これまでのレッスンでも繰り返してきましたが、リードナーチャリングを効果的に行うための最重要要素が情報管理です。顧客情報の一元化と管理による詳細な顧客分析から、ターゲットのセグメント化と適した情報の提示ができるようになり、効果的なリードナーチャリングが可能になります。これから情報管理を正しく行い成果を最大化するためのデジタルツールについて解説していきます。
リードナーチャリングに必要な機能
リードナーチャリングを行うには、顧客の管理・セグメント機能が搭載されたツールを選ぶ必要があります。ここでは、リードナーチャリングに必要な機能の特徴について活用例も踏まえ詳しく解説します。
リードの管理
リードナーチャリングの基礎となるのが、「リードの管理」機能です。リードの情報、興味関心、行動履歴などを適切に管理することで、一人ひとりのニーズに合わせたコミュニケーションを実現できます。主な機能特徴は以下4つです。
機能特徴
顧客情報の一元管理 | 基本的な顧客情報を一元管理することができます。管理するデータは、主に以下が含まれます。
|
行動履歴の記録 | メールの開封履歴、リードのウェブサイト訪問履歴、ダウンロードした資料の種類など顧客の行動履歴を記録することができます。 |
興味関心の把握 | 行動履歴を基に、顧客のニーズ(興味を持っている商品やサービスの種類)、想定課題を把握することができます。 |
セグメント機能 | 顧客を属性や行動履歴に基づいてグループ分けすることができます。 |
「リードの管理」機能を活用する最大のメリットは、前述した機能特徴により顧客一人一人に合わせたコミュニケーションが可能となる点です。ウェブサイトの訪問履歴に基づき、関連性の高い商品やサービス情報を配信したり、ダウンロードされた資料の内容から関連性の高いセミナーやイベント情報を案内したりするなど、リードに適した情報の提供ができるようになります。適切なタイミングと適切な情報提供により顧客エンゲージメントの向上へと繋がり、リードナーチャリング効果が期待できるでしょう。
効果が期待できる一方で、活用にあたりリードの個人情報保護の重要性を理解する必要もあります。顧客情報を不正アクセスから守るための適切な管理体制の構築や、セキュリティ対策を講じる必要性も念頭におきましょう。
メール配信機能
リードとコミュニケーションを図るための重要な機能が「メール配信機能」です。タイミングをはかり、適切な内容のメールを送信することで、顧客の興味関心を高め、購買意欲を高めることができます。
メール配信の手法は、大きく分けて3つあります。個々のリードへメールを送付する「個別メール(DM)」、全てのリードに対しメールを一斉送信する「一斉送信メール」、特定の条件でセグメント化した顧客ごとに送信する「セグメントメール」です。
リードナーチャリングを行う上で最も役立つ機能がメールのトラッキング機能です。殆どのMA(マーケティングオートメーション)ツールにはメールのトラッキング機能が搭載されており、この機能を活用することでリードの行動を詳細に把握することができます。メールトラッキング機能でできることを以下にまとめました。
メールトラッキング機能
メール開封 | リードがメールを開封したかどうかを追跡 |
リンククリック | メール内のリンクをクリックしたリードを特定 |
Webサイトの閲覧 | リードがWebサイト上でどのページを閲覧したかを追跡 |
行動スコアリング | リードの行動(メール開封、リンククリック、ページ閲覧)に基づいてスコアを付与 |
リアルタイム通知 | リードが特定のアクション(例:メールのリンククリック、特定ページの閲覧)を行った際にリアルタイムで通知 |
トラッキング機能で得たメール配信後のリードの行動情報から顧客の関心度合いを想定し、顧客の状態にあったコミュニケーションが行えます。また、メールの開封率やクリック率などを総合的に分析し、改善を続けることで、より高度なリードナーチャリングが可能となります。
Webページ作成機能
個々のリードの状態に沿ったパーソナライズされたランディングページを迅速に作成し、個別に提供することができれば、エンゲージメントを更に高められる効果が期待できます。この施策を実行するために必要な機能が「Webページ作成機能」です。
ツールの中には、Webページを作成する機能が搭載されているものもあります。Webページを制作する際、従来はプログラミングの知識やコーディングのスキルが必要でしたが、昨今では視覚的なインターフェースやドラッグ&ドロップツールを使って、制作が可能な"ノーコード"タイプのツールが増え、容易に且つ迅速にWebページの制作ができるようになりました。
以下に、Webページ作成機能の特徴をまとめました。
Webページ作成機能の特徴
ドラッグ&ドロップエディター | コーディングの知識がなくても、直感的にWebページの作成が可能 |
テンプレート | 様々な業界や用途に応じたテンプレートが用意され、ページを迅速にカスタマイズし、プロフェッショナルなデザイン制作が可能 |
レスポンシブデザイン | 作成したページが自動的にモバイルデバイスにも最適化されることで、デバイスに限らずどこからアクセスしても快適なユーザー体験の提供が可能 |
A/Bテスト機能 | 異なるバージョンのページを作成し、パフォーマンスの比較検証が可能 |
インテグレーション機能 | CRMやメールマーケティングツールなど他のマーケティングプラットフォームとシームレスに連携が可能 |
上記機能を利用し、特定のリードセグメントへホワイトペーパーを配布するためのランディングページを作成したり、製品デモの申し込みページを作成し、リードが簡単にデモを予約できるようにするなど、活用幅は確実に広がるでしょう。
高度な機能が付属されているツールもありますが、Webページ作成の基本的なドラッグ&ドロップエディター機能を活用することで効果的なリードナーチャリングを実行することができます。
フォーム作成機能
フォーム作成機能は、フォームを介してデータを収集するために使うツールであり、様々な種類のフォームを簡単に作成・管理できます。リードナーチャリング活動のプロセスに関係する、リードの情報収集、問い合わせ対応、登録、申し込みまでの工程を、フォームを介すことで効率化できるため積極的に活用すべき機能です。活用例としては、以下の3つが考えられます。
- 問い合わせフォーム:顧客からの問い合わせを受け付けるフォーム
- 資料請求フォーム:資料請求を受け付けるフォーム
- アンケートフォーム:顧客の意見や感想を収集するフォーム
これらのフォームを設置することの一番のメリットは「データ収集の効率化」です。フォームを介すことでリードの個人情報を正確に且つ迅速に収集ができ、人の手による管理の手間を省くことが可能です。更に、リードの関心事項を質問項目に含めるだけで簡単に回答を得られるため、リードナーチャリングの第一歩が効率化されることもメリットと言えます。
フォーム作成機能に「自動応答機能」も付属されたツールもあります。この機能を活用し、フォーム送信後に「お申込みありがとうございます」という確認メールを送信、フォーム送信後即時に次のステップを案内することで、リードの関心を引き続けることができます。
SNSの投稿機能
SNSの投稿管理は、リードとのエンゲージメントを高めるために活用したい機能です。ソーシャルメディを通じて自社の製品やサービスに関する情報を発信したり、顧客とコミュニケーションを取ったりすることで、ブランド認知度向上や顧客との絆を深めることができます。主に使用されるチャネルは、以下です。
- X(旧Twitter)
- YouTube
これらのソーシャルメディアプラットフォームを通じてコンテンツを公開・配信するための機能が搭載されています。例えば、投稿を事前に作成し、指定した日時に自動的に投稿する「スケジューリング」機能や、投稿のパフォーマンス分析する機能などが含まれます。
SNSへは、企業のニュース、製品情報、イベント・ウェビナーの招待、成功事例やお役立ち情報のホワイトペーパーの告知などさまざまな用途での活用が可能です。各チャネル毎にオーディエンスの特徴が異なるため、適切なソーシャルメディアチャネルと投稿の種類を選び、ターゲットに合わせたコンテンツを配信します。チャネルに存在するリードの関心を惹きつけるコンテンツを配信し、時には顧客の投稿に反応したりと、定期的に接点を持つことで、結果的にリードのエンゲージメントを高められる可能性が高まります。
電話機能
電話による架電はリードナーチャリングの手法の一つですが、携帯電話等を使わず、ツールから電話の受電や架電を行える機能が搭載されているツールもあります。ツールによっては電話の発信、受信だけでなく、通話自動記録、通話の分析、予定の登録など、電話業務でのリードナーチャリング活動をより良くするために必要な機能が揃っているものもあります。
これらの付属された機能を最大限活用することで電話業務の効率化に繋がります。例えば、携帯電話を活用して架電業務を行っている場合は、電話番号を押して架電する手間が省け、ツール上のワンクリックで電話の受電・架電ができるようになります。スピーディーに架電ができるようになれば、比例して架電量も増えるため、ナーチャリング効果につながる可能性も高まります。
また通話内容の自動記録機能を利用し、インサイドセールスのナーチャリング活動のトレーニングコンテンツとして活用することもできるでしょう。アプローチ効果の高かった電話内容を記録しておき、その内容をドキュメント化した後にコンテンツ化し、社内で共有し合うことでチーム全体のナーチャリングスキルを引き上げることにも繋がります。
さまざまな利点がある電話機能ですが、活用するには前提、利用中のツールとPBX電話プロバイダーの連携が必要です。自社で利用しているツールとプロバイダーで連携が可能かどうか事前に確認が必要となる点、理解しておきましょう。
行動トラッキング機能
行動トラッキング機能は、webサイトのCookie情報を利用しリード一人一人のウェブサイト訪問履歴やメール開封率、資料ダウンロードなどを記録し、分析することができる機能です。リードの行動を分析することで、リードの行動パターンを把握できたり、顧客の興味関心内容をより深く理解できるようになります。またそれらの情報を基にしたコンテンツ内容の考案やシナリオの設計など、戦略的な施策設計が可能となるでしょう。
行動トラッキング機能での計測要素を以下にまとめました。
行動トラッキング機能での計測要素
ウェブサイトの訪問履歴 | どのページを訪問したか、どれくらいの時間を費やしたか、どの順番でページを閲覧したかを記録 |
メールのインタラクション | 送信したメールが開封されたか、リンクがクリックされたか、どのリンクがクリックされたかを追跡 |
フォームの送信 | ホワイトペーパーのダウンロードやイベントの登録など、リードがフォームを送信した履歴を記録 |
資料のダウンロード | 特定の資料やホワイトペーパー、eBookなどのコンテンツをダウンロードした履歴を追跡 |
行動トラッキング機能から得た情報からリードの興味や行動を細かく把握し、以下のようなパーソナライズされた効果的なナーチャリングを行うことができます。
例)ウェブサイトの訪問履歴データの活用
特定の製品ページを複数回訪問したリードに対して製品に関するフォローアップメールを送信
例)メールのインタラクションデータの活用
メールの開封率やクリック率を分析し、効果的な件名やコンテンツを特定して次回のキャンペーンに反映。
例)資料のダウンロードデータの活用
ダウンロードされた資料に関連する資料やウェビナーの情報などを追加で提供。
行動トラッキング機能から得られる情報は非常に有益ですが、WebサイトでのCookieを使用した行動トラッキング機能の場合、リードからトラッキングの受け入れを拒否されることがあります。このように、トラッキング情報を取得できないケースもあることは事前に理解してきましょう。
リードナーチャリングに役立つツール
リードナーチャリングを効率的に行うために、積極的に活用した方が良いツールは他にもあります。ここでは、エクセル、メルマガツール、MA(マーケティングオートメーション)、PBX(Private Branch Exchange)、CRM(顧客関係管理)の5つのツールを挙げ、これらのツールがリードナーチャリングにおいてどのように役立つか、説明します。
エクセル
エクセルは、リード情報の初期整理時にデータ管理の一環で活用することがあります。例えばCRM等のツールにデータをインポートする前の準備作業として、リードの連絡先や属性情報に誤情報が含まれていないか確認をする際に、エクセルを活用し、リードを一覧化することで視覚的に把握しやすくなります。他にも、リードに対するフォローアップのためのタスクをリスト化し、進捗状況を追跡するといったタスクやリードの進捗管理を目的に活用することも可能です。
低コストで活用でき、データの整理や基本的な分析に適している点においては、特にリードナーチャリングの初期段階や少規模のリード数に対しては役立ちます。しかし、リード数が増えナーチャリングの規模が大きくなる場合は、全て手動で作業する手間や管理工数がかかる点はデメリットと捉えるべきでしょう。
メルマガツール
メルマガツールは、メール配信に特化したツールです。メールマーケティングを効率化することを目的とした以下の機能がおおよそのツールには搭載されています。
- テキストメール、HTMLメールの配信機能
- ステップメールの自動配信機能
- メール分析機能(開封数、開封率、クリック数、クリック率、コンバージョン数、コンバージョン率の測定)
メールマーケティングを効率化できる機能がそろっている一方で、できない事もあります。メール配信に関しては、メールの自動返信といった簡単なメール配信の自動化は可能ですが、複雑なナーチャリングワークフローを設定し管理することは難しいでしょう。また、MAツール等では可能な、行動追跡機能はついていないため、リードがウェブサイトで行った具体的な行動(ページビュー、フォーム送信、ダウンロードなど)情報取得はできません。
MAツール
MA(マーケティングオートメーション)ツールとはマーケティング施策を自動化できるツールです。以下のようにリードの獲得から、リードナーチャリングまでの幅広いプロセスを効率的に行える機能がそろっています。
- リード情報の蓄積と管理機能
- リードスコアリング
- 行動トラッキング
- 施策の自動化
- 行動履歴の記録機能
- LP制作機能
- フォーム制作機能
- シナリオ配信機能
- 分析機能
リードナーチャリングの活動を自動化するために必要な機能が揃っており、非常に強力なツールと言えますが、一方でできない事もあります。例えば、以下が挙げられます。
- 通話の管理や録音、通話内容の分析
- セールス活動や商談管理、営業プロセスの詳細情報の追跡
- 財務管理や会計処理、在庫管理
顧客の全体的な関係を管理するCRM(顧客関係管理)システムのような詳細な顧客データ管理や、セールス活動の管理、会計や在庫管理といった全体的なビジネスプロセスをカバーすることはできません。
PBX
PBXは、複数の電話回線を集約して制御する電話交換機のことです。部署同士の内線・外線接続を可能にするほか、クラウドPBXを活用することで企業の電話を自宅や外出先でも使用でき流ようになります。また、リードナーチャリングの一環で行う架電・受電対応も外出先やリモートで行えるようになります。また、通話管理と通話記録に強みがあり、通話の分析を通じて効果的なトークスクリプトの作成や改善にも役立ちます。
PBXそのものは電話交換機能しかないため、通話内容の録音や自動テキスト抽出といった機能を使う場合には、CRMやMAツールなどとの連携が前提として必要です。
CRMツール
CRMは顧客情報管理ツールであり、リードの顧客情報を収集、分析に強いツールです。CRMは顧客情報管理のためのシンプルなアドレス帳のような基本機能から、高度なマーケティングオートメーション(MA)機能まで、さまざまな機能が含まれます。
基本的な機能に関しては、主には見込み顧客の連絡先情報を一元管理するためのものです。企業は顧客の名前、住所、電話番号、メールアドレスなどの基本情報を容易にアクセスできる形で保存できるため、営業チームが迅速に顧客と連絡を取るために役立ちます。顧客数が少ない、複雑なマーケティング戦略や自動化が必要ないといったケースでは、このような基本的な顧客情報の管理だけで十分といえます。
高度なマーケティングオートメーション(MA)機能を備えたCRMは、前述した情報管理機能の他に、顧客の行動をトラッキングする機能や、行動データを基にスコアリングを行う機能、コンテンツやフォームを簡易制作する機能等が含まれます。「顧客の行動や購買履歴を詳細に分析し、そのデータを基に戦略を最適化したい」「スコアリングやトラッキング機能により顧客の興味や関心を把握し、精度の高いマーケティング施策を打ちたい」といった構想を検討する企業に対しては最適なツールです。
CRMツールを活用するだけで顧客情報の一元管理による業務効率化と、精度の高いマーケティング活動の実現が可能になります。総合的に考えると、CRMは単なるアドレス帳の延長ではなく、企業の成長と顧客関係の強化に欠かせない包括的なツールともいえます。
まとめ
リードナーチャリングを行う上で必要な3点、リード情報の一元管理、パーソナライズドナーチャリング、詳細なデータ分析、という特徴を捉えるとMAやCRMツールが適していると考えられます。ご紹介した他のツールに関しては、ツール単体での活用するには機能の足りなさが感じられるものの、CRMやMAの補完ツールとして活用することで、これらの機能を最大限に引き出し、リードナーチャリングの効果を高めることができるでしょう。
本レッスンでは、リードナーチャリングの実践に必要な機能と、代表的なツールを紹介しました。最後に、各ツールごとにできること・できないことを以下の一覧でまとめました。こちらを参考に、リードナーチャリングを実施する上で必要なツールを選択ください。
ツールの種類 | できること | できないこと |
エクセル |
|
|
メルマガツール |
|
|
MA |
|
※一部、架電・受電機能が付属するツールあり |
PBX |
|
|
CRM |
|
※一部、これらの機能が付属するツールあり |
評価
このコンテンツは役に立ちましたか?
入力ありがとうございました。
あなたからの評価
コメント