このようなタスクで抜け漏れが発生すると、商談がうまく進まなかったり、進んでいると思っていた商談が思わぬタイミングで失注になってしまうなどの問題が発生しやすくなります。
営業活動の全体像を把握しつつ、売上目標達成のカギとなるタスクを理解しましょう。
タスク整理のゴールイメージを持とう
営業担当者が行うべきタスクの全体像を明らかにするには、業務を整理し、業務にからむタスクを洗い出す必要がありますが、その前に、まず、優先順位付けに必要なゴールイメージを持ちましょう。
営業部門の業務は膨大ですが、結局のところ、売上に貢献する業務が「優先すべき業務」と言い切ることができます。なぜなら、営業部門には売上目標を達成することが求められるているからです。そのため、売上に貢献する業務が何なのかから考えてみましょう。
売上に貢献する業務について考えるためには、顧客の購買プロセスと、それに対応する営業プロセスを整理する必要があります。
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上記の図では、顧客が新たな商品やサービスを購入する際の、検討から利用までの標準的な購買プロセスと、商品やサービスを認知してもらい購入利用してもらうために行う標準的な営業プロセスを対になるように整理してあります。顧客が商品やサービスを購入するには、顧客の購買プロセスが右に進んでいく必要があり、顧客の購買プロセスに働きかけることがマーケティング・営業活動であると定義すると、営業担当者は対となる営業プロセスを右に進める活動に注力すべきといえます。
つまり、営業プロセスが左から右へと進むことは「売上に貢献する」ことを意味します。そのため、営業プロセスを右に進めるための業務が優先すべき業務で、それにまつわるタスクが重要タスクです。
例えば、営業プロセスの「商談」という段階は、さらに細かい段階に分かれ、その中に「見積もり」という業務があります。基本的に、見積もりを提示しない限り顧客が次の「購入」段階に進まないため、「見積もり」は「商談」という営業プロセスにおいてとても重要な業務と言えます。そして「見積もり」業務には細かなタスクが関連付いて発生します。タスクの例としては、上司からの割引金額の承認やお客様への見積書の送信、見積もり有効期限前のお客様への確認といったものです。これらの細かいタスクは「見積もり」という重要な業務にからむタスクなので最重要、という判断ができます。
営業部門には、対お客様の業務と対社内の業務がそれぞれあります。さらに、「お客様の印象を良くするためにやれるならやった方がいい」という業務も加えれば際限がありません。
迷った時は、売上への影響が大きいかどうかで判断すると優先順位を見失うことは無いでしょう。
自社の営業プロセスを把握する
ゴールイメージを持ったら、次は自社独自の営業プロセスを整理しましょう。一気通貫型の営業部門の場合、見込み客を獲得してくるところから、成約後のサポートまでを営業担当者が全てカバーしているでしょう。自動車ディーラーの営業担当は一気通貫型の好例でしょう。見込み客獲得を目的に新車フェアの現場に立って、イベントに来場した家族連れに話しかけるところから営業が担当します。その後、商談や納車を経て、車検のお知らせや買い替えの希望などもずっと営業担当者が伴走していくスタイルです。
一方で、法人向けにITシステムを販売する企業は、営業活動を分業しているケースが多いです。インターネット上で見込み客の個人情報を獲得するのはマーケティング部門が担います。その後、商談を設定するまで、電話をかけたりメールを送ったりといった「育成」のプロセスはインサイドセールス部門が行います。商談や成約はフィールドセールス部門が担当し、契約後の活用支援はカスタマーサクセス部門が管轄する、といった具合です。
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営業プロセスについて、標準的な流れと自社が異なる部分があれば書き換えて整理していきます。例えば、トイレの水漏れを修理する業者の場合、お客様は水漏れが発生して困って問い合わせしてくるため、「育成」というステップが無く、営業担当は問い合わせしてきたお客様とすぐ商談して見積もりを提示する流れになります。
営業プロセスの業務を洗い出す
自社の営業プロセスがどうなっていて、「営業部門」がどこからどこまでカバーするのかを見極められたら、次に、営業プロセスごとの業務を洗い出しましょう。例えば、商談のプロセスは、次の成約というプロセスに進めるため、お客様に対して商談の設定や訪問、見積もりの送付が必須の業務です。一方で、それらの業務の他に、商談数が目標に対してどう推移しているかKPI(重要業績評価指標)を確認したり、営業会議で社内に報告したりする業務も実際にあります。訪問した時の電車代の精算、といった社内業務もあるでしょう。
ここで重要なのは、まだ細かいタスクに落とし込まないことです。業務の大枠を「ステップを進めるために必須の業務」か、そうでない業務なのかを切り分けることです。
- ステップを進めるために必須の業務
- その他の業務
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業務に関連するタスクを洗い出す
いよいよ業務に関連付くタスクを洗い出します。以下の表には、それぞれの営業プロセスの業務を1つ抽出して、それにまつわるタスクを書き出してみました。
大切なのは、「ステップを進めるために必須の業務」をイメージして出し切ることです。イメージして出しきれなくても、きちんと実績を出して無駄なく行動している社員が周りにいるはずですから、その社員が何をしているか、何をしていないか、を洗い出すと良いでしょう。
営業プロセス | 業務の例 | 業務にまつわるタスクの例 | |
見込み客獲得 | ステップを進めるために必須の業務 | 広告で集客 |
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その他の業務 | KPI管理 |
| |
見込み客育成 | ステップを進めるために必須の業務 | 初回接点創出 |
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その他の業務 | 社内調整 |
| |
商談 | ステップを進めるために必須の業務 | オンライン商談 |
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その他の業務 | 社内報告 |
| |
成約 | ステップを進めるために必須の業務 | 契約締結 |
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その他の業務 | 社内報告 |
| |
活用支援 | ステップを進めるために必須の業務(リピートを獲得するための業務) | 活用確認 |
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その他の業務 | 中長期的な視点で必要な業務 |
|
「その他の業務」に関するタスクは全て出しきれなくても構いません。なぜなら、優先度がそこまで高くないためです。逆に「その他の業務」に関するタスクが多すぎる場合は、本業に時間を使えなくなっている原因と言えますので、管理職が業務をのあり方を見直すべき組織だと言えるでしょう。
重要なタスクを見極める
「ステップを進めるために必須の業務」が重要なタスクです。業務に関するタスクを洗い出し、本当に必要なタスクのみを行うようにしましょう。その際、「何をしないか」は重要な視点です。
例えば、商談のプロセスの訪問という業務に関連して「もらった名刺をファイルで整理」と「名刺情報を顧客管理システムに登録」という2つのタスクを自身がやっているとします。名刺情報は見積もり送付に必須ですから「ステップを進めるために必須の業務」と言えますが、2つのタスクのうちどちらかだけで目的は達成することができます。さらに言えば、社内共有という意味で名刺を物理的な個人ファイルで整理するのではなく「名刺情報を顧客管理システムに登録」というタスクだけで十分だ、と考えることができます。
優先順位を付けるポイント
「ステップを進めるために必須の業務」が優先すべき業務です。ただ、優先すべき業務が複数あって、その中でさらに優先順位を判断する必要がある場合、営業組織の課題から考えましょう。例えば、商談に持ち込みさえすれば高い成約率を誇る営業組織の場合、商談に至る数を増やす見込み客獲得や見込み客育成のプロセスの量を増やせば最終的に売上へのインパクトが高まります。
逆に、季節性があるビジネスの場合、シーズンオフにいくら見込み客獲得に労力をかけても見込み客数が劇的に増える可能性は無いため、数少ないお客様が確実に成約するためのタスクを最優先にすべきでしょう。
BtoBビジネスとBtoCビジネスの違い
BtoBビジネスでもBtoCビジネスでも、タスク管理の観点に大きな違いはありません。営業プロセスを進める業務にまつわるタスクが最も重要です。ただ、BtoBの場合は、組織対組織のコミュニケーションとなるため、上位の意思決定者に対するタスクや他の部署への横展開を進めるためのタスクなど、組織間のやりとりを円滑に進ませるためのタスクの重要度も高いと言えるでしょう。
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