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コンテンツを作る - 設計編

コンテンツマーケティングにおいて、自社の現状を正確に把握し、適切なターゲットを設定した上で、そのターゲットに合ったコンテンツを設計することは不可欠です。このレッスンでは、適切なペルソナ設定や効果的なコンテンツ設計の方法を学びます。

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コンテンツを作る - 設計編

BtoBビジネスのように検討期間が長いサービスでは、ペルソナ設定やコンテンツ設計が成果に大きく影響します。Lesson 2とLesson 3は、コンテンツ設計と制作をセットで学ぶ内容となっています。このレッスンでは、適切なペルソナ設定や効果的なコンテンツ設計の方法を学び、次のLesson 3では、その設計を基に実際のコンテンツ制作に取り組むことで、設計から制作までのプロセスを深く理解していきます。

ターゲットに合ったコンテンツ設計の重要性

コンテンツを作成する際には、ターゲットにしっかりと合わせた設計が非常に重要です。単に多くの人を集めるだけでなく、顧客が製品やサービスを実際に購入するまでのプロセスや、その間にどのように考え方が変わるのかをきちんと見据える必要があります。

特にBtoBビジネスでは、製品やサービスの購入を決めるまでに関与する人が多く、検討期間も長期にわたるため、より戦略的なアプローチが求められます。そのため、コンテンツをやみくもに作成するのではなく、顧客の購買プロセスに応じた設計を行うことが重要です。
具体的には、最初に興味を持ってもらうための一般的な情報を提供する段階から、次第に詳細な製品説明や成功事例などを提供し、最終的には購入を後押しするコンテンツへとつなげていく必要があります。

このように、ターゲットの購買プロセスに応じたコンテンツ設計を行うことで、長期的に見込み客との信頼関係を築き、最終的には購入に至る可能性を高めることができるのです。

コンテンツ設計のプロセス

コンテンツを効果的に設計するためには、どのような手順で進めるといいのでしょうか。
ここでは、コンテンツマーケティングにおけるコンテンツ設計のプロセスを以下の順序で解説します。

  1. 自社の課題と目的の明確化
  2. ターゲット設定
  3. ペルソナ設定
  4. カスタマージャーニーの設計
  5. コンテンツマップの作成

今回は、具体例としてセキュリティ製品を扱うBtoBのソフトウェア企業を想定し、イメージしやすい形で説明します。

1.自社の課題と目的の明確化

コンテンツマーケティングは、単なる記事作成にとどまらず、ユーザーに価値ある情報を提供しながら、自社の課題を戦略的に解決するための手段です。
しかし、すべての課題をコンテンツマーケティングだけで解決できるわけではありません。まず、自社の現状を正確に把握し、解決すべき課題と達成したい目的を明確にすることが成功のカギとなります。これにより、強みや市場でのポジションを理解し、効果的なコンテンツ戦略の基盤を築くことができます。

自社の市場ポジションと強みを分析

自社の市場ポジションと強みを分析するためには、3C分析やSWOT分析といったフレームワークを活用し、それぞれの要素を体系的に評価します。

3C分析

Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの要素を分析することで、企業を取り巻く環境を明らかにし、今後の経営戦略を導き出すための有効な手法です。

SWOT分析

自社の外部環境と内部環境を、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの観点から分析し、既存事業の改善点や強化すべき領域、また新規事業における将来的なリスクを特定する手法です。

1.市場ニーズの特定(3C分析)

3C分析を行い、市場ニーズの主要な要素を整理します。セキュリティソフトウェア企業の場合、以下の内容が考えられます。

市場ニーズ

内容

サイバー攻撃への対応

ランサムウェアやフィッシング攻撃の増加による、高度なセキュリティ機能の需要の高まり。

リモートワークの普及

安全なリモートアクセスの確保に対応したソリューションの必要性。

規制対応

データ保護規制に対応するためのソリューションの需要。

2.競合分析(3C分析)

競合分析では、主要な競合他社の強みと弱みを洗い出し分析します。

競合他社

強み

弱み

競合A

包括的なセキュリティプラットフォームの提供による、大企業からの支持。

高価格による中小企業にとっての導入コストの負担。

競合B

クラウド型ソリューションによる導入の容易さ。

カスタマイズ性の不足。

3.自社分析(3C分析)

.自社分析では、自社の強みと弱みを書き出します。

自社の要素

内容

強み

AIを活用した高度な脅威検出機能と高いカスタマイズ性。
特定の業界に特化したソリューションの提供可能性。

弱み

低いブランド認知度。

SWOT分析

これまでの3C分析の結果を基に、SWOT分析を行い、自社の戦略を立てます。

SWOT要素

内容

Strengths(強み)

高度なセキュリティ機能、カスタマイズ性。

Weaknesses(弱み)

認知度の低さ。

Opportunities(機会)

リモートワーク普及による新需要、規制対応ソリューション市場の拡大。

Threats(脅威)

競合の市場シェア拡大、価格競争の激化。

既存コンテンツの成果を評価

現状のコンテンツパフォーマンスを徹底的に見直し、特にアクセス数が多いコンテンツやリード生成に大きく貢献しているコンテンツを詳細に分析します。

ソフトウェア企業がコンテンツパフォーマンスを評価する際には、次のようなステップが考えられます。
例えば、以前に公開した「最新のサイバー攻撃トレンドと対策ガイド」というホワイトペーパーを例に取ると、このコンテンツはITセキュリティ担当者をターゲットにしたリード獲得の主要な資産です。このホワイトペーパーの成果を評価するために、以下の指標を検討します。

評価項目

説明

アクセス数

ホワイトペーパーのランディングページへの訪問数を確認し、どの程度のトラフィックが集まっているかを把握。

ダウンロード数

ホワイトペーパーのダウンロード数を確認し、リード獲得にどの程度貢献しているかを評価。

問い合わせ件数

このコンテンツを通じて、どの程度のサービス問い合わせが発生しているかを分析し効果を測定。

評価の結果、ホワイトペーパーのダウンロード数は多いものの、問い合わせ件数が伸び悩んでいる場合、次の施策として、ホワイトペーパー内のCTA(コールトゥアクション:行動喚起)を強化したり、後続のメールフォローを改善するなどのアプローチが考えられます。
この評価によって、現在の取り組みの成功要因や改善すべきポイントが明確になり、次の施策に的確に反映させることが可能になります。

目的の整理

自社の事業課題と既存コンテンツの成果を踏まえた上で、コンテンツマーケティングの目的を再整理します。目的を具体的かつ明確にすることで、今後の施策がよりターゲットにフィットしたものとなり、マーケティング活動の成果を最大化することができます。実際に、自社の事業課題と既存コンテンツの成果を評価した後、コンテンツマーケティングの目的を整理する際の具体例を説明します。
例えば、このソフトウェア企業は、主に中小企業向けに製品を提供しており、認知度の低さが課題となっているとします。この場合、以下のような目的が設定されることが考えられます。

●認知度向上:

業界内での認知度を高めることを目的とし、SEO対策を強化してオーガニック検索からのトラフィックを増加させます。
また、業界関連イベントでのホワイトペーパーの配布や、ソーシャルメディアでのプロモーションも併せて実施します。

●リードジェネレーション:

リードの質と量を改善することを目的とし、ダウンロード後のナーチャリングを強化します。
例えば、ダウンロードしたユーザーに対して、自社のセキュリティソフトウェアを利用したケーススタディや成功事例を提供し、製品への関心を高めるためのシナリオを構築します。
このように目的を明確にすることで、コンテンツの制作や配信戦略がターゲットに合ったものとなり、マーケティング活動全体の効果を高めることができます。

2.ターゲット設定

次のステップとして、ターゲット設定を行います。適切なターゲットを設定することで、マーケティング活動がより効果的になり、成果を得やすくなります。

顧客データの収集

ターゲットを正確に絞り込むためには、まず顧客情報の収集が不可欠です。以下の方法を用いて、効果的に顧客情報を収集します。

情報源

収集内容

CRM/SFAツール内データ

過去の購入履歴、問い合わせ履歴、契約状況、導入製品の種類など。

業界レポート・市場調査

セキュリティ市場の最新動向、セキュリティ強化を求めている業種、新たな脅威に対応しようとしている企業。

SNS・アンケート分析

セキュリティに関する関心が高いターゲット層、その課題。

顧客インタビュー

リモートワークの普及に伴うセキュリティリスクに対する具体的な対応状況やニーズ。

これらのデータ収集を通じて、この企業は、リモートワーク対応に悩む中堅企業が主要ターゲットになると判断しました。

顧客属性の精査

収集した情報を基に、顧客を属性ごとにセグメント化します。このソフトウェア企業では、以下のようにセグメントを設定しました。

属性カテゴリ

ターゲット設定

業種

IT、金融、医療など、特に高度なセキュリティ対策が求められる業界。

企業規模

従業員数が100~500人の中堅企業で、リモートワークを行っている企業。

職務内容

IT部門の責任者やセキュリティ担当者。特にセキュリティ対策の予算を持っている決裁者。

決裁権の有無

最終的な製品選定や契約を決定する権限を持つ役職者がいる企業。

例えば、この企業では、金融業界の中堅企業でリモートワークのセキュリティ強化を検討しているIT部門の責任者を、最優先のターゲットセグメントとして特定しました。このセグメント化により、優先的にアプローチすべきターゲットセグメントを特定でき、より精度の高いマーケティング戦略を展開することが可能になります。

3.ペルソナ設定

選定した各セグメントから最も代表的な顧客像を選び、その人物を基にペルソナを作成します。ペルソナの設定が不十分だと、コンテンツがターゲットに響かず、成果に結びつかないことがあります。既存顧客データを基にペルソナを再設定し、彼らの具体的なニーズや課題に沿ったコンテンツを提供することで、マーケティング施策の効果を高めることができます。
BtoBのペルソナには、デモグラフィックやサイコグラフィックに加え、業種、企業規模、職務内容、決裁権の有無、ビジネス上の課題や目標などを含めて設定することが望ましいでしょう。

ペルソナの例

以下は、セキュリティソフトウェア企業で想定するペルソナの具体例です。

●企業の属性

カテゴリ

ペルソナ属性

業界

金融

所在地

東京

年商

50億円

企業規模

中堅企業

従業員数

300人

事業内容

金融サービスの提供

課題

リモートワーク環境でのセキュリティ強化が必要

●担当者の属性

カテゴリ

ペルソナ属性

所属する部署

IT部門

役職

情報システム部門 部長

年齢

45歳 男性

情報源

業界専門サイト、オンラインフォーラム、ベンダーからのセミナー

意思決定の関与度

高い(セキュリティ製品の選定と予算決定に関与)

比較検討した製品

他の大手セキュリティベンダーのソリューション

このペルソナの例では、特定の業界、企業規模、そして具体的な課題に対してどのような人物が意思決定に関わっているのかが明確になります。このようなペルソナを設定することで、その人物に対して最も効果的なコンテンツを設計し、提供することが可能となります。
例えば、このペルソナに向けたコンテンツとして、「金融業界におけるリモートワーク時のセキュリティリスクとその対策」といったホワイトペーパーや、IT部門長向けのセミナーを企画することで、具体的なニーズに対応したマーケティング施策を展開できます。

4.カスタマージャーニーの設計

ペルソナの設定は、適切なコミュニケーション設計の一助となりますが、成果を出すためにはカスタマージャーニーの作成が効果的です。カスタマージャーニーの作成は、顧客が購買に至るまでの過程を詳細に描き、その各段階で必要なコンテンツを提供するための重要なプロセスです。

カスタマージャーニーのフェーズ

カスタマージャーニーの一般的なフェーズは以下の通りです。

フェーズ

認知

興味・関心

比較・検討

購入・申込

説明

顧客が問題やニーズを認識し始める段階。

顧客が特定のソリューションに興味を持ち、情報収集を開始する段階。

顧客が複数のソリューションを比較し、導入を検討する段階。

顧客が最終決定を行い、購入や申し込みをする段階。

対策

一般的な業界情報や課題に関するコンテンツが有効

ソリューションの概要や利点を説明するコンテンツが必要。

詳細な製品情報や導入事例が求められる。

具体的な導入ガイドやROIの情報が効果的。

コンテンツ例

ブログ記事、ニュース記事

ホワイトペーパー、セミナー・ウェビナー案内

ケーススタディ、デモ動画、比較コンテンツ

導入手順ガイド、ROI計算ツール、サービス紹介資料

このカスタマージャーニーに沿って、各段階でターゲットが求めるコンテンツを提供することが重要です。

カスタマージャーニーに応じた施策の設計

セキュリティソフトウェアを提供する企業を例にとると、ターゲット顧客がカスタマージャーニーが進むにつれて、提供するコンテンツを変えることが効果的です。

以下に具体的な施策例を挙げてみます。

フェーズ

認知

興味・関心

比較・検討

購入・申込

コンテンツ例

ブログ記事:
「最新のセキュリティリスク」の解説。

ホワイトペーパー:
「効果的なセキュリティ対策」の詳述。

ケーススタディ、デモ動画:
「導入後の成果」や「他社との比較」の具体的な提示。

ROI計算ツール、導入手順ガイド:
「導入手順」や「ROI」の明示による購買決定の促進。

目的

潜在顧客が抱える問題の意識喚起。

ソリューション提示による顧客関心の深化。

自社ソリューションを有力候補と認識させ、選定されるための支援。

購買プロセスの円滑化と最終決断の促進。

5.コンテンツマップの作成

次の段階では、コンテンツマップの作成に移ります。

コンテンツマップを活用することで、ユーザーが各ページでどのような情報を得るべきかを視覚的に把握し、コンテンツの配置や更新の優先順位を決定できます。

サイト構造の洗い出し

既存のサイトを利用してコンテンツマーケティングを行う場合、まず現状のサイト構造を詳細に把握することが必要です。TOPページから第3階層あたりまでのサイト構造を明確にし、各ページの役割を把握します。これにより、どの部分に新たなコンテンツが必要か、既存のコンテンツがどのように役立っているかを評価できます。

以下は、セキュリティソフト企業のサイト構造の一例です。

コンテンツマップの画像

コンテンツの整理・配置

サイト構造が明確になったら、次に設計したカスタマージャーニーを基に、コンテンツをどこに配置するかを慎重に検討します。ペルソナを作成し、既存コンテンツを見直すことで、古くなったり、ペルソナに合わなくなったコンテンツが見つかることがよくあります。

例:ブログのカテゴリが不足している場合

例えば、既存のサイト構造を洗い出した際に、「ブログ」カテゴリの第3階層が「セキュリティニュース」や「業界トレンド」、「製品アップデート」といった基本的な内容に限定されていることが分かったとします。[br]しかし、カスタマージャーニーの初期段階でペルソナが求める情報には、これらに加えて「セキュリティ対策」や「セキュリティ用語」といった、基礎的でありながら具体的かつ実用的なコンテンツが含まれている必要があります。こうしたコンテンツが不足している場合、次のような新しいカテゴリを追加し、ペルソナのニーズに応じた情報を提供することが重要です。

カテゴリ名

内容

セキュリティ対策方法

企業や個人が直面するセキュリティの脅威に対する具体的な対策手順やツールの紹介。
(ウイルス対策や情報漏えいの防止方法、セキュリティリスクの回避方法などを含む)

セキュリティ用語

セキュリティ分野で頻出する専門用語の解説や、重要な概念の説明を行うカテゴリ。
(暗号化、マルウェア、ファイアウォールなどの基本用語から最新の用語までを含む)

これらの新しいカテゴリを追加することで、ブログがペルソナの期待に応える内容となり、より多くの訪問者を引きつけ、カスタマージャーニーをスムーズに進行させることが可能となります。

このレッスンでは、コンテンツ設計の基本的なプロセスと、それに基づいたコンテンツの整理・配置について学びました。自社の課題を明確にし、ペルソナに沿ったコンテンツを設計することは、BtoBマーケティングにおいて非常に重要です。
特に、ペルソナのニーズを満たすために不足しているコンテンツを見つけ、適切なカテゴリを追加することで、カスタマージャーニーを効果的に進行させ、最終的なCVにつなげることができます。次のレッスンでは、この設計に基づいた実際のコンテンツ制作に取り組んでいきます。

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