このレッスンで学べること
このレッスンでは、インサイドセールスがリードに対してどのようなコミュニケーションを取り、どのような結果になりうるか、という全体像(シナリオ)をまず設計します。その上で、インサイドセールス部門が追いかけるべきKPI(重要業績評価指標)についても理解します。組織が立ち上がったばかりの場合と、成熟した場合では、意識すべきKPIが異なることも知っておきましょう。電話をかけるコールスクリプト、自動メールを送る際のひな形の作成については、テンプレートを参考にしながらポイントを押さえましょう。
各テンプレートはこのeBook内のQRコードからダウンロードできます。
このレッスンで学べること | |
シナリオを設計する | 分類したリードについて、インサイドセールスが担当するリードがどのような流れをたどるのか、全てのパターンを書き出して整理 |
KPIを設計する | インサイドセールス部門で定点観測すべき重要業績評価指標を整理 |
コールスクリプトを作成する | ・全体の台本を作成 |
自動メールを作成する | 電話以外で見込み客を商談へと導くための自動メールを作成 |
テレアポとの違いを念頭に置く
「インサイドセールスの本質はカスタマーサクセス」だと、グローバル企業でインサイドセールスのトレーニングを手がけ、日系大手企業でインサイドセールス部門を立ち上げた茂野明彦氏は著書の『インサイドセールス』(翔泳社)で強調しています。売って終わり、ではなく自社の製品やサービスを通じて顧客がさらに成長をする、そのきっかけをインサイドセールスが担うという意識が大切だ、という指摘です。
インサイドセールスは、数字で把握することが必要な部署のため、ここまでのレッスンで定義や分業の線引きをしっかりしました。さらにこのレッスンでは電話の台本やひな形を作成するため、あたかもマニュアル作業のような印象を持ってしまいがちです。ただ、それは大きな誤りです。台本やテンプレートはあくまで土台で、相手の業界が多様ならばビジネスを理解して課題に寄り添い、ヒアリングして行く力が、インサイドセールスにはプロフェッショナルレベルで必要なのです。
シナリオを設計する
シナリオは、インサイドセールスの流れをフローチャート化することで設計していきましょう。フローチャートにする理由は、リードの動きが見える化され、「YES」「NO」という分岐も明確なため、抜け漏れがあった際に気づくことができ、追加や削除というメンテナンスもしやすいためです。フローチャート作成には、Microsoftのパワーポイントや無料のフロー図作成ツールを活用することができます。
サンプルのフローチャートを見ながら考えましょう。Lesson2でレベル分けしたリードのうち、インサイドセールスが担当するリードで考えます。レベル2のリードの流れを見てみましょう。まず電話をかけ、6回かけても担当者に連絡が付かない場合、確度が低いとみなしてレベル1に格下げします(これを6コールアウトと言います)。一方で、連絡が付いた場合、自社の製品・サービスについて疑問があり、インサイドセールス担当者でその疑問を解決できた場合、見込み客の関心は高まり、具体的な商談日程の調整に移ることができます。ここまで来れば営業担当者に受け渡すレベル4、となります。
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感覚重視で営業している会社の場合、リードの流れをフローチャートにするのは慣れないかもしれません。ただ、自社のビジネスを体系的に見える化しておくことで、新しい事業を始める際に簡単に横展開できたり、インサイドセールスを部分的に外注する際に、業務を切り分けやすくしたりできます。営業業務の棚卸し、という視点で取り組むと良いでしょう。
見込み無しも明記する
フローチャートにおいて、「見込み無し」に行き着くケースもしっかりと定義しましょう。例えば、すでに競合他社の製品・サービスを導入して自社のものを導入する可能性が無くなった場合、その見込み客はフォローの必要が無い「見込み無し」となります。一方で、検討し始めたけど来期に見送りになった、という場合は「見込み無し」ではなく、時期をあらためて電話をかけることをタスクにする必要があります。このように、さまざまなパターンを全て見える化することがプロセス設計に必要です。
KPIを設計する
インサイドセールスのプロセス設計を終えたら、インサイドセールス部門で定点観測すべきKPI(重要業績評価指標)を考えましょう。『THE MODEL』(翔泳社)の分業で考えた際、インサイドセールスの成果は、「見込み客数×商談化率」で導かれる商談数です。
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見込み客数、商談化率、商談数いずれもKPIとして設定しうるものです。より具体的にすると、分母の見込み客数として、架電数や電話がつながった数、インサイドセールスとして送信したメールへの返信数を追いかけるケースがあるでしょう。成果の商談数、については、商談の日程を獲得できた数の場合もあれば、実際に第1回の商談が成立した数を追いかけても良いでしょう。いずれにしても、KPIは最終的な結果(売上)を左右する「Key(鍵)」となるべき重要な指標を指定すべきで、そのため、数も絞られているべきです。
図の表記 | KPIの例 |
見込み客数 | 架電数、電話がつながった数、メール返信数 |
商談化率 | 商談化数 |
商談数 | 商談の日程を確定できた数、商談の実施数 |
立ち上げ期に重視するのは「手数」
『インサイドセールス』(翔泳社)の茂野明彦氏は指摘する通り、インサイドセールス部門を新たに立ち上げる場合、すぐに商談を多く獲得できません。このため、KPIについては、商談化率や商談数ではなく、架電数や電話がつながった数、といった「手数」をいかに増やしているかに注目すべきです。立ち上げ期は分母を増やすことに注力しつつ、営業部門を交えたフィードバック会や勉強会を開いて力を付けていく時期です。立ち上げ期がこのような状態であることは、組織全体で理解して臨む必要があります。
成熟期に重視するのは「結果」
一方、インサイドセールス部門が安定的に商談を獲得できるようになった後は、行動の結果である商談数を重視する形に変化させるべきだと茂野氏は指摘しています。というのも、成熟してきた組織に対して、架電数のような分母だけを重視すると、電話をかけることだけが目的化して単なる作業集団となり、架電先のビジネスを成功させたい、というマインドからは遠く離れてしまいます。アプローチの仕方は現場の裁量にして、「結果」を重く評価するようにすれば、専門的でやりがいのある組織になることができるでしょう。
コールスクリプトを作成する
インサイドセールス部門の担当者が見込み客に電話をかける時、どのような流れで、どのような内容で話すのか、スクリプト(台本)を2つ作成しましょう。1つ目は、あいさつも含めた全体の流れで、2つ目は、現場の担当者との会話に特化した本題部分です。台本として作成しますが、インサイドセールスはテレアポではありません。見込み客の課題を解決する、というマインドを持って応用できるよう、ロールプレイングは欠かせません。
全体の台本を作成する
まずは全体の流れのコールスクリプトです。担当者が不在の時はどうするか、「営業電話をかけてこないでほしい」と言われたらどうするのか、商談の日程が確定できたらどういう会話をするか、流れに合わせた台本を作成します。
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本題部分の台本を作成する
全体像が決まったら、担当者につながってから商談を打診するまでの本題部分のコールスクリプトを作りましょう。本題は、インサイドセールスの肝です。単純なテレアポではないので、見込み客の課題を解決したいという姿勢で丁寧なヒアリングが求められます。スクリプトを把握しつつも、営業部門につなぐ際の重要な情報「BANT条件」も含めて自然なコミュニケーションを心がけましょう。
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自動メールを作成する
電話以外のインサイドセールス部門のコミュニケーション手段はメールです。インサイドセールスでは、より多くのリードと接点を持つことが必要なため、メールを多用します。ただ全てのリードに個別のメールを作成できないため、自動メールを効果的に使う必要があります。特に、顧客の検討段階や流入経路に合わせた「セグメントメール」を効果的に使うことで、架電した際の反応が変わってきます。さまざまな自動メールの例があります。
配信タイミング | 内容の例 | |
架電不通時 | 1回目 |
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2回目 |
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「情報収集中」という返答で架電が終わった時 | 2週間後 |
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1カ月後 |
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言及があった時期 |
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「検討中断」という返答で架電が終わった時 | 言及があった期日 |
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予算計画時期 |
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それでは、具体例として、展示会でブースの担当者と会話したリードに初めに送る自動メールを紹介します。ポイントは、リードが開封したくなる件名にすることです。自動メールであっても、具体的な展示会名を入れ、氏名も含めると良いでしょう。リンクについては、リードを最も誘導したいリンクに限定して挿入するようにしましょう。返信してもらうことが最も重要ならば、リンクでさえもハイパーリンクでなくテキスト形式で記載するとよいでしょう。いろいろと選択肢があるとリードが迷ってしまったり、面倒になって反応しない可能性があるためです。
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