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営業力の基本原則

営業力は、企業の成長をけん引する重要な要素です。しかし、その育成は容易でなく、多くの企業が課題を抱えています。このレッスンでは、営業力の基本原則を理解し、各営業プロセスのステップにおける具体的な実践方法を学ぶことで、効果的な営業育成を目指します。

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営業力の基本原則

営業力とは

営業力とは、単に商品やサービスを「売る力」ではありません。顧客の真のニーズを深く理解し、最適な解決策を提案し、信頼関係を構築する総合的な力です。優れた営業担当者は、顧客の課題や目標を共有し、共に解決策を模索することで、顧客から信頼され、長期的なパートナーシップを築くことができます。

いかにチームや組織全体に、優れた営業担当者を増やすかという問題は、長年にわたり営業マネージャーやリーダーにとって大きな課題となってきました。そして現在もこの課題は最重要なものです。全ての営業担当が優れた営業能力を持ち、自社の商品やサービスをしっかり理解して顧客に対応できれば、企業は大きく成長するでしょう。しかし、現代は、営業人材の確保そのものが困難な時代となっています。そこで鍵となるのが、現在のスタッフの営業力をどのように育成・成長するかなのです。

営業力の育成

営業力の育成には、営業プロセスの理解と徹底が基本となります。営業プロセスは、潜在顧客の発掘から契約締結までの各ステップを体系化したものであり、各ステップを適切に踏んでいくことで、成約率を高めることができるでしょう。

営業プロセスの流れ

営業プロセスには7つのステップがあります。

商談の進捗状況
1

条件確認

顧客のニーズ、期待、購入条件を明確にする最初のステップです。この段階で得られた情報は、その後に続く全ステップの基礎となるため、非常に重要です。顧客の課題や目標を深く理解し、信頼関係を築くことが求められます。

2

ニーズの分析

条件確認で得た情報を基に、顧客の真のニーズを分析します。顧客の課題や目標を明確にし、自社の商品やサービスがどのように貢献できるかを具体的に示すことが重要です。

3

提案

ニーズ分析の結果に基づき、顧客に最適な解決策を提案します。提案は、顧客の課題を解決し、目標達成に貢献できるものでなくてはなりません。具体的なデータや事例を交えながら、提案の価値をわかりやすく伝えることが重要です。

4

意思決定

顧客が提案を検討し、購入の意思決定を行う段階です。営業担当者は、顧客の疑問や懸念を解消し、安心して購入を決断できるようサポートします。誠実かつ迅速な対応が求められます。

5

見積もりの提示

顧客が提案を受け入れた後、詳細な見積もりを提示します。見積もりは、透明性が高く、顧客が理解しやすいものである必要があります。不明点があれば丁寧に説明し、顧客の納得感を高めることが重要です。

6

交渉

必要に応じて、価格や条件の交渉を行います。双方が納得できる合意点を見つけることが重要です。顧客の要望に耳を傾け、柔軟に対応することで、Win-Winの関係を築くことができます。

7

受注/失注

交渉が成立すれば受注、成立しなければ失注となります。失注の場合は、その原因を分析し、改善策を検討することで、次の営業活動に活かすことが重要です。

各ステップをもう少し詳しく学びます。

各営業プロセスにおけるポイント

それでは、各ステップをさらに深く掘り下げ、流れに沿って成功するためのポイントを確認します。これらのステップを一つ一つ丁寧に実践し、顧客との信頼関係を築くことで、営業担当者は真の「営業力」を身につけることができます。

1

条件確認

このステップでは、顧客のニーズや課題を深く理解し、信頼関係を築くことが重要です。営業プロセス全体を通して、特に重要なのがこの「条件確認」です。ここで顧客の状況を深く理解することで、その後のステップがスムーズに進み、成約率を高めることができます。顧客のニーズや課題を明確にするだけでなく、信頼関係を構築するための重要な機会でもあります。逆にこのステップがうまくできていないと、その後のステップのどこかで、顧客とうまくコミュニケーションをとれなくなる恐れがあります。失敗を避けるポイントとして以下が参考になるでしょう。

  • 「なぜ?」を繰り返す:顧客の課題やニーズの背景に対して「なぜ?」を繰り返し問いかけることで、真のニーズを明らかにできます。
  • 傾聴する:顧客の言葉にしっかりと耳を傾け、共感することで、信頼関係を築くことができます。
  • 質問のバリエーション:状況に応じて、開かれた質問や具体的な質問を使い分けることで、より多くの情報を引き出すことができます。
  • 確認と要約:顧客の発言を要約し、確認することで、誤解を防ぎ、理解を深めることができます。
2

ニーズの分析

条件確認で得た情報を整理し、顧客の真のニーズを分析します。ここでの分析は、顧客が求める解決策を明確にし、提案の質を高めるために不可欠です。ニーズの分析が正確であれば、顧客が求める解決策を提供することができ、営業活動の成功に繋がります。以下のポイントを意識します。

  • データ分析: 顧客の業界動向や競合情報を分析することで、より深いニーズを把握できます
  • SWOT分析: 顧客の強み、弱み、機会、脅威を分析することで、解決策を提案できます。
  • 仮説検証: 顧客のニーズに対する仮説を立て、質問や提案を通じて検証することで、より精度の高い分析を行えます
  • 顧客の言葉で語る: 分析結果を顧客の言葉でわかりやすく説明することで、共感を深めることができます。
3

提案

ニーズ分析の結果に基づき、顧客に最適な解決策を提案します。この提案は、顧客の問題解決に直接結びつくものであり、営業力を発揮する重要な場面です。顧客の問題解決に直接結びつく具体的な提案を行うことで、営業力を発揮できます。提案の質が高ければ、顧客は営業担当者の提案を受け入れやすくなります。逆に提案の質が低いと、顧客からの信頼は大幅に低下し、次のステップにも進めなくなるでしょう。以下のポイントを意識します。

  • ストーリーテリング: 顧客の状況や感情に訴えかけるストーリーを語ることで、提案の魅力を高めます。
  • データと事例: 提案の根拠となるデータや成功事例を提示することで、説得力を高めます。
  • メリットとデメリット: 提案のメリットだけでなく、デメリットも正直に伝えることで、信頼性を高めます。
  • 質問と対話: 顧客の反応を見ながら、質問を投げかけ、対話を通じて理解を深めます。
4

意思決定

顧客が提案を検討し、購入の意思決定を行う段階です。営業担当者は、顧客の疑問や懸念を解消し、安心して購入を決断できるようサポートします。例えば、提案内容に対する顧客の質問に的確に答え、懸念を払拭することで、購入意欲を高めることができます。営業担当者が顧客の立場に立って対応することが重要です。以下のポイントを意識します。

  • 迅速で的確な対応:提案内容に対する顧客の質問に迅速・的確に答え、懸念を払拭することで、購入意欲を高めます。
  • 顧客を最優先:営業担当者は、成約を急がず、常に顧客の立場に立って対応します。
5

見積もりの提示

顧客が提案を受け入れた後、詳細な見積もりを提示します。見積もりは、透明性を保ちつつ、顧客に納得してもらう内容であることが重要です。詳細な見積もりを提示し、コストの内訳やメリットを明確に説明することで、顧客の信頼を得ることができます。以下のポイントを意識します。

  • 見やすいフォーマット: 内容を理解しやすい見積もりフォーマットを作成し、情報を整理して提示します。
  • 内訳の説明: 見積もりの内訳を詳しく説明し、顧客が納得できるようにします。
  • オプションの提示: 顧客のニーズに合わせて、追加オプションを提案することで、成約率を高めます。
  • 質問への対応: 見積もりに関する顧客の質問に丁寧に答え、不安を解消します。
6

交渉

見積もりに対する顧客の反応に応じて、価格や条件の交渉を行います。顧客の要望に応じて価格や条件を調整し、双方にとって最適な合意を見つけるステップです。ここでは、顧客との合意を得るための柔軟な対応が求められるので、担当者の総合的な能力が試される瞬間でもあります。以下のポイントを意識します。

  • 交渉術: Win-Winの関係を築くための交渉術を習得します。
  • 代替案の提示: 顧客の要望に応えられない場合は、代替案を提示することで、交渉をスムーズに進めます。
  • 妥協点: 双方が納得できる妥協点を見つけることで、合意の達成を目指します。
  • 契約条件の確認: 交渉が成立したら、契約条件を再度確認し、誤解がないようにします。
7

受注/失注

交渉が成立すれば受注、成立しなければ失注となります。失注した場合、その原因を分析し、次回に活かすためのフィードバックを得ることが重要です。以下のポイントを意識します。

  • 失注分析: 失注の原因を分析し、改善策を検討することで、次の営業活動に活かしていきます。
  • 顧客の声: 失注した顧客からフィードバックを得ることで、改善点を見つけます。
  • 成功事例の共有: チーム内で成功事例を共有することで、お互いに学び合い、成長できます。
  • 継続的な改善: 営業プロセス全体を継続的に改善することで、成約率を高めることができます。

営業力を伸ばすコツ--点で捉えず、面で捉える

ここでは、営業力を伸ばすコツについて学びます。営業プロセスの中でもっとも重要とされる「条件確認」を取り上げて考えます。

よくある営業活動での課題として、顧客が挙げたそれぞれの問題を解決することに集中しすぎて、顧客が抱える課題の全体像を把握できていないことが挙げられます。これでは、本質的な解決策を提供することが難しくなります。つまり一つ一つの問題(点)ではなく、全体像(面)として顧客の課題を捉えることで解決策への道筋が見えてくるのです。

「点でなく面で捉える」にはどうすればいいのでしょうか。そこで、顧客が「最近、プロジェクトの進行が遅れている」という課題を挙げた場合について考えます。

こうした場合、直ちに「タスク管理ツールを導入すべき顧客」として認識する営業担当者がいます。間違いではありませんが、このアプローチには改善の余地があります。顧客のニーズをより多角的に捉えることが重要です。

より良いアプローチの例

顧客が「最近、プロジェクトの進行が遅れている」と言った場合、まず、その背景にある原因を探ります。単にタスク管理ツールを提案するのではなく、以下のような質問をして多角的に考えていきます。

  • プロジェクト管理の確認:
    「現在、どのようなプロジェクト管理ツールを使用していますか?」
    「プロジェクト管理のプロセスやフローに問題はありませんか?」
  • チームの作業環境のチェック:
    「チームメンバーの作業環境はどうですか?リモートワークやオフィスでの作業状況を教えてください」
    「チームメンバーのコミュニケーションに課題はありませんか?」
  • リソースとスキルの有無:
    「プロジェクトに必要なリソースやスキルが不足していることはありますか?」
    「チームメンバーのスキルセットはプロジェクトに適していますか?」
  • 目標とスケジュールの確認:
    「プロジェクトの目標やスケジュールは現実的ですか?」
    「目標やスケジュールに対する期待と現実にギャップがありますか?」

これらの質問を通じて、顧客の「プロジェクトの進行が遅れている」という問題の背後にある原因を多角的に理解します。こうした理解がないまま、顧客に「タスク管理ツール」の導入を勧めても、納得してもらえない可能性が高いでしょうし、信頼関係を築くことは難しいはずです。

また、プロジェクト管理ツールなどが既に導入されている場合は、ツールの使い方やプロセスの改善から提案ができるかを確認します。チームメンバーのコミュニケーションに課題がある場合は、コミュニケーションツールやトレーニングの提案をすることも考えられます。また、リソースやスキルが不足している場合は、適切なトレーニングや外部リソースの導入を提案するのも良いでしょう。このように、顧客のニーズを点ではなく面で捉えることで、より的確で効果的な提案ができるようになります。

このレッスンで学んだ営業力の基本原則と営業プロセスの全体像を基に、次のレッスンでは営業プロセスごとに、「成功する営業担当者」の育成方法を具体的に学んでいきます。各ステップでの具体的なテクニックを身につけることで、営業力を向上させ、成功する営業活動を実現できます。

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