データの価値
データは現代の営業活動において最も価値のある資産の一つです。顧客データだけでなく、市場動向、営業進捗、KPI、在庫状況などのデータすべてが、営業施策の計画と実行に不可欠といえます。
これらのデータを統合して活用すれば、顧客ニーズを正確に把握し、競合優位性を保ち、効率的かつ効果的な営業活動を展開できるでしょう。また、営業活動が実績に結び付く経験を通じて担当者は自信を持ち、継続的に高いレベルの活動を維持できる点も組織にとって大きなメリットです。
本レッスンでは、「Lesson 1 データドリブンセールスとは」で触れた営業活動の基盤となるデータの価値とその重要性を深堀りし、効率的に収集・整理する実践的な方法や注意点を学びます。日々の営業活動においてデータを最大限に活用し、効率よく業績を向上させるプロセスを身に付けましょう。
データの基本
定性データも、定量データも、データは単なる記録ではなく、営業活動を成功に導くための戦略的なツールです。データを積極的に活用することで、組織のパフォーマンスを最大限に引き出すことに役立ちます。
営業活動において収集・管理・活用すべき基本的なデータを確認しておきましょう。
データ | データの例 | 説明 |
顧客データ |
| 顧客の属性や行動に関するデータ。営業・マーケティングデータと組み合わせて分析することで、効果的な営業活動に役立つ。 |
営業・マーケティングデータ |
| 営業・マーケティング活動で得られるデータ。戦略立案と競争優位性の確保に重要。営業活動の効果を評価し、改善点を特定するために役立つ。 |
コストデータ |
| ROI(投資収益率)の計算や効率的なリソース配分に役立つ。 |
データの活用によって営業活動の意思決定が迅速になる上に、経験や勘に頼らないエビデンスを用いた説明によって現場の営業担当者の理解を得やすくなります。また、プロモーションやキャンペーンなどの打ち手の効果測定が容易になるため、効果的かつ効率的な施策にリソースを集中でき、ROIの向上も期待できるでしょう。
加えて、顧客データの管理によって適切なタイミングでフォローアップできるため、顧客満足度が向上し、リピート契約やクロスセル・アップセルにつながる機会を逃しません。
一方、データ管理が不十分だと以下のようなリスクが生じます。データの適切な管理は営業部門全体のパフォーマンス向上に不可欠です。
営業機会の損失:正確なデータがないため、顧客のニーズを見逃し、商談やクロスセル・アップセルの機会を逃す。
顧客関係の悪化: 古い情報や誤情報に基づく対応が顧客の不満を招き、信頼を損なう可能性がある。
効率低下: データの重複や誤情報により、営業部門が無駄な作業を強いられ、生産性が下がる。
担当者のモチベーション低下: 一貫性のない活動方針や実績の上がらない活動に疲弊する。
データの収集
データドリブンセールスの実践には正確で信頼性の高いデータの収集が不可欠です。データの継続的な更新によって顧客ニーズや市場動向をリアルタイムで把握し、営業活動に反映させられます。
さまざまなデータがありますが、自社で直接収集するか、調査会社などが集めたデータを活用するか、の大きく2つに分けられます。さらに直接収集する場合、レビューなど顧客に入力してもらうものがある一方、商談ステージや解約数など自社で入力したり計算したりするものがあります。
データ | データの例 | 分類 | 例 |
顧客データ | 連絡先 | 直接収集 | 自社Webサイト |
間接収集 | 外部Webサイト(出品モール・メディア) | ||
営業・マーケティングデータ | 市場シェア | 直接収集 | 自社調査・集計 |
間接収集 | 外部調査・集計 | ||
コストデータ | 人件費 | 直接収集 | 営業担当者 |
データの整理と管理
データの整理と管理は、営業活動において正確で効率的な意思決定を行うために不可欠です。
整理されたデータは必要な情報を迅速に見つけ出し、適切なアプローチを選択するための基盤となります。また正確に管理されたデータは営業活動におけるミスを減らし、顧客関係の強化に寄与し、営業活動全体の信頼性と効率性を高めます。
データドリブンセールスを実践するには、大量のデータを扱うことになるため、紙の営業日報のみでは役立てられません。簡易的な管理にはエクセルなどの表計算ソフトのファイルを使うこともありますが、CRM(顧客関係管理)ツールのようなデータベースを使って管理することが現実的でしょう。
エクセルやスプレッドシート
データの簡易的な管理には、エクセルやスプレッドシートが利用されます。特に、中小企業やデータの扱いに慣れていない営業組織にとっては、専門的なデータベースを導入する前のステップとして最適です。
フィルター機能やピボットテーブル、パワークエリなどを活用できればデータの整理・管理や活用がスムーズになるでしょう。ただし、企業が成長するにつれて扱うデータ量も増加する限界があります。
CRMなどのデータベース
CRMや基幹システム、ERP(Enterprise Resources Planning)システムなどは、ビジネスに関するあらゆるデータを一元管理するために存在するデータベースです。主に、自社で独自に開発するか、ベンダーが提供するシステムを利用するかという選択肢がありますが、独自開発の場合はセキュリティ対策も含めて大きなランニングコストがかかるため、ベンダーが提供するクラウドシステムを利用する企業が増えています。
項目 | クラウド | オンプレミス |
初期導入コスト | 低い初期コストで導入可能 | 高額な初期導入コストが必要 |
スケーラビリティと柔軟性 | リソースの即時拡張・縮小が可能 | 拡張にはコストと時間がかかり、柔軟性に限界がある |
アクセス利便性 | インターネット経由でどこからでもアクセス可能 | 物理的なアクセスが必要、社内ネットワークに依存 |
メンテナンス | 自動でアップデート・メンテナンスが提供される | メンテナンスやアップデートは自社で行う必要がある |
災害復旧 | データの冗長化とバックアップが標準で提供される | 災害発生時にデータ消失のリスクが高い |
ビジネスデータ専用のデータベースであれば、データの整理・管理を前提に設計されています。
データベース内の不正確、重複、または不要なデータを取り除くデータクレンジングを行いやすい設計になっていたり、変更履歴の自動保存や権限のコントロールによって不用意な変更を防いでくれたりします。
データセキュリティ
表計算ソフトを使う場合でも、専用のデータベースを使う場合でも、データの保護とセキュリティ対策は避けて通れません。顧客データは企業の貴重な資産であり、その流出は企業の信頼性を大きく損なうだけでなく、法的な問題や多額の損害賠償に発展するリスクも伴います。そのため、データセキュリティの確保は、営業活動にデータを活かす前の大前提であり、顧客関係の維持と企業の存続に直結する重要な要素と認識しましょう。
セキュリティの確保のために、以下の項目は最低限抑えるべきポイントです。
- アクセス制御
▷データへのアクセス権限を適切に設定し、必要な情報にのみ特定のユーザーがアクセスできるようにする。 - データ暗号化
▷転送時や保存時にデータを暗号化し、万が一データが外部に漏れた場合でも情報が悪用されるリスクを低減する。 - 定期的なバックアップ
▷安全な場所に保管し必要な時に迅速に復旧できる体制を整え、システム障害やデータ破損に備える。 - 監査とモニタリング
▷定期的にセキュリティ監査を行い、システムの脆弱性をチェックし、必要に応じて改善する。データベースの使用状況を常に監視し、異常が発生した際には迅速に対応できるようにする。 - 社員教育
▷社員一人ひとりがセキュリティ意識を持つために、定期的なトレーニングを実施し、データ保護の重要性や具体的な対策について教育する。
このような対策によって企業はデータを適切に保護し、信頼性を維持しながら安全かつ効率的な営業活動を展開できます。
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