活動の評価・改善に必要なデータを生み出す環境を構築
「Lesson 5 カスタマーサクセスの売上伸び率を計測」で紹介したように、カスタマーサクセスの活動を分析し評価するためには、適切な指標設定と分析環境を用意することが重要です。
データ分析や評価を行うとなると、Excel以外の選択肢としては、データ分析用のサービスであるBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの導入などを検討することになります。しかし、中堅・中小企業ではデータの集計・分析以前に、必要なデータが存在しなかったり、手作業でデータを生成したりする必要があり、せっかくの分析環境を活かしきれないこともあります。
そのため、まずは各部門の担当者が行った活動を都度入力し、顧客のあらゆる情報を一元化して、リアルタイムに共有可能な仕組みとして、CRM/SFAツールの導入・活用が必要となってきます。
ここからは、契約の更新タイミングでアップセル活動を行い、顧客単価の向上を目指す場合について、CRM/SFAツールの例としてZoho CRM を使いながら設定とデータの活用方法を解説します。
契約状況に基づいた顧客企業の絞り込み
「Lesson 6 CRM/SFAでカスタマーサクセスの活動を効率化しよう」で解説した[ジャーニー設計]機能を使うことで、顧客契約状況を自動で追跡し、契約更新時期に差し掛かっている取引先が一目で分かる状態を作ることが可能です。
具体的には、Lesson 6で行った設定では、まず、契約が完了した時点で[商談]タブの[契約更新案内日]に契約完了30日前の日付を入力しておきます。この[契約更新案内日]の日付が到来すると、[取引先]の[ステージ]が[契約更新]に変更されるため、[ステージ]が[契約更新]となっている企業が一目で分かる状況を作ることができます。
[取引先]タブで[ステージ]が[契約更新]である企業を絞り込んで表示するには、[ビュー]機能を利用すると簡単です。[取引先]タブでのビューの設定と条件に合致するデータが表示される様子は、以下の動画で確認してください。
![[取引先]タブでのビューの設定と条件に合致するデータが表示される様子の動画](http://www.zohowebstatic.com/sites/zweb/images/jp/crm/academy/learning8-lesson7-thumb1-lazy.png)
このように契約更新対象企業を絞り込み、これまでの契約状況や利用状況を確認した上で、契約更新を促していくのが基本的な業務の流れです。
契約更新商談の自動作成
先ほどの取引先企業を絞り込んで更新案内を行っていく場合、手動で契約更新のための商談を作成するデータ入力の手間がかかります。
同じ作業を繰り返し行うこととなるため、できるだけ効率化・自動化したい作業といえますが、このような効率化は、[ワークフロールール]機能を使って実現することが可能です。[ワークフロールール]は、各タブのデータが特定の条件を満たした際に、データ更新やメール通知、新たなデータの生成などを自動で行うように設定できる便利な機能です。
例えば、契約更新用の商談のように契約更新時期が到来したら、自動で新たな商談が作成されると、営業担当者は自身に割り振られた商談の対応を行えばよく、自ら更新対象となる顧客を探す必要がありません。可能な限り各担当者が行うべき行動を明確にすることを意識することが、業務効率化につながります。
ここからは、条件に合致する商談から、自動で契約更新用の商談を作成する[ワークフロールール]の設定を説明します。
ワークフローの作成手順は、以下の通りです。
- Zoho CRM 右上の[設定]をクリック
- 自動化の[ワークフロールール]をクリック
- ボタン[+ルールを作成する]をクリック
- [タブ]を選択し、[ルール名]を入力して[次へ]
- [実行条件]を選択し、各種条件設定を行い[次へ]
- ルールを適用するデータの条件を選択し、[次へ]
- すぐに実行する処理として、[データの作成]を選ぶ
- 作成するデータの詳細内容を設定し、[保存する]
- ワークフロー設定画面で[保存する]をクリック
更新用商談の作成用ワークフローの設定については、以下の動画を参考としてください。

[ワークフロールール]が正しく機能すれば、更新期日の1カ月前に更新用の商談が自動で生成されるようになります。


カスタム項目の作成
ここまでの設定でシンプルな契約更新用のデータを作成することができるようになりました。しかし、すべての契約更新用の商談がアップセル対象となる訳ではなく、各担当者がアップセルの可能性があるかを判断した上で、提案活動を行っていく必要があります。
アップセルの可能性については、顧客の問い合わせ状況やヒアリング内容から個別に判断することとなりますが、アップセル率の計算を行うためには各商談がアップセルの対象かどうかを区分けするデータが必要です。このような初期設定にはない項目は「カスタム項目」として作成します。
例えば、ここまでの作業により、[商談]タブの[種類]項目として、[サブスク更新]がすでに設定されていますが、カスタム項目として新たに[更新の種類]を設定すると指標の計算に必要なデータを残すことができるようになります。
[商談]タブへの項目追加については、以下の動画を参考としてください。
![[商談]タブへの項目追加についての動画](http://www.zohowebstatic.com/sites/zweb/images/jp/crm/academy/learning8-lesson7-thumb3-lazy.png)
なお、上記動画では、[更新の種類]は、[種類]が[サブスク更新]以外では、不要な項目であるため、レイアウトルールを適用し、[種類]によって項目の表示・非表示をコントロールする設定も行っています。
ダッシュボードによる活動の分析と改善
ここまでの設定を基に、各担当者が必要な活動を行いデータ入力を行うと、各活動の結果がデータとして蓄積されていきます。蓄積されたデータを使ってアップセル活動の状況を把握・分析し、問題があれば改善を行うサイクルを回していく必要があります。
CRM/SFAツールでは蓄積されたデータを基にレポートやダッシュボードを作成して、データを活用できる機能を持つものが多いため、上手に活用していきましょう。
ここからは、Zoho CRMのアナリティクス機能を使ったダッシュボードの作成とデータの活用方法を説明します。
作成するダッシュボードのイメージ
Zoho CRM の[アナリティクス]機能は、CRM/SFA上に蓄積されたデータを集計・可視化できる機能で、データに基づく意思決定などに欠かせない機能です。ダッシュボードでは、まずは対象となるデータの全体像を把握し、改善するポイントを見つけるようなものを作成するとよいでしょう。
今回は、以下のようなダッシュボードを作成する手順を説明していきます。

ダッシュボードの作成
ダッシュボードの作成は、[アナリティクス]タブから行います。

[アナリティクス]タブを選択し、左上にある[+]ボタンをクリックします。
![[アナリティクス]タブを選択し、左上にある[+]ボタンをクリック](http://www.zohowebstatic.com/sites/zweb/images/jp/crm/academy/learning8-lesson7-img5-lazy.png)
ダッシュボードの作成画面が表示されますので、追加したい要素を左側のメニューから選び、中央の要素を配置できる領域に設置していきます。
ダッシュボードの作成手順は、以下の動画を参考としてください。

下記のようなダッシュボードを活用することで、契約更新対象数、アップセル対象数、更新の種類による受注率などが把握できるようになります。

ダッシュボードに基づく改善活動の例
ここまでの設定で、アップセル活動に関しての現状をリアルタイムに把握できるようになりましたが、重要なのはこの後の改善活動です。
例えば、先ほどのダッシュボードを見ると、アップセル対象の商談を失注しており、アップセル以前に、対象顧客が提供しているサービスに満足していなかった可能性があります。このような結果から、営業担当者がなぜアップセル対象と判断したのか、具体的に行った活動などを振り返り、その内容を組織内で共有することで、組織全体の活動の改善を行っていきます。
今回はアップセル活動にフォーカスを当てて、必要なカスタム項目の設定やダッシュボードの作成を説明してきましたが、同じようにデータを生成することで、さまざまな打ち手に対してデータを活用した業務改善が可能となります。
データのカスタマイズを自由に行うことができ、レポートやダッシュボード機能を持つCRM/SFAツールを利用して、カスタマーサクセスの活動の継続的な業務改善を実現しましょう。
評価
このコンテンツは役に立ちましたか?
入力ありがとうございました。
あなたからの評価
コメント