入門から上級編まで
ビジネスのITツールエキスパートを育成

カスタマージャーニーとは?

カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーとは、顧客が製品やサービスに出会い、興味を持ち、購入し、利用し、アフターサービスを受けるまでの一連の過程を視覚化して分析する手法です。
カスタマージャーニーは、認知(製品やサービスに出会う)、興味(興味を持つ)、検討(情報を収集し比較する)、購入(実際に購入する)、利用(製品やサービスを使用する)、アフターサービス(サポートやフォローアップを受ける)といったステージに分かれます。

各ステージでは、顧客がさまざまなタッチポイントで製品やサービスと接触します。近年では、消費者の購買行動は多様化し、情報の接点となるタッチポイントもメディア媒体、広告、WEBサイト、SNS、口コミサイトなど多岐にわたります。例えば、認知ステージでは広告やSNSの投稿を通じて製品を知り、興味ステージではWEBサイトや口コミサイトで情報を収集します。企業はカスタマージャーニーを詳細に理解し、各段階での顧客体験を最適化することで、顧客満足度を高め、ロイヤルティを強化することを目指します。

カスタマージャーニーとバイヤージャーニーの違い

カスタマージャーニーと似た意味を持つ言葉として「バイヤージャーニー」があります。バイヤージャーニーとは、主に企業間取引(BtoB)において、見込み客が製品やサービスを認知し、興味を持ち、情報収集し、比較検討を経て購入に至るまでのプロセスを指します。一方、カスタマージャーニーは、顧客が製品やサービスに出会い、購入し、利用し、アフターサービスを受けるまでの一連の体験を時系列に沿って示したものです。カスタマージャーニーは、購入後の利用定着や顧客満足の維持にも焦点を当て、カスタマーサポートやフォローアップといった購入後の体験まで含みます。
一方、バイヤージャーニーは購入の意思決定までのプロセスに特化し、効果的なマーケティングとセールスを行うものとして使用されます。カスタマージャーニーは企業対個人(BtoC)にも適用され、顧客ロイヤルティの強化を目指すのに対し、バイヤージャーニーはBtoB取引においての、購買プロセスの最適化を重視しています。

カスタマージャーニーの重要性

カスタマージャーニーが重要視される理由は、顧客の情報収集手段と価値観が多様化したことが理由にあります。数十年前は、顧客が情報を得る手段は新聞、テレビ、雑誌などに限られており、企業はそれらの特定のタッチポイントで、顧客の行動や心理を簡単に把握することができました。しかし、スマートフォンの普及により、顧客はウェブサイト、広告、SNS、口コミなど多様な情報源を利用し、複雑な意思決定プロセスを経て購買行動を取るようになりました。これにより、企業は顧客が製品やサービスを認知し、競合と比較検討する過程を理解するのが難しくなっています。
企業は、カスタマージャーニーを作成することで、顧客がどのような価値観を持ち、それがどのように購買行動に影響するかを明確に把握できます。例えば、特定のタッチポイントで顧客が抱える疑問や不安を特定し、それに対応する情報を提供することで、顧客の購買意欲を高めることができます。企業は、カスタマージャーニーを活用して、顧客の価値観や行動パターンを理解し、個別のニーズに応じた商品やサービスを提供することで、より効果的なマーケティングを展開できます。

カスタマージャーニーを作るメリット

カスタマージャーニーを作る主なメリットは下記の3点です。

顧客を深く理解できる

カスタマージャーニーを作成することで、顧客がどのように製品やサービスに出会い、どのような過程を経て購入に至るかを詳細に把握できます。これにより、顧客のニーズや行動パターンを深く理解し、より効果的なマーケティング戦略や営業戦略を立てることが可能です。顧客視点を持つことは、改善すべきポイントや新たな気づきを得ること、さらには製品やサービスの見直しにもつながります。例えば、ある製品が特定の段階で離脱率が高いことが判明した場合、その段階での改善策を講じることができます。

部門間の連携強化

カスタマージャーニーの作成には、マーケティング、営業、カスタマーサポートなど複数の部門が協力して取り組むため、部門間のコミュニケーションと協力体制が強化されます。これにより、組織全体で顧客中心の戦略を共有し、一貫した顧客体験を提供することが可能となります。

顧客体験の向上

企業は、カスタマージャーニーを通じて、各ステージでの顧客の体験を評価し、改善点を特定することができます。顧客がスムーズに購入プロセスを進められるようにすることで、顧客満足度が向上します。高い満足度は、顧客ロイヤルティを強化し、リピーターの増加や口コミによる新規顧客の獲得につながります。

カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップとは、ペルソナが製品やサービスと出会い、購入・契約に至るまでの行動や心理の流れを図で可視化したものです。ここからは、カスタマージャーニーマップが与える影響と必要性を紹介していきます。

顧客目線を理解

カスタマージャーニーマップは、顧客が製品やサービスとどのように関わるかを詳細に示すため、企業は顧客の視点から物事を理解することができます。これにより、企業は顧客がどのような感情やニーズを持っているのか、そして、どの段階でどのような問題に直面するかを具体的に把握できるようになります。このような理解を深めることで、企業は顧客の期待に応えるサービスを提供するための基盤を築くことができます。

顧客目線でアイデアを発想できる

カスタマージャーニーマップは、顧客目線で発想する助けにもなります。顧客の体験を視覚化することで、企業は自社の視点ではなく、顧客の視点から製品やサービスを設計・改善することができるようになります。これにより、顧客のニーズや期待に基づいて、より価値あるサービスや製品を提供するための具体的な改善点を見つけやすくなります。

チーム全体で共通認識が持てる

カスタマージャーニーマップを共有することで、認識のズレをなくして、チーム全体で共通認識を持つことができます。異なる部門やチームが同じ情報を共有し、一貫した顧客体験を提供するための基盤を作ることができます。これにより、組織内のコミュニケーションが円滑化され、部門間の協力や連携が強化されます。全員が顧客のジャーニーに関する共通の理解を持つことで、組織全体が一体となって顧客満足度の向上に取り組むことができるようになります。

課題解決の優先順位がわかる

カスタマージャーニーマップを活用することで、顧客や見込み顧客の行動を俯瞰することができ、課題解決の優先順位が明確になります。顧客が直面する課題やペインポイントを把握することで、企業は解決すべき課題の優先順位を効果的に設定することができます。これにより、重要な課題にリソースを集中させ、より大きなインパクトを与える改善が可能になります。また、最も緊急性の高い問題を優先的に解決することで、顧客満足度を迅速に向上させることができます。

カスタマージャーニーマップに必要な要素と作成ステップ

ここからは、カスタマージャーニーマップに必要な要素と5つの作成ステップを紹介します。

Step 1. ペルソナの設定

カスタマージャーニーマップ作成の最初のステップは、ペルソナの設定です。ペルソナとは、製品やサービスのターゲットとなる「仮想ユーザー」のことで、ターゲットとなる顧客を「個人」として定義します。ライフスタイルや趣味、属性、悩み、実現したいことなどを詳細に洗い出します。ペルソナを設定する際には、できるだけリアルな情報や特徴を反映するようにします。既存顧客の情報から、年齢、性別、職業、居住地などの定量データを入手したり、既存顧客へインタビューやアンケートを行い、自社の製品やサービスを購入するに至った背景を明確にしたり行うと良いでしょう。

例えば以下は、あるBtoB企業をターゲットに作成したペルソナ例です。BtoB企業の場合は、情報を収集する担当者と最終的な意思決定をする決裁者が存在するため、2種類のペルソナが必要となります。

  • ペルソナ例(営業部長)
ペルソナ作成
  • ペルソナ例(営業課長)
ペルソナ作成

このようなペルソナを基にして、いつどのような考え方で、どんな行動をとり、どのような段階を経て自社サービスを利用するのか、というカスタマージャーニーを考えていきます。

Step 2. ステップ定義

カスタマージャーニーを理解するためには、購入までの過程を「認知」「情報収集」「比較検討」「購入・導入」といった段階に分類します。各段階で顧客の行動と感情の流れを把握し、それぞれすべき施策も具体的に設定していきます。

Step 3. タッチポイント・行動の整理

各段階で顧客が具体的にどのような行動をするのか整理しましょう。また、顧客がどのタッチポイントで製品やサービスに関する情報を入手する可能性が高いかを明確にします。例えば、WEBサイト、SNS、口コミ、店舗、チラシ、雑誌、新聞、テレビCM、友人や家族の声など、情報源を洗い出します。顧客目線でタッチポイントを整理することが重要です。

Step 4. 感情の整理

カスタマージャーニーは、ペルソナの感情にも焦点を当てます。各段階でペルソナが抱く感情を想像しながら洗い出し、次の段階に進むための感情の変化を意識します。これにより、顧客の心理状態を理解し、適切なアプローチを取ることができます。

Step 5. マッピングとKPIの設定

情報が集まったら、マッピング作業を行います。マッピング作業では、部署や役職を横断したチームメンバーを集めて、ワークショップ形式で進めるのが理想的です。ワークショップ形式で行うと、多様な視点の意見が出やすくなり、カスタマージャーニーマップ作りがより生産的に進むでしょう。また、目標指標となるKPI(Key Performance Indicator)を設定し、現実と理想の目標とのギャップを明確にします。これにより、取り組むべき施策も明確になり、目標達成を効率的に目指すことができます。

カスタマージャーニーマップのテンプレート例:
カスタマージャーニーマップの作成に使えるテンプレートです。

カスタマージャーニーテンプレート作成

カスタマージャーニーマップ作成の注意点と失敗例

ここからは、カスタマージャーニーマップ作成の注意点とよくある失敗例について紹介します。

自社の主観や願望で作らない

自社の主観や希望的観測に基づいてカスタマージャーニーを作成ると、「ペルソナにこうあってほしい」という願望から、実際の顧客行動とギャップが生じます。これにより、重要な課題や弱点を見逃し、PDCAサイクルも効果的に回せなくなります。ユーザーインタビューやアンケート、公的なデータなどの客観的なデータを基に、作成することが重要です。

ペルソナの設定が適切ではない

ペルソナが不適切だと、カスタマージャーニーマップも現実味を欠きます。その結果、顧客に響かないマーケティング施策を打つことになりかねません。既存顧客の分析を行って、客観的なデータを基にペルソナを設定し、実際の顧客の悩みや課題を正確に把握することが必要です。

最初から細かく作りすぎない

完成度を追求して細部にこだわりすぎると、カスタマージャーニーマップの作成に時間がかかり、マーケティング施策の実行が遅れてしまいかねません。まずはシンプルな内容で作成し、顧客の基本的な購買プロセスを把握することから初め、徐々にブラッシュアップしていく方法が効果的です。

カスタマージャーニーの作成後に取り組むべきこと

カスタマージャーニー作成後に意識すべきアクションについて紹介していきます。

コンテンツの洗い出し

作成したカスタマージャーニーマップに基づき、「認知」「情報収集」「比較検討」「購入・導入」の各段階に対応するコンテンツを洗い出しましょう。各段階ごとのコンテンツ案をペルソナ視点でリストアップし、顧客の悩みや課題に寄り添った解決案を提供します。

不足している施策を企画

カスタマージャーニーマップを元に、各段階で不足している施策を特定します。不足している企画やコンテンツを洗い出し、短期的に改善できる施策と中長期的に取り組むべき施策を明確にします。

KPIの設定と施策の実施スケジュール

カスタマージャーニーマップ作成後、目標指標(KPI)を設定します。短期的および中長期的な目標を明確にし、チーム内で情報共有しながら施策を実施します。

例:短期的な目標(施策から3カ月以内)

  • トライアル利用率を3ヶ月で1.5倍に増やす
  • お問い合わせ獲得件数を3ヶ月で1.5倍に増やす

例:中長期的な目標(施策から6カ月以降)

  • 既存顧客の継続利用率を6か月で95%に維持
  • 顧客育成に最適なコンテンツを12か月で120本作成

施策の実施

カスタマージャーニーマップに基づき施策を実施し、PDCAサイクルを回してブラッシュアップを繰り返します。この時、マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用することで、担当者の負担軽減を図りながら、効率的にマーケティング施策を実施できます。

定期的な見直しとアップデート

市場や顧客を取り巻く環境の変化に対応するため、カスタマージャーニーマップを定期的に見直しましょう。半期や1年単位でアップデートし、顧客との関係を強化し続けることが重要です。これらのアクションを継続することで、カスタマージャーニーの効果を最大限に引き出し、顧客満足度とロイヤルティを向上させることができます。