リード変換プロセスの最適化
リードジェネレーションの成功は、リードを受注確度の高いタイミングで営業に引き渡し、成約へつなげることにかかっています。
このプロセスを最適化するために、リード獲得から営業変換までの流れをおさらいしておきましょう。また、自動化ツールの活用やCVポイントごとのフォーム設計など、いくつかの「営業変換率向上のためのテクニック」をマスターすることも重要です。
リードの獲得から営業変換までの流れと工夫すべきポイント
リード獲得から営業変換までの流れで、マーケティング担当者が意識すべきなのは、リード獲得の「数」ではありません。リードジェネレーションから成約に至るまでの流れを理解し、「受注率と売上」そして最終的には「LTV(顧客生涯価値)の最大化」を考えながら、「リードの質向上」を意識しましょう。
リード獲得からLTV最大化までの流れと、受注率を上げるためにマーケティング担当者が工夫すべきポイントについてまとめています。
【リード獲得から営業変換までの流れ】
ステップ | 具体的な内容 | マーケティング担当者が工夫すべきポイント |
1.リードジェネレーション | ・リード(見込客)を獲得するための施策のこと | ・不特定多数ではなく、成約につながる質の高いリード獲得のための施策を考える |
2.リードナーチャリング | ・見込み客の育成施策のこと | 300件 |
3.リードクオリフィケーション | ・受注確度の高いリードを選定する作業のこと | ・スコアリングの設計段階で営業と共通認識を持っておく |
4.フォロー | ・商談機会を増やすことを目的としたアプローチのこと | ・自社都合だけでアプローチしない |
5.トスアップ | ・リードを営業部門へ引き渡すこと | ・営業が必要とする情報を引き渡す |
6.商談 | ・営業担当者による商談を設けること | ・マーケ担当者も同行するか担当者にヒアリングするなどして営業ニーズを把握する |
7.LTV最大化 | ・既存顧客へのアップセルやクロスセル、継続購入を訴求し顧客生涯価値を高めること | ・マーケ担当の最終的なゴールはLTVの最大化という認識を持つ |
営業変換率向上のためのテクニック①自動化ツールの活用
営業変換率を向上させるには、メールの送信やスコアリングを行える自動化ツールの活用が効果的です。
自動化ツールを活用すれば、リード管理やナーチャリングが効率化され、質の低いリードから受注確度の高いリードへと成長が加速します。自動化といえばマーケティングオートメーション(MA)ツールを思い浮かべますが近年ツールの機能に差が無くなってきており、CRMツール、SFA(営業支援)ツールでもマーケティングオートメーションに相当する機能を持っているものがあります。
【自動化ツールを使った施策例】
施策例と効果 | |
リード管理 | ・CRMや名刺管理ツールとの連携 |
リード分析 | ・リードごとのWeb上での行動、コンテンツダウンロード、サイト閲覧履歴などを分析し、スコアリングを実施 |
リード抽出や連携 | ・スコアリング結果に基づき優先度の高いリードを抽出。タイムリーな営業チームとの連携が可能 |
メール作成や分析 | ・HTMLメールやテキストメールを自動化ツールで自動作成し、A/Bテストを通じて効果的な手法を見極めることができる |
営業変換率向上のためのテクニック②CVポイントごとのフォーム設計
営業変換率を高めるためには、CVポイントごとのフォーム設計も重要な取り組みの一つです。問い合わせフォームや資料ダウンロードなどのCVポイントで収集する情報は、できるだけ簡潔にしなければいけません。一方で、「役職※決裁権限者かどうか?」「予算」など、営業チームが必要とするデータも収集する必要があります。
初回の問い合わせ段階で決裁権限者や予算などを尋ねると、顧客の負担が大きくなり、フォームからの離脱率が高まるリスクがあります。そのため、問い合わせ初期段階では必要最小限度の情報収集に留めましょう。
ウェビナー申込時や事後アンケート、資料ダウンロードの際などのタイミングでは、営業に必要な情報を収集しなければいけません。「決裁権限者情報」「購入予算」「購入タイミング」などが入力できるように、入力フォームを変更するのが理想です。
営業変換率と受注率向上のためには、リードのステージごとで「営業が必要とする情報+顧客を不快にさせない入力項目」の両方を考え、入力フォームをアレンジすることが重要です。
営業とマーケティングの連携強化
リードジェネレーションで成果を上げるためには、営業とマーケティングが一体となって取り組む「SMarketing(Sales and Marketing)」の考え方が不可欠です。
SMarketingとは、営業とマーケティングがそれぞれの役割を理解し、共通の目標に向かって連携することを指します。これにより、リード獲得から成約までのプロセスに一貫性が保たれるようになり、売上向上にもつながるでしょう。
SMarketingにおいて、営業とマーケティングがどのように連携し、双方がどのような共通目標を持つべきかを具体的に見ていきます。
SMarketing(Sales and Marketing)の重要性
「SMarketing(Sales and Marketing)」という共通の概念がなければ、マーケティングは「リードの数」にフォーカスし過ぎてしまい、一方で営業は「リードの質を重視する」という不一致が生じます。
このギャップを埋めるためには、両者が共通の目標を持ち、「理想的なリードとは何か?」について同じ定義を持つことが重要です。
SMarketingが実行されると、リードの質やプロセスの一貫性が向上し、営業とマーケティングの連携が強化されます。逆に、SMarketingが欠如していると、チーム間の目標がずれ、リードが商談に結びつかないことが多くなります。以下に、SMarketingを意識した場合としない場合の違いをまとめます。
SMarketingを意識しない状態 | SMarketingを意識した状態 | |
リードの質 | ・商談につながりにくいリードが多く非効率 | ・質の高いリードが作れる |
ナーチャリングの一貫性 | ・連携不足によりリードごとにアプローチが異なる | ・営業とマーケティング双方で一貫したリード育成を行える |
プロセスの改善 | ・営業とマーケティングが別々に改善を進めるため非効率。改善が遅れる | ・マーケティングと営業が協力してプロセスを迅速に改善できる |
意志決定 | ・各部門が独自の基準で意思決定を行う | ・営業とマーケティングが連携。一貫した意思決定が行える |
営業とマーケティング共通のKGIとKPIを設定
「SMarketing(Sales and Marketing)」を実行していくためには、営業とマーケティング共通のKGI(Key Goal Indicator)やKPI(Key Performance Indicator)を設定する必要があります。また、各指標の「定義」も同じでなければいけません。
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KGIとは、企業が目指すべき最終目標、つまり「事業のゴールはどこか?」といった指標のことを指します。一方、KPIは、KGIを達成させるためのプロセス目標のことを指します。
企業や扱う商材によっても異なりますが、具医的には下記のような指標を設定します。
【KGIやKPIの例】
KGI | ・新規顧客獲得数 |
KPI | ・MQL(Marketing Qualified Lead)の数 |
KGIやKPIを設定する際には、「指標の定義」について営業とマーケティングで共通認識を持つことが非常に重要です。
例えば、「商談数」という指標を考える場合、営業担当によってその定義が異なることがあります。ある営業チームでは、内容を問わず営業機会があれば「商談1件」としてカウントするかもしれません。しかし、別のチームでは決定権者へのプレゼンテーションができて、初めて「商談1件」とカウントする場合もあります。
定義にズレが生じると、同じKGIやKPIを目指していても異なる解釈がなされ、一貫した施策が実行できなくなります。KGIやKPIを設定する際には、営業とマーケティングが定期的にミーティングを重ね、社内全体で共通の定義を明確にすることが重要です。
会議資料などでKPIなどを開示する場合でも、誰もが同じ基準で評価できるようにしておくことが重要なポイントといえます。
連携強化 - 3つのコミュニケーション戦略
営業とマーケ、双方が連携していくためには下記3つのポイントを意識しましょう。
- それぞれの現場を理解する
- 「コミュニケーションを深めること=全員一致ではない」ことを理解する
- 相手を尊重する意識を常に持つ
1.それぞれの現場を理解する
営業とマーケティングが連携するためには、双方の現場や役割、業務内容について理解することが重要です。双方の現場で起きていることを理解しないと、一貫した施策が打てなくなり、結果として成果には結び付きません。
マーケティング担当は可能な限り営業現場に同行し、顧客ニーズや競合の状況を肌で感じるようにしましょう。そうすることで、マーケティング施策にも違いが出てきます。
また、営業はマーケ担当からのトスアップにどのような意図があるのかを理解し、プレゼンテーションに臨む必要があります。営業に必要な情報が足りないなら、マーケ担当へリクエストしながら、リードの精度を高めていくよう一緒に取り組まなければいけません。
2.「コミュニケーションを深めること=全員一致ではない」ことを理解する
効果的な連携を図るには「メンバー全員の意見を一致させる必要はない」という認識を持ちましょう。マーケティング施策や営業施策を考えるときに全員の意見を無理に取り入れると、効果の薄い「妥協策」しか生まれないことがあります。
重要なのは、異なる視点を尊重しつつ積極的に意見を交わし、合理的な決断を下すことです。意見の衝突は新しい視点を発見できるチャンスでもあります。全員一致の「調整」よりも、効果的な議論を経た「最良の解決策」を追求しましょう。
3.相手を尊重する意識を常に持つ
営業とマーケティングは、それぞれ異なる専門知識を持っているため、意見が対立する場面も少なくありません。しかし、共通目標を達成させるには、双方が相手を尊重する姿勢を持つことが重要です。相手の意見に耳を傾け真摯に受け止めることで、信頼関係が生まれ、建設的な議論ができるようになります。
効果的なSMarketingを実現するためには、営業とマーケティングの間での相互理解、健全な議論、そして相手への尊重が不可欠です。これらのコミュニケーション戦略を意識することで、両部門が協力して成果を最大化できる環境が整い、企業全体の成長に寄与します。
リードの引き渡し基準とタイミング
受注確度の高いリードを効果的に商談に結びつけるためには、適切な引き渡しの基準を設定し、タイミングを見極めることが重要です。リードを営業に引き渡す際には、受注に至るまでのデータを綿密に分析し、成約に必要な商談数や時間を考慮しながら、最適なタイミングで引き渡す必要があります。
リードの引き渡しが早すぎると、営業チームはまだ購入準備が整っていないリードに時間を費やすことになり、結果的に商談の成功率が低下します。一方、引き渡しが遅れると、競合他社にリードを奪われるリスクも高まります。
MQL(Marketing Qualified Lead)とSQL(Sales Qualified Lead)の違い
リードを営業に変換する際は、MQL(Marketing Qualified Lead)とSQL(Sales Qualified Lead)の違いを理解しておきましょう。
同じ「リード」でも、営業チームに引き渡すべきリードは、成約の可能性が高いSQLであるべきです。この違いを正確に把握し、適切なタイミングでリードを移行することが受注率向上に直結します。
【MQL(Marketing Qualified Lead)とは】
定義 | ・マーケティング活動によって育成されたリード。興味を示しているが、まだ営業チームが直接アプローチする準備ができていない段階 |
特徴 | ・MQLは、Webサイトの訪問、ウェビナーへの参加、ホワイトペーパーのダウンロードなど、マーケティング活動に反応したリードを指す |
やるべきこと | ・マーケティングチームは、この段階でさらにリード育成(リードナーチャリング)を行い、より深い関係性を築くことが求められる |
【SQL(Sales Qualified Lead)】
定義 | ・営業チームがアプローチする準備ができたリード。具体的なニーズや予算があり、購買行動に移る可能性が高い段階 |
特徴 | ・製品やサービスに強い関心を持っているため、具体的な商談を行いやすい |
やるべきこと | ・営業が商談に進めるための具体的なアクション(アポ取得、製品デモ、見積もり依頼など)を行う |
MQLとSQLをしっかり区別し、SQLとして確度が高まったリードだけを営業に渡すことで、営業活動の効率を大幅に向上させることができます。
MQLとSQLを区別するためには、Lesson 4「リードスコアリングと効果測定」で学んだリード評価基準の設定を復習してみましょう。
引き渡しの最適なタイミング
リードを営業に引き渡すタイミングは、成約率や営業効率に大きく影響を与える重要なポイントです。
単に「リードのエンゲージメントが高まった」という理由だけで引き渡すのではなく、営業チームの状況や外部要因も考慮して、最適なタイミングでリードを引き渡すことが求められます。
以下の3つの要素を軸にタイミングを見極めましょう。
- 営業予算達成までのスケジュールを考える
- 競合他社の動向を考える
- 市場の動向を考える
1.営業予算達成までのスケジュールを考える
営業チームには、一定期間内に達成すべき売上目標(予算)が設定されています。そのため、営業の目標達成スケジュールを考慮し、リードを引き渡すタイミングを見極めましょう。
例えば、予算達成に近い期間であれば、成約につながりやすいリードを優先的に引き渡すことで、営業チームの短期的な成果に貢献できます。一方、期の初めや中盤であれば、まだ育成が必要なリードを引き渡し、長期的な商談に備えることができます。
2.競合他社の動向を考える
競合他社が同じ市場やリードに対してアプローチしているかどうかを見極めることも重要です。
競合が積極的に営業を仕掛けている場合は、リードの意思決定が早まる可能性があるため、すぐに営業に引き渡したほうが良いでしょう。反対に、競合の動きが積極的でないなら、さらにリードを育成し、十分な準備をした上で引き渡すのが理想です。
3.市場の動向を考える
市場全体の動きやトレンドにより、リードを引き渡すタイミングを決める場合もあります。市場や業界での需要が高まっている時期や、新しい技術や製品が登場して注目されている場合には、リードの購入意欲も高まるでしょう。
例えば、新しい規制や法律が施行されることで、新商材やソリューションの需要が急増するケースがあります。人事関連のソフトウェアを販売していて、近日中に労務関係の法律が変わるような状況なら、世間の注目度が高いタイミングで営業に引き渡すと受注率もアップするでしょう。
リード管理とフォローアップの重要性
リードのナーチャリングを重ね商談機会を増やすためには、適切なリード管理とフォローアップが重要です。
CRMやMAを活用しながらリードをランク分けし、リードの状態や行動に応じた適切なフォローアップを行いましょう。
CRMツールの活用
CRM(顧客関係管理)ツールを活用すれば、効率的なリード管理ができるようになります。CRMは、リードの属性や行動履歴などのデータを一元管理し、各リードの状況を把握するための強力なツールです。
営業やマーケティング担当は、CRMがあることでナーチャリングの状況をリアルタイムで把握でき、最適なアクションを取ることが可能になります。
特にリードごとの関心事や行動をトラッキングするCRMの機能は、リード管理において非常に重要です。「リードがどのページを閲覧したか?」「どのメールを開封したか?」といったデータを一元化し、営業やマーケが取るべきアクションを明確化できるようになります。
また、CRMは、リードを「企業の軸」と「リードの質軸」でランク分けする機能を持っています。企業軸では、企業規模や業種・売上高などの属性に基づき、自社商材にマッチするリードをセグメントできます。一方、リードの質軸では、リードの行動履歴や関心度をスコアリングし、商談に進む可能性が高いリードだけを抽出できるのです。
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CRMのプラットフォームにより営業とマーケが共通言語を持つことで、より一貫したリード管理ができるようになり売上も加速するでしょう。
効果的なフォローアップ戦略
いくつかの事例から、CRMのプラットフォームを活用した効果的なフォローアップ戦略の方法を見ていきます。
【CRMとMAを活用したフォローアップ戦略】
ある人事系ソフトウェアを販売する企業では、問い合わせリードからアポイント獲得までの成功率が平均5%と低迷。これを改善するために、同社はCRMとMAを組み合わせた戦略を導入しました。
まず、CRMを活用して、各リードの行動とアポイントに至る過程の相関関係を分析。過去にアポイントを取れたリードの行動履歴を洗い出し、共通のパターンを見つけ出しました。その後、アポイントが取れなかったリードに対しては、MAシステムを用いて自動でフォローアップメールを送信し、次のステップに進むためのナーチャリングを実施。メールを受け取ったリードのWeb行動も継続的にトラッキングし、特定の行動(例:価格表のダウンロードや特定の製品ページの閲覧など)が確認されたリードだけを営業チームに引き渡すように基準を定めました。
その結果、アポイントの成功率は従来の5%から15%に上昇し、最終的には売上向上にも大きく貢献しました。営業リソースを効率的に活用し、最も成約の可能性が高いリードに集中できたことが成功の要因です。
【CRMとSFAを連携させたフォローアップ戦略】
BtoB商材を扱う企業の営業チームでは、SFAを利用しプレゼンテーションから成約までの一連の営業活動をSFAに入力。そのデータはCRMと連携され、マーケティングチームや他の営業チームにリアルタイムで共有される仕組みを構築しました。
具体的には、進行中のリードに対して、どのような提案が効果的だったか、あるいはどのポイントでリードが成約に至らなかったのかを詳細に記録。このデータをもとに、マーケティングチームはより効果的なキャンペーンやコンテンツを作成し、営業へのトスアップ数の改善を実現させました。営業チームも同様のデータを基に、商談の改善策や顧客対応の最適化を行うことができています。
これらの事例から、獲得したリードを成約に結びつけるには、CRMを基盤にするフォローアップ戦略が役立つが分かります。
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