、機材をリアルタイムで調整する担当者を置くことで、登壇者がプレゼンテーションに集中することができます。
特に、機材トラブルが発生する可能性を考えると、スムーズな対応を取るために機材の設定やインターネット通信などに詳しい担当者がいることが望ましいでしょう。
出席者とのやり取り
ツールによって機能は異なりますが、ほとんどのウェビナーツールではライブ配信を行うなかで出席者とのやり取りを行うための機能が備わっています。これらの機能は出席者のエンゲージメントを高める上で重要な役割を果たします。
Zoomウェビナーではライブ配信中に出席者とのやり取りを行うための、次のような機能を使うことができます。
機能 | 内容 |
手を挙げる | 挙手した参加者がホスト側にリストで表示される |
チャット | ホストによるアクセス許可に応じてホスト・パネリストにチャットが送れる |
リアクション | 参加者は拍手・いいね・ハートなどの絵文字を送ることができる |
Q&A | チャット形式で質疑応答が可能 |
投票 | ウェビナー開催中に実施できるアンケート |
アンケート | ウェビナー開催後に参加者に依頼するアンケート |
ライブ配信では、登壇者がスピーチを行いながらこれらの機能を利用することも可能ですが、チャットやリアクションなど、出席者からリアルタイムに送られてくる反応すべてに気を配るのは困難です。
出席者とのやり取りを行う場合には出席者からのリアクションを管理する担当者を置き、登壇者と連携を取る方法を事前に決めておくことで、ライブ配信の進行がスムーズになります。
起こりがちなトラブルと対処法
ライブ配信を行う場合、トラブルが起こることはよくあります。何か起こった場合の対処方法を事前に決めておくことで、よりスムーズなウェビナー運営を実現できます。
ウェビナー開催中に起こりがちなトラブルと対処方法について紹介します。
出席者数が伸びない
出席者数が伸びない場合の根本的な原因として、参加登録者がウェビナーの入室アドレスを記載したメールを認識できていない可能性があります。
主催者側からの案内メールが迷惑メールフォルダに届いているケースを想定し、参加登録フォームに入力する際に、折り返しの登録通知メールが迷惑メールフォルダに振り分けられていないかの確認を促す文言を記載しておくことが有効です。
また、単なるメールの見落としを防ぐために、リマインダーメールを複数回に分けて送ることも出席率の向上につながります。
入室の方法が分からない
ウェビナーの参加登録者のなかには、初めてウェビナーに参加する方や操作に不慣れな人が一定数いることを想定しておく必要があります。ウェビナーへの入室はURLをクリックするだけなので、登録確認メールや案内メールにその旨を明確に分かる形で記載しておきます。
それと併せて、Zoomをはじめとするウェビナーツールではインストールが必要なことや、接続するデバイスには必要要件があることなどを、登録確認メールやリマインダーメールに明示しておくとよいでしょう。
また、企業内ネットワークから接続する参加登録者の場合、ファイアウォールの設定やウィルス対策ソフトによってウェビナーツールの通信をブロックしてしまうケースもあるため、その可能性も通知の内容に含めておきます。
映像が映らない・音声が聞こえない(聞こえづらい)
映像と音声に関するトラブルは、機材と通信環境、主催者側と出席者側に切り分けて原因を考えます。
機材と通信環境については、事前のリハーサルや当日の機材設営の段階で不具合がないかどうかをチェックしておけば、本番でトラブルが起きる可能性を低くすることができます。当日のみ会場を借りて行うライブ配信では、リハーサルと当日の環境が異なる場合も想定されるため、開催直前の現場でのチェックがより重要になります。
主催者側を原因とするトラブルは事前のチェックで防ぐことができますが、出席者側のトラブルについては対応できることが限られます。
出席者側に原因がある、映像が映らない・音声が聞こえないというトラブルの典型的なケースは以下のものです。
- 映像・音声のミュート設定
- 音量設定
- 通信環境
- 視聴デバイスの不具合
ミュート設定の操作方法や通信環境やデバイスに関する必要要件を、案内メールに記載しておきましょう。
ライブ配信では、出席者が映像と音声を良好に視聴できているかどうかを、ウェビナー開始直後にチャットで確認することもよくあります。多くの出席者から映像・音声の不具合が寄せられる場合は、主催者側のトラブルを疑い対処する必要があります。
雑音が混じる
雑音が混じることもよくあるトラブルです。会社や自宅からライブ配信を行う場合は、ウェビナーの進行を妨げる環境音にも気を配りましょう。
ウェビナー開催中であることを周囲に伝え、突然の訪問や入室がないようにするほか、近隣からの騒音を避けられる場所を選ぶなどの配慮が必要です。
一時的な騒音であれば出席者に謝罪し、ウェビナーを続けます。続行不可能な災害や事故に匹敵するような不測の事態が発生した場合は、後日アーカイブを配信することを出席者に伝えて中止することも選択肢のひとつです。
画面共有の不手際
ウェビナーでは、スライドや資料を画面に表示させて説明を行います。ウェビナーツールの画面共有機能を使う場合に起こりがちなのが、表示させるべき画面を間違えたり、表示させるのに手間取ってしまうといった不手際です。
PC上でウェビナーで使用する画面を事前に整理・準備してリハーサルを行い、手順に慣れておく必要があります。
コミュニケーション機能を使えない
ウェビナーツールに不慣れな出席者がつまずきやすいのは、参加・入室の段階に加えて、視聴中にツールの操作を求められる場合です。
ライブ配信のなかでコミュニケーション機能を使う場合には、その都度、操作方法を解説するとよいでしょう。
ウェビナーツールが強制終了されてしまう
代表的なウェビナーツールであるZoomのアカウントを社内で共有して使っている場合などに注意しなければならないのが、同じアカウントで後からZoomが起動されると、最初に立ち上げていたZoomウェビナーが強制終了してしまうことです。
チーム内でウェビナーの開催日程を共有し、このような不手際が起こらないよう徹底しましょう。
トラブルが起こることを前提として準備する
トラブルが発生する原因は、機材や通信環境によるものと、開催中の不測の事態の2つに大きく分けられます。主催者側の機材の設定や配信環境によるトラブルは、事前にチェックしておくことである程度防ぐことができます。
ライブ配信では「ウェビナー開催中のトラブルは発生するもの」という意識を持って、リハーサルを行いましょう。トラブルを予測し、対処方法を事前に決めておくことで、何か起こった場合にもスムーズに対処できます。
開催後のフォロー
晴れてウェビナーを予定通りに開催することができたら、企画段階で検討したフォローシナリオに沿って、営業アプローチを展開していきます。
ウェビナーの結果を記録
ウェビナーを開催したら、出欠情報や、開催中に受けた個別の質問などを営業担当者が確認できるよう記録しておきましょう。エクセルなどの顧客リスト、自社の基幹システム、CRM/SFAツールなどの場合があります。CRM/SFAを使う方法は、Lesson 7で解説します。
参加お礼メールの配信
ウェビナー出席者全員を対象として、参加お礼メールを配信します。ウェビナーのテーマに関連する製品やサービスについての情報に加えて登録・申し込みのリンクも添えておきます。
また、担当者からの連絡を希望するかどうかを確認するためのアンケートは、ウェビナー終了直後にアンケートフォームを表示させて実施することが一般的ですが、参加お礼メールにアンケートフォームのURLを記載して回答を依頼することもできます。
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フォローシナリオに沿った出席者へのアプローチ
ウェビナーの企画段階で検討したフォローシナリオに沿って、ウェビナー出席者の反応に応じた営業アプローチを開始します。
フォローシナリオの設計について、詳しくはLesson 2「ウェビナーを企画する」をご覧ください。
ウェビナーで獲得した見込み客に、誰が、いつ、どんなアプローチを行うかを決めたものがフォローシナリオです。アンケートの結果に加えて、ウェビナー開催中のやり取りなども考慮し、売上につながる効果的なアプローチを実践していきましょう。
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