ウェビナーを開催する目的
ウェビナーの開催では、「新規の見込み客を獲得すること」と「見込み客の購買意欲を高め受注を獲得すること」の2つが最も大きな目的です。この2つはリードジェネレーションとリードナーチャリングと呼ばれます。
このほかにも、製品やサービスの認知度向上やブランディングを目的とするケース、既存顧客を対象に企業や製品に対する理解を深めてもらうことを目的とするケースなど、ウェビナーはさまざまな目的のために開催されます。
ウェビナーはこれらの目的を持ったマーケティング施策のひとつに位置づけられますが、自ら参加登録を行い時間を割いて製品やサービスについて知るための行動を取った出席者を集めているウェビナーは、他の施策に比べて受注につながる可能性の高い施策であるといえます。
これを踏まえ、受注までのプロセスを意識してウェビナーを企画することが重要であり、自社のマーケティング戦略やマーケティングKPI、売上目標から逆算して集客から受注までをとらえていく考え方が必要です。
ウェビナーの目的に応じたKGIとKPI
ウェビナーの目的を、「リードジェネレーション」や「リードナーチャリング」、「受注獲得」と置いた場合、KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)の代表例としては以下のように整理できます。
目的 | KGI | KPI |
リードジェネレーション | 新規見込み客獲得 | 予約数・出席数、予約数・出席数のうちの新規リード獲得数、新規リード獲得単価 |
リードナーチャリング | 見込み客からの商談獲得 | メール開封率、資料請求数、問い合わせ件数、満足度 |
受注獲得 | 受注・売上獲得 | 商談化件数、見積もり件数、受注件数、売上 |
目的に応じたKGIとKPIを設定して、最終的にKGIを達成できたのか、達成できなかった場合、どのKPIに問題があったのかを振り返ることで、次の機会に向けた改善を行うことができるようになります。
たとえば、ウェビナーの目的がリードナーチャリングであった場合、KGIとしては、「商談の獲得数」が設定され、、評価指標となるKPIとして以下の項目が挙げられます。
- 予約数(登録者数)
- 出席数
- アンケート回答数
- 出席率
- アンケート回答率
マーケティング部門が実施主体となるウェビナーは、予約数や出席率を高めることが目的になりがちです。しかし、最終目標はあくまで、KGIである「商談の獲得数」を達成することです。
上記1.~3.に挙げたウェビナーのKPIはプロセスが進むにつれて数値が減少していきますが、商談に至る件数を増やすためには、母数となる予約数を増やすことと、出席率、アンケート回答率など各プロセスで減少する割合を低くしていくという考え方が必要となります。
ウェビナーを企画する段階では、集客方法とスムーズな運営、出席者の関心を高め商談に結びつくコンテンツが、上記のKPIの達成につながるかどうかを意識するようにしましょう。
オーディエンスのターゲティング
ウェビナーで対象とするオーディエンスは、ウェビナー参加募集で新たに獲得した見込み客、過去に問い合わせや資料のダウンロードなどがあった既存の見込み客、既に取引のある既存顧客の3種類が考えられます。
新たに獲得した見込み客
これまでマーケティング部門や営業部門との接点がなく、ウェビナーの募集に対して参加登録を行った新規の見込み客です。リードジェネレーションを目的とする場合のターゲットオーディエンスであり、ウェビナーのテーマに関心を持って登録した出席者であると想定できます。
リードジェネレーションを目的とするウェビナーは集客がKGIなるため、幅広く関心を集めることができるテーマの設定、コンテンツの企画が必要です。
ただし、注意しなければならないのは、リードジェネレーションでは間口を広く取り、多くの見込み客を取り込むことが目標となりますが、大量のオーディエンスを獲得できたとしても受注に結びつかないリードを集めても目的を達成することにはつながらないということです。
これを避けるためには、集客を企画する段階で、既存顧客の属性や受注プロセスなどを参考に集客すべきターゲットを絞り込んでおく必要があります。
既存の見込み客
既存の見込み客がオーディエンスの対象となるのはリードナーチャリングが目的の場合です。広告に対する反応やホワイトペーパーのダウンロード、問い合わせなどを通して、既に見込み客としての接点があることが前提となります。
この場合は、受注に近づけるための関係構築や購買意欲の喚起がウェビナーの目的であり、それに適したコンテンツの設計が求められます。
また、リードナーチャリングで重要なのは「見込み客の購買行動のどの段階にあるのか」を見極めることです。購買行動の段階は以下のように分類することができます。
- 「今すぐ」:購入を前向きに検討している
- 「お悩み」:購入検討に進む可能性がある
- 「そのうち」:関心はあるが購入を検討する段階に入っていない
- 「まだまだ」:直接の購入には結びつかないが、将来的に関心を持ってもらえる可能性がある
たとえば、購入に近い段階にいる見込み客に対しては購入を後押しするメリットを訴求することが重要であり、購入から遠い段階にいる見込み客に対しては課題の認識や解決策の紹介といったテーマが適しています。
他にも、見込み客となった流入経路や問い合わせの内容、関心の高いコンテンツやダウンロードしたホワイトペーパーの種類などの情報をもとに見込み客の段階を分析し、どの段階にある見込み客を対象としてウェビナーを実施するのかを企画段階で検討します。
既存顧客
リードジェネレーションとリードナーチャリングがウェビナーの主な目的であると述べましたが、最終目標を売上とする場合は、既に取引のある既存顧客へのアップセルやクロスセル、利用状況が芳しくない顧客のつなぎ止めなどもウェビナーの目的に入ってきます。
既に取引を開始した経緯が存在する顧客であることから、受注に至ったそれぞれのケースを把握した上で、売上拡大につながるウェビナーの活用方法を検討することが重要です。
集客・プロモーション戦略
ウェビナーの集客方法は、施策の目的やターゲットによって変わってきます。
さまざまなウェビナーの集客チャネルが考えられますが、それぞれの特性を知った上で、どのチャネルを選択すべきかも企画段階で検討しなければならない要素のひとつです。複数の集客チャネルでのプロモーションを前提に、以下の中から最も効果的が見込めるチャネルを選択しましょう。
オウンドメディア
オウンドメディアとしては自社HPやブログ記事、ウェビナー専用LP(ランディングページ)などさまざまなメディア形態が当てはまります。
自社のHPやブログ記事、ウェビナー専用LPについては基本的に検索ユーザーがターゲットとなります。自社メディアで流入の多いページに登録フォームへのリンクを設置して募集を募ることになるため、どんなキーワードから流入したのかが見込み客の興味・関心を知る上で重要になります。
広告
ディスプレイ広告、リスティング広告、SNS広告、動画広告など、広告を活用することは多くの人の目に触れさせることができるという点でリードジェネレーションに適した方法です。しかし、オウンドメディアやメールマガジンと異なり、広告費用が大きなコストとして発生するため、費用対効果を見極めることが難しいという点がデメリットとなります。
広告の種類によってもターゲットとコストが異なることから、集客のための広告運用はPDCAを繰り返しながら、効果の上がる広告媒体を絞り込んでいく取り組みが求められます。
SNS
Instagram、X、Facebook、LINEなどSNSの活用もウェビナーの集客チャネルとして活用できます。SNSにはシェアやリツイートなど拡散機能があるため、SNSユーザーに価値のあるウェビナーであると判断されれば、費用をかけずにより多くの集客につなげることができます。
SNSの各プラットフォームごとにユーザー属性が異なるため、製品やサービスに適したプラットフォームを選択することが重要です。
メール
メルマガも含め、既にメールアドレスを取得している見込み客を対象とする場合の集客方法であり、リードナーチャリングの場合のメインとなる集客方法です。
メールでウェビナー開催の告知を送る場合には、既に何らかの接点があるリード顧客であることを考慮し、「お悩み」「そのうち」などのリード顧客の段階に応じた告知方法が求められます。
とはいえ、すべてのリード顧客に個別に内容を作成するのは無理があるため、告知だけに焦点を当てたシンプルなものや課題解決に関連付けてウェビナーの内容を解説するものなど、複数のパターンのメールを組み合わせて複数回に分けて告知を行うことが有効です。
プレスリリース配信
プレスリリースの配信も集客方法の有効な手段です。特に、新製品・サービスのPRを目的としたウェビナーを開催する場合には、プレスリリースを起点としてパブリシティを得られる可能性が高まります。
TIMES等のプレスリリース専門のプラットフォームを活用する以外に、関連性の高いメディアに直接掲載を依頼するといった方法が考えられます。
セミナー情報サイト登録
「こくちーずプロ」などのセミナーポータルサイトにウェビナーの情報を掲載することも集客手段のひとつです。セミナーイベントに関心の高いユーザーの目に触れることができるという点で、ある程度の集客を見込むことができます。
掲載されるウェビナーの分野やイベントの内容が異なることから、開催するウェビナーに適したポータルサイトを選択する必要があるほか、掲載される多くのイベントのなかから選んでもらうための差別化要素が求められます。
配信形式・開催形態とコンテンツの内容
次に、配信形式や開催形態、ウェビナーの目的別に求められるコンテンツの内容について解説します。
配信形式
配信形式にはライブ配信と録画配信があり、それぞれに特性が異なります。
ライブ配信 | 録画 | |
メリット |
※これらのメリットは視聴者のエンゲージメントを高めることにつながる |
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デメリット |
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適したコンテンツ |
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ライブ配信も録画して動画コンテンツとして再利用する場合は、ライブ配信だけの特性に縛られるものではありません。ライブ配信で得られる最大のメリットはリアルタイムに視聴者とやり取りができるという点であり、コンテンツの内容によってはライブ配信でなければ実現できないこと、ライブ配信のほうが適しているものがあることを知っておく必要があります。
開催形態
ウェビナーの開催形態としては、以下のような種類があります。
- セミナー
- プレゼン
- インタビュー/対談
- パネルディスカッション
- ワークショップ
- ケーススタディ
- デモンストレーション など
コンテンツを考える際には、ウェビナーの目的を意識した上で開催形態も含めて検討します。ゲストスピーカーへの依頼など企画の内容によって開催形態が先に決まっている場合もあるため、配信形式の種類と合わせてコンテンツの内容を固めていきましょう。
コンテンツの内容
ウェビナーに求められるコンテンツのテーマは、開催目的によっと異なります。
ここではそれぞれの目的によってどのようなコンテンツが適しているのかを解説します。
リードジェネレーションが目的の場合
リードジェネレーションを目的とする場合は、多くの潜在顧客に関心を持ってもらえるテーマが適しています。業界動向や最新技術の紹介、製品やサービスにまつわる入門編的な解説、成功事例の紹介などのコンテンツが考えられます。
リードナーチャリングが目的の場合
リードナーチャリングの段階では、見込み客の購買意欲を高めることや関係性を深め信頼関係を醸成することがコンテンツに必要な要素です。
購入を検討する段階に入っていない見込み顧客に対しては、製品やサービスによって解決できる課題の存在を認識してもらうことが最初のステップですし、既に課題解決の選択肢として製品やサービスに関する情報収集を行っている見込み客に対しては、解決方法を提案することが答えになるでしょう。
また、ウェビナーの双方向のやり取りができるという点を活かし、Q&Aなどのコミュニケーションを行うことが購入を後押しする信頼関係を築くことにつながります。
受注獲得が目的の場合
既に購入検討段階に入っている見込み客を対象とする場合は、購入に踏み切るための具体的な情報を提供することがポイントになります。
製品やサービスの活用事例や活用ノウハウ、競合製品との比較、サポートやコストも含めた運用プロセスなどを具体的に提示することが必要です。
フォローシナリオの設計
フォローシナリオとは、ウェビナー開催後から受注までに至る流れのなかで、それぞれの部門や担当者が取るべき行動の流れを具体化したものです。
ウェビナーでは開催後に実施するアンケートが見込み客への次のアプローチを判断する上で重要な役割を果たします。ウェビナーに対する評価や反応を聴取することで、見込み顧客の購買プロセスの段階を知るための手がかりとなるからです。
フォローの対象とする見込み客は、ウェビナーへの予約登録から出席、アンケートの回答状況によって以下のように分類します。
- レベル ①:ウェビナー 予約/出席 アンケート回答あり 連絡希望チェックあり(今すぐ)
- レベル ②:ウェビナー 予約/出席 アンケート回答あり 連絡希望チェックなし (お悩み)
- レベル ③:ウェビナー 予約/出席 アンケート回答なし(そのうち)
- レベル ④:ウェビナー 予約/欠席(まだまだ)
上記の分類ごとに、担当者、タイミング、アプローチ方法をあらかじめ決めておき、全体のフォローシナリオを設計しておきます。
大枠としては以下のようなフォローシナリオが考えられます。
レベル① | レベル② | レベル③・レベル④ | |
ミッション | アンケートの内容をもとに状況を把握。営業担当者がアポイントを取り商談につなげる。 | アンケートの内容をもとに状況を把握し、課題に応じたシナリオメールを配信、商談への確度を高める。 | 見込み客として登録し、次の機会へのアプローチ方法を検討する。 |
設定するアンケートの項目やウェビナー以外の顧客情報があるかどうかによってフォローシナリオは異なりますが、アンケートで「営業担当者からの連絡を希望しますか」という質問を設定し、連絡希望にチェックを入れたレベル①の見込み顧客には、すぐにでも営業担当者からのアプローチを開始する必要があります。
連絡希望にチェックがない場合でも、テーマに関する関心の度合いを測る質問項目や自由記述による意見として聴取できた情報は、見込み客が現時点で、どの購買プロセスの段階にあるかを判断する上で重要な情報です。
レベル①以外のフォローシナリオとしては、見込み顧客の段階に応じたシナリオメールを配信することが次のステップとなります。
スケジューリング
ウェビナー開催日を起点として、準備期間や開催後のフォローについてのスケジュールも企画段階で押さえておく必要があります。
セミナーコンテンツやウェビナー登録ページ、シナリオメールなどの制作物には制作期間を要し、集客開始やリマインドメール配信には適切なタイミングがあります。これらの要素を総合して、無理のないウェビナー開催前後のスケジュールを立てましょう。
大まかなスケジュール感としては以下のような例が挙げられます。

それぞれの工程に要する期間や適切なタイミングは運営体制によって異なりますが、企画から開催当日までの期間で、上図のフロー進行にそれぞれどのくらいの時間が必要かを見積もって進めていくことが大切です。。また、ライブ配信を行う場合、直前準備のリハーサルはトラブル等を想定して複数回行っておいたほうがよいでしょう。
ウェビナー事例
このレッスンで解説しているウェビナーの具体例として弊社のウェビナーコンテンツを含めてご紹介します。
リードジェネレーションに効果を挙げている事例
「「オフラインの10倍」リードを獲得するウェビナーの秘訣。企画〜商談化のすべてを公開」
この事例はABM(アカウントベースドマーケティング)ツールを提供する株式会社FORCAS(フォーカス)のウェビナーの活用方法です。
従来からオフラインイベントやセミナーを開催し、商談につながるケースが多かった同社では、コロナ禍を契機にオンラインのセミナーに移行。グループ企業全体の各担当者により週1回のシリーズイベントとしてウェビナーコンテンツ配信を開始しました。
オフラインではイベントをリードジェネレーション、セミナーをリードナーチャリングとそれぞれの役割を分けていたものを、ウェビナーでは境目を設けずセミナー寄りのコンテンツにしています。その結果、ウェビナー開始年の第2四半期は以前の10倍の新規見込み客獲得に至ったということです。
同社ではコンテンツ制作の視点を2つ挙げています。1つは、視聴者の視点で視聴者が本当に知りたいことを考えることが情報発信の価値につながっているということ。2つ目は、ストック型のコンテンツではなく、視聴者が「今、知りたいこと」にフォーカスするという点です。
また、ライブ配信の演出の工夫として視聴者とのインタラクティブな要素を挙げています。登壇者としてホストとモデレーターを置き、モデレータが視聴者からのコメントを取り上げることで視聴者の集中力が高まり、オンラインイベントとしての一体感が高まることを挙げています。
リードナーチャリングの典型的事例
「できる営業はココで決まる 劇的に業務効率が上がる、タスク管理攻略法」
このウェビナーは、無料動画コンテンツとしてZoho CRM 紹介ページの無料オンデマンド動画として掲載しているウェビナーコンテンツです。
タイトルから分かるとおり、営業担当者に共通する課題である「タスク管理」をコンテンツのメインテーマとしています。
営業担当者が従来の方法でタスク管理を行う場合の課題を提示し、タスク管理という文脈のなかでZoho CRM のタスク管理機能が営業の業務効率化とDX化につながるメリットをデモ画面を活用しながら解説した内容です。
視聴者に課題を認識してもらい、その課題に対するソリューションを提案するという流れは、リードナーチャリングを目的とする場合のコンテンツの作り方そのものであり、加えて「タスク管理」という間口の広いテーマをメインとすることで、多くの視聴者を獲得することにつながっています。
受注を後押しするための活用事例
「ハンズオン形式でゼロからわかる!Zoho CRM トライアル必修スタートガイド」
SaaS製品の受注プロセスにおいて、無料トライアルの利用に進んだユーザーは製品の購入に近いところにいる見込み顧客であると想定されます。しかし、SaaS製品は機能が豊富でありながら、UI(操作画面)も実際のデータが入った状態でなければ把握しにくいといった一面もあります。
当ウェビナーは、無料トライアルを試した見込み客が設定や操作方法が分からず離脱することを防ぐことを目的として、実際の操作画面で実演しながらトライアルの利用を促す内容となっています。
コンテンツの流れは、サンプルデータを使って実際にデータを取り込む方法や、見込み客が案件化した場合の操作方法、それに続くタスクの作成など、CRMツールの基本的操作のイメージを提示するものです。
このようなウェビナーを受講することで、見込み客客は適切なトライアル方法を理解し、自社の課題解決につながるツールであるかを判断できるようになります。トライアル終了時にこの段階で出た疑問点を解消したり、自社にあった運用方法や投資対効果といった情報を提供することで、具体的な商談につなげていく流れを作り出しています。
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