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【BtoB営業】アップセルとクロスセルの手法・評価・改善

本レッスンは、アップセルとクロスセルの手法や評価、どう改善していくかについて、法人向けであるBtoBビジネスの営業活動に焦点を当てて解説します。例に挙げる法人向けのPC販売会社の営業施策を参考に、自社の法人向けビジネスのアップセル・クロスセルに活かしましょう。

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【BtoB営業】アップセルとクロスセルの手法・評価・改善

このレッスンで学べること

このレッスンで学べること

Lesson 5に続き、Lesson 6は法人向けビジネス(BtoBビジネス)のアップセル・クロスセルを取り上げます。Lesson 5は多くのターゲットにアプローチするマーケティング活動でしたが、Lesson 6は営業活動に焦点を当てます。法人向けPC販売会社のアップセル・クロスセルという具体例を通じて、どのような施策を行い、評価し、改善していくかを学びます。

このレッスンの例:法人向けPC販売会社

法人向けPC販売会社でアップセルやクロスセルを成功させるために、営業部門で以下の手法を活用する、という前提で順に解説します。

  • メール:格安PCの見積もり依頼を受けた過去の取引先に対し高スペックのPCをアップセル
  • 電話:PCの見積もりを希望する過去の取引先に対して、政府の補助金に関する情報を提供し、PC以外の製品をクロスセル
  • 訪問:PCを購入した企業に対して納品後の状況を伺うタイミングで、情報セキュリティ研修やリスク診断といったサービスをクロスセル

アップセル施策:メール

営業担当者の限られた時間を有効活用するには、メールは最適な手段です。マーケティング部門のメールと異なり、個別の課題に合わせた内容を盛り込むことで、一気にアップセル・クロスセルの成功へと引き寄せることができます。

メールの設計

ここでは、格安PCの見積もり依頼を受けた過去の取引先に対して、格安PCの見積もりを提供しつつ、ユーザーの職種に応じて高スペックなPCのアップセルを狙うメールを作成する、という前提で解説します。

1.目的・目標を設定

今回の営業メールの目的は、格安PCの見積もり依頼を受けた過去の取引先に対して、格安PCの見積もりを提供しつつ、ユーザーの職種に応じて高スペックなPCのアップセルを狙うことです。

最終的にはアップセルすることが目的ですが、メール施策の目標として、商談を当月に5件獲得することを目標にします。受注を目標にしないのは、BtoBビジネスは検討のリードタイムが長く、結果を評価しにくくなるためです。

2.メールの作成

メール文は、格安PCの見積もりが欲しい、という顧客のニーズにまずは応えつつ、より魅力的な提案と、それに対するアクションを求める内容を盛り込みます。

(件名) ○○様 格安PCお見積もりとカスタムPC新プランのご案内

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
株式会社○○
○○様

平素より大変お世話になっております。 株式会社○○ソリューションの営業担当、 ○○です。 いつも弊社製品をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
貴社のご要望に基づき、 お求めやすい格安PCの見積もりをお送りします。

【格安PC見積もり概要】
モデル: XXXXX
価格: ¥XX,XXX

上記PCをご希望いただきましたが、貴社にこれまでご購入いただいているPCなども踏まえますと、特定職種向けにカスタマイ ズ可能な高性能PCの新プランをご参考としてお送りいたします。

【カスタムPCプラン概要】
高速プロセッサ、 大容量RAM、 高解像度グラフィックなど
価格: オプションにより異なります
詳細や概要は、以下のリンクにございます。
URL:~~~~~~~

上記PCは1台あたりのコストは上がりますが、2台ご購入いただきますと10%の割引を適用できます。
ご興味がございましたら、ぜひ詳しくご説明させていただきたく存じます。
下記日程にてご都合のよい日がありましたらお知らせください。
4月1日 10:00~15:00
4月8日 13:00~17:00
4月15日 終日

ご連絡をお待ちしております。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
株式会社○○ソリューション
営業部 ○○○○
メール
電話

件名で具体的な内容を示し、顧客の名前を用いた丁寧なあいさつと感謝の言葉で始めます。メールの中で、格安PCの見積もりとカスタムPCプランの詳細を明示し、顧客のニーズに応じた提案を行います。

具体的な商談日程を提示し、行動を促すことで商談設定の可能性を高めます。

PDCAサイクルの実施

営業メールを送信後、効果があったかどうか評価し、改善の余地があるならば改善を図りましょう。営業担当者の限られた時間を効果的に使うため、PDCAサイクルを回すことを忘れないようにしましょう。

Plan(計画)とDo(実行)は上記の通りに進めた、という前提で評価と改善について説明します。

Check(評価)

送信した営業メールから獲得できた商談数が目標に届いていたか確認します。

例えば、商談の目標が5件だった場合、そもそも何件送信できたかも確認します。

Act(改善)

「評価」で得た考察を基に、改善策を検討します。
例えば、100件送信して商談獲得数が1件も無く、この返信率が通常の営業メールよりも悪い場合は、そもそものニーズに応えられていない可能性が高く、根本的な見直しが必要です。
逆に、6件送信して商談獲得数が4件の場合、反応が十分にあるため、対象をもっと広げられないか検討します。
このように、PDCAサイクルを継続的に回すことで、効果の高い営業メールを送信でき、営業活動全体の効率化にもつながります。

クロスセル施策:電話

電話は、ダイレクトに顧客とコミュニケーションを取るための効果的な営業手法です。このアプローチを活用して、顧客にタイムリーな情報を提供し、関心を引くことができます。

コールスクリプトの設計

ここでは、PCの見積もりを希望する過去の取引先に対して、政府の補助金に関する情報を提供し、PC以外の製品をクロスセルする、という前提で解説します。

以下で紹介する手順に沿って作成すれば、スムーズに質の高いトークスクリプトが作れます。

1. 目的・目標を設定

今回の電話の目的は、格安PCの見積もりを提供することで対話を開始し、その後顧客のニーズに応じて高スペックPCを提案してクロスセルを成功させることです。

最終的にはクロスセルを受注することが目的ですが、架電の目標として、商談を当月に5件獲得することを目標にします。

クロスセルを受注できた件数だけでなく商談数をはじめとした中間指標を設けてもよいでしょう。

架電数

100件

応答率

50%

商談数

15件

クロスセル件数

5件

2.ペルソナを設定

顧客のペルソナを設定します。顧客の業種、役職、ビジネスの課題など、意思決定に影響を与える可能性がある情報を考慮に入れます。今回は、以下をペルソナに設定します。

対象

中小製造業の情報システム部門責任者

ビジネス課題

限られた予算内で最大のITインフラの改善を求めている

3.セールスポイントや想定質問を洗い出し

電話は顧客を拘束できる時間が限られているため、あらかじめセールスポイントや想定質問を洗い出しておきましょう。

セールスポイント

例えば、以下のようにセールスポイントを整理します。

  1. 補助金によるコスト削減

    補助金を活用することで、どの程度のコスト削減が見込めるかを具体的に説明します。例えば、購入費用の最大50%が補助されるなどの情報を提供します。

  2. 補助金が適用可能なPCおよび関連機器の性能と価格

    補助金対象となるPCや周辺機器の性能の詳細と、それによる価格メリットを説明します。性能向上が業務効率にどう影響するかも連携して説明すると良いでしょう。

  3. 補助金申請の手順と期限

    申請のプロセスを簡潔に説明し、申請期限についても明記します。顧客が申請を逃さないよう、必要な書類や手続きの流れを具体的に案内します。

顧客からの考えうる質問

例えば、顧客から受ける可能性がある質問は以下のように整理できます。

質問のカテゴリ

質問例

補助金の申請に必要な書類

補助金の申請に必要な書類は具体的に何が必要ですか?

補助金の具体的な額

補助金は具体的にどれくらいの額で、どの程度の費用をカバーしますか?

補助金の申請支援

補助金の申請プロセスをサポートするサービスは提供していますか?そのサービスには追加費用がかかりますか?

補助金の適用範囲

補助金はPC購入費用のどの部分に適用されますか?例えば、ハードウェアのみ、またはソフトウェア購入も含まれますか?

構成を作成

トークの構成を作成します。

1.オープニング

  • あいさつと自己紹介

2.導入

  • 担当者の確認
  • 相手の状況に対する簡単な質問(現在のIT環境について)

3.本題

【概要説明】

  • 補助金の概要説明
  • 対象となるPCと補助金の対象製品の特徴とメリットの説明

【クロスセルの提案】

  • 関連製品の説明(高性能モニターやエンタープライズ向けソフトウェア)
  • 補助金適用によるコスト削減のシナリオ説明

4.クロージング

  • 商談日程の打診

トークスクリプトを作成

構成を基にトークスクリプトの中身を作成しましょう。構成だけで対話が成立するベテランの営業担当者には不要ですが、新入社員や営業電話を外注している場合には、ある程度詳しい台本が必要です。

以下は会話の例文です。

お世話になっております。〇〇株式会社の営業担当〇〇と申します。
〇〇部の〇〇様はいらっしゃいますでしょうか?

現在、弊社では中小企業様向けの政府の補助金プログラムをご案内しております。この補助金は、新しいPCや関連機器の購入に利用可能で、ITインフラの更新を検討されている企業様にとって、有意義にご活用いただけるものです。

補助金を活用することで、購入額の最大50%までのサポートが受けられます。この機会に、高性能なPCや最新のセキュリティソフトウェアを導入し、業務効率の向上とセキュリティの強化を実現しませんか?

補助金プログラムについて詳しくは、ご訪問して説明させていただきたく存じます。
都合の良い日時をお教えいただけますか?

PDCAサイクルの実施

営業の架電は、担当者の時間も顧客の時間も奪うものです。PDCAサイクルを適用して継続的に改善することが重要です。

Plan(計画)とDo(実行)は上記の通りに進めた、という前提で評価と改善について説明します。

Check(評価)

架電して獲得した商談数が目標に届いていたかを確認します。中間指標についても確認することでより実態を正確に把握できます。

例えば、100件の電話をかけて40件が応答し、商談獲得数は10件、クロスセルの受注数が3件だった、といった具合です。

Act(改善)

評価を基に、改善点を検討します。具体的な改善策は、以下の通りです。

  • 架電タイミングの調整

    応答率が他の架電施策に比べて悪い場合、電話をかける時間を再検討しましょう。

  • スクリプトの最適化

    商談化率が悪い場合、スクリプトの内容に問題がないか再検討します。対話の内容についても、表面的な話で無く、例えば、ITマネージャーには最新のセキュリティ機能を、購買担当者にはコスト削減のメリットをアピールする、といった工夫ができます。

  • フォローアップの強化

    商談数に比べてクロスセルの受注比率が悪い場合、フォローアップが十分だったかも再検討し、改善します。特に、電話と商談を分業している組織の場合、商談担当者のフォローが十分でなくなる場合があります。

クロスセル施策:訪問

訪問は、顧客と直接対話し、雑談も含めて商談相手のニーズや温度感を細かく把握できる貴重な機会です。営業活動の本丸といっても過言ではありません。一方で移動に時間がかかるため、しっかりと受注につなげる準備が必要です。

訪問の準備

ここでは、PCを購入した企業に対して納品後の状況を伺うタイミングで、情報セキュリティ研修やリスク診断といったサービスをクロスセルする、という前提で解説します。

1.目的・目標を設定

今回の訪問の一義的な目的はPC購入後の状況の確認ですが、情報セキュリティ研修やリスク診断といったサービスをクロスセルすることを真の目的とします。

目標はクロスセル案件の受注です。購入後の訪問に対し、情報セキュリティ研修やリスク診断の受注率20%、といった具合に目標を定めます。見積もり発行率40%という中間指標を設けてもよいでしょう。

2.訪問の流れを決定

訪問の大まかな流れを決めましょう。BtoBの場合、長期で信頼関係を築いていくことが必要なので、クロスセルを前面に出すのは得策ではありません。自然な流れで課題を聞き出し、情報セキュリティ研修やリスク診断が解決策になりうることを知ってもらいましょう。

1. あいさつと導入

1.1 あいさつ

1.2 訪問の目的

「本日は、PCの使用状況の確認とご質問や問題点がないかのヒアリングのためにお伺いしました」

2. 現状確認とヒアリング

2.1 使用状況の確認

2.2 課題や問題点のヒアリング

「何か不具合や、それ以外にもITやセキュリティまわりでご心配な点がありましたら教えてください」

3. 解決策の提案とサポート

3.1 問題解決

「その問題に対しては、こちらの設定を変更すると改善されると思います。一緒に確認してみましょう」

3.2 追加サポートの提供

3.3 情報セキュリティ研修やリスク診断の紹介

「ところで、最近のサイバー攻撃の増加に伴い、多くの企業が情報セキュリティ研修やリスク診断を導入しています。当社でもこれらのサービスを提供しており、社員のセキュリティ意識向上やシステムの安全性強化に役立ちます。ご興味はございますか?」

4. 次のステップとフォローアップ

4.1 次のステップのご案内(見積もり)

4.2 まとめと感謝の意

PDCAサイクルの実施

訪問営業には営業担当者の時間と労力がかかるため、効果を最大化PDCAサイクルを適用して継続的に改善していくことが必要です。Plan(計画)とDo(実行)は上記の通りに進めた、という前提で評価と改善について説明します。

Check(評価)

訪問の結果を確認します。例えば、20社訪問し、10社にクロスセルの見積もりを発行し、そのうち1社が受注に至った、などと全体像を把握します。

Act(改善)

評価結果を基に、改善策を検討します。具体的な改善策は、以下の通りです。

  • 資料の作成

    営業トークやクロスセル対象サービス(情報セキュリティ研修やリスク診断)だけでは見積もりまで至らないケースが多い場合、顧客の業界やトレンドを踏まえた資料を用意して説得力を増していくことを検討できます。

  • フォローアップの強化

    見積もり発行数に対して受注が少なすぎる場合、フォローが不足している可能性があります。料金がネックなのか、それ以外に懸念点があるのか、営業担当者が継続的に顧客とやりとりする機会を設けていきましょう。

PDCAを通じて、訪問の効果を最大化し、顧客との関係をより深く、長期的なものに発展させることができます。各訪問の結果を詳細に分析し、常に改善を重ねることが成功のカギと言えるでしょう。

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