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データに基づいた仮説を営業活動に落とし込みPDCAサイクルを回す

このレッスンでは、データに基づいて立てた仮説を営業施策に落とし込み、PDCAサイクルで検証して改善を進める具体的な方法を学びます。仮説から営業活動を成功に導くための実践的なスキルを身に付け、営業組織を次のレベルに引き上げるためのステップを踏み出しましょう。

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データに基づいた仮説を営業活動に落とし込みPDCAサイクルを回す

PDCAサイクルの概要と重要性

PDCAサイクルとは、業務やプロジェクトを継続的に改善するための基本的なマネジメント手法です。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つのフェーズを循環させることで改善を図ます。

仮説を活動に落とし込みPDCAサイクルを回す

仮説を活動に落とし込むプロセスは、PDCAサイクルのPlan(計画)に当たります。

ここでは一つの仮説を例に、PDCAサイクルを回すプロセスについて確認していきましょう。

このレッスンのシナリオ

BtoB向けのソフトウェア販売会社を例にします。データと分析、仮説から、実行可能なアクションプランに落とし込みます。なお、本レッスンにおいては、フォローアップまでの日数が成果に与える影響の検証を主眼とし、フォローアップの内容には言及しないものとします。

業界と背景

BtoB向けのソフトウェア販売会社。営業部門は20名。クラウドベースのERP(Enterprise Resources Planning)システムを販売しており、主な顧客は製造業や物流業界の中堅企業。新規顧客の成約率が低下しており、特に見込み客が競合に流れてしまうケースが頻発している。

データ

初回接触から直接訪問によるフォローアップまでの平均期間は14日間。また、フォローアップまでの日数と成約率の関係は以下の通り。

●過去1年間の直接訪問によるフォローアップと成果

件数

成約件数

成約率

フォローアップを行った案件

300件

38件

12.7%

フォローアップを行わなかった案件

200件

4件

2.0%

500件

42件

8.4%

件数

成約件数

成約率

フォローアップ間隔7日以内の案件

120件

30件

25.0%

フォローアップ間隔8日以上の案件

180件

8件

4.4%

300件

38件

12.7%

分析

フォローアップを行った案件と行わなかった案件の成約率を比較すると、フォローアップを実施した案件の成約率は12%(38件/300件)。一方、フォローアップを行わなかった案件の成約率はわずか2%(4件/200件)。フォローアップの有無が成約率に与える影響が大きい。

また、フォローアップを7日以内に実施した案件の成約率は25%(30件/120件)。一方、8日以上経過してからフォローアップを実施した案件の成約率は4.4%(8件/180件)。初回接触後からフォローアップまでの期間を短縮することによって、成約率が向上する可能性が考えられる。

仮説

分析から、見込み客の競合への流出を抑え成約率を向上させるためには、以下の2点が重要と仮定した。

  • フォローアップを必ず実行
  • 初回接触から7日以内にフォローアップ

すべての案件において7日以内に直接訪問によるフォローアップ行った場合、25%の成約率が期待できるが、想定外の事象も考慮し、成約率20%まで向上すると仮説を立てた。

Plan:仮説から具体的なアクションプランへの落とし込み

仮説を具体的な営業活動に落とし込み、アクションプランを作成します。

アクションプラン作成は、以下の順序で行うと良いでしょう。なお、実行と改善を繰り返す前提で策定するのが重要です。

  1. 仮説とデータの再確認
  2. 具体的な目標とKPIの設定
  3. リソースの割り当て
  4. フォローアップのプロセス設計
  5. 計画の可視化と共有
  6. KPIのモニタリング計画

1.仮説とデータの再確認

アクションプランの基になる仮説とその根拠となるデータを再確認します。データの正確性や信頼度を確認し、組織全体に共有するイメージを持ちましょう。担当者間で異なる解釈が生じないようにデータを共有します。

今回の仮説は「成約率が低い原因は、フォローアップは必ず必要で、かつ、初回接触からフォローアップまでの間隔を7日以内に短縮すれば成約率が向上する」であり、その根拠を示すデータを共有します。具体的には、以下のデータを強調すると良いでしょう。

  • フォローアップを行った案件300件の成約率は12.7%
  • フォローアップを行わなかった案件200件の成約率は2.0%
  • フォローアップを7日以内に行った場合の成約率は25.0%
  • 8日以上経過した案件では成約率が4.4%

これらのデータから、フォローアップを実施し、かつ7日以内にフォローアップを行う重要性を確認できます。

2.具体的な目標とKPIの設定

目標の設定にはSMARTなどの手法を利用すると良いでしょう。SMARTは、具体的 (Specific)、測定可能 (Measurable)、達成可能 (Achievable)、関連性がある (Relevant)、期限が設定されている (Time-bound) ことです。

過度に野心的であったり、逆に簡単すぎたりしないよう、現実的でモチベーションを保てる目標を設定しましょう。

今回の場合、データ分析から「初回接触から7日以内の直接訪問によるフォローアップを行うと成約率が25.0%」という数値を確認できています。想定外の事象や見込み客の強い拒否反応、整備しきれない環境などを考慮し、目標とKPI(重要業績評価指標)を以下のように定めます。

目標:

  • 7日以内フォローアップ率95%
  • 1年間の新規顧客成約率20%

KPI:

  • 全体の商談件数:500件
  • 7日以内フォローアップ実施件数:475件
  • 7日以内フォローアップ実施率:95%

KPIは営業活動において重要な指標ですが、過剰に設定されると担当者が何に注力すべきか分からなくなり、結果として効果的なフォローアップが行われない可能性があります。KPIは適切な数に絞り、実行やモニタリングにおいて過度な負担にならないよう配慮しましょう。

3.リソースの割り当て

各営業担当者に具体的な役割を与えます。新規商談を担当する各営業担当者は、見込み客との初回接触後7日以内に直接訪問によるフォローアップを行う必要があります。ただしリソースの割り当てによって特定の担当者に負担が集中し、計画全体のバランスが崩れる可能性があるため注意が必要です。

フォローアップに注力している姿勢を明確にし、一部担当者への負担集中を避けるため、初回フォローアップ専門の担当者を指名するなどの工夫をしても良いでしょう。

リソースが不足している場合には、追加のサポートを計画し、適切なタイミングでのフォローアップができるよう、予備の人員やツールを準備しておく必要があります。

今回のケースであれば、以下のように専門担当者の数を割り出すと良いでしょう。

  • 年間500件のフォローアップを行う想定
  • 年間52週として、週に10件弱のフォローアップを行う
  • 2件弱/日の活動が想定される

2件弱/日であれば1人で対応できそうですが、長期休暇や療養、繁忙期などにフォローアップが集中する可能性等を考慮して、追加のサポート人員を2名指名しておくと安心です。営業部門のリーダーは改めてフォローアップの重要性や担当者の位置付けを伝え、前向きかつ能動的に活動できるようにサポートしましょう。

また、少数の担当者で行う場合、ノウハウやフォローアップへの意識が一部の担当者内で留まり全体に共有されづらい点が懸念されます。事前に共有するスキームを構築しておくと良いでしょう。

情報の共有にはエクセルやスプレッドシートの他に、CRM(顧客関係管理)/SFA(営業支援)ツールなどの利用が考えられます。

4.フォローアップのプロセス設計

フォローアップのプロセスを詳細に設定しましょう。ただし、手順が細かすぎると担当者の負担になり、従わない可能性も考えられます。

今回はフォローアップ担当者として3名を指名しフォローアップ業務を集中させることにしました。フォローアップ担当者のプロセスは、以下のように設計できるでしょう。

  1. 初回接触した営業担当者から見込み客情報を共有してもらう
  2. 営業担当者と打ち合わせ(フォローアップ日時や内容)を確認
  3. 7日以内にフォローアップ実行

フォローアップのアポ取りは初回接触時に行うとスムーズですが、アポをとれない事情があれば改めてアポ取りの連絡をします。

5.計画の可視化と共有

策定したアクションプランを営業部門の担当者全員に共有し、理解を深めます。計画はスプレッドシートやCRM/SFAツールで可視化し、各メンバーが進捗を確認しやすいように工夫しましょう。また、毎週の営業ミーティングで進捗状況を共有し、必要に応じて計画の調整を行います。

計画の可視化が不十分だと、進捗状況の把握が難しくなり、計画と実行にズレが生じる可能性があるうえに問題を把握できません。また、計画が共有されない場合、部門内での情報の非対称性が発生し、計画の効果が低下する恐れがあります。

6.KPIのモニタリング計画

PDCAサイクルは何度も繰り返すことで大きな効果を発揮するプロセスです。KPIのモニタリング方法を計画段階で明確に設定し、Check(評価)・Act(改善)を行いやすい環境を構築しておきましょう。

今回のケースでは、KPIに関わる数値を日々入力し、週初め、あるいは週の終わりに進捗を確認します。担当者と事前に話し合い、週に一度のモニタリングについて認識を合わせておくと良いでしょう。

PDCAサイクルにおいて、Plan(計画)の段階は非常に重要です。できる限り詳細かつ実現可能なレベルで設定し、その後のDo(実行)に移行します。

Do:計画の実行

立てた計画に基づいて行動するフェーズです。アクションプランに基づいて担当者が一貫してフォローアップを行います。Doフェーズでは、以下の点に留意して活動を進めましょう。

進捗のリアルタイムなモニタリング

フォローアップ活動が計画通りに行われているかどうかをリアルタイムでモニタリングします。予定通りに進んでいない箇所や、計画通りに実行できていない場合の原因を早期に特定し、必要に応じて修正を行いましょう。今回のケースでは、以下の方法でモニタリングを行います。

●デイリーレポート(営業日報)

日々の活動結果をエクセルやCRM/SFAツールなどに記録し、組織内の全員に共有します。

項目

内容

フォローアップ対象の商談件数

2件

フォローアップの実施件数

2件

フォローアップの対象見込み客

A産業株式会社

B工業株式会社

面談相手

担当X氏

Y専務

フォローアップまでの日数

3日

2日

継続or打ち切り

継続

打ち切り

次回フォロー予定

8月22日

-

●月次進捗ミーティング

月次ミーティングでは、進捗状況を確認すると同時に、発生した課題に対する解決策を検討しましょう。具体的には、以下の手順で実施します。

●進捗の確認

設定されたKPI(全体の商談件数、7日以内フォローアップ実施件数、7日以内フォローアップ実施率)が目標に対してどの程度達成されているかを確認

商談件数

7日以内フォローアップ件数

7日以内フォローアップ実施率

担当者A

21件

20件

95.2%

担当者B

16件

16件

100.0%

担当者C

9件

8件

88.9%

46件

44件

95.6%

7日以内にフォローアップを行えなかった案件数は2件

行えなかった理由

先方都合(K物流株式会社)

強い拒否反応(A製造株式会社)

対応

K物流株式会社

初回接触から9日目に実施

A製造株式会社

フォロー打ち切り

担当者のフォローアップ活動が計画通りに行われているか、遅延や不足がないかをチェックします。進捗に遅れが生じている場合、その原因を組織内で共有しましょう。

今回のケースでは、K物流株式会社に対して目標から2日遅れてフォローアップを行っていますが、先方都合による日程調整の結果のため大きな問題はないと考えられます。しかしこのようなケースが頻発する場合はアポ取りの方法や日程調整で主導権を握る方法など、ロープレを始めとするトレーニングを検討するべきです。

フォローアップアラートの活用

CRM/SFAツールなどのフォローアップアラート機能を利用しましょう。フォローアップ日数が7日に近づくとアラートが表示されたりメールが届くようにしておけば、失念によるフォローアップ漏れを防げます。

初回接触から3日

初回接触から5日

初回接触から6日

T製造株式会社
K物流株式会社
N工業株式会社
H運輸株式会社
Y機械工業株式会社
T物流株式会社

S製鋼株式会社
K輸送株式会社
H製作所株式会社
T運送株式会社
N精密機器株式会社
C倉庫株式会社
D工業株式会社

K物流株式会社
A製造株式会社

このように初回接触からの日数が表示されると、案件が重なる繁忙期にも優先的にフォローすべき見込み客を容易に選別可能です。また組織のリーダーは各担当者のアラートを把握し、必要に応じて直接声掛けをするなど、フォローアップへの意識を高める工夫をします。

Check:実行結果の評価と分析

Checkフェーズでは、設定した目標やKPIと実際の結果を比較し、成功した点と改善が必要な点を明らかにします。

次のAct(改善)に向けた具体的なインプットを提供するため、正確なデータの収集と分析が重要です。

データ収集

実行したフォローアップ活動に関するすべてのデータを収集します。エクセルやスプレッドシート、CRMシステムや営業管理ツールなどを利用し、検索しやすく新鮮な状態で管理しましょう。

件数

成約件数

成約率

フォローアップを行った案件

521件

125件

24.0%

フォローアップを行わなかった案件

3件

0件

0.0%

524件

125件

24.0%

件数

成約件数

成約率

フォローアップ間隔7日以内の案件

504件

124件

24.6%

フォローアップ間隔8日以上の案件

17件

1件

5.9%

521件

125件

24.0%

担当者

案件数

7日以内フォローアップ件数

7日以内フォローアップ実施率

担当者A

322件

315件

97.8%

担当者B

119件

110件

92.4%

担当者C

83件

79件

95.2%

524件

504件

96.1%

フォローアップ活動のデータを収集したら、事前に設定した目標・KPIと比較、分析します。

目標:

  • 7日以内フォローアップ率95%
  • 1年間の新規顧客成約率20%

KPI:

  • 全体の商談件数:500件
  • 7日以内フォローアップ実施件数:475件
  • 7日以内フォローアップ実施率:95%

成功要因の特定

目標を達成している要素を特定し、その要因を分析します。

項目

目標

実績

達成率

7日以内フォローアップ率

95.0%

96.1%

101.1%

新規顧客成約率

20.0%

24.0%

120.0%

7日以内のフォローアップ率は目標の95%を上回り、96.1%です。計画通りにフォローアップが徹底されていることを示しており、フォローアップのタイミングに関しては、目標を十分にクリアしています。

また、新規顧客成約率も目標の20%を大幅に超えて24.0%に達しています。加えて初回接触から8日以上のフォローアップに関しては成約率が5.8%と低い点も重要です。

フォローアップのタイミングと成約率との因果関係は、前期データとの比較によっても認められ、来期に向けた良いデータを蓄積できています。

担当者を3名指名して専門部隊を結成したことも評価できる点です。案件数は担当者Aに偏っているものの、BやCもフォローアップを行っており、十分に活動し役割を果たしたと評価できます。

課題の特定

目標未達成の部分や期待通りの成果が出なかった要因を特定し、分析します。

ここでは以下の点を課題と認識し、原因について考察する必要があるでしょう。

  • フォローアップを行わなかった案件:3件
  • フォローアップ間隔8日以上の案件:17件
  • 担当者Bの7日以内フォローアップ率:92.4%

課題の原因を特定するため、担当者から報告を受けます。

●フォローアップを行わなかった案件(3件)

「当時、他の重要案件に集中していたため、この案件を後回しにしてしまった。優先順位をつける際に判断ミスがあった」

「顧客からのレスポンスが遅れたため、フォローアップのタイミングを逃してしまった。別の案件を優先してしまい、結果的にフォローアップができなかった」

「先方から強い拒否反応があり、アポが取れずフォローアップができなかった。

●フォローアップ間隔8日以上の案件(17件)

「急な出張が重なってしまい、フォローアップを予定通り行えなかった。他の担当者も予定が入っており対応できなかった」

「顧客とのスケジュール調整が難航し、訪問が予定より遅れてしまった。調整に時間がかかる場合、直接訪問以外のフォローアップも検討すべき」

「繁忙期に優先度が低いと判断した案件が後回しになり、8日以上が経過してしまった」

●担当者Bの7日以内フォローアップ率(92.4%)

「複数の案件を同時に進める中で、フォローアップの優先順位付けが難しく、一部の案件でフォローアップが遅れた」

「フォローアップに必要な資料の準備が間に合わず、対応が遅れた。資料作成にもっと時間を確保する必要があると感じた」

「他のチームとの連携が上手くいかず、フォローアップのタイミングが遅れた。社内のコミュニケーションを改善する必要がある」

以上のフィードバックから、現状のフォローアップ体制にある課題と解決策をまとめます。

課題

具体例

解決策

優先順位の問題

繁忙期には同レベルのアラートが複数発生し、優先順位を付けられない

優先順位の可視化とタスク管理の強化
業務の分担や再配分

出張やトラブル対応

急なトラブル対応に時間を取られ、フォローアップが遅れる

リスク管理計画の策定
トラブル対応のフロー整備

効率性の問題

資料作成に時間がかかり、フォローアップのタイミングが遅れる

資料テンプレートの導入
自動化ツールの活用

社内連携の問題

他部署との連携がとれず、フォローアップの準備が整わない

サポート体制の強化
他部署への理解要請

先方都合による日程調整の結果としてアポが延びてしまうのはやむを得ない部分もあります。しかしこのようなケースが頻発する場合はアポ取りの方法や日程調整で主導権を握る方法など、ロープレを始めとするトレーニングを検討するべきです。

また、強い拒否反応によりフォローアップに結び付けられないケースもありました。営業活動においては珍しくないケースですが、見込み客を失わないためのコミュニケーションやアポ取りのタイミング、見込み客を追加する活動について常にブラッシュアップしましょう。

データの可視化と共有

データは可能な限り視覚的に分かりやすく提示し、パッと見て効果を認識できるよう工夫しましょう。特に、データを比較する際は棒グラフなどを利用すると分かりやすく表現できます。

データの可視化と共有

年間を通した案件数はほぼ変わりませんが、フォローアップ間隔7日以内の案件数が大きく伸びていることがひと目でわかり、成果を実感できます。また、フォローアップを行わなかった案件数が著しく減少している点も評価しやすいポイントです。

データの可視化と共有

全体の成約率が飛躍的に伸びています。一方で、7日以内にフォローアップを行った案件の成約率は昨期と変わりません。つまり、成約率向上のために立てた仮説が正しいことを認識できます。

各担当者のパフォーマンス

個人のデータを共有する際は、担当者の心情や個別の立場などに配慮が必要です。過剰に競争心を煽ると担当者間で序列ができてしまい、協力体制に支障を来す可能性が懸念されます。各担当者と密にコミュニケーションを取り、今期の活動を評価しましょう。

Act:改善策の策定と次の行動へのフィードバック

PDCAサイクルの最終フェーズであるActは、単なる締めくくりではなく、次のサイクルのスタート地点です。データドリブンセールスでは、Checkフェーズで得られたデータやインサイトを基に新たな仮説を再検討し、改善策を具体化して次の行動に反映させるプロセスが求められます。

例えば、今回のサイクルで実行したフォローアップの間隔短縮が成約率向上に寄与したと確認できた場合、次の仮説として「フォローアップ内容のパーソナライズ化が成約率にさらに大きな影響を与えるのではないか」「フォローアップ間隔を更に短縮したら成約率も向上するのではないか」という新たな仮説が考えられます。

今回のサイクルで得た課題とそれに対する改善策、次のサイクルに向けた新しい仮説に分けて、新しいアクションプランへフィードバックを与えましょう。

今サイクルを受けた改善策

今回のサイクルで生じた課題と解決策を改めて確認します。

課題

具体例

解決策

優先順位の問題

繁忙期には同レベルのアラートが複数発生し、優先順位をつけられない

優先順位の可視化とタスク管理の強化
業務の分担や再配分

出張やトラブル対応

急なトラブル対応に時間を取られ、フォローアップが遅れる

リスク管理計画の策定
トラブル対応のフロー整備

効率性の問題

資料作成に時間がかかり、フォローアップのタイミングが遅れる

資料テンプレートの導入
自動化ツールの活用

社内連携の問題

他部署との連携がとれず、フォローアップの準備が整わない

サポート体制の強化
他部署への理解要請

各課題に対して、解決策を現場レベルに落とし込みます。

  • 優先順位の問題

    1. 優先順位を数値で評価し、リアルタイムで表示するダッシュボードを導入する。
    2. 定期的に組織全体で優先順位の確認を行い、必要に応じてタスクの再割り当てを実施する。
  • 出張やトラブル対応

    1. 出張時でも対応可能なモバイルデバイスやリモートアクセスの環境を整備する。
    2. トラブル発生時に対応するための標準的な手順書(SOP)を作成する。
    3. 必要に応じてフォローアップ人員の補充を検討する。
  • 効率性の問題

    1. 業界別、面談相手の役職別に必要な資料のテンプレートを作成し標準化する。
    2. 資料作成を自動化するツールを導入し、作業時間を短縮。
  • 社内連携の問題

    1. 他部署との定期的なミーティングを設定し、フォローアップ期間短縮の重要性を共有。
    2. 連携に必要な情報を他部署と迅速に共有できるよう、社内共有ツールを活用する。
    3. 他部署からのサポートを円滑に得るためのSLA(サービスレベルアグリーメント)を策定する。

また、今サイクルでは担当者Bのフォローアップ率が目標に達していませんでした。担当者間におけるフォローアップ間隔の均質化を図るために、定期的なトレーニングの導入やケーススタディの実施、担当者の入れ替えなども検討の余地があります。

次サイクルに向けた新たな仮説の検討

今回の仮説検証を受けて、フォローアップの重要性を認識できました。次のサイクルに向け、データを確認して新たな仮説を検討します。

仮説1.「フォローアップ間隔を更に短縮したら成約率も向上するのではないか」

関連するデータは、初回フォローアップまでの日数と成約率です。今サイクルで蓄積したデータを検索し、グラフ化します。

初回フォローアップまでの間隔と成約率

以上のデータから、次サイクルの仮説として「初回フォローアップまでの間隔は5日がベストであり、成約率は27%になる」と設定できます。今サイクルよりもフォロー間隔が短縮されることを考慮して、担当者を補充する必要があるでしょう。リソースの分配やモニタリング、KPIについてPlanフェーズで詳細に設定します。

仮説2.「フォローアップをパーソナライズすれば成約率は向上する」

今サイクルではフォローアップの内容に言及しませんでしたが、初回フォローから見込み客の属性に合わせて資料を提示できれば、ニーズにマッチした提案ができ成約率が向上する可能性があります。

この仮説を検証するために顧客データを確認し、パーソナライズする属性とパーソナライズしない属性を明確に分けましょう。これによって、データを比較し仮説を検証できます。

その他にも、「初回フォローアップの面談相手は役員よりも経理担当者の方が成約率が良い」「初回フォローアップからクロージングまでの日数が20日以内なら成約率は30%になる」などの仮説も考えられます。

ビジネスインパクトやコスト、リスクなどを考慮し優先的に検証すべき仮説を選択すると良いでしょう。

PDCAサイクルでよくある失敗事例と対策

PDCAサイクルは、営業活動の改善や効率化を図る上で有効な手法ですが、適切に運用されなければ期待通りの成果を上げられません。

ここでは、データドリブンセールスに特化したPDCAサイクルの失敗事例と対策について解説します。

計画の不備による実行の停滞

例えば、ソフトウェア販売会社の営業部門は、顧客フォローアップの間隔を短縮することで成約率が向上するという仮説を立てましたが、「どのタイミングで」「誰が」「どのような内容のフォローアップを」行うかといった具体的なアクションプランを定めないままDoフェーズに移行してしまいました。また、その仮説を立てるに至った背景や根拠となるデータも共有できていないため、担当者の意識は以前と変わっていません。

このようなケースでは、営業担当者が個々の判断で動き、フォローアップの内容や間隔にばらつきが生じやすくなります。その結果、顧客からの反応は悪くなり、成約率が向上しないだけでなく、次サイクルにつながるデータの収集もできないため、PDCAサイクルを循環させることができません。

対策

まずは仮説を立てる根拠となったデータを営業部門全員に共有し、フォローアップの重要性について共通認識を図ります。また、分析をもとに、フォローアップの最適なタイミングや内容などを明確にし、営業担当者全員に統一した指示を出しましょう。

例えば、初回訪問後3日以内に見積書を送付し、その後7日以内にフォローアップの電話を行う、といった具体的なステップを定めることで、計画の不備による停滞を防ぎ、組織的な一貫した行動が可能です。

一貫した行動は顧客から信頼される要因になりますし、次サイクルに向けた活動データを蓄積できます。

実行段階でのリソース不足

例えば、小売業向けに在庫管理と販売分析のクラウドソリューションを提供している企業ではデータ分析の結果、新規顧客開拓のために見込み客への訪問数を増やす必要があると判断しました。しかし担当者の人数が不足しており、1人あたりの訪問件数が増えすぎてしまい、質の高いフォローアップが行えなくなる事態に陥りました。これでは、訪問件数は増やせますが成約率の向上は望めません。

対策

計画段階でリソースを確認できておらず、実行可能なアクションプランを立てていなかった点が問題です。Planフェーズでは、目標やKPI、アクションプラン、代替リソースなど設定すべき項目が多いですが、すべてにおいて必ずデータを根拠に計画を立てましょう。やる気や希望的な観測を基にアクションプランを立ててしまうと、実行できずに途中で破綻する可能性が高いため注意が必要です。

このケースにおいては、部門全体の人数、期間を通した見込み客の発生数、担当者一人が可能な一日の訪問件数を把握した上で、担当者に割り当てる訪問件数、トラブルや療養などサポートが必要になったときの代替リソースなどを設定する必要があります。

組織内でのコミュニケーション不足

例えば、医療機器メーカー向けにデジタル記録管理システムを提供しているソフトウェア会社では、営業部門が新規顧客の獲得に向けて新たなキャンペーンを実施しました。しかし、営業部門とマーケティング部門の間でデータの共有が不十分だったため、キャンペーンの効果が十分に測定されず、最終的な成約率の低下を招きました。営業担当者が現場で得た見込み客のフィードバックがマーケティングチームに伝わらず、実施するキャンペーンに反映されなかったことが原因です。

対策

他部門と連携して施策を進めたり、コンテンツを制作・提供したりする場合、データ共有の仕組みの構築や強化が必要です。

例えば、CRMシステムを活用して、営業担当者が取得したデータをリアルタイムで共有し、マーケティング部門がそのデータを基に次の施策を練る、といった連携が考えられます。また、定期的な部門間ミーティングを開催し、データに基づいた戦略のすり合わせを行うのも効果的です。

評価と分析の曖昧さ

例えば、あるソフトウェアの販売企業は見込み客にフォローアップメールを送ることで成約率が上がると仮説を立て、PDCAサイクルを回しました。しかしCheckフェーズでのデータ分析が不十分で、フォローアップメールの内容やタイミングが成約率にどの程度影響を与えているのかが正確に測定できませんでした。このようなケースでは、仮説の検証が不十分となり、次のアクションが曖昧になってしまいます。

対策

Checkフェーズでは、定量的なデータを用いた評価が重要です。例えば、フォローアップメールの開封率、クリック率、返信率などの指標を設定し、それぞれの結果を細かく分析することで、仮説が正しいかどうかを判断できます。

メールの文面や送信間隔、送信時間帯、送信回数に応じた訴求内容なども検討の余地があるでしょう。もし評価が曖昧であることに気付いたなら、次のサイクルに進む前にデータ収集や分析方法を見直し、精度の高いデータを基にした改善策を立案するべきです。不十分なデータや曖昧な評価を根拠にした行動が改善につながる可能性は著しく低いといえます。

改善の繰り返しによる疲弊とモチベーション低下

例えば、ある物販業向けのPOSシステム提供会社では、PDCAサイクルを回し続けることで営業活動を改善しようとしましたが、頻繁な変更や新しい施策の導入が重なり、長期的なプロジェクトに担当者が疲弊してしまいました。

特に、改善策がすぐに成果に結びつかない場合、チーム内で「また変更か」「いつ成果が出るのか」といった不満が募り、モチベーションが低下してしまうケースは少なくありません。

対策

長期的な改善策の実施にあたっては、小さな成功を評価する仕組みが大切です。例えば、改善策やプロジェクトを小さな段階に分け、それぞれの達成時に評価を行うマイルストーンや週次のフィードバックセッションを設定し、短期間で担当者の活動を称賛します。あるいは組織全体の進捗を可視化するためのダッシュボードや進捗トラッカーを使用するのも効果的です。達成した目標や進捗率を一目で確認できるため、プロジェクトの途中でも達成感を共有できます。

このような取り組みは、担当者のポジティブな態度や組織内の活気を醸成できるでしょう。

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