様々なシーンでのメールマーケティングの重要性
デジタルトランスフォーメーションと呼ばれる時代の到来により、昨今では多くの企業がオンラインチャネルを通じて顧客とのコミュニケーションを取るようになりました。メールマーケティングはその主要な手段の一つとなっています。
総務省が公開した「情報通信白書令和2年版」によると、企業活動で活用される分析データは5年前と比較して自動取得データの活用が増え、電子メールの活用も増加傾向にあります。このことから企業同士での顧客とのコミュニケーション手法は、昨今でもメールが主要である点や、企業のマーケティング戦略の一環でメールマーケティングが重要視されていることがわかります。
特にBtoB市場でのメールマーケティングの重要度は高いです。BtoC商材と比較し商材の検討期間が長期に至りやすいという傾向から、顧客との長期的な関係構築を行うことこそがBtoBビジネスの鍵とされています。その手法の一つとするのがメールマーケティングです。定期的な一括メール配信を行い顧客との接点を保持したり、個別のニーズや行動に基づきパーソナライズされたメッセージを顧客へ送るなど、顧客との関係を強化する効果的な手段として重要視されています。
顧客ライフサイクルに応じたメールの使い分け
メールマーケティングを行う際、顧客が商材を認知してから購入に至るまでの段階的な過程、すなわち、顧客ライフサイクルに沿ったメールの使い分けが必要です。顧客ライフサイクルは以下のように4つの段階で分類されます。

各段階において、顧客が必要とする情報や関心を持つトピックスは異なります。適切な段階で関連性の高いメッセージを心がけることが重要です。
ここでは、各段階に応じたメールの種類と活用法についてご説明します。
<認知>
認知は、顧客が企業の存在自体や商品のブランド、または商品の存在を知る段階を指します。この段階の顧客は一般的には「潜在顧客」と言われ、製品やサービスに対して興味を持つ可能性があるものの、未だウェブなどで調べる行為を行う前段階の顧客です。これらの潜在顧客に対しては、興味・関心を引き出すようなコンテンツを定期的に提供し、クリックを促進することを目的としたメルマガの送付が望ましいです。
メルマガ・ニュースレター
メルマガとは、前レッスンでお伝えした通り、登録しているユーザーに対しニュース・キャンペーンなどの情報を一斉送信するメールのことを指します。
メルマガ送付を社内で運用することが確定してから、運用担当者が一番に苦労する可能性が高いのが内容の考案です。内容は読者に受信後にしてもらいたいアクション、または想起してもらいたい内容などを考えて作りますが、目的がずれると伝える文章もずれてしまいます。
メルマガ運用の主な目的を以下に挙げますので、以下3つの目的と推奨内容を参考に文章を作成してみましょう。
目的 | 推奨する内容 |
①自社の専門性をアピールしたい |
|
②自社の価値をアピールしたい |
|
③継続的な関係を構築したい |
※①・②の内容の推奨内容含む |
効果的なメルマガを運用したい場合、まずは適切なメルマガ送付の頻度とタイミングを定めましょう。
送付の頻度は送りたい内容量にもよってきますが、週に2〜3回が一般的とされています。実際にTECH+マーケティングが実施した「【調査レポート】102名に聞いたメールマーケティングで重視している事と配信頻度」での調査データでは、企業が送るメルマガの配信頻度は「週に2〜3回」との回答者が全体の33.33%で一番多い結果となっています。
最適なタイミングは、配信先ターゲットの活動時間に合わせて送付するのが望ましいです。活動時間はターゲット層により若干異なってくるため、自社で検証を行うのが最善です。配信先ターゲットの活動時間をGAなどのツールで事前に把握できるようであれば、その時間に合わせて送信を行い、開封率やその後のリンククリック率が高いタイミングの検証を行いましょう。
<検討>
検討とは、 顧客が製品やサービスを評価し、購入を検討する段階です。顧客ライフサイクルの検討段階(評価段階)におけるメールマーケティングは、顧客が製品やサービスを比較・検討する際に必要な情報提供を目的に行います。この際に活用したいメールは「ステップメール」です。
ステップメール
ステップメールとは、「段階的に配信するメール」のことを指し、受信者の関心や検討度合いが変化しやすいタイミングを予想して、検討段階にあった情報を自動で配信する設定を行うものです前述したメルマガとの違いは、メルマガは送りたい内容を送る少々積極的な営業活動であるのに対し、ステップメールは見込み顧客が知りたいであろう情報を提供し、顧客の定着を目的とする点にあります。押し売りにならず、顧客に役立つ情報提供を心がけて内容を考えましょう。初回の設計時は3~4回での設計がお勧めです。複雑化してしまうと分析がしにくくなります。配信回数を増やせば増やすほど、開封率、クリック率、コンバージョン率のデータポイントも比例して増加します。細かなデータの分析を各メールごとに行うのには手間暇がかかりますし、またデータの管理も必要です。
また、各回でメール文を作成する場合は、以下を参考にそれぞれでの配信目的を定めて送りましょう。
1回目のメール配信:
初回のメールは2回目に送るメールのつなぎです。次のメールがどういった内容になるか、また次回も興味を持って反応(クリック)してくれるような内容を入れます。見込み顧客が自分ゴトとして捉えられるよう、よくある課題・悩みを含め気づきを与えられると良いです。構成例は以下です。
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件名:【企業名/担当者名】資料ダウンロードのお礼
本文:
XX会社【見込み顧客会社名】
XXX【見込み顧客担当者名】様
お世話になります。
XX会社【会社】のXX【自社担当者名】です。
先程は、弊社サービスサイトにてXXX【資料名】の資料ダウンロードをいただき、
誠にありがとうございました。
<担当者の潜在課題に気づかせ、興味を持たせる内容の提示>
〜〜といったご課題はありませんか。
この商品をご利用いただくことで〜〜の課題を解決し、〜〜の実現が可能です。
<2回目に送るメール内容を含め興味を持たせる>
次回以降のメールでは、XXX【見込み顧客担当者名】様のお役に立つような情報を、
お伝えして参りますのでお手隙の際にご覧いただけますと幸いです。
以上、よろしくお願いいたします。
XX【自社担当者名】
配信解除用URL
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2回目のメール配信:
2回目に送るメールは、見込み顧客の興味関心をより深く引き出せる情報を提供するメール内容にします。既に検討が進んでいるかもしれませんので、検討時に役立つ「他社の事例集」などのコンテンツを含めてみましょう。顧客課題のどんなことが解決されるのか、または達成されるのか、明るい未来をイメージさせられるような内容を含めましょう。2回目の構成例は以下です。
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件名:【企業名/担当者名】先日は資料ダウンロードをありがとうございました。
本文:
XX会社【見込み顧客会社名】
XXX【見込み顧客担当者名】様
お世話になります。
XX会社【会社】のXX【自社担当者名】です。
先日は、弊社サービスサイトにてXXX【資料名】の資料ダウンロードをいただき、
誠にありがとうございました。
<メールの目的・役立ち情報の提示>
今回、商材を活用し〜〜といった課題を解決されたXX業界での最新事例をまとめた
資料をご紹介したく、メールにてご連絡いたしました。
<資料情報をチラ見せし、興味を引き出す>
こちらの企業様は弊社ツールを導入後、XXという課題を解決され、
売上を昨年比XX%をご達成いただいております。
資料URL:XXXXXXXXX
お手隙の際にご一読いただけますと幸いです。
以上、よろしくお願いいたします。
XX【自社担当者名】
配信解除用URL
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3回目のメール配信:
3回目に送るメールは、企業が抱えている課題の直接の解決策を提示し、検討スピードが早まるような情報を含めます。例えば、競合調査を進めている見込み顧客もいるかもしれませんので、各社の価格や機能特徴を比較した比較資料の提示や、機能性の理解を深めていただくためにトライアル(デモンストレーション)などの提示が望ましいでしょう。3回目の構成例は以下です。
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件名:お世話になります、XXX株式会社【会社】のXXX【自社担当者名】です。
本文:
XX会社【見込み顧客会社名】
XXX【見込み顧客担当者名】様
お世話になります。
XX会社【会社】のXX【自社担当者名】です。
<前回の連絡内容のつながりを意識する文>
先日お送りいたしました、導入事例資料はご覧になられましたでしょうか?
内容についてご不明な点などありましたら遠慮なくご連絡ください。
<今回のメールの目的の提示>
今回、XXX【商材名】のお試しとしてトライアルプランを是非ご活用いただきたくご連絡いたしました。トライアルプランでXXXの機能などをお試しいただけます。
詳細はこちらを是非ご覧くださいませ。
サイトURL:XXXXXXXXX
上記に関しましてご不明な点ありましたらご連絡ください。
以上、よろしくお願いいたします。
XX【自社担当者名】
配信解除用URL
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上記はあくまで一例です。自社商材に合う訴求内容を定め、AB検証で分析を行いながら効果的なステップメールを構築しましょう。
尚、ステップメールは配信を事前設定したり、ステップ毎に分析したりとメルマガなどの運用と比較し手間がかかりやすいという特徴がありますので、コストパフォーマンスに見合うかどうかの視点も重要です。結果が出るまでに時間がかかりやすいという傾向から、短期で売上を望む場合や低単価の商材は費用対効果が合わない可能性があります。実施する場合は、BtoBビジネス且つ高単価商材での施策がお勧めです。
<購入>
顧客ライフサイクル内の購入の段階では、見込み顧客が製品やサービスを購入する意思決定を行う時期のことを指します。この段階でのメールマーケティングは、顧客が意思決定を素早く行えるようサポートし、購入プロセスをスムーズに進められるようにする設計します。それには、一定のスケジュールを組んで固定のメール内容を送信するのではなく、個々の顧客の行動に適したメールを送ることができる「シナリオメール」を活用しましょう。
シナリオメール
シナリオメールとは、受信者の行動をもとに次に配信する内容を自動で変更する手法です。ステップメールとの違いは、スケジュールと送信内容を固定で事前設定できるのに対し、シナリオメールはスケジュールだけでなく個人の行動で分岐した個々の行動に沿ったメール内容を出し分けて配信できる点にあります。
顧客の購買意欲をより刺激して購入を促進したいといったケースで用いられやすいのが「特典付きメール」をシナリオ設計し、送付する方法です。
特典付きメール
特典付きメールは、特典情報や割引情報といったお得な情報を提供し顧客に購入価値を高めたい時に活用します。また、期限付きのキャンペーンを提供することで、早期の行動を促すことが可能です。
ケースとしては以下が考えられます。
- 見込み顧客がウェブサイトを複数回訪問した後、機能などが詳細に記載されたカタログ情報をダウンロードした直後に送信されるようにする
- 価格表ページを複数回来訪している見込み顧客に対し、特典や割引コードが記載されたメールが送信されるようにする
- 商談後に検討期間が長引いている見込み顧客が、一定期間を経てWebサイトへ再来訪し、お役立ち資料をダウンロードされた直後に送信されるようにする
特典付きメールの例文は以下です。
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件名:【XXX【見込み顧客担当者名】様への特別なご案内】XXX【商材名】を10%割引でご利用いただけます
本文:
XX会社【見込み顧客会社名】
XXX【見込み顧客担当者名】様
お世話になります。
XX会社【会社】のXX【自社担当者名】です。
<対全員ではなく個々に送る内容にする>
XXX【商材名】につきましてご関心お寄せいただき誠にありがとうございます。
XXX【見込み顧客担当者名】様への特別なオファーを今回、ご用意いたしました。
現在、期間限定で10%割引フェアを行なっております。
数社限定の企画となっておりますので、
ご興味がありましたらぜひ、以下のキャンペーンサイトよりお申し込みくださいませ。
キャンペーンサイトURL:XXXXXXXXX
上記に関しましてご不明やご質問点がありましたらご連絡ください。
以上、よろしくお願いいたします。
XX【自社担当者名】
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シナリオメールの配信先ターゲットと見合わない条件もあります。購入検討フェーズの中でも例えば、一度でも商談を実施したことのある顧客や、提案後に一度失注した顧客に対し、自動的に上記例文のようなキャンペーンの案内が送付されるのは少々乱暴かもしれません。
例えば、提案実施したことのある顧客や失注したといった背景のある見込み顧客に対しては、過去のやりとりを踏まえた個人的なメールのやり取りを行える方が丁寧であり効果が期待できます。このように、シナリオを設計し、配信を自動化することで効果が出そうなターゲット先かパーソナライズドしたメールの方が良いか、適切に実施判断をすることも重要な観点です。
<良質な関係>
顧客ライフサイクルでの「良質な関係」とは、見込み顧客が企業との接点でポジティブな印象を持ち、長期的な信頼を築き、最終的にはリピーターとなってもらうように促すフェーズを指します。商品やサービス購入後、顧客の期待値が下がることがないよう顧客のニーズや期待に応じた適切なコミュニケーション、サポートが必要です。
ターゲティング(セグメント)メール
このフェーズでは見込み顧客の状況や状態に合わせてセグメントを分け、分類された特定のセグメントに対し、価値ある情報を送付する「ターゲティング(セグメント)メール」を活用します。
ターゲティング(セグメント)メールの種類は多々あります。メールの種類や目的、活用シーンをそれぞれ以下で説明します。
コンテンツ配信メール
コンテンツ配信メールは、見込み顧客に役立つ情報を提示し、顧客との関係性を強化することでサービスや製品の利用満足度を向上させる効果が期待できます。
例えば、ツールの初期導入時のサポートとしてコンテンツ配信メールを活用することがあります。ツールを導入したばかりの企業は初期設定でつまづきやすく、次のステップに進められないという悩みで不満を抱えるかもしれません。あらかじめ初期設定で困りやすい内容を動画や資料などでまとめ、導入初期の企業を対象にメールで送付すると満足度向上につながります。
他にも、ツール導入後の利用率が低い企業に対しては、サービスを導入して効果が出た他社事例やケーススタディーなどをブログやホワイトペーパーに纏めて送付することで再利用につながり、良好な関係性の構築が期待できます。
コンテンツの種類は、ブログ・ホワイトペーパー資料・ウェビナー・業界ニュースなどさまざまです。誰にどの資料をどの手法で提示するかは、実際の見込み顧客の行動データを分析し、セグメントとコンテンツを設計すると良いでしょう。
フィードバックリクエストメール
フィードバックリクエストメールとは、サービスや商品を導入した顧客から、利用に関してや担当者の行動面などのフィードバックを収集し、自社サービスの改善につなげるメール手法です。
商品導入後に、簡易的なアンケートや評価を入力するためのフォームを準備し、フィードバックを依頼するメールを送信し、適宜顧客の意見を収集していきます。
メール内に含める内容で重要なポイントは3つです。
1.フィードバックを求める理由を冒頭で伝える
顧客の時間を利用しフィードバックをもらうわけですから、フィードバックがなぜ必要なのか、意見をどのように役立たせる予定なのかを明確に伝え、理解してもらうことが大切です。以下のような例文を入れ、活用目的を記しましょう。
例文:「お客様から頂戴したご意見は、サービス向上・製品改善のために大切に扱わせていただきます。」
2.フィードバックの手軽さを伝える
多数のフィードバックを貰うためにも、フィードバックの手軽さを伝えましょう。短時間で終わる簡易的なものであることを文中で示すことでハードルを下げると良いです。
例文:「XX分で終わる簡易的なアンケートとなります」「短いアンケートにご協力ください」
3.プライバシーの保証を伝える
個人情報などが含まれている場合、プライバシーが守られていることを保証することを伝えましょう。フィードバック内容が匿名で処理されることや、フィードバックの使用方法、プライバシーポリシーに沿っていることを以下のような例文で簡潔に説明します。
例文:「お客様の個人情報は匿名で保護されています」「お客様の個人情報は弊社内で厳重に保護いたします」
アップセル・クロスセルメール
アップセル・クロスセルメールは、既にサービスや商品を導入済みの顧客に対し、購入した商品に関連するオプション商材を提案し、追加での商品検討を促すことを目的としたメール手法です。
購入した商品データに基づいて配信対象のリストを分け、関連した商品を特別なオファーや割引情報と一緒にメールを送ることで、関連商品の興味関心度を高める効果が期待できます。
気をつけるべき点は、アップセル・クロスセルメールを顧客の状況やニーズを加味せずに送り、結果的に押し売りしてしまわないようにすることです。あくまで顧客との信頼性が成り立ってこそ、アップセル・クロスセルの可能性が高まります。顧客の状態やニーズに合ったパーソナライズドされた情報提示を行うためにも、購入商品情報のみだけでなく、購入時期やサイトの閲覧データを分析の上、メール内容を細かくカスタマイズしてメッセージを送付しましょう。
再エンゲージメントメール
再エンゲージメントメールとは、サービスや商材を導入後、暫く利用を行っていなかった顧客に対し、再度関心を引き、再利用を促進するために送るメールのことです。顧客との関係を再度構築し直し、長期的に利用し続けてもらうにすることがメールの目的となります。
例えば、一定の期間活用していない顧客をデータで抽出しセグメント化し、過去の購入商品情報やサイトの訪問履歴やダウンロードしたことのある資料情報などで興味に基づいたメッセージを送ります。一定期間活用していない顧客へは、すぐに行動したい!と思える情報提供が必要です。割引情報やプレゼント情報など、お得感のある情報を提供し、再エンゲージメントを促進しましょう。
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