インサイドセールスとは?役割を理解する

インサイドセールスとは見込み客に対して非対面で行う営業活動のことです。まずはインサイドセールスの役割と導入の注意点について理解を深めましょう。

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インサイドセールスとは?役割を理解する
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インサイドセールスとは

インサイドセールスとは、見込み客に対して非対面で行う営業活動のことです。

マーケティングおよび営業活動を「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4部門に分業化にした際のプロセスのひとつで、数多くの見込み客(リード)の中から受注の確度を高めた見込み客をフィールドセールスに受け渡す役割を担います。

マーケティング/営業活動におけるインサイドセールスの定義

この分業体制は米国のSaaS企業で実施されていたもので『THE MODEL』(翔泳社)によって日本でも広く認知されるようになりました。

インサイドセールスは内勤営業ともいわれ、電話やメールをはじめとしたさまざまなコミュニケーションツールを使ってアプローチを行います。対面・非対面問わず基本的に商談を行いません。

従来の営業プロセスのうち、見込み顧客の発掘(商談化)と育成を徹底して行う専門部隊であるため、スピーディーな営業フォローと見込み客の取りこぼしを防止できることが特徴です。

インサイドセールスの特徴と役割

インサイドセールスの最大の役割は、見込み客に接触しアポイントメント(打ち合わせなどの約束)を取り付けて営業部門(フィールドセールス)の担当者に渡すことです。

例えば、マーケティング活動によってWebサイトに誘導したユーザーがサービス資料をダウンロードした場合、インサイドセールスは直ちに架電(営業コール)し、検討フェーズや予算をヒアリングした上で、商談の約束を取り付けます。それを受けたフィールドセールスは見込み度が高い見込み客にある程度のヒアリングが完了した状態で商談に臨むことができるというわけです。

見方を変えれば、インサイドセールスはプレゼンやクロージングの能力が高いフィールドセールスに無駄な商談時間を使わせないよう、フィルターの役割を果たしているとも言えます。

初回接触の段階で受注見込み度が低いと判断された見込み客の情報はナーチャリング(育成)リストに回され、インサイドセールスによる定期的なフォローアップやマーケティング部門によるシナリオメールなどを通じて関係を保ちながら育成します。

この一連の業務を顧客と非対面で行うのがインサイドセールスの特徴です。

インサイドセールスとフィールドセールスの違い

インサイドセールスとフィールドセールスの最も大きな違いは、その役割にあります。

インサイドセールスの最大の役割は、マーケティング部門が集めたリードを選定し「商談化」させ、フィールドセールに渡すことです。

一方、フィールドセールの最大の役割は、商談化したリードを「受注」までもっていくことです。

それぞれの業務を、インサイドセールスは電話やメールなどを用いて非対面で行い、 フィールドセールは客先に訪問して行うという違いもあります。

どういった状態でフィールドセールスに引き継ぐかは企業や商材によっても異なりますが、非対面で多くの見込み客にアプローチして商談を取り付けるのがインサイドセールス、確度の高い客先に訪問し商談することで契約を成立させるのがフィールドセールスです。

従来型の営業のように初回接触から受注までの営業プロセスすべてを担う営業担当者を「フィールドセールス」と呼ぶこともありますが、ここでは『THE MODEL』の定義に従って理解しましょう。

「SDR」「BDR」とは?インサイドセールスの種類

インサイドセールスは「SDR : Sales Development Representative(反響型)」と「BDR : Business Development Representative(新規開拓型)」に細分化されることがあります。

「SDR」は、マーケティング活動によって、自発的に問合せや資料請求などのアクションを起こした見込み客(リード)に対応する形でアプローチする「反響型」のインサイドセールスです。

一般的にインサイドセールスといえばSDR型を指すことが多いのですが、SDRは数多くのリードを担当するため大型の受注が見込める大企業を取りこぼしてしまうという弱点もあります。

「BDR」は、ターゲット企業を選定し1社ごとに営業部門で戦略を立て、DMやメール送付、架電などを通じて集中的にアプローチする「新規開拓型」のインサイドセールスです。

1社ごとに個別の戦略を立てるBDRは、リードの数を確保するという面では効率的ではありませんが、案件単価と受注難易度が高い大企業をターゲットとする場合や、市場が限定的で社数が少ない場合は非常に有効な手法です。

インサイドセールスとテレアポとの違い

インサイドセールスとテレアポとの違いは「見込み客との関係構築」を目指すかどうかという点が大きいでしょう。

これは、企業として受注率を上げるために、「できるだけ確度の高い商談を行おう」という「質」的な戦略を重視するか、「できるだけ多くの商談を行おう」という「量」的な戦略を重視するかの違いです。

インサイドセールスの目的は、「質」の高い(受注確度の高い)見込み客をフィールドセールスに送ることです。
そのためインサイドセールスは、初回の接触以降もメールを含むさまざまな手段で「見込み客と関係構築」し、関心高めること(リードナーチャリング)を目指します。

一方で、テレアポは商談の「量」を確保することが目的なので、初回の架電でアポイントを獲得すること目指します。仮に断られた場合でも、「見込み客との関係構築」という視点での活動は行いません。

これは両者の評価指標にも影響しており、テレアポがほとんどの場合架電数やアポイントの獲得数を評価指標とするのに対し、インサイドセールスの場合はそれらに留まらずフィールドセールスにパスした見込み客の受注数も評価指標とされることがあります。

インサイドセールスが注目される背景を知る

顧客行動の変化

以下は、2012年のシリウス・ディシジョンが発表したデータを元に『THE MODEL』で紹介されている顧客行動に関する考察です。

顧客行動の変化図

かつては、購買プロセスの中で営業の占める役割は非常に大きなものでした。

ところが現在は、営業が接触する前の「顧客による調査・評価」のプロセスが重要度を増しており、『THE MODEL』によれば営業が見込み客と接触する時点で購買行動の約57%は終了しているとされています。

結果として多くの企業がマーケティング活動に注力するようになり、リードは大量に獲得されるようになりました。一方で、商談に至らないリードが多い、受注コストが増加する、という課題も見えてきました。

こうした状況において企業が営業担当者に期待することは、「商談に至らなかったリードをできるだけ掘り起こして商談に導き、受注コストを引き下げる」アクションでしょう。
しかしそのような期待とは裏腹に、日々数字に追われる営業担当者は受注確度が高そうなリードにばかり優先的にアプローチし、今すぐ商談にならないリードは放置する傾向にあります。

そこで、見込み客の育成(リードナーチャリング)と商談化を専門で行うインサイドセールス部門が注目を集めるようになりました。

サブスクモデルの拡大

ビジネスモデルとして月額制や年額制のサブスクリプションが拡大したこととも営業の分業化の拡大に影響しています。

サブスクリプション型のビジネスは無料プランやトライアルをフックとしてリードを獲得しやすいこと、継続的に新機能がリリースされるためインサイドセールスによるフォローアップの理由を創出しやすいこと、安価で多数の顧客を扱うことなどからインサイドセールスと相性が良いとされています。

利用契約の継続交渉やライセンスの追加契約、オプションや付帯サービスの追加などもおすすめしやすいため、インサイドセールスを「クロージングまで行う内勤営業」と位置付け、大量の見込み客をサポートする部隊として運用するケースもあります。
このような企業ではさらにカスタマーサクセス部門を用意し、「初回の契約はインサイドセールスが担当」「その後はカスタマーサクセスが担当」といった形で分業させることが多いようです。

ITの進歩

『THE MODEL』型の分業が可能になった要因にはITの進歩もあります。
見込み客の情報を素早く取得し、部門間で共有するシステムによって、分業化された営業の運用は急速にスムーズになりました。

例えば顧客管理ツールは、インサイドセールスがヒアリングした内容を詳細に記録してフィールドセールスに直ちに共有してくれます。
またメール配信ツールはメールの開封率やURLのクリックなどの反応を見込み客ごとに測定し、優先的にアプローチすべきリードをインサイドセールスに通知します。

かつては書面や口頭でやりとりしていた情報や、測定したくても不可能だったデータが簡単に取得・共有できるようになったことが、今日のインサイドセールスの活動を支えています。

インサイドセールス導入のメリットを知る

1日のアプローチ数を増やせる

インサイドセールスは、電話やメール、チャットツールなどのさまざまなコミュニケーションツールを用いて顧客にアプローチし、商談化を目指します。

自社や商材に関心を持った顧客の元まで足を運びヒアリングするよりも圧倒的に効率的なため、自ずとアプローチできる顧客の数が増えます。

また、対応速度の速さも魅力です。様々な業務を行わなければならない従来の営業組織では問い合わせへの対応も後回しになりがちですが、インサイドセールスならば見込み客の関心が高いうちに 直ちに電話によるフォローが可能です。

機会損失を減らせる

多くの営業担当者の悩みは、「売れれば売れるほど、担当顧客が増えて新規開拓の時間が確保できない」ことです。長く経験を重ねた営業担当や顧客から評価される営業担当ほど、そのフォローや提案活動に忙殺され新規顧客との接触の機会(新規開拓のテレアポや過去失注した見込み客への再アプローチにかける時間)が減ってしまうのです。結果的にすぐにフォローしていれば受注できるはずだった見込み客の取りこぼしが機会損失として発生しやすくなります。

インサイドセールスはこうした業務を完全に切り分けた新規開拓の専門部隊ですので、営業先リストに対するアプローチ漏れによる機会損失を防ぐことができるのが特徴です。

経験の浅い人材でも戦力化しやすい

インサイドセールス部門は営業活動における初期フェーズに特化した活動を行う部隊です。そのため、検討段階の見込み客に特化してインサイトを深め、アプローチを最適化させやすいのが特徴です。

具体的には、

  • 業界Aの顧客にはアポイント調整段階のメールで資料Bを送る
  • 製品理解度の低い顧客に対してはいきなり商談化を狙わずにセミナーを経由させる

といった、初動対応のノウハウに集中して蓄積して共有できるのが従来の営業にない強みとなります。

インサイドセールスはクロージングやプレゼン能力等、高度な営業力を求められるフィールドセールスと比較すると役割の幅が狭まった分トレーニングやスキルアップも容易で、顧客の予算や抱えている課題といった情報を引き出す能力を磨いた初動対応のプロが育ちやすい組織体制です。経験の浅い若手主体のチームでも構成しやすいでしょう。

テレワーク希望者を獲得しやすい

「電話営業・インサイドセールス 1,000人 実態調査 by MiiTel」によると、アフターコロナのテレワーク導入希望者は管理者層が69.6%、メンバー層が64.7%にも上ることが分かりました。働き方に対してテレワークのニーズが高い、という表れです。

少子化の影響で日本は人材不足の流れが強まっていますが、子育てや介護、地方在住などの理由で、オフィスでの勤務は難しいが在宅でなら勤務可能という方は多くいます。

インサイドセールスならば、パソコンとスマートフォンさえあれば業務を行うことができるため、テレワーク希望者を採用しやすくなり、人手不足をカバーできる可能性があります。

マーケティング活動の精度が上がる

良質な見込み客(リード)を獲得するためにマーケティング部門が顧客のニーズや課題を理解することは重要です。市場調査の一環としてマーケティング部門が営業部門にヒアリングすることもありますが、コストもかかりますし、属人的になりがちなのが欠点です。

その点インサードセールス部門にはリード獲得“直後”の見込み客の情報が蓄積されていきますので、「獲得したリードの精度」を把握するには最適です。部門を超えて営業データを共有できる体制を整えれば、インサイドセールスからのフィードバックをマーケティング部門がリード獲得に活かすことができるようになります。

例えば、「〇〇業界のリードは受注率が高い」「SNSから獲得したリードはコンペになりにくく、商談化までが早い」「セミナー経由のリードはアンケートの回答有無によって商談化率が異なる」「最近コンペ相手として競合C社の名前を挙げられる事が多い」といったデータはマーケティング部門の予算配分や運用に大きな影響を与えることでしょう。

このような事情からインサイドセールスとマーケティング部門の垣根は年々狭まる傾向にあります。

インサイドセールスを導入すべきでない場合もある

営業の分業とインサイドセールスは優れたシステムですが、ただ導入すればよいというものではありません。

インサイドセールスの利点は、効率化によって大量の見込み客にアプローチできるようになることなので、「特注商品」「大規模システム」「高額商品」のような、専門性が高く対応をパターン化できない商材や、腕時計などの購買に至るまでの顧客体験が重要になる商材ではその利点を活かすことができません。
扱う商材によってはインサイドセールスに向かないケースもあるのです。

インサイドセールス導入の課題を知る

インサイドセールスの導入にあたって、注意すべき課題があります。

フィールドセールスへの引き継ぎがスムーズに行えない

インサイドセールスとフィールドセールス間での情報の共有が非常に重要です。

例えば、インサイドセールスがヒアリングした項目をフィールドセールスにきちんと伝達できていなければ、見込み客は同じヒアリング事項を再度尋ねられることになります。
途中で担当者が変わったうえに、自分の話した内容が共有されていない状況は、取引先候補としての期待感を大幅に下げてしまうことでしょう。一見当たり前のようですが、忙しい営業担当者にとって見込み客の引き継ぎ業務は意外と煩雑に感じ、おざなりになりやすいものです。

インサイドセールスを導入する際は、リードの情報を記録・保管し、フィールドセールスとスムーズに共有する仕組みが必須です。

マーケティング部門との連携が難しい

インサイドセールスが情報の共有を行うのはフィールドセールスとの間だけではありません。インサイドセールスにリードを渡すマーケティング部門との連携も密にする必要があります。

例えば、マーケティング部門が獲得したリードを素早くインサイドセールスに受け渡しできないと、「初回アプローチが早い」というインサイドセールスの強みを活かせません。

「インサイドセールス白書2023」によると、インサイドセールスを導入している企業のうち、リード獲得から5分以内にアプローチできているのは全体の20%に留まっています。

また、商談化率や受注率に関するフィードバックもインサイドセールスを悩ませる課題です。マーケティング部門としては獲得したリードが最終的に商談や受注に繋がっているかを定量的に把握したいものですが、リードのデータに獲得チャネル別や展示会でのやり取りを紐付けて収集しようとするとリード管理表がどんどん複雑になっていき、インサイドセールスの業務負担も増加します。

つまり、リード獲得時の見込み客のステータスやインサイドセールスの活動結果が自然と記録・集計されるような仕組みが必要です。

インサイドセールス導入時にExcelで顧客関係管理を行う

書面や口頭でのやりとりに頼っていてはインサイドセールスの課題である引き継ぎや部門間の連携を克服できません。
インサイドセールスを導入するのであれば、見込み客の情報を共有しやすいデータで管理する必要があります。

インサイドセールスを低コストでスタートするために、まずは表計算ソフトで顧客管理をデータ化しよう、と考える企業も多いです。エクセル(Excel)を使ったインサイドセールスの顧客関係管理について紹介します。

Excelで顧客関係管理をする方法

1.管理項目を設定する

まずは、管理する項目を設定します。

リードの基本情報として、「企業名」「所在地」「担当者名」「電話番号」「メールアドレス」を入力するほか、「リードの獲得経路」「対応状況」「過去のやり取り内容」などの項目を設定します。

エクセルによる顧客関係管理/管理項目設定

2.データを入力する

次に各管理項目にリード情報を入力します。

入力時の手間を軽減し、入力ミスをなくすために、各項目は「入力規則の設定」を行っておきましょう。例えば担当者はプルダウンで選択できるようにリスト登録しておくべきです。

エクセルによる顧客関係管理/データ入力

また、見込み客の姓と名の間にスペースを入れる・入れない(姓名を分けて登録させたい場合はそもそもセルを分けて入力させることを推奨します)、郵便番号にハイフンを含めるか否か、などに関しても入力規則を設けておき、表記ゆれを防止しましょう。

ここをしっかりとしておかないと、後でDMを一斉配布したくなった際などにリストをあらためてクレンジングする必要が生じ、膨大な手間となります。

3.テーブル機能を活用してテーブル化する

データを入力したらテーブル機能を使って、エクセルのシートをテーブル化します。

テーブルは入力した情報をデータベースとして処理し、編集や管理、データの抽出や分析が簡単にできるようになる機能です。

手順としては以下の3ステップです。

  1. 管理項目と顧客情報を選択
  2. 「挿入」→「テーブル」を選択
  3. 「先頭行をテーブルの見出しとして使用する」をチェックした上でOK
エクセルによる顧客関係管理/テーブル化

4.データ入力・管理方法をマニュアル化する

そして最も重要なのが、マニュアル化です。

リード管理を複数人で行う場合、明確にルールを定めていなければ担当者ごとに入力内容が異なっていまい、データとして有効に使うことができません。

入力の不整合や入力漏れを防ぐためにも、運用・管理を任せる場合は必ずフォーマットやルールを定めて、マニュアル化し、関係者に配布しておきましょう。

Excel管理の課題

1.データ量が増えるにつれて使いにくくなる

Excelのデータ量の上限は「1,048,576行、16,384列」です。

これだけあればそうそう上限に達することはないのですが、実際にはデータ量が増えてくると上限に達する前に動作が重くなってきます。

マーケティング部門が情報を入力しファイルを読み込んでいる間に、リードが最も熱を持っている時間が過ぎてしまいます。
リードのリストは頻繁に更新してもらいたいものですが、読み込みの重さは入力頻度を心理的に下げる事にもつながります。

また、「過去の担当者と話した内容」「見込み客の企業・部署が抱える課題」といった営業メモまで記録しようとするとどんどんセルが増えていき、可読性が下がってくることも問題です。

2.管理できる内容に限界がある

Excelでもある程度の情報は管理し分析することができますが、顧客関係管理に求められるすべての情報はさすがに管理しきれません。

例えば、マーケティング部門が送ったメールの開封率やリンクを開いたかどうかを確認するのは、ホットリードを見極める上で必要ですが、これを表計算ソフトにリアルタイムで反映するのは困難です。

3.セキュリティリスクがある

顧客データは個人情報の塊であり、漏洩は絶対に避けるべき事態です。しかし、表計算ソフトは複製や持ち出しが容易です。
また権限のコントロールやアクセスログの監視機能も備わっていませんので、万が一漏洩が発生した際に「どこから漏洩したのか」を特定したり、漏洩元からの接続をブロックしたりすることも困難です。

CRM/SFAで顧客関係管理をする方法を知る

「CRM(顧客関係管理システム)」や「SFA(営業支援ツール)」は、営業に関する情報共有を補助に特化しており、顧客台帳や表計算ソフトに代わって効率的に顧客情報や商談情報を共有できるツールです。

見込み客一人一人について「どういった経路で問い合わせをしたのか」「過去の担当者と話した内容」「見込み客の企業・部署が抱える課題」「電話がつながりやすい時間」「次に連絡するタイミング」といった細かな情報まで記録し、簡単に共有することができます。

獲得されたリードに対して自動でインサイドセールスを割り当てることも可能ですので、アプローチの重複やリード獲得から初回アプローチまでのタイムラグの懸念を払拭し、マーケティング部門との連携をスムーズにします。

何よりインサイドセールスの活動に寄与するのが、リードナーチャリングに関する機能です。CRMはそもそも顧客関係管理システムですから、シナリオメールや初回の接触から一定時間が経過した見込み客に関するアラートなど、すぐに商談化しなかった見込み客を効率的に育成するための機能が数多く搭載されています。

多くのCRMが権限管理機能やアクセスログの監視機能を備えており、表計算ソフトと比較するとセキュリティ的なリスクはかなり低減されます。

その他にもCRM/SFAには営業活動を支援するさまざまな機能がありますので、代表的なものをいくつか紹介します。

CRM/SFAツールの機能

見込み客・顧客情報の一元管理

CRM/SFAを利用することで見込み客の情報を一元管理できます。

顧客と長期的に良好な関係を築くには、顧客からのメールを見逃さない、過去の取引状況やその経緯などを詳細に記録するなど、細やかな対応が求められます。

CRM/SFAで顧客情報を一元管理することで、特定の顧客の情報をすぐに確認することもできますし、チーム内での情報の共有も容易になります。

顧客情報としては、氏名や所属だけでなく、過去の取引状況や対応内容など顧客との関係構築に欠かせない内容を取りこぼすことなく登録できます。

リードスコアリングで優先順位を明確化

リードスコアリングとは、リードの見込み度合いに対して点数付けを行うことです。

具体的には「Webサイトにアクセスし、料金ページを確認している」「案内メールを開封し、記載されたリンクをクリックした」「SNSで投稿した自社のサービス案内に反応している」などの行動から推察される興味関心度の高さをスコアリングして集計します。

CRM/SFAによってリードスコアリングを行うことで、どのリードが案件化する可能性が高いか、またどのリードが営業に渡すべきでないかの判断が容易になり、本当に案件につながるホットなリードに営業チームのリソースを集中さえることができます。

担当者の割り当て・引継ぎの自動化・効率化

営業担当やタスクの担当者など、営業活動では担当者を業務に割り当てていく必要があります。

この割り当てを一件ずつ判断していては、対応開始までのタイムラグが発生してしまいます。

CRM/SFAの担当者自動割り当て機能は、顧客獲得経路や地域、商品など、さまざまな条件に応じて適切な担当者をスピーディーに割り当てます。

インサイドセールスの導入で問題になる、フィールドセールスへの引継ぎも自動で行えるため、対応漏れも起こりません。

案件・タスク管理で対応漏れを撲滅

インサイドセールスは多くの見込み客に対応することになるため、対応の重複や抜け漏れが発生しやすくなります。

CRM/SFA のタスク管理機能なら、重要なタスクやプロジェクトの締め切りが差し迫っているときに、通知で知らせてくれるため、対応漏れが発生する心配がありません。

マルチチャネルでの対応

インサイドセールスは、幅広く顧客にアプローチするためメール・電話・SNSなど複数の媒体で顧客とのコミュニケーションを取らなければなりません。

使用するチャネルが増えるほど担当者の負担は増加しますので、対応漏れを起こす原因の一つにもなります。

マルチチャネル対応のCRM/SFAはメール、電話はもちろん各種SNSやチャットサービスと連携させられるため、あらゆる通知を一本化します。

また架電・受電活動をはじめチャットやメールの返信もCRM/SFAから行えるため、対応記録をチーム内で共有できますので、対応漏れや重複対応の心配もありません。

定型業務の自動化

CRM/SFAのワークフロー機能を使えば、インサイドセールスが行う特定の条件の顧客へのメールや報告資料作りなどの定型業務を自動化することが可能です。

これにより、本来のインサイドセールスの業務や施策の立案に使う時間を増やすことができ、効率が向上するだけでなく、チーム全体の営業力も高めることができます。

営業実績レポートの自動作成

インサイドセールスは導入して終わりというわけではありません。

運用を開始すると、思ったように受注率が上がらなかったり、対応に対するクレームが入ったりします。

CRM/SFAの自動レポート作成機能は、売上や商談数などのKPIを登録することで、達成度やその推移を可視化してくれます。

例えば、インサイドセールスからフィールドセールスに送られるリードの数が増加しているにもかかわらず、最終的な受注数が変化していない場合、問題として考えられるのは、「インサイドセールスが確度の低いリードを渡している」「フィールドセールスが増加した商談に対応できていない」「フィールドセールスの商談力不足」などがあります。

レポートを確認してフィールドセールスのメンバー全体の受注率が低い場合、インサイドセールスが確度の低いリードを渡しているか、フィールドセールスが増加した商談に対応できていないのだと考えられます。

この場合、受注に至ったリードと失注したリードの商談までの行動を比較することでリードの質に問題があるのかを判断できます。

もしリードの質に問題があるならば、フィールドセールスに送るリードの選定基準も見直す必要がありますし、フィールドセールスが増加した商談に対応できていないのならば、人員を補充する必要があります。

このように、CRM/SFAのレポートは問題点を探る起点となり、インサイドセールスの運用改善を手助けしてくれます。

インサイドセールス導入の流れ

1. 営業の分業範囲を明確にする

営業の分業範囲を明確にします。
一般的にインサイドセールスはマーケティング部門が獲得した見込み客(リード)を使って商談を獲得するまでをカバーしますが、商材や現状の体制によっては調整が必要です。

例)

  • ウェビナー受講者の成約率が極めて高いスクール事業であるため、インサイドセールスはリードをウェビナー受講に誘導することをミッションとする。
  • 低単価の商材であるため、商談の先の受注獲得までをインサイドセールスに担わせる。受注後はカスタマーサクセスや導入支援のパートナー企業にパスをする。
  • ヒアリング事項が多岐に渡る受託ビジネスなので、インサイドセールスもフィールドセールスに帯同し、協働して受注獲得を目指す。

2. インサイドセールスの組織構成を決める

分業の範囲にしたがって、どういう体制の組織にするか、インサイドセールスチームの構成を決めます。

例)

  • リード育成型組織を設置する場合、マネージャーが商談獲得数に責任を持ち、以下リーダー1人、メンバー2人配置する。また、リーダーは育成のためシナリオ作りや施策の立案を担当、メンバーは架電担当とする。

3. 人材を選定する

メンバーの多くが若手社員だとしても機能しやすいのがインサイドセールスですが、導入当初は必ず一人、クロージングまでを経験した営業経験者を選出してください。マーケティング経験者を含めるのもよいでしょう。

例)

リード育成型の4人チームとして以下のメンバーを選定。

  • マネージャーには営業経験者を配置し営業全体と連携させる。
  • リーダーにはマーケティング担当者を配置しリードの育成経験を活かす。
  • 残りの2名の内一名は中途で営業経験者を採用し、もう一名は新卒社員とする。

4. KPIを設定する

分業の範囲にしたがって、KPIを設定します。
最重要指標はもちろん商談数ですが、それを達成するための中間指標も定めておきましょう。中間指標の代表例は架電数、メールからの問い合わせ数、初回架電までの平均時間等です。

例)

  • 現状の営業部隊は架電数200/月で商談数は10(商談化率5%)のため、インサイドセールス部門の発足に伴い架電数を300/月・商談獲化率を8%に引き上げて商談数24件の獲得を目指す。

5. KPI達成のための施策を決定する

設定したKPI及び中間指標達成のために必要な施策を検討します。

重要なのは「達成のための施策」だけでなく「計測のための施策」も準備しておく必要がある点です。場合によってはCRMのカスタマイズも検討します。

例)

  • 商談化率を5%から8%に引き上げるためにトークスプクリプトを見直す。
  • 初回架電までの平均時間を5分以内に短縮するためにMAツールを導入し、見込み客が自社サイトを訪れたらすぐにインサイドセールスにアラートが届くようにする。
  • 初回架電までに要した時間を正確に計測するためにCRMと電話システムを連携させる。

6. 顧客情報の管理方法を決める

部門間でどう顧客情報を引き渡すかを念頭に置きながら顧客情報の管理方法を決めます。
ここでは分業体制企業の多くが導入しているCRM(顧客関係管理システム)の導入が必須と考えてよいでしょう。スモールスタートできるクラウド型で、かつ月額制のツールを推奨します。この際、顧客情報を管理していたプラットフォーム(表計算ソフトや名刺管理ソフト)からデータ移行しやすいツールを選定すべきです。

7. 運用方法を決める

どういったルールでだれがどのような手段で見込み客にアプローチし、商談となった場合にどんなフローでフィールドセールスに受け渡すかをあらかじめ検討しておきます。本来は商談化しなかった場合のリードジェネレーションプラン(シナリオメールや架電フォロー時のトークスクリプト等)もここで設計しておけるとベストですが、これらは運用を開始してからでも間に合います。

例)

  • CRMが担当者を自動割り当てするように設定する。その際のルールは担当顧客が少ないインサイドセールスに対して順に優先的に割り振りを行うものとする。
  • サイト訪問回数などでスコアリングし優先順位が高いリードから架電することをオペレーションとする。
  • スケジュールカレンダーの共有もCRM上で行う。
  • 商談が決定したらフィールドセールス部門にメールを自動送信する。

8. 実績を元に運用を改善する

運用を始めて発生した問題点は社内で共有し改善策を協議します。
運用中の課題はCRMのレポート機能を活用すると発見しやすいです。

例)

  • リードの増加に対して商談数の伸びが小さいため、リードジェネレーションのKPIとして商談化率を設定し、商談化率が高いチャネルに予算を寄せる。
  • 受注したリードに共通するヒアリング事項をCRMのメモから判別し、インサイドセールスの共通ヒアリング事項とする。
  • 初回架電のトークスクリプトをリードの獲得チャネル別に細分化する。