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営業データをCRM/SFAに記録する

ここからのレッスンでは、CRM(顧客関係管理)/SFA(営業支援)ツールを活用して営業エキスパートを育成する具体的な方法を解説します。本レッスンでは、CRM/SFAツールを用いて、営業担当者の実態を把握し、適切に助言するためのデータ基盤の準備を進めます。架空企業の実例を通じて、データのインポートや操作方法を理解しましょう。※CRM/SFAツールの例として、Zoho CRM の画面が登場します。

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営業データをCRM/SFAに記録する

このレッスンで学べること

ある企業の例を通じて、営業担当者の実績をCRM/SFAで把握し、営業担当者に助言し育成していくイメージをつかみます。CRM/SFAを使う流れを「営業データをCRM/SFAに記録する」「営業力の伸びをCRM/SFAで確認する」の2つに分け、このレッスンでは、前半の「営業データをCRM/SFAに記録する」を扱います。具体的には、CRM/SFAのアカウントを用意することはもちろん、サンプルデータをインポートし、データを可視化する環境を準備していきます。

このレッスンで学べること

営業データをCRM/SFAに記録する※Lesson 6

CRM/SFAを使う理由とは
CRM/SFAツールを用意する
商談などのデータを登録する

営業力の伸びをCRM/SFAで確認する※Lesson 7

担当者別に商談金額と件数を確認する
商談の進捗状況を確認するレポートを作成する
失注案件のレポートを作成する
担当者別の活動量を確認する

CRM/SFAを使う理由とは

CRM/SFAツールを活用することで、顧客の連絡先、商談履歴、購入履歴、コミュニケーション履歴などを一元管理することが可能です。これをエクセルなどの表計算ソフトで実現することは不可能ではありませんが、管理が複雑になってしまうのと、データが増えるごとに動作が遅くなり、やがて限界に達してしまいます。CRM/SFAツールは効率的にデータを管理するとともに、営業担当者の育成という視点から以下のようなメリットがあります。

パフォーマンス分析と改善

営業活動やパフォーマンスに関する詳細なデータが蓄積されます。データを活用することで、各営業担当者の強みや改善点を客観的に把握し、個別に最適化された育成プランを立てることが可能です。

営業プロセスの標準化

データで裏打ちされた効果的なアプローチ方法を組織全体で共有できます。これにより、自社の営業モデルを構築し、プロセスを標準化できます。新人や経験の浅い担当者も成功パターンを学ぶことができます。

営業活動の効率化

以下のような定型業務を自動化します。営業担当者が本来注力すべき業務に時間を使えるようにします。

  • 顧客の属性や行動履歴に基づくメールの自動送信
  • 商談前の自動リマインダー送信
  • 日報作成の自動化
  • データの一括インポート

このレッスンの想定シナリオを把握する

このレッスンでは、「システム構築の開発・運用サービスを提供するA社の営業部」を例に、CRM/SFAを使った営業管理と営業担当者の育成について解説していきます。

A社のプロフィール

  • 業種: システム会社
  • 規模: 30人
  • 提供サービス: システム開発および運用サービスの提供、IT化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の相談対応
  • 特徴:
    ①Webサイトから問い合わせ、展示会、セミナーから見込み客を獲得
    ②展示会やセミナーの対応は営業部が担当
  • 営業担当者の実績: 担当者は2名。実績は以下の表

担当者

商談件数

商談金額

平均商談金額

山内純一

11

¥95,000,000

¥8,636,364

渋沢優也

8

¥80,000,000

¥10,000,000

A社の営業部門の課題

  • 商談、それに伴うタスクの管理は各担当者に任されており、定量的な数字を算出する際に手間がかかる
  • 商談、それに伴うタスクの管理は各担当者に任されており、定性的な状況把握がしにくい
  • 商談、それに伴うタスクを統合的に管理していないため、営業活動のボトルネックを把握し、担当者を適切に育成できない
  • 感覚に頼る部分が大きく、管理職と担当者の認識のずれが発生している

営業担当者育成の課題

  • 案件数や商談金額は均等に調整されており、山内さんは目標を常に達成している一方、渋沢さんは売上目標に対して毎回未達である
  • 渋沢さんと1on1のヒアリングを実施しているが、データに基づいた指導ができていない
  • チーム全体のパフォーマンス向上に向け、CRM / SFAの活用を検討しているが、現状のままでは効果的な施策が見つかっていない
  • 営業育成のためのフレームワーク導入を検討している。ただ、営業への負担になる可能性もあるため、まずはオーソドックスなものから試しに導入してみたい

CRM/SFAツールを用意する

営業活動のデータを蓄積、可視化するためにCRM/SFAツールを用意します。ツールの参考としてZoho CRM を使いながら、A社の営業部門の管理職になったつもりで、営業担当者の実績を把握するイメージをつかんでいきましょう。

アカウントを作成する

Zoho CRM を使う場合、Zoho CRM の無料トライアルからアカウントを作成します。フォームに必要事項を入力し、[無料アカウントを作成する]をクリックすると、すぐにZoho CRM の画面に遷移します。

Zoho CRM 無料トライアル

アカウントを作成すると、会社名を登録するポップアップ画面が表示されるので入力します。[サンプルデータを読み込む]と表示されていますが、今回はA社を想定した別のサンプルデータを読み込むため、チェックを外して[利用を開始する]を押下します。

仮にサンプルデータを読みこんだ場合でも、後からサンプルデータだけを削除できます。[設定(画面右上の歯車マーク)]→[データ管理]→[サンブルデータの削除]からいつでも一括削除できます。

会社名を登録するポップアップ画面

次の画面で[チームメンバーを招待する][ユーザーを招待する]をクリックして、A社の営業部門2人をユーザーとして追加します。

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[+新しいユーザー]をクリックしてユーザーを作成します。

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シナリオに沿って、A社の2人を登録します。ユーザーを登録することで、各担当の営業活動の記録が可能になり、データが蓄積されていきます。登録したユーザーはCRM/SFAを活用して、顧客管理や商談管理を行えるようになります。

項目

ユーザー1

ユーザー2

山内

渋沢

純一

優也

メール

demo1@example.com

demo2@example.com

役職

マネージャー

マネージャー

権限

標準

標準

トライアル登録した時のメールアドレスの認証が完了していないと「あなたのアカウントの認証が完了していないため、このユーザーへの招待メールは送信されません。」と表示されますが、ユーザーの追加は可能です。

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ユーザーの追加が終わると以下の状態になります。

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取引先と連絡先をインポートする

続いて、A社の[取引先]と[連絡先]をCRM/SFAに登録しましょう。[取引先]とは、取引相手の法人のことで、[連絡先]とはその法人に所属する担当者のことです。今回、CRM/SFAを使ってA社の営業担当者の実績を把握するのが目的ですが、その実績はA社の営業相手である[取引先]や[連絡先]に関連付くことになるため、まず[取引先]と[連絡先]を登録します。登録は1件ずつ手作業で登録する方法もありますが、ここでは複数を一気に登録できるインポート機能、を使います。まずはA社の取引先情報のサンプルデータをインポートします。

取引先のサンプルCSVファイルのダウンロードはこちら

画面上部の [取引先]タブを押下し、画面右上の[取引先を作成]の▼マークから[取引先をインポート]を押下します。「タブ」とは、Zoho CRM においてデータのまとまりを指します。

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遷移した画面で、法人(BtoB)の[取引先をインポート]を押下します。

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[参照]をクリックし、先ほどダウンロードしたサンプルファイルを選択し、[次へ]を押下します。

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インポートしたファイルをどのように処理するかの画面では、[取引先の新しいデータとして追加する]を選び[次へ]を押下します。

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次は、インポートファイルの一番上の行に記載された値とインポートされる項目のマッピング(突き合せ)の画面です。あらかじめインポートするデータの項目名とCRM上の項目名をそろえておけば、自動でマッピングが行われます。サンプルデータは自動でマッピングされます。下記の画面のようになっているかを確認し、[次へ]をクリックします。

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以下のアラートが表示されますがそのまま進みます。

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次の画面で何もチェック付けずに[完了する]を押下します。

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インポートは数秒から数分で完了し、CRMにデータが登録されます。完了後に[取引先]タブがこのような画面になっていれば成功です。

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次にA社の[連絡先]のサンプルデータをインポートします。[連絡先]タブからインポートします。大まかな流れは取引先のインポートと同じです。動画で確認しましょう。インポートするサンプルデータは以下の通りです。

連絡先のサンプルCSVファイルのダウンロードはこちら

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動画にも含まれていますが、連絡先インポート時の項目のひも付けは、以下の通りです。

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商談データをインポートする

A社の商談データをCRM/SFAにインポートしましょう。商談データとは、商談名や担当者、取引先、商談額(総額)といった情報です。商談を登録することで、各営業員が抱えている案件の、「契約時期」や「受注金額」なども明確に管理できるようになります。例えば、今四半期の目標達成が厳しい状況が見えた場合、CRM/SFAに商談が登録されていれば、目標を達成するために多数の商談の中から比較検討し、どの商談に注力するのが良いかが分かります。それが分かれば、管理職として営業に同行するなどして、進捗を早める事も可能です。

本来、商談データは1件ずつ担当者がCRM/SFAに手動で登録していくものですが、ここではA社の商談データが下記のようにエクセルにまとまっている、という想定で一括でインポートします。インポートの後に手動登録の方法も紹介します。

商談のサンプルデータはこちら

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商談データのインポートは[商談]タブの[商談を作成▼]から行います。

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インポートの流れは動画の通りです。

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動画にも含まれていますが、商談一括インポート時の項目のひも付け(マッピング)は、以下の通りです。

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商談を手動で登録する

先ほどA社の商談データをインポートしましたが、商談を手動で登録する方法を紹介します。ここで紹介するデータはすでにインポート済みのデータなので、あくまで参考として見てください。

A社が展示会で獲得したシステム開発の1,000万円規模の商談を登録する例を動画で紹介します。入力する項目は、こちらの赤枠で囲った部分です。商談の登録は、[商談]タブを開き、[商談を作成]をクリックして、作成画面を開くことから始めます。

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登録する商談データは下記の通りです。このように、通常は商談データは現場の担当者が手動で入力することが多いでしょう。

項目名

内容

商談名

有限会社●□(システム開発)

取引先名

有限会社●□

連絡先名

舞 象宝

ステージ

ニーズの分析

完了予定日

2024/11/22

見込み客のデータ元

展示会

総額

10000000

商談の担当者

渋沢優也

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商談タブにカスタム項目を追加する

CRM/SFAには、商談管理に必要な項目があらかじめ用意されています。Zoho CRM でも同様です。商談の受注予想金額である[総額]や受注予測日である[完了予定日]、進捗状況を管理するための[ステージ]など、商談管理を行うための基本的な項目が最初から設定されています。

さらに、企業ごとの事情に沿った項目を、カスタム項目として独自に追加することもできます。今回A社では、「Lesson 1 営業人材の育成とは」でも出てきた「BANT情報」をCRM/SFAに新たに追加することにしました。

Zoho CRM の[商談]タブの詳細ページに、下記の項目を新たに設ける流れを紹介します。

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Zoho CRM 画面右上歯車マークの[設定]→[タブと項目]→[商談]→[標準]から新たな項目を追加します。カスタム項目の作り方は動画の通りです。Budget(予算)と、Authority(決済権)を設定しています。

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BANTのヒアリング項目は、成果を出している営業員であれば自然と情報を得ていると思われます。なぜなら、商談を進める上で必要な項目だからです。動画ではBANT項目のBudget(予算)とAuthority(決済権)を追加しましたが、同様の流れで、残りのNeed(ニーズ)とTimeline(タイミング)も追加できます。

商談にひも付くタスクを登録する

A社のシナリオでは詳しく触れていませんが、商談にはタスクがつきものです。例えば、商談資料の作成やWeb会議の設定などが該当します。営業活動の管理にはタスク管理が欠かせないため、CRM/SFAにはタスク管理の機能があり、Zoho CRM にも同様の機能があります。営業担当者の育成、という観点でも、タスクが登録されて初めて営業の活動を把握でき、指導を行うことが可能です。商談のステージを確認すれば、状態を把握することはできますが、なぜその状態に至ったかのプロセスはタスクを見なければ分かりません。

このため、A社の商談にひも付くタスクがあった、という想定でタスクがあらかじめまとまったデータをここでインポートします。次のLesson 7で、商談→タスク(活動)という流れで、A社の営業担当者の状況を掘り下げていきます。

タスクのサンプルCSVファイルのダウンロードはこちら

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動画にも含まれていますが、タスクインポート時の項目のマッピングは、以下の内容です。

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データの位置付けを知る

ここからはA社の営業担当者の育成、という本筋からは離れた余談です。CRM/SFAはよく似た機能を持っていますが、ここではZoho CRM のデータの位置付けや項目の意味を紹介します。今回インポートしたのは、図にある①取引先、②連絡先、④商談、⑥タスクです。このうち、[取引先]は法人を指し、[連絡先]はその法人に所属する個人を指します。

今回のシナリオでは使いませんが、商談に発展する前の[見込み客]という情報をZoho CRM では区別して管理することができます。

Zoho CRM に格納される顧客情報の流れ

商談タブの項目を理解する

Zoho CRM の[商談]タブについて、いくつかの重要な項目について解説します。

  • ステージ
    [ステージ

    は、営業活動の進捗状況を確認するための項目です。 「Lesson 2 営業力の基本原則」の「営業プロセスの流れ」で、各ステージの位置付けも含めて解説しています。]
商談の進捗状況
  • 完了予定日
    営業活動を終えて、受注に至る見込みの未来の日付を入力するのが[完了予定日]です。営業活動においては、[完了予定日]までに受注するために、逆算でスケジュールを仮決めし、いつまでに各ステージを終えていく必要があるのかを意識して活動を行っていきます。顧客の抱える課題や提案する商品、予算規模、顧客の規模などによって商談にかかる期間は異なります。提案内容によっておおよその商談期間を想定して入力していきましょう。CRM/SFAツールの活用が進み、データが蓄積されると、商談の平均期間などを算出できるようになりますので、徐々に精度を上げていくイメージで活用していきましょう。

  • 見込み客のデータ元
    その商談が展示会や営業メールなど、どのような経路から発生したものかを入力します。新規商談であれば、[連絡先]の内容をそのまま引き継ぐ形で問題ありませんが、リピート商談の場合には、営業フォローで生まれた商談であることを明確にするなどして、分析などに活用できるデータを入力するようにします。

  • 確度
    [確度]はその商談の受注確率を表す項目です。一般的にいわれる「ヨミ」(営業担当者の主観的な受注確率)とは少し位置付けが異なります。[確度]は、ステージにひも付いている項目で、商談に至ったステージに応じて、受注確率が自動で割り当てられます。つまり、このステージにまで進んだら、おおよそ受注確率はこのくらいになるという統計的な確率を設定する項目といえます。

  • 売上の期待値
    [売上の期待値]は[総額]と[確度]を掛け合わせて、その時点で計算される売上の期待値です。ステージが先に進めば期待値の金額も上がっていきます。一つ一つの商談における[売上の期待値]にはあまり意味がなく、組織全体や担当者が抱える商談の期待値の合計を利用して、売上予測を行っていきます。[確度]の設定が実際の営業活動を反映しており、[総額]の予測精度が高ければ売上予測の精度も上がります。

次のLesson 7では、入力したデータをグラフなどにして、営業担当者の改善に役立てていきます。

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