アップセルとは
アップセルとは、顧客が購入したもの、または購入を検討しているものよりも上位のプランやモデルをおすすめすることで、顧客単価の向上を目指す営業手法の一つです。BtoBの分野では、顧客の業務効率やビジネスの成長を支援するために、上位サービスや機能を提案することが一般的です。
例えば、プロジェクト管理ツールを提供する企業では、基本的なタスク管理機能のみを提供するエントリープランから、プロジェクト全体の進捗を可視化し、複数チーム間でのコラボレーションを可能にする上位プランへの切り替えを提案しています。また、ライセンス数が限られているプランを利用している中規模企業には、全社規模で利用可能なプランを提案することで、さらなるビジネス成長を支援しつつ収益の向上を図っています。
アップセルの手法
具体的なアップセルの手法には以下の3つの切り口があります。
アップセルの手法 | 具体例 |
上位・高級品化 |
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全社導入・ボリュームディスカウント |
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専用オプションの提案 |
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いずれの手法も、「少しの追加投資でより大きな価値が得られる」「ビジネスの成長を支援する」という心理に働きかけるものです。顧客に満足感を与えることができるため、長期的な信頼関係の構築にも効果的です。ただし、過剰な提案や頻繁なアップセルは、顧客の信頼を損なう恐れがあるため、バランスが重要です。
また、これとは逆に、あえて価格の安い商品やサービスを提案することで購買意欲を高めたり、解約を防止したりする「ダウンセル」という手法もあります。
クロスセルとは
アップセルと並行して行いたい営業手法にクロスセルがあります。クロスセルとは、顧客が購入を検討している製品やサービスに関連するものを提案し、顧客単価の向上を目指す営業手法です。BtoBでは、補完する製品やサービスを提案することで、顧客の課題解決や業務効率化を支援しながら、収益向上を図ることが重要です。
例えば、セキュリティサービスを提供する企業においては、ネットワークセキュリティ監視サービスを契約している顧客に対して、セキュリティ診断サービスや従業員教育プログラムを提案する事例が見受けられます。このような取り組みにより、顧客のセキュリティ対策を包括的に支援し、信頼関係の強化を図ることが可能となります。
クロスセルの手法
具体的なクロスセルの手法には以下の2つの切り口があります。
クロスセルの手法 | 具体例 |
関連製品の提案 |
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補完的なサービスの提案 |
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補完的なサービスの提案は、特にBtoBの分野においてカスタマーサクセスに直結する重要なアプローチです。顧客が導入した製品やサービスを最大限に活用できるよう支援することで、顧客満足度の向上や長期契約の獲得が可能となります。
アップセルとクロスセルの違い
アップセルとクロスセルはどちらも顧客単価の向上を目指す手法ですが、それぞれアプローチが異なります。
- アップセル:上位のプランや製品の購入を促進し、既存サービスの拡張や契約規模の拡大を図る手法
- クロスセル:関連製品やサービスを提案し、顧客の課題解決や業務効率化を支援する手法
どちらの手法が優れているということはなく、顧客のニーズや状況に応じて柔軟に使い分けることが重要です。また、アップセルとクロスセルを適切に組み合わせることで、さらなる顧客満足度向上と収益拡大を実現することができます。
アップセルの重要性
アップセルは、既存顧客からの収益を最大化するための戦略として多くの企業で活用されています。ただ単に上位プランや高価格の製品を提案するだけではなく、顧客のニーズを深く理解し、適切なタイミングで価値を提供することで、収益性の向上だけでなく、顧客満足度や信頼関係の向上にも寄与します。ここでは、アップセルの持つ重要な役割について、3つの視点から学びます。
収益性の向上
アップセルは、新規顧客の獲得よりも効率的に収益を向上させる手法の一つです。既存顧客に対して上位プランや高品質なサービスを提案することで、顧客単価を引き上げることができます。例えば、クラウドサービス企業では、基本プランの利用者に高度な分析機能や大規模データ処理が可能な上位プランを提案することで、追加の収益を得ています。
また、既存顧客にアプローチするため、新規顧客を獲得する際に必要な広告費や営業コストを削減しながら、比較的、高い費用対効果をを実現できることも、アップセルの大きな利点です。
顧客満足度の向上
アップセルは、単に売上を増やすだけでなく、顧客満足度を向上させる効果もあります。顧客が抱える課題やニーズを深掘りし、それを解決するための上位プランや追加サービスを提案することで、顧客体験の向上につながります。
例えば、ITインフラサービスを利用している顧客が頻繁にトラブルを経験している場合、24時間監視体制を備えたプレミアムプランを提案することで、トラブルの早期解決や安心感を提供できます。このようなアプローチは、顧客との信頼関係の強化にも寄与します。
成長戦略としての活用
アップセルは、顧客にとって「自社の成長を後押しし、課題を解決する提案」として価値を感じてもらうことが重要です。この提案が顧客の業務効率化や競争力の向上につながるものであれば、アップセルは単なる追加購入ではなく、顧客のビジネスを成功へ導くサポートと認識されます。
特にBtoBでは、顧客の成長を支援するアップセルの提案は、顧客との信頼関係を強化する要素となります。例えば、利用中のツールに不足している機能や、ビジネス規模に合わせた上位プランを提案することで、顧客は自社の目標達成に向けた確かなサポートを得られると感じます。
また、アップセルを通じて顧客の成功を実現できれば、契約の更新や拡大へと自然に結びつきます。顧客が「この企業の提案を受けることで、自社がさらに成長できる」と確信することで、継続的な関係が築かれ、結果として自社の競争力も高まります。こうした成功事例の積み重ねは、自社のブランド力を向上させ、競合との差別化を図る大きな力となります。
クロスセルの重要性
クロスセルは、既存顧客の価値を最大化するための手法として、多くの企業で注目されています。関連する製品やサービスを提案することで、顧客単価を向上させるだけでなく、顧客が自社製品を最大限に活用できる環境を提供することが可能です。また、顧客データを活用した提案により、マーケティング活動全体の効率化や成果向上にも寄与します。ここでは、クロスセルの重要性について、3つの観点から学びます。
既存顧客の価値を最大化
クロスセルは、顧客にとって、自社の業務課題を効率的に解決するための具体的な手段となります。関連する製品やサービスを提案されることで、顧客は「必要なサポートを受けられることで業務を円滑に進められる」と感じ、安心感を得られます。例えば、クラウド型会計ソフトを利用している企業に人事管理ツールを提案する場合、このツールがバックオフィス業務の効率化を助け、業務全体の改善につながることを明確に示すことで、顧客にとって価値ある選択肢となります。
このような提案によって、顧客は「自社の業務に役立つ解決策を提供してくれる企業」と認識し、信頼感が高まります。それが結果的に、長期的な関係構築へとつながるのです。
顧客満足度の向上
クロスセルは、顧客のニーズや課題を解決するための具体的な手段を提供することを目指しています。顧客の利用状況や過去の行動を分析し、それに基づいて提案を行うことで、顧客は「自分たちに最適な選択肢が提示された」と感じ、満足度が向上します。例えば、ネットワーク監視を導入している企業に対してセキュリティ教育プログラムを提案する際には、「情報漏洩リスクを大幅に減少させる」といった具体的な効果を示すことで、顧客はこの提案を「信頼できるサポート」として受け入れやすくなります。
アップセル・クロスセルのメリット
アップセルやクロスセルには、企業と顧客の双方に多くのメリットがあります。特に、以下の2つの効果が大きく期待されます。
顧客単価・LTV向上
アップセルやクロスセルを行うことで、顧客単価が上昇し、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上が期待できます。LTVとは、顧客が取引を開始してから終了するまでの間に、どれだけの利益をもたらしてくれるかを示す指標です。
マーケティングにおいては、「1:5の法則」や「5:25の法則」が、既存顧客維持の重要性を説明する理論として知られています。
- 1:5の法則:新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかる
- 5:25の法則:顧客離脱率を5%改善するだけで、利益率が25%向上する
新たな製品開発や新市場開拓をしなくても、既存顧客に対するアップセルやクロスセルを活用することで、効率的にLTVを向上させることができます。
顧客満足度の向上
アップセルやクロスセルは、顧客にとっても、自社の課題を解決したり、より便利な環境を整えたりするためのメリットが大きい提案です。現在利用中の製品やサービスに対して、さらに良い選択肢や不足している部分を補う提案を受けることで、顧客は自社のビジネスの効率化や改善を実感できます。
例えば、契約内容の拡大や複数サービスを統合した提案によってコスト削減が可能になる場合、顧客は「効率的に必要な機能を強化できる」という価値を感じるでしょう。このような提案は、顧客にとって業務改善やコストパフォーマンスの向上につながり、信頼関係の強化にも寄与します。その結果、顧客は継続的な利用や新たな契約を検討しやすくなり、さらに周囲への推薦やポジティブな口コミを通じて、新たなビジネス機会を生むことにもつながります。
アップセル・クロスセルのデメリット
イメージの悪化により顧客離れ
アップセルやクロスセルを実施する際に最も注意しなければならないのは、強引な提案によって顧客との信頼関係が損なわれるリスクです。これらの提案は、必ずしも顧客が明確にニーズを持っているわけではない場合もあり、不適切なタイミングや方法で行うと「押し売り」と受け取られる可能性があります。
特に、顧客との関係が十分に構築されていない段階で強引な提案を行うと、「必要以上に商品を売り込まれた」と感じ、印象が悪化することにつながります。また、選択肢を増やしすぎることで「どれを選べばよいかわからない」や「そもそも必要性が薄い」といった感情を抱かせるリスクもあります。
アップセルやクロスセルを成功させるには、対象となる顧客を慎重に選定し、信頼関係を築いた上で適切なタイミングと方法で提案することが不可欠です。顧客にとって提案が「価値あるもの」であると確信してもらえるよう、押し付けにならないコミュニケーションを心がけましょう。
アップセル・クロスセルのターゲットを絞ることが肝要
アップセルやクロスセルを成功させるためには、提案の内容や方法だけでなく、ターゲットの選定が極めて重要です。顧客全体に一律で提案するのではなく、適切な顧客層を特定し、その特徴に合わせてアプローチすることで、成果を大きく高めることができます。具体的には、過去の取引データを基にした属性分析やRFM分析を活用する方法が効果的です。
属性分析
属性分析は、アップセル・クロスセルに成功した顧客とそうでない顧客の属性に違いがないか、明らかにするために分析するものです。自社のターゲットはマーケティング部門などが定めていることが多いですが、そこからさらにアップセル・クロスセルにつながるかどうかを見極めます。例えば、BtoBビジネスならば、アップセル・クロスセルにつながった企業の従業員数や業種になんらかの傾向がないか分析します。
BtoB | BtoC |
従業員数 | 業種 |
RFM分析
RFM分析は、Recency(直近の購入)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの指標で顧客を分類する方法です。
Recency(直近の購入) | Frequency(購入頻度) | Monetary(購入金額) | |
ランク1 | 1週間以内 | 5回以上/年 | 2万円以上 |
ランク2 | 1カ月以内 | 3回以上/年 | 1万円以上 |
ランク3 | 3カ月以内 | 2回以上/年 | 5千円以上 |
ランク4 | 1年以内 | 1回以上/年 | 千円以上 |
上図のように、3指標を細分化し、それぞれを組み合わせてグループ分けをします。
例えば自社製品をよく利用してくれているランク1や2の顧客には積極的にクロスセル・アップセルを実施し、逆に利用頻度の低いランク4の顧客には、クロスセル・アップセルをしても効果が見込めないため実施しないといった判断ができます。
タイミングも重要
アップセルやクロスセルの効果を最大化するには、適切なタイミングで提案を行うことが鍵となります。
- アップセル:顧客が商品を比較・選定している段階や、サービス利用に満足感を示したタイミングが最適です。例えば、サブスクリプションサービスを利用している顧客に対して、契約更新時に上位プランを提案することで、自然な流れで受け入れてもらえます。
- クロスセル:顧客が購入を決定した直後が最も効果的です。例えば、クラウドソリューションを契約した際に、導入支援サービスや追加トレーニングを提案することで、顧客はよりスムーズに活用を開始できると感じます。
さらに、購入プロセスの中でアップセルとクロスセルを組み合わせることで、顧客にとって最適な提案を行うことが可能です。例えば、契約金額に応じた割引や特典を提示しながら、関連する追加機能やサービスを提案することで、顧客の満足度と成約率を同時に向上させられます。
アップセル・クロスセルの課題
営業担当者の活動支援
アップセル商材を用意しただけで、営業担当者がそれを活用できるわけではありません。
新規顧客の開拓に忙殺されている営業担当者は、どうしてもアップセル・クロスセルの活動をあと回しにしてしまう性質があるからです。
新規開拓の営業活動とは異なる戦略で動くことになるため、まずは「営業方針を担当者に浸透させる」必要があります。
まず重要なのは、アップセル・クロスセル見込みの高い顧客のリスト化です。部門として「既存顧客すべてにアナウンスしてください」と指示すると、ただメールを送って放置してしまう営業担当者もいますので、「この顧客に対してはこのアップセル商材の受注見込みがあります」というリストを提供し、営業担当者が迷いなくアップセル・クロスセルを提案できるようにしてあげましょう。
また、営業担当者が共通の基準で行動できるように、目的や戦略、顧客との関わり方などを明確に伝えるためのトレーニングや教育プログラムを提供したり、トークスクリプトや営業用資料のひな型を用意したりといった支援が重要です。
アップセル/クロスセルを成功させるためには、戦略を営業活動に関わる組織全体に共有し、一貫性を持った社内プロセスを構築することが重要です。
これらを踏まえてアップセル・クロスセルの手順を紹介します。
アップセル・クロスセルを実践する手順
1.顧客情報の収集・分析を行う
アップセル・クロスセルを実践するにあたって、最初に行うのは顧客情報の収集と分析です。
顧客のニーズを把握していなければ顧客に合わせた商品やサービスを提供できないばかりか、かえって顧客に悪印象を与える恐れがあるためです。
また、購買履歴のデータを分析することで、どの商品がよく売れているか、どの商品がセット販売に適しているかなどを把握可能です。
分析方法は先述のRFM分析と 属性分析を用いて以下のようなポイントを分析します。
- 既存顧客の属性
- 顧客の購買履歴
- 問い合わせ内容
- Webサイトのアクセス状況
データの収集および分析には「CRM(顧客関係管理システム)」や「SFA(営業支援ツール)」を活用するのが一般的です。上記の情報を自動で収集し分類可能で、詳細に絞り込んだ分析も行えるようになります。
2.購入までのシナリオプランを構築する
次に、顧客情報の分析結果から、シナリオプランを構築していきましょう。
例としてHR業界のリンクアンドモチベーション社のクロスセル戦略を見てみましょう。
リンクアンドモチベーション社の主商品である「モチベーションクラウド」は組織内のコミュニケーションや社員の働き方、パフォーマンスなどをデジタルで可視化し、分析するためのシステムです。
同社はこれに加えて「採用支援」や「人事コンサルティング」「研修」などのサービスも展開しています。
「モチベーションクラウド」による分析で導入企業は自社の課題を具体的に把握することができます。
課題が浮き彫りになった企業は解決策を検討しますが、同社は「採用支援」や「人事コンサルティング」「研修」といったHRにまつわる課題の解決策になりうるサービスも合わせて提供しています。
「企業の課題を明確化するための製品」と「浮き彫りになった課題を解決するサービス」の両方を提供するという戦略は理想的なクロスセル戦略といえます。
このように、顧客がどのように行動するから何が必要かを考慮したシナリオプランを構築します。
その際は、特に以下の項目を重点的に検討するのが効果的です。
- タイミング
- 頻度
- 期間
- 価格構成
- 展開する商品の種類
このとき、ただ単に目先の利益を得るためではなく、「アップセル・クロスセルを行うことでさらに顧客の満足度を高める」という意識を持つことが重要です。
アップセルを利用した悪質な事例として一時期コピー機のリースでの「コピー用紙0円プラン」というものが流行しました。
コピー機のリースでは、リース代金とは別に一定期間の間に印刷した枚数によって変動するカウンター料金がかかります。
カウンター料金はインク代やメンテナンス代を含めたものですが、通常コピー用紙の代金は含まれていませんので、別途購入することになります。
そこでリース会社が提案したのが「コピー用紙0円プラン」です。その名の通り、リース契約に印刷枚数分のコピー用が無料で提供されるサービスです。
リース料金が高くなる複合機などの提案時に、あたかもお得になるこのプランを提案することが多かったのですが、実はカウンター料金を高くして調整しているだけのプランです。
通常、モノクロカウンター2円ほどで、A4のコピー用紙も安ければ0.5円ほどです、それを「コピー用紙0円プラン(カウンター料金3円/枚)」で売り出す手法でした。
このような手法は顧客が真実に気付くまでは利益を上げられますが、気付かれてしまえば信頼を失う行為です。
このような目先の利益ではなく、長期的に顧客の満足度を上げるプランを設計しましょう。
3.プランに基づいて実行する
構築したシナリオプランに沿って、施策を実行しましょう。
実行に際してターゲットの選定は、前述の通り「RFM分析」「属性分析」に基づいて行います。
「RFM分析」では直近の購入があり、利用頻度も購入金額も高いランク1~2が初回のアプローチ先として最適です。「属性分析」で言えば、取引実績が多い地域や業種分類を特定してアップセル・クロスセルの提案対象とすると効果が出やすいでしょう。
少しでも営業担当者の負担を減らすため、CRM/SFAを用いることでこうした分析やターゲットの選定、営業担当者の割り振りを自動で行うこともできます。
また、営業担当者やカスタマーサクセスの積極的な行動を促すためには、評価システムに組み込んだうえでトークスクリプトや営業用資料のひな型を用意するのも効果的です。
電話勧誘販売にあたる場合は注意する
電話でのアップセルやクロスセルの提案は特定商取引法で「電話勧誘販売」とみなされる場合があります。
電話勧誘販売は禁止されているわけではありませんが、以下の条件を満たさなければなりません。
- 自社の名称・担当者の氏名・提案する商品などを明確に伝える
- 契約の申し込みを受けたら、記載が義務付けられている内容の入った書面を交付する
- クーリング・オフ制度を適用する
- 電話での勧誘を拒否した場合には、勧誘の継続や再勧誘はしない
相手に伝えるべき内容や書面の記載事項は詳しく決まっているため、 電話でアップセルを行う場合は特定商取引法についても確認しておきましょう。
出典:電話勧誘販売 特定商取引法ガイド(消費者庁)
4.効果検証を行う
施策は実行して終わりというものではありません。
実施後も継続して効果測定を行い、仮説検証することが大切です。
例えば、3つの選択肢を用意すると消費者は極端性の回避、妥協効果によって中間の選択肢を選ぶ傾向がある「松竹梅理論」と言われるものが知られていますが、これは製品や業界によっては当てはまらない場合もあります。
出典:「選択における文脈効果の出現要因とその方向性科」(加藤 拓巳 埼玉大学 人文社会科学研究科)
どのようなシナリオプランが自社に合っているかは、検証してみるまで分からないものです。
PDCAサイクルを回して継続的な効果検証を行うことが、クロスセルを成功させるために必要です。
アップセル・クロスセルを実施する際の注意点
アップセルやクロスセルをうまく行うためには、実施の際にいくつかのポイントに押さえておくことが重要です。顧客に適切な提案を行い、満足度を高めるために押さえておきたい3つの注意点を学びます。
顧客ニーズに基づいた提案を行う
アップセルやクロスセルを成功させるためには、顧客のニーズを正s確に把握し、それに基づいた提案を行うことが不可欠です。顧客の課題やビジネス目標に寄り添った提案でなければ、「不必要なものを売りつけられている」と感じさせてしまうリスクがあります。
例えば、CRMを導入している企業が「データ分析に時間がかかる」という課題を抱えている場合、分析機能を強化するオプションを提案すれば、その課題を解決できるでしょう。
顧客のニーズを理解するためには、購買履歴や問い合わせ内容、製品やサービスの利用状況といったデータの収集と分析が鍵を握ります。特にCRMやSFAを活用して顧客情報を可視化し、提案の精度を高めましょう。
過剰な押し売りを避ける
アップセルやクロスセルを効果的に提案するためには、顧客に「押し付けられている」と感じさせないことが重要です。特にBtoBでは、信頼関係が十分に築かれていない段階で強引な提案を行うと、「自社の利益だけを考えている」と誤解され、関係が悪化する可能性があります。
顧客が提案を受け入れやすくするためには、その提案が「顧客のビジネスにどんな良い影響をもたらすか」を具体的に説明することが重要です。また、複数の選択肢を提示して、顧客自身が最適なプランを選べるようにするのも効果的です。
例えば、「どれか1つを選んでください」と一方的に伝えるのではなく、「こちらの2つのプランは、御社の課題解決に役立つと考えています」と説明すれば、顧客は自分で判断する余地を持ち、提案を前向きに受け入れやすくなります。
提案のタイミングに注意
アップセルやクロスセルを成功させるためには、提案を行うタイミングが非常に重要です。タイミングを誤ると、顧客が不信感を抱いたり、提案が適切に受け入れられなかったりする可能性があります。
例えば、アップセルの場合、製品やサービスに対する満足度が高まった時点や、契約更新時などが最適なタイミングです。満足度が高い顧客は、提案をポジティブに受け入れる傾向が強いため、「さらに業務効率を高めるために」といった切り口で提案を行うと効果的です。
クロスセルの場合は、顧客がすでに購入を決めた直後が最も効果的です。例えば、企業がクラウドストレージサービスを契約した際、データ保護やバックアップの追加オプションを提案することで、契約時の勢いをそのまま活用することができます。
提案のタイミングを判断するためには、顧客の購買データや問い合わせデータを分析し、適切な時期を見極める仕組みを整えることが重要です。
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