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データ分析で売上を伸ばす4つのステップ

Lesson 1~2では、データドリブンセールスの概要や顧客データの管理方法を学びました。このLesson 3では、ソフトウェアの営業を例にデータドリブンセールスにおける分析から将来予測までを具体的に学びます。営業部門責任者の視点で4つのステップを理解しましょう。

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データ分析で売上を伸ばす4つのステップ

売上改善のためのデータ分析を行う2つの軸

データドリブンセールスで成果を出すには「何を分析すべきか?」を整理することが重要です。膨大なデータをもとに、やみくもに分析をしても時間の無駄になってしまいます。

売上改善のためのデータ分析には、主に「商品力改善のための分析」と「販売力改善のための分析」の2軸があります。それぞれ重要な要素ですが、営業部門が取り組むべき分析は「販売力改善のための分析」です。

【分析軸①】商品力改善のための分析

成約までの営業プロセスを分析すると、「商品力の改善」が課題として現れる場合があります。

例えば、下記のように商品ごとの営業プロセスを分析し、極端に成約率が低い商品(下記の例なら商品B)があれば、営業より商品力に課題がある可能性が高いといえます。

【商品A~Cの営業プロセスKPI比較】

商品

リードへの接触率

顧客接触からの提案率

提案からの成約率

商品A

5%

65%

20%

商品B

7%

70%

5%

商品C

4%

62%

25%

ただし、商品力改善は商品開発部門や製造部門の協力を得なければならないケースも多く、改善までには時間がかかります。すぐに売上改善に結び付けたいなら、商品力改善は社内提案にとどめ、営業力改善に向けた分析に集中することが重要です。

【分析軸②】営業力改善のための分析

データドリブンセールスで重要なのは、営業力改善のための分析です。顧客別のデータや営業KPIを綿密に分析し、どこに課題があるのかプロセス別や営業担当者別で細かく分析しましょう。

【営業力改善に向けた分析例】

  • ターゲット分析(顧客選定にミスはないか?)
  • 営業KPI分析(訪問数、提案率、成約率などプロセス別の課題はどこか?)
  • 担当者別分析(営業担当者別の課題はないか?)

特に営業KPIをプロセスごとに分解していくと、改善の道筋が見えてきます。

データドリブンセールスで成果を上げるための5つのポイント

データドリブンセールスにおける、データ分析から売上改善までの流れは以下の通りです。

【データドリブンセールスで成果を上げるための5つのポイント】

  1. 売上改善のための分析課題(テーマ)を洗い出す
  2. データ分析可能な課題(テーマ)に絞る
  3. 分析~仮説を立てて将来を予測する
  4. 課題解決のアクションや施策を検討する
  5. 分析結果を現場で生かしPDCAを回す

売上改善のための分析課題(テーマ)を洗い出す

データドリブンセールスで最初にやるべきことは、売上改善のための課題抽出、つまり「分析テーマの洗い出し」です。無計画にデータ分析を始めても、労力と時間の無駄遣いになってしまいます。

分析テーマの洗い出しをする段階では、データの有無や分析方法など「分析が成功するか否か?」を考える必要はありません。営業現場で起こっている問題点や困りごとを挙げ、その原因となっている課題は何か整理していきましょう。

例えば、営業責任者が取り組める分析テーマとして、下記のようなテーマがあるかもしれません。課題別で目指すべきKGI(Key Goal Indicator: 経営目標達成指標)との差を数値化していくと、分析テーマの優先順位を付けるときに役立ちます。

【売上改善のための分析課題(テーマ)例】

問題点や困っていること

想定される課題

商品別 売上目標達成率のバラつき(商品Aより商品Bの売上目標達成率が極端に低い)

  • 顧客ニーズと乖離している
  • 商品の競争力が乏しい
  • 営業担当者の知識、経験が足りない
  • 営業ツールが整備されていない

顧客別LTV(※)の差(顧客Aと顧客Bでは、顧客BのLTVが極端に低い)

  • 顧客ターゲットが間違っている
  • カスタマーサポート体制が充実していない
  • 商品の競争力が乏しい

季節別 営業実績の低迷(毎年、8月と2月の営業達成率が低い)

  • 季節戦略の見直しができていない
  • 時期によって営業担当者のモチベーションにバラつきがある
  • 商品の競争力が乏しい

営業担当者別 営業実績の低迷(入社3年未満の新人~中堅層の実績が低迷しておりボトムアップができていない)

  • ナレッジの共有が足りない
  • トレーニング体制に課題がある
  • 営業責任者の監督に問題がある

営業KPI別の問題(成約率は高いが訪問数が圧倒的に少ない。提案率は高いが成約率が極端に低いなど)

  • 担当顧客数が足りない
  • 営業担当者のKPIが指標に足りていない
  • 営業担当者のスキル、知識が足りない
  • トレーニング体制に課題がある

※LTV(顧客生涯価値)……受注から解約に至るまで顧客から得られる利益のこと。高利益×長期間利用継続の両方が成立すると高LTVを実現できる

データ分析可能な課題(テーマ)に絞る

テーマを洗い出したら、分析すべきテーマを絞り込んでいきます。テーマが多い場合は、次のような流れで分析テーマを絞り込んでいくと良いでしょう。

【分析テーマの絞り込み方】

  • STEP①……テーマ別詳細シートを作成。テーマと関連データの有無や精度、分析可否などをまとめる
  • STEP②……分析可能なテーマに絞り、マトリクス表に落とし込む
  • STEP③……売上改善にインパクトの大きいテーマ、かつ分析が容易なテーマを整理し、再度テーマ別詳細シートの優先順位欄を記入する

テーマ別詳細シートの例

分析テーマ

目標

現状

データ有無

解決の可能性

改善インパクト

優先順位

営業KPIの指標に足りていない

月間提案数目標は40件

月間提案数実績は30件

有り※SFA(営業支援ツール)で取得可能

営業担当者のモチベーションが低い

常にモチベーションが高い

月初のモチベーションが低い

無し

ナレッジの共有不足

規定のSFA営業ツール使用率100%

独自のツールや資料を利用している

在り※SFAで取得可能

分析テーマが絞り込めたら、整理した内容に基づき下記のようなマトリクス表に落とし込んでいきます。データドリブンセールスではじめに取り組むべきなのは「売上改善にインパクトがあるテーマ」かつ「分析が容易なテーマ」です。

分析に時間がかかるものや、改善しても売上改善への影響が少ないテーマは後回しにしましょう。

データ分析のテーマの絞り込み

分析する、仮説を立てて将来を予測する

分析可能なテーマが決まったら、管理データや現状を見ながら分析し可視化していきます。分析には定性分析と定量分析があり、データドリブンセールスでは定量分析を行います。ただ「営業担当者のモチベーションが低い」「組織課題がある」など、定性分析と並行しながら進めることも重要です。

データを可視化するには「記述統計」「セグメンテーション分析」「相関分析」などの手法を使います。優先順位を決めて分析結果を可視化していくと、顧客や商品・営業プロセスごとの傾向が見えてくるでしょう。具体的な分析手法については、このレッスン後半の「データ分析<将来予測まで具体的な4つのステップ>」で学びます。

傾向が見えてきたら、次に改善までの仮説を立てて将来予測をしていきましょう。ただし、仮説を立てる際は現実的な範囲にとどめることが重要です。「絵に描いた餅」にならないよう、現場の意見もヒアリングしながら実現可能な計画を立てましょう。

課題解決の具体的なアクションや施策を検討する

データ分析~仮説~将来予測ができたら、具体的なアクションや施策検討を始めます。例えば、営業プロセスで訪問数の低迷が見えるなら、顧客セグメントの見直しや営業担当者の行動管理などのアクションが必要となるでしょう。

【営業における課題と具体的なアクションの例】

課題

具体的なアクション

顧客ターゲットがズレている

①セグメンテーション分析をしてターゲットを見直す
②新規顧客層のマーケティングリサーチを行う
③新規顧客を開拓する

営業プロセスのKPIが指標に達していない

①プロセス別、担当者別のKPI分析をして取り組むべき課題を明確にする
②課題別で原因を究明する(スキル不足、行動量不足の本質的課題を洗い出す)
③トレーニング計画に基づく支援を行う

ナレッジの共有不足

①ナレッジ共有状況を分析し全員の知識レベルを引き上げる
②原因別対策を検討する(SFAの有効活用、資料の刷新など)
③対策別に具体的に支援する(個別営業トレーニングなど)

トレーニング時間が足らない、支援体制が確立されていない

①担当者別、営業稼働時間を分析する
②トレーニング時間捻出のため行動管理をする
③経営層や他部署を巻き込んだ支援体制を確立する

施策検討についてはLesson 4でも詳しく学びます。

分析結果を現場で活かしPDCAを回す

データドリブンセールスで成果を上げる最後のポイントは、分析結果を現場で活かしPDCAを回すことです。

机上で考えた施策や将来予測を現場で活用し、その結果を再度分析する流れを繰り返す必要があります。データドリブンセールスでありがちなミスは「一度限りの分析で終わらせてしまうこと」です。

データ分析を基に持続的成長を遂げるためには、少なくとも6カ月~1年程度、分析と現場活用を繰り返しましょう。データドリブンな仮説を実際の営業活動に適用し、その結果をPDCAサイクルで検証し改善するプロセスについては、Lesson 5で詳しく学びます。

データ分析<将来予測まで具体的な4つのステップ>

ここからは、人事系ソフトウェアの販売を例に、具体的なデータ分析の方法や将来予測の方法を見ていきます。

【データドリブンセールス5つの流れ】

STEP①記述統計を使いセグメントごとで分析・可視化

STEP②相関分析で課題を抽出

STEP③仮説を立てて将来見込みを予測

STEP④現場での活用とPDCA

STEP①記述統計を使いセグメントごとで分析・可視化

記述統計とは、実際のデータを整理して傾向などを分かりやすくまとめる統計手法のことです。また、セグメンテーション分析とは、ターゲットを絞り詳しくデータ分析することを意味します。今回の事例「人事系ソフトウェアの販売」なら、顧客別や営業担当者別など、さまざまなセグメンテーション分析ができます。

平均値や分散値などを使って分析していくのが一般的ですが、ここでは分析するセグメントを「顧客」に限定した例を見ていきます。

分析のサンプルデータ(Excel)はこちら

下記は、人事系ソフトウェアの販売先顧客のデータを分析した表です。業種や従業員別で下記の要素を分析しています。

  • 受注顧客数と年間受注額
  • 顧客あたりの年間売上
  • 四半期ごとの年間売上動向
販売先顧客のデータを分析した表

上記の例で顧客を分析していくと下記のような結果が得られます。

  • どの業種も、従業員100人以上の顧客数が多い
  • 従業員規模で見ると、1顧客あたりの売上規模が大きいのも従業員100人以上の企業である
  • 四半期ごとの年間売上動向を見ると、次期予算が決まる第3四半期の受注額が大きい

これらの分析結果から、下記のような仮説が立てられるでしょう。

  • 売上を伸ばすなら、改善インパクトが大きい従業員100人以上の企業を対象にする
  • 従業員50人以下の顧客は顧客あたり売上も低い。商品組成などの改善が必要かもしれない
  • 四半期ごとの売上動向を見ると第1四半期の受注額が低い。年間受注額を安定させるには、新規受注額が落ち込む時期にアップセルやクロスセルに注力できるかもしれない

STEP②相関分析で課題を抽出

セグメントごとに記述分析ができたら、次に相関分析で課題を深掘りしましょう。今回の例では「顧客分析」の後で「営業担当者別分析」を行い、相関分析をしてみます。

下記の表は、左側に営業担当者別のパフォーマンス分析を、右側に顧客別分析を並べ、それぞれの相関を見たものです。さきほど分析した顧客データに加え、営業担当者別や業種別でLTVが分かるようにしています。

営業担当者別分析

上記の通り「営業担当者×顧客」のパフォーマンスや各種KPIを分析すると、次のような分析結果が得られます。

  • 売上未達の担当者A,C,Eの月間訪問数は、達成者と比較して20~30件少ない
  • 概ね営業担当者の経験年数と売上達成率は比例している
  • 経験10年のベテラン担当者Aの成約率が突出して高い
  • 新人Aと中堅Dは成約率こそ平均だがLTVが突出して高い

これらの相関分析ができると、さらに次のようなアクションが必要になってきます。

  • 低迷者の月間訪問数が低い理由を調査する必要がある(顧客ターゲットが悪いのか?行動管理ができていないのか?)など
  • 経験年数が長いベテラン社員のナレッジを共有したり新人トレーニングを強化したりする必要がある
  • LTVが高い新人Aと中堅Dの成約率を10%上げれば売上インパクトは大きく改善できる

STEP③仮説を立てて将来見込みを予測

売上改善のために見直すべき顧客ターゲットや、担当者別や営業プロセスごとの課題が分析できたら、それらを表や図に落とし込み仮説を立てていきましょう。

仮説を立てて将来見込みを予測する段階では、必ず現実的な改善プロセスを計画します。また、段階的に改善できるように「1カ月後~3カ月後」まで、細かく改善目標を設定することも重要です。

単なる数字遊びにならないように、それぞれの改善プロセス目標とあわせて具体的な施策も検討していきましょう。例えば「訪問数の改善」を目標にしたなら、顧客ターゲットの見直しはもちろん、日々のSFAによる営業担当者の行動管理も必要になってきます。

仮説を立てて将来見込みを予測

STEP④現場での活用とPDCA

データ分析~仮説~将来予測ができたら、いよいよ現場での活用とPDCAサイクルを回す段階に入ります。SFAやCRM(顧客関係管理)ツールを日々活用し、顧客動向や営業担当者のデータ管理を綿密に行って計画通りに進捗しているかを確認します。

よくありがちなのが「営業担当がSFAやCRMなどのシステムを活用せず属人的な営業に固守するケース」です。こうなるとデータドリブンセールスに有効なデータが集まらずPDCAも意味がなくなってしまいます。

分析結果を現場で生かしPDCAを回すには、現場での最新のデータを蓄積していく必要があります。管理データの精度を高めていくためにも、営業管理者はベテラン層や新人層を問わず、SFAやCRMの利用状況を綿密にチェックする必要があります。

データドリブンセールスで売上を上げるために重要な3つのポイント

データドリブンセールスで成果を上げるには、下記3つのポイントをおさえておくことが重要です。

  1. データ分析は継続することが重要
  2. 現場での活用をイメージしながら分析
  3. 他部署や経営層の協力が必要

データ分析は継続することが重要

一度の分析で、データドリブンセールスが成功することはありません。分析したデータの精度が悪かったり仮説や施策の再検討が必要になるなど、データドリブンセールスは一朝一夕では成し得ないものと覚えておきましょう。

データ分析をもとに売上を上げるなら、最低でも6カ月、一般的には1年以上継続するのが理想です。継続して取り組むためにも、データドリブンセールスの責任部署や責任者を明確にしておくことも重要なポイントです。

現場での活用をイメージしながら分析

データ分析を突き詰めると「分析すること」が目的になりがちです。「何を分析すれば現場の改善に役立つのか?」「どう改善するのが現実的なのか?」など、机上の空論にならないよう注意しましょう。

営業責任者や分析担当者が立てた仮説や施策が、現場の状況とマッチしているか、会議などを通じて定期的に確認することも重要です。

データドリブンセールスを成功させるにはDX教育や他部署の協力が必要

データドリブンセールスは、分析担当者だけが躍起になっても成果は出ません。仮説を分析しながら売上改善目標を達成させるには、営業部門以外の部署協力も必要です。

全社を挙げてデータドリブンセールスに取り組んで成果を出したいなら、社内全員のDX教育も必要になってくるでしょう。特に新規データの蓄積においては、全営業担当者の協力が必要です。属人的な営業になりがちなベテラン層や、営業管理が身に付いていない新人層は特に注意しておきましょう。

また、データドリブンセールスで責任を持つべきなのは経営層です。営業だけが責任を持つのではなく、全社的に取り組めるよう経営層を巻き込んで分析結果を共有していく姿勢も重要です。

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