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パイプライン管理の定義
パイプライン管理とは、営業プロセスのスタートからゴールまでの成果を数値化し、一元管理する管理する手法です。一定のルールに則して正しくパイプライン管理を行えば、より目標達成に近づけることができます。
営業現場によってはパイプライン管理を行わず、マーケティングから営業まで、それぞれが個別に進捗管理をしているケースもあるでしょう。しかし、パイプライン管理を行わないと「リードジェネレーション」や「ナーチャリング」「フィールドセールス」など、それぞれの営業プロセスで属人的な管理が行われ、結果として組織全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。
パイプライン管理の概要
「パイプライン管理」の概要をもう少し掘り下げて見ていきましょう。プロモーション施策など営業活動のスタート地点を「パイプの入口」、成約を「パイプの出口」と定義します。入口から出口まで、営業に関する一連のプロセスを一貫して管理するのが、パイプライン管理の特徴です。
例えば、Webプロモーションによって獲得したリードが、どのように商談に発展し、成約に至るかを可視化することが重要です。パイプライン管理を導入することで、各段階での進捗を一元的に把握でき、どのプロセスがボトルネックとなっているかを明確にすることができます。
下記の図は、Webプロモーションによりリードを獲得し、ナーチャリングを経て成約に至るまでのパイプラインを図解化したものです。
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図の中で、パターンAとパターンBを比較してみましょう。パターンAでは、コールドリードに対する最終的な成約率が10%に達しているのに対し、パターンBでは成約率は3%と大きく差が出ています。各営業プロセスのKPIを詳しく見ると、特に、パターンBえはコールドリードからホットリードへの移行率が著しく低いことがわかります。
このように、パイプライン管理で営業プロセスを一元管理すれば、「どのプロセスに課題があるのか?」が一目瞭然でわかります。今回の例なら、コールドリードからホットリードへのナーチャリングを改善すればパターンAに近い成果を達成できるでしょう。
パイプライン管理が必要な理由
パイプライン管理が営業活用においてなぜ必要か、以下の3つの理由から考えてみましょう。これらの理由は、後ほど触れる「パイプライン管理の目的」とも深く関連しています。
パイプライン管理が必要な理由
- 売上予測の精度が向上
パイプライン管理を行うことで、勘や経験に基づく売上予測ではなく、定量的かつ正確な売上予測が可能になります。この結果、営業チームはより確実に目標を達成するための計画を立てることができます。 - 課題の早期発見と対策が可能
属人的な管理では課題の発見が遅れることがありますが、パイプライン管理を導入することで、営業プロセスの各段階におけるボトルネックや課題を早期に発見し、迅速に対策を講じることが可能になります。 - リソースの効率的な配分
営業プロセスを可視化することで、注力すべきステージにリソースを集中的に投入でき、限られたリソースを最大限に活用して売上の最大化が図れます。
企業によってはパイプライン管理を行わず、それぞれの部署ごとでプロセスを管理し、改善に取り組むケースもあるでしょう。しかし、パイプライン管理を運用せずに営業管理をすると、課題の発見が遅れるだけでなく、正確な売上予測ができないなど、企業として致命的な問題も発生します。
パイプライン管理は、営業プロセスの透明性と売上予測の精度を高め、組織の持続的な成長に不可欠な管理手法です。次に、パイプラインのステージ定義や施策についても詳しく見ていきましょう。
パイプラインのステージ定義(リードから成約までの流れ)
パイプライン管理を効果的に行うためには、成約に至るまでの各ステージの定義を理解することが重要です。ここでは、Webプロモーションを活用したソフトウエア販売を例に、各ステージの定義とパイプライン管理で把握すべきポイントを詳しく見ていきます。
全体の流れとしては、リード獲得からナーチャリング、リードの選別、商談、そして成約までのプロセスを一貫して管理することが基本となります。
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パイプライン管理における各ステージの定義
ステージ | 定義 | 施策 |
①リード獲得(コールドリード) | 新規見込み客の獲得 | Webプロモーション、SEO、Web広告、ウェビナー開催、イベントなどを活用して新規のリードを獲得する。 |
②コールドリードからホットリードへの移行 | ホットリードへの育成 | メールマーケティング、定期的な情報提供、ウェビナー開催、コンテンツマーケティングのナーチャリング施策を通じてリード関心を高める。 |
③リードの選別 | リードの優先順位付け | スコアリングを活用して優先度の高い顧客を選別(クオリフィケーション)する。 |
④アポイント | 商談機会の創出 | 電話やメールで連絡を取り、訪問やオンラインでのアポイントを取得する。 |
⑤セールス | 提案交渉 | 訪問やオンラインミーティングにて商材提案やデモを行う。 |
⑥成約 | 契約 | 申込書取得、契約書の締結を行い、契約成立を目指す。 |
※コールドリードとは、まだ興味関心が浅く、すぐに商談に結びつかない見込み客を指します。
※ホットリードとは、ホットリードとはすぐに商談に進める可能性の高い見込み客を指します。
パイプライン管理をする際は「目的」の理解が重要
パイプライン管理を適切に運用するには、その背後にある「目的」をよく理解することが不可欠です。目的を理解せずにパイプライン管理を行ってしまうと、ただの「数値管理」になり、営業成果の改善は望めません。
パイプライン管理には下記4つの目的があります。
目的 | 内容 |
売上予測の精度向上 | 各ステージの進捗状況や成約率などを正確に把握し、正確な売上を予測する。 |
効果的なリソース配分 | プロモーション、カスタマーサクセス、フィールドセールスなど各ステージの進捗状況を一元管理し、適切なリソース配分を判断する。その結果、無駄なリソースの浪費や組織全体の生産性低下を防ぐことができる。 |
顧客との関係構築 | 顧客ごとの状況やニーズを正確に把握し、適切なタイミングでの提案やサポートを行う。 |
部署間のコミュニケーション強化 | プロセスごとの課題を可視化し、改善が必要な部署とのコミュニケーションを強化。組織全体の連携を高め、効果的な営業活動を実行。 |
管理者はもちろん、「リードジェネレーション」や「ナーチャリング」「セールス」など、各ステージの担当者も、これら4つの目的を意識しながらパイプライン管理に取り組むことが重要です。
パイプライン管理のデメリット
パイプライン管理は「売上予測の精度向上」や「リソースの効率的な配分」などメリットが大きい管理手法ですが、一方でデメリットもあります。
パイプライン管理を導入する際は、デメリットについてもよく理解しておきましょう。
デメリット | 詳細 |
導入と管理にリソースを割かれる | パイプライン管理システム導入や管理の専任者が必要となるケースが多く、新たなリソースが必要になる。 |
システム導入のコスト | CRMやSFAなどの管理ツールを導入する場合、初期コストや運用コストがかかる。ツールの選定には費用対効果を考慮する必要がある。 |
従業員からの抵抗 | 新しいシステムやツール導入に対して、従業員が拒否反応を示す場合がある。特に入力作業が増えると反発が強まる可能性がある。 |
管理主義への偏り | 数値管理に偏りすぎて、顧客との関係構築や本来の営業管理の目的を見失うことがある。 |
パイプライン管理に必要なCRMやSFAなどの専用ツールを導入すると、各プロセスで新たな入力業務が発生することもあり、一部のスタッフからの抵抗も起きるでしょう。
パイプライン管理をスムーズに運営するためには、専任部署を設けるか、経営層が責任をもって従業員に詳しい説明をし、サポート体制を整えることが不可欠です。新たなシステム導入に際しては、「きめ細かなサポート」と「意識統一」の両立が重要であり、従業員との理解と協力を得ることが成功の鍵となります。
パイプライン管理における4つの重要性
パイプライン管理を導入することで、営業プロセスの効率化だけでなく、目標達成に向けた戦略的な管理が可能になります。ここでは、パイプライン管理が持つ4つの重要な側面について見ていきます。これらを理解することで、パイプライン管理が「目標達成に欠かせない管理手法」であることが明確になるでしょう。
重要性①「競争力向上」
パイプライン管理は、市場や競合他社との競争力を高めるために非常に重要な考え方です。営業プロセスを効率化することで、顧客に対してタイムリーかつ適切な情報提供やサポートができるようになります。この結果、競合他社との競争においても優位に立てるようになるでしょう。
市場が成熟しサービスの差別化なども難しくなるなか、営業プロセスの効率化と質の向上は急務です。パイプライン管理により迅速かつ的確な判断ができるようになり、競合他社や市場における競争力も一層高めることができます。
重要性②「目標達成」
営業プロセスを可視化し、営業活動の進捗状況をリアルタイムで把握できるようになると、目標達成に向けた適切な対策をタイムリーに講じることができます。パイプライン管理を通じて、問題点やボトルネックを早期に発見し、必要な改善策を講じることで、目標達成にもつながります。
また、リソースを効果的に配分できる点も、パイプライン管理のメリットのひとつです。例えば、成約率が低い場合は営業チームに追加のトレーニングを実施したり、リード獲得数が不足している場合はマーケティング活動を強化したりするなど、戦略的な対応が可能です。
重要性③データドリブンな意思決定
パイプライン管理では、営業プロセスごとにKPIを設定し、定量的なデータに基づいて管理を行います。そのため、感覚や経験に頼ることなく、客観的かつ精度の高い意思決定が可能になるでしょう。パイプライン管理で得たデータをもとに、顧客の行動パターンや営業担当者のパフォーマンスを分析し、的確な戦略を立てることができます。例えば、特定のリードがどのような行動を取った際に成約率が上がるのかを分析し、ナーチャリングのアプローチを最適化するといった施策を講じるができます。結果として、意思決定の精度が向上し、営業成果の最大化にもつながるでしょう。
重要性④顧客満足度の向上
パイプライン管理では、商談の進捗状況をリアルタイムで把握できるため、適切なタイミングでのフォローアップや提案が可能です。顧客のニーズや課題を的確に把握できることで、最適なサービスや製品をタイムリーに提供することが可能になります。
その結果、高い顧客満足度がリピート購入や口コミを通じて新規顧客の獲得につながり、アップセルやクロスセルによる売上拡大のチャンスも増加します。
売上目標を意識したパイプライン管理
パイプライン管理では、各プロセスのKPI管理に集中しがちですが、売上目標を達成するためには、単なる数値管理にとどまらず、常に売上目標を意識したマネジメントが不可欠です。パイプライン管理から得られるデータを活用し、売上目標を達成させるためには、次の4つのアクションが必要です。
定期的なモニタリング
売上を最大化するためには、パイプラインにおける各プロセスのKPIを定期的にモニタリングすることが重要です。リード数、アポイント率、成約率、平均契約額などの指標を定期的にチェックすることで、現状を正確に把握し、目標達成に必要な行動量やリソース配分を適切に調整できます。定期的なモニタリングによって、リードの質や商談の進捗状況を的確に管理し、売上目標に対する達成度を追跡しましょう。
ギャップ分析
売上目標が達成できていない場合は、KGI(Key Goal Indicator:主要目標指標)と現状とのギャップがどこにあるのかを特定し、迅速に対応する必要があります。例えば、リード獲得数が目標を下回っている場合は、マーケティング施策やプロモーションの改善を図る必要があるでしょう。成約率の低下が問題であれば、営業担当者のトレーニングやサポート体制の見直しが必要です。ギャップ分析を定期的に行い、早急な対応策を講じることで、常に安定した成果を生み出せるようになります。
営業戦略の最適化
パイプライン管理で得られるデータを基に、営業戦略を最適化することも非常に重要です。売上目標を達成するためには、KPIの進捗管理だけでなく、市場の動向や顧客のニーズの変化をリアルタイムで把握し、データに基づいて迅速かつ柔軟に戦略を見直すことが重要です。
例えば、パイプライン管理から得たデータから、特定の顧客層で成約率が低下していることがわかった場合、その原因を分析し、営業トークの見直しや新たなアプローチの導入といった具体的な戦略修正を行うことができます。また、特定の商談ステージでの滞留時間が長い場合、そのステージにおけるプロセスを効率化することで、営業のスピードを向上させ、商談の進行をスムーズにすることが可能です。さらに、パイプライン管理によって蓄積されたデータを基に、リードの優先順位付けやリソースの最適化を行い、成果の出やすい領域に集中することも
できます。高い、高い成約率を持つリードにより多くのリソースを割り当てたり、見込みの薄いリードにかける時間を減らすことで、営業チーム全体の効率を向上させることができます。
このように、パイプライン管理を活用して営業戦略を最適化することで、市場の変化や競合の動向に柔軟に対応し、営業活動全体をデータドリブンで進めることができ、競争優位性を高めることが可能です。
目標の軌道修正
パイプライン管理で得られるデータを活用し、内外のトレンドや営業現場の状況を素早くキャッチして目標を軌道修正していく動きも、目標達成に向けた重要なアクションです。例えば、営業担当者のリソース不足が原因で成約数が目標に届かない場合は、セールスプロセスにかかる負荷を軽減する施策手(リードの質を意識したリードジェネレーションやナーチャリングの見直し」)を検討する必要があります。
逆に、リード数が不足している場合は、プロモーション施策の強化やマーケティング活動の改善のほか、営業担当者のトレーニングを強化し成約率を上げることが求められるでしょう。パイプライン管理による一貫した管理を行えば、「どの目標を軌道修正すべきか?」も明確にわかり、適切な対応を講じることで、売上目標に向けた軌道修正が可能です。
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