営業予算の設定方法
営業組織の予算、つまり売上目標の設定は、KGIとKPIの設定方法と同様に考えると分かりやすいでしょう。この章では、営業組織のKGI・KPを押さえながら、営業予算を設定する流れを解説します。
KGIの設定
KGIとは、Key Goal Indicatorの略で、直訳すると「主な目標の計測指標」となり、日本語では、「経営目標達成指標」と呼ばれます。営業組織のKGIは、例えば『今期10億円の売上目標を達成する』など一般的に"売上"が設定されます。営業組織のKGI(=営業予算、売上目標)は、組織として求められる売上目標がそのまま設定される所謂トップダウン型。そして、現場の営業担当やチームリーダー・マネージャーが提出する売上目標で設定するボトムアップ型があります。一般的には、トップダウン型で営業組織に売上目標が示され、その後実現可能性などの観点からボトムアップで調整がされて営業予算が確定されます。
KPIの設定
実績管理では、"売上"というKGIだけでなく、"売上を産むための活動"をKPIとして設定して管理します。KPIとは、Key Performance Indicator の略で、直訳すると「主なパフォーマンス(活動)の計測指標」となり、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれます。KPIは、KGIを達成するためプロセス指標であり、営業組織のKPIでは、商談数、リード数、受注率、営業架電数などが挙げられます。

上記の図のように、売上を獲得するまでのプロセスを定義し、各プロセスで、一定以上の数値が出せれば、営業予算(KGI)が達成できるようにKPIを設定します。
KGIだけで予実管理を行おうとすると、「とにかく売上を上げろ!」といった指示しか出せない根性論のマネジメントになってしまう可能性があります。KPIを設定することで、例えば、「営業架電数は目標通りだが商談数が足りない。商談化率が低いのが問題なので、架電の質を上げる施策を打つ必要がある」と判断できるようになります。
なお、上記の例は、シンプルに全ての商談を同じ商談金額として計算していますが、実際には商品、規模(大型商談、通常商談)などに細かく分解して目標を設定し、状況を追跡することもあります。
KGIとKPIを追跡する環境を整備する
予実管理では、KGIを達成するために、予算と実績・見込み額とのギャップを把握し、できるだけ早い段階で軌道修正を行うことが重要です。そのため、営業組織のKGI・KPIをリアルタイムに計測し、追跡できる環境を用意する必要があります。
実績の算出は、受注した商談の金額を集計すればよいだけですが、見込み額の算出にはさまざまな方法があります。
その中で、営業担当者属人性を排除し、可能な限りブレない見込み額を算出するためには、商談の進捗状況(ステージ)をもとに見込み額を計算する方法が適切です。
商談では、「初回打ち合わせ」「提案中」「見積り提示」「契約調整中」「受注」「失注」などのステージがあります。商談ごとに、このステージと商談金額、受注予定日が記録され、ステージごとの受注確率を定めれていれば、受注見込額を計算し、月次や四半期ごとに積み上げることができます。
KPIにおいては、商談に関連する情報以外の「見込み客数」、「営業架電数」などを定義した場合には、営業担当者が獲得した名刺情報などから見込み客数を計測したり、営業担当者が架電した際にその行動を記録し、集計する必要があります。
多くの企業では、商談数などは管理されていますが、商談の前段階のプロセスに関連する数字を記録し、活用する仕組みがない場合があるので、そのような数字を管理する仕組みを用意する必要があります。
予実管理の具体的な手法
ここまで、KGIとKPIを追跡する環境の構築ポイントを解説しましたが、ここからは具体的な予実管理の手法について詳しく解説していきます。売上
売上目標(予算)の達成状況(実績)を追跡する
予算に対して、実績がどの程度積み上げられているかを確認することが、予実管理の最初のステップです。下図のように最終的な予算に対して、現時点でどこまで達成しており、未達分がどれほどあるのかを把握することが重要です。また、この実績はなるべくリアルタイムに追跡することで素早い施策の実施に繋がります。
実績が問題なく積みあがっていれば、それまでの方針通り活動を続けていきますが、予算と実績にギャップがある場合には、どのステージで問題が起きているのか、問題の原因は何かを特定して必要な施策を打っていきます。

全体のプロセスの中で問題がある箇所を特定する
予算と実績にギャップがある場合、まずは、見込み客の獲得から受注までの全体のプロセスの中で問題がありそうな箇所を特定していきます。

上記のようなプロセスごとに件数を見て原因を特定する場合、基本的には見込み顧客の獲得からプロセスが進むにつれて、件数が減少していきます。
通常KPIを設定する際には、各プロセスの目標数値を決めていくので、どこかのプロセスの実績値が目標値に到達していない場合には、その手前のプロセスでそもそも件数が足りていないか、件数は足りているが次のプロセスに進められる割合が低くなっているなど、さらに具体的な問題がみえてきます。
このようにどのステージに問題があるかを特定したら、そのステージにおける問題を分析していきます。
"受注"段階の問題を特定する
受注段階の問題は、受注件数、受注金額、平均受注単価などの数値を可視化すると特定しやすくなります。。

例えば、予算未達の月があった場合、月ごとに受注金額と件数の実績とみていくと、予算に届かなかった原因が、受注件数が足りなかったからなのか、1件ごとの受注単価が少なかったからなのかが見えてきます。
予算と比べて受注単価が引くい問題が傾向として見えてきた場合には、受注件数の目標を増やして対応するか、受注単価を増やすために、単価の高い商材に注力するなどの施策を検討する必要があります。
さらに、顧客属性ごとに受注件数を分析することで、どの属性が受注を牽引しているかを把握できます。例えば、特定の経路や業種からの受注が多い場合、その同じ属性をもつ顧客に注力する戦略を考えることができます。
受注率は受注に至った割合を示します。これはマーケティングや営業の効果を測る上で重要な指標です。顧客属性ごとに受注率を比較することで、どの属性がより効果的な顧客層であるかを把握できます。たとえば、特定の企業規模の顧客から高い受注率が得られる場合、その企業規模に特化したアプローチを考えることができます。
“商談化”段階の問題を特定する
商談化件数は、下図のように目標件数を設定し、進捗状況を追跡します。これまでご紹介してきた計測指標と同様に、見込み客の属性(経路、業種、企業規模など)に基づく商談件数を計測する必要もありますが、まずは営業組織の全体で目標件数にどこまで到達しているのかを計測することで、商談件数が不足して未達を生んでいないかを確認できます。

さらに、商談の状況(ステージ)も計測します。下図のように、商談の流れ(フロー)に応じて、ステージごとの件数を可視化します。「初回打ち合わせ」「提案中」「見積り提示」「契約調整中」「受注」「失注」などのステージ(商談の段階)を営業組織の全体で定義することで、計測がスムーズになります。これにより、商談化のボトルネックとなっているステージを特定して、対策をとることが有効です。

また、営業成績が伸び悩んでいる営業担当者がいないかを特定することも有効です。下図のように、担当者の獲得売上や平均営業期間を可視化して、コーチングなどを通じてパフォーマンスの引き上げに取り組みます。

"営業架電"段階の問題を特定する
営業架電は、商談の“掘り起こし”活動です。目標とする商談件数に到達できるように取り組みを管理します。下図のように、カバー率(獲得した見込み客に対して、予め設定した期間内に何割架電が完了しているのか)を追跡して、まずはフォローが十分にできているのかを可視化します。

営業架電のカバー率が十分であるにも関わらず、商談が十分に獲得できていない場合には、フォローのプロセスやルールを確立して体系的に管理・強化することが有効です。到達率を伸ばすため6回まで架電する、初回コールは3営業日以内を期限とする。などのルールを定め、フォロー対象の見込み客が多い場合には優先度を定めて、商談を獲得しやすい経路を優先することも有効な手段です。
優先すべき見込み客の属性(経路、業種、企業規模など)を定めて営業組織が一丸となってアプローチするためには、下図のように進捗や結果が追跡できるように管理することが有効です。カバー率だけでなく、見込み客の品質(商談を獲得しやすい見込み客かどうか)を獲得経路別に判別することも、営業架電の成果を向上させるために重要なポイントとなります。

“見込み客の獲得”段階の問題を特定する
商談の機会を増やすためには、課題を抱えた将来の顧客候補となる「見込み客(リード)」を獲得することが必要です。企業では一般的に、広告やセミナー、展示会などを通じて、将来的に顧客になりうる「見込み客」を獲得します。
この段階で問題が発生している場合、まずは以下のように、月に何件、どの経路から見込み客を獲得ができているのかを計測します。見込み客の数が不足している場合には、現在どこからどの程度獲得ができているのかを確認します。

問題のある経路を確認できたら、なぜそのような問題が起きているのかを現場担当者に確認し、その経路の効果が下がっている場合には、その経路の効果を上げるための施策を売ったり、効果が出ている別の経路に注力するなどの施策を打っていきます。
評価
このコンテンツは役に立ちましたか?
入力ありがとうございました。
あなたからの評価
コメント