企画を整理して実施計画に落とし込む
ウェビナーの準備では、まず企画したウェビナーの内容を整理して実施計画を立てます。
集客開始から開催日まではおよそ2~3週間の期間を設けることが一般的ですが、参加登録ランディングページ(LP)やウェビナーで使用するプレゼン資料には制作に時間を要するほか、リマインドメールや参加お礼メール、アンケートなども必要なタイミングまでに準備が必要です。
また、開催後のフォローアップの段階ではマーケティング部門と営業部門の連携の仕方など、段取りとして決めておかなければならないことも実施計画に含まれます。
以下のような項目でウェビナーを整理し、無理のないスケジュールで実施計画を立てましょう。
ウェビナー概要 | 日時 |
目的・目標 | 新規リード獲得 |
役割分担 | マーケティング部門の実施項目の整理 |
スケジュール | 開催日 |
マーケティング・営業部門の調整
受注までのプロセスを見据えたウェビナーでは、マーケティング部門と営業部門の連携が取れていないと、どんなに質の高いコンテンツを配信しても最終的な成果には結びつきません。マーケティング部門がウェビナーで獲得した見込み客を営業部門のスムーズな受注につなげていくためには両者の連携が不可欠です。
適切な連携を行うためにも、ウェビナー施策を実施する際のマーケティング・営業それぞれの業務範囲を確認しておきましょう。
マーケティング部門の業務範囲
ウェビナーは見込み客の獲得を目的とすることが多いため、マーケティング部門が実施主体となって開催することが一般的です。この場合、集客から開催当日までの運営を担うのはマーケティング部門の役割となります。
Lesson 2で解説したように、ウェビナーを開催する最終目的は受注につなげることであり、できるだけ多くの集客を図り、そのなかからできるだけ多くの受注確度の高い見込み客を営業部門に引き渡すことがマーケティング部門のミッションです。
基本的に、ウェビナーで集客した見込み客を営業部門に渡すためのフィルターとなる判断材料はアンケートの回答結果です。ただ、出席者の中には営業部門がアプローチ済みの見込み客がまぎれているケースがあるほか、アンケートの自由記述欄に記載された内容やウェビナー開催中のチャットやQ&Aのやりとりから受注につながる可能性が高いと判断できるケースなども考えられます。
さまざまなケースを含めて、どのような条件を満たした見込み客を引き渡すべきかを営業部門とすり合わせしておくことがスムーズな連携につながります。
マーケティング部門の業務範囲としては次のような例が考えられます。
- リード(見込み客)の情報管理(営業部門と連携)
顧客ニーズの把握とターゲットの選定(営業部門と連携)
- 市場調査
- 集客活動
制作物の準備
- 資料作成
- ランディングページ(LP)作成
当日のウェビナー運営
- 当日の司会進行
- 機材等の準備・設営・調整
- 開催中のトラブル対応
- ウェビナーの開催結果の分析と情報共有(営業部門と連携)
- ウェビナー開催後のリードナーチャリング(営業部門と連携)
営業部門の業務範囲
営業部門に引き渡される見込み客のうち受注確率が最も高いのは、アンケートの回答結果から製品やサービスの購入段階に近いと判断された出席者です。アンケートの質問項目に営業担当者からの連絡を希望するかどうかを含めていれば、「連絡希望」にチェックを入れたウェビナー出席者が、営業部門が最優先でアプローチすべき見込み客となります。
実際にどのような見込み客が受注を見込めるのか、あるいは、どのような情報や条件があれば営業アプローチがしやすいかといった営業部門の視点をマーケティング部門と共有しておくことが、営業部門に引き渡される見込み客の質を高めることにつながります。
営業部門の業務範囲としては次のような例が考えられます。
- リード(見込み客)の情報管理(マーケティング部門と連携)
顧客ニーズの把握とターゲットの選定(マーケティング部門と連携)
- 既存顧客・見込み客のニーズ分析
- 出席者からの質問・問い合わせなどへの対応
- ウェビナー開催後のホットリードへのアプローチ(マーケティング部門と連携)
マーケ・営業間でのデータ連携
マーケティング部門と営業部門ですり合わせた結果を踏まえ、どんな顧客情報を収集・共有すべきかも決定しておく必要があります。
ウェビナーの実施段階で付加される情報としてはアンケートの回答結果のほか、コメントやチャットなどで寄せられた内容などを含めることも考えられます。実際に含める必要がある顧客情報の項目については、企業ごとの営業フローや業種などによっても異なるため、一般的な例として次のような項目を挙げることができます。
項目例 | |
ウェビナー情報 | 見込み客情報 |
|
|
ウェビナー実施担当者のアサイン
録画ではなくライブで開催するウェビナーでは、登壇者のほか、進行やチャット対応などを行うモデレーター、配信機材の設定や調整を行う技術担当などがリアルタイムで参加する必要があります。録画コンテンツを制作する場合も、プレゼン資料などのコンテンツ制作担当者をはじめとして、参加お礼メールなどの細かい制作物に至る担当者を割り振っておかなければなりません。
一方、定期的にウェビナーを開催するといったケースでは、1人の担当者が資料作成から配信までを行うケースもあり、企業の運営方針によって必要な人員は異なります。
自社でウェビナー施策に当て込めるリソースがあれば、各業務担当に分けてウェビナー準備を進行し、難しい場合は少数体制でウェビナー専門のチームでの運用を検討しましょう。
制作物の準備
ウェビナー開催までに準備が必要な制作物にはウェビナーコンテンツそのものをはじめとして、ウェビナー紹介ページや登録フォーム、応募者とのやり取りの際のメールなど多岐にわたります。主要なものとしては以下の制作物が挙げられます。
コンテンツの作成
ウェビナーで配信するコンテンツについては、Lesson 2のウェビナーの企画のなかで以下のような目的別の要素を挙げました。
目的 | 求められるコンテンツ |
新規リード獲得 | 幅広く潜在顧客の関心を集められるコンテンツ |
リードナーチャリング | 課題認識とソリューションの提供 |
受注獲得 | 購入に踏み切るための情報提供 |
コンテンツを作成する段階では、受注獲得を目指す製品・サービスとウェビナーの目的に沿って想定すべきターゲットを具体的に設定する必要があります。
受注獲得に近い見込み客ほど登録された顧客情報が多くなることから、顧客のニーズに合わせたウェビナーコンテンツのテーマを絞り込みやすくなります。一方、新規のリード獲得を目的とする場合は、間口を広く取っている分、それぞれの出席者のニーズが拡散しているため、必要以上に製品やサービスのトピックを含めると売り込み感の強い印象を与えてしまうことに注意が必要です。
いずれの場合でも、より具体的なペルソナを設定し、ターゲットの課題を言語化した上で出席者が時間を割いて聞く価値のあるテーマを掘り下げてみることが求められます。
ウェビナー紹介ページ・入力フォームの作成
ウェビナー紹介ページ(参加登録LP)は自社サイトに掲載するほか、それぞれの集客チャネルから誘導してウェビナーの詳細を知ってもらうために用意するWebページです。あわせて、参加登録してもらうためのWebフォームを作成しておく必要があります。
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ゾーホージャパンのウェビナーを例に挙げます。LPにはウェビナーの概要に加えて、コンテンツの内容や対象となる視聴者層についての説明を記載しています。
参加申し込みのための入力フォームをページに埋め込む形にしているのは、入力フォームのページに遷移させるプロセスを省き、最低限の個人情報のみの項目として入力の負荷を低く抑えるためです。加えて、製品の検討状況を問うドロップダウンリストと、電話連絡の可否のチェックボックスを設けてウェビナー開催後のアプローチのための情報を参加登録の段階で収集しています。
アンケートの作成
ウェビナー実施後に出席者に依頼するアンケートは、ウェビナーに対する評価を聴取することと同時に、出席者が「今すぐ」「お悩み」「そのうち」「いつかは」のどの段階にあるリード顧客であるかを判断するための重要な情報となります。
以下のアンケートフォームはZoho Survey を使って作成したアンケートの例です。

アンケートの基本的な質問項目は以下の内容です。
- 顧客情報(氏名、連絡先など)
- ウェビナーに対する評価
- 製品・サービスの検討状況
- 営業担当からの連絡の可否
アンケートの例では、「営業担当からの連絡の可否」は参加登録の段階で既に聴取しているため項目に含めていませんが、出席者とのやり取りが発生する機会のいずれかの段階で聞くことができれば、営業アプローチがしやすくなります。なお、「営業担当からの連絡の可否」を申込時点と参加後に確認することで、最初は期待していなかったが、ウェビナーの内容を聴くことで相談したくなったなどの変化をとらえることも可能となります。
アンケートはウェビナー終了時点や参加お礼メール配信のタイミングで出席者に依頼します。基本的には、ウェビナー開催から時間を開けないほうがアンケートの回答率は高まります。ウェビナーツールによっては、出席者が退出した時点で自動的にアンケートが表示される機能などもあるので、回答率を上げるための工夫をする意識を持ちましょう。
質問項目が多いアンケートは回答者が負担と感じて回答率が低くなるため、質問数は最低限に留めることが重要です。
自由記述欄も回答者が負担と感じる要素のひとつですが、意見や要望などを自由に記述してもらうことで思わぬ気付きが得られるケースがあります。入力必須項目としない自由記述欄を設けることもフィードバックを集めるという点では有効です。
アンケートの回答を条件にインセンティブを設けることも、回答率を高める手段のひとつとなります。ウェビナー内で使用した資料の抜粋やホワイトペーパー、製品案内資料などをアンケート回答者に送付するとよいでしょう。
ウェビナー開催メールの作成
ウェビナー施策では、一般的には以下の3つのタイミングで参加登録者にメールを配信します。
登録受付メール
参加申し込み登録に対して登録を受け付けたことを知らせるためのメールです。参加登録に対するお礼とウェビナーに入室するためのURLを記載します。ウェビナーへの期待感を高める内容を含められれば、印象がよくなり出席率を高めることができます。
リマインドメール
開催日前に配信して参加を促すためのメールです。登録受付メールは開催日から時間が空くため、他のメールに埋もれてしまう可能性があります。登録したことを忘れてしまう場合もあること、メールは見落とされることが多いことを想定して、複数回に分けてリマインドメールを配信します。
配信するタイミングは、1週間前・前日・当日の適切な時間帯(社会人を対象とする場合、9時・12時・19時)に送信すると効果的です。
参加お礼メール
応募登録者、出席者に対して関係性を保つために配信するメールです。コンタクトの機会を増やすという意味でも、参加後のお礼とともに次回ウェビナー開催でのご要望伺いやアポイントのご提案などを盛り込むとよいでしょう。
リハーサルの実施
リハーサルは、ウェビナーを通じた出席者の体験の質を高めるためにも欠かすことのできない準備のひとつです。
ウェビナー画面での見え方や音声として伝わる登壇者の話し方は、視聴者の印象を大きく左右し、プレゼンテーションの構成や資料の説得力はコンテンツの質そのものを決定づけます。多数の人員が関わるライブ配信を行う場合には、トラブルが発生した場合の対応や適正な時間配分をチェックしておくことも必要です。
全体を通したウェビナーの流れを、可能であれば関係者以外の視点も加えて確認しながら改善を加えていくことがウェビナーの質を高めることにつながります。
ライブ配信でのチャットやコメントなど参加者とのやり取りを行う場合には、あらかじめ寄せられる内容を想定し、対応方針や想定問答を決めておくことが有効です。
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